暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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本来はインゴットが国宝になるレベルのハルモニウム。

それを武具以外に用いるのは、とても贅沢な話です。

今だから出来る事、ではありますね。


1、武の王冠

まだ残っている竜の鱗の中から、特に良いものを選抜して。聞こえる声を上手く拾いながらハンマーを振るう。

 

スールがギフテッドに目覚め。

 

リディーのギフテッドもどんどん強くなっている今、

 

鉱物の加工は、かなり楽になってきている。

 

ハルモニウムの加工は尋常ではなく難しいのだが。

 

それでも何度も挑戦して、質を上げてきているのだ。ましてや今回は王室からの依頼である。

 

手は抜けないし。

 

それに、今後ヴェルベティスを作って、最終的な防具を作る時。

 

その最強に見合った金属も、必要になってくる。

 

「リディー、中和剤上がったよ」

 

「ありがとう、スーちゃん」

 

「次は蒸留水の質を上げておくね」

 

「よろしく」

 

もう少しでハルモニウムの釜も上がってくる。ハルモニウム釜が上がったら、いよいよヴェルベティスに挑戦するつもりだが。

 

同時に、更なる錬金術の向上も試して行かなければならない。

 

現在、ものを薄く空気の膜で覆う魔術を練習しているのだが。

 

とにかくこれが繊細で、難しい。

 

この魔術を使いこなせるようになった後は。

 

ものを空気から隔離する魔術を使えるようになる必要がある。

 

どんな素材も、不純物は少ない方が良いのは道理。

 

最高品質の錬金術の産物は。

 

基本的に、空気が存在しない空間で作るという話も、見聞院で見た。イル師匠も、恐らくは空気遮断の魔術を使いながら、調合をしているのだろう。

 

イル師匠がギフテッドを持っていないとすれば。

 

恐ろしい程の経験値を頼りに、それらを行っている筈で。

 

それは賢者と呼ばれる程の存在になる筈である。

 

なお、リディーの隣では、お父さんが無心に調合をしている。お城にも時々出かけている。

 

壊れる寸前だった、お父さんの絵を修復するためらしい。

 

更に質を上げた不思議な絵の具を作っている様子で。

 

レシピについては、後で教えてくれる、と言う事だった。

 

戦闘で使う、空間の塗り替えに用いる不思議な絵の具とは、品質が二段階は違うようだが。

 

それもそうだろう。

 

小さな異世界を作り出す程の品だ。

 

一時的に別世界に切り替えるだけの不思議な絵の具とは、ものが違って当たり前である。

 

「少し出る」

 

「遅くならないようにね」

 

「ああ、分かっている」

 

バスケットに色々詰め込むと、お父さんが出かけていく。いつの間にか、夕方になっていた。

 

これからお城で徹夜作業かな。

 

そう思ったが、声は掛けない。

 

お母さんの残留思念と、理想の我が家がコアになっているお父さんの絵だ。

 

お父さんの絵の中で、お母さんはまだ擬似的に生きているに等しい。勿論触ったりはできないだろうが。

 

それでも、お母さんを助けるためだ。

 

お父さんはどれだけの無理でもするだろう。

 

二回、お母さんを死なせる事があってはならない。

 

そうお父さんも、必死になっているのだ。

 

止めることも、茶々を入れることも、絶対に許されない。

 

「炉に入れたら交代ね。 温度はスーちゃんが管理するよ」

 

「よろしく。 じゃあ、私は少し休むから」

 

「合点」

 

姉妹の連携も、以前より更に良くなった気がする。

 

二人ともギフテッドが使えるようになったからだろう。素材が教えてくれるのだ。次はどうしてほしい、と。

 

これはとても便利な能力である。

 

使いこなせれば、だが。

 

ただ、周囲の素材がずっと無差別に喋っているので。その中から、必要な声を聞き出す必要があるのが難しい。

 

それに、こんな状態では。

 

精神を病むのも、仕方が無いとも言える。

 

少し甘いものを食べて休憩。

 

炉からインゴットを取りだした頃には、夜になっていた。

 

一旦冷やしたハルモニウムのインゴットをかち割り、不純物を取り除くと再び炉に。そろそろ燃料が心許なくなってきたか。燃料を調合しておく。勿論普通の薪なんか使わない。火力がとてもではないが足りないからだ。

 

ハルモニウムの声が聞こえる。

 

とても複雑な声で、重なるようだけれども。

 

美しく歌うようでもあり。

 

それでいて狂気を孕んでいるようでもあり。

 

まるで海に誘き寄せて、ヒトを喰らう怪物のようだ。

 

ハルモニウムの武器を手にしたとき、人斬りの気持ちが良く分かった。確かにこんな武器なら試してみたくもなる。

 

そんな危ないハルモニウムだけれども。

 

使いこなせなければ、この先にはいけない。今後も無理難題が降りかかってくると思えば。

 

このくらい、どうと言うことも無かった。

 

「こんな所かな……」

 

何度か、炉に出し入れを繰り返し。不純物を徹底的に取り除いた後。

 

リディーは呟く。

 

少なくともハルモニウムは満足しているようだ。スールに視線を送ると、少し妹は考え込んでいた。

 

「ねえリディー。 これを登録してきて、今までのハルモニウムを引き取ってきて。 それでどうする?」

 

「よく分からないけれど、何かまずい?」

 

「いや、今までに比べて劇的に質が上がっているわけじゃないからさ」

 

「……」

 

それも、そうか。

 

確かに良いハルモニウムが出来たが。

 

わざわざコルネリア商会に登録しに行くほどでもないか。

 

ならば、このインゴットから、王冠を二つ造れば良い。

 

二つ王冠が必要だ。

 

一つはミレイユ王女の分。これは、光をイメージしたものとする。

 

もう一つはマティアスさんの分。これは影をイメージしたものとする。

 

デザインについては、話しあった後。

 

イル師匠のアドバイスも受け。

 

更にアルトさんから、見聞院でお勧めの本も教えて貰って。それを借りてきて。数百年間に出現した色々な「冠」を研究して、作った。

 

完成デザインについては、アルトさんにもイル師匠にもお墨付きを貰っている。

 

ミレイユ王女用の王冠は、武の国アダレットに相応しい、見るからに勇壮で、かつ実用的なもの。

 

貰ったレシピには、デザインまでは入っていなかったから。

 

これで文句は出ないだろう。

 

問題は、ミレイユ王女が気に入るか、だが。

 

打ち合わせがいるかも知れない。

 

いずれにしても、これは明日、王城で実際に見せて、それからだろう。

 

ハルモニウムは打ち直しが難しい。

 

デザインが気に入らないと言われたら、それは直さなければならない。王族の依頼なのだから、当然の話だ。

 

問題はマティアスさんの王冠だが。

 

そもそも接待用のものであるし。

 

マティアスさんは、あくまで影で無ければならない。故に、ミレイユ王女のものよりも、あらゆる意味で控えめにならなければならないだろう。

 

これも要相談か。

 

かなり考え抜いた上にデザインを練ったのだが。

 

いずれにしても王族に納入するのだ。どっちにしても、素人のデザインでは、そのまま作っては駄目だろう。

 

もう良い時間だ。

 

今日は此処までにして、休む事にする。

 

栄養剤を入れようかと思ったが、それは止めておく。その代わり、かなりがっつりと栄養は取った。

 

甘いものを入れたのは、脳の疲れを取るため。

 

しっかり歯も磨く。

 

そうしないと、無駄な治療をしなければならなくなるからである。

 

無心で休む。

 

起きだす。

 

この辺り、自分が機械的になって来ているのが分かる。スールも同じだ。スールはこの間、お父さんの絵の中でふつんとキレたようで。もうそれについて、反発するのは止めた様子だ。今は副作用を機械的に抑えながら、少しずつギフテッドと仲良くやっていく着地点を自分で探しているようだし、それについては口出ししない。

 

朝ご飯を作っていると、疲れきった様子のお父さんが帰ってくる。やはり徹夜で作業をしていたのだろう。

 

進捗を聞くと、無言で七本指を立てられた。

 

後三割か。

 

朝ご飯を食べるように促す。お父さんは疲れきっている様子だったが。それでも無理矢理にでも食べて貰った。

 

お父さんまで死んだりしたら。

 

リディーもスールも生きてはいられない。

 

人間から外れてしまった今でも。

 

そういう情はある。

 

フィリスさんが、リアーネさんやツヴァイに同じように情を抱いているのと同じだ。

 

お父さんが食事を取って、ベッドに直行するのを見届けてから。鍵を掛けて、王城に出かける。

 

一応数日は喪に服す雰囲気があったが。

 

今は皆顔が明るい。

 

あの庭園王が死んだ。

 

口に出して喜ぶわけにはいかないが。

 

皆、それでうきうきしているのは分かった。

 

アダレットでどれだけ庭園王が嫌われていたのかがよく分かる。まあ、無理もない。税金も尋常ではなく高かったし、その税金も大半が無駄に使われていたのだから。

 

王城の警備も、以前に戻っていて。

 

入るのに、手続きで時間を取られるようなことは無かった。

 

受付で、モノクロームのホムの役人に事情を話す。この人がいてくれて助かった。いつもいる訳では無いからだ。この人は、リディーとスールの納品受付を兎に角丁寧に対応してくれるので助かる。ホムだから不正する疑いもないし。

 

「事情は分かりました。 とりあえず、此方が陛下、此方が殿下……と」

 

「もう陛下なんですか」

 

「おっと、まだ公式にそう呼んでは駄目なのです」

 

「あ、分かりました」

 

まあ事実上の公式だったのだが。

 

その辺りは、何というか面倒くさい暗黙の了解、という奴なのだろう。まあ確かに、仕方が無い事ではある。

 

「王冠ともなると、国で雇っている芸術家などにも見てもらうので、丸一日はかかると考えて欲しいのです。 勿論駄目出しが出る可能性もあるので、それは覚悟して欲しいのです」

 

「分かりました」

 

「ただ……このデザインは、自分は好きなのですよ。 どちらもお二人にぴったりだと思うのです」

 

そう言って貰えると嬉しい。

 

頭を下げて、家に帰る。

 

お父さんは前後不覚に眠っていたので、少しお菓子を焼いて、シスターグレースの所に出向く。

 

孤児が増えていた。

 

他のシスターに聞いたが、どうやらインフラ整備が進展した結果、幾つかの辺境の街から、受け入れきれない孤児を実績があるシスターグレースの所に引き渡されたらしい。シスターグレースの孤児院では、それぞれにあったスキルを習得させて、即座に社会で生きていけるように教育してくれると評判である。勿論シスターグレースの所に残り、教育係になるという選択肢もある。久々にパメラさんが来ていて、シスターグレースと話をしていたが。魔術で音を遮っているため、何を喋っているかは分からなかった。

 

しばしして、シスターグレースが来たので、お菓子を渡す。

 

「まあ、ありがとう。 これはとても美味しそうね」

 

「少し時間が出来たので、焼いてきました」

 

「私達はもう食べたので、みんなで食べてくださいっ」

 

「そう。 忙しいのね」

 

無言で頷く。

 

勿論違う。

 

人間から外れ始めているリディーとスールが子供達と接しても、あまり良い影響は与えない筈だ。

 

見ると、新しく来た子供達には、強い猜疑心に目を光らせている子も。哀しみに心がおかしくなっている子もいる。

 

辺境でも匪賊の駆除が徹底的に進められ。

 

ネームドもドラゴンも危険な個体は殆ど刈り取られても。

 

それらに親を殺された子はどうしようもない。

 

本職に任せるしかない。

 

ふらふらと歩きながら、お母さん、お父さんと呟いているホムの女の子を、シスターの一人が抱きしめて、なだめながら連れていく。何も見えていない様子で、痛々しいことこの上なかった。

 

「それと、此方お願いします。 今までお世話になったので」

 

「ありがとう。 助かります」

 

お布施も少ししておく。

 

今、お財布には少し余裕があるので、世話になった分くらいは恩返しはしておきたいのだ。

 

信仰関係無しに、此処がもっとも凄い孤児院の一つであることは、リディーもスールも知っている。

 

シスターグレースがいる限り大丈夫だという事も。

 

バステトさんに軽く挨拶してから帰る。

 

途中、堤防の方を見る。どうやらフィリスさんが本格的に手を入れ始めたらしい。前にリディーとスールが取ってきた、深海のデータを使っているのだろう。かなり本格的な魔術を展開しつつ。フィリスさんと。遠目に見る限りイル師匠も連携して、大規模で大胆な工事をしている様子だ。

 

騎士団も参加しているが、多分二人の超越者が仕留めただろう船より巨大な魚をせっせと運んでいる。

 

港で解体して保存食に変えるのだろう。鱗や皮などは、武具の素材になるかも知れない。

 

かなりの数の全自動荷車も動いていて。

 

シールドで守られているとは言え、おっかなびっくりで人夫が働いているのが見えた。

 

雇用は創出されるし。

 

更に仕事自体も厳しくはない。

 

二人は色々と人間を超越しているが。

 

あの堤防は、あと数十年もたなかったと言う話だ。あの作業が、関わる人間全てを幸せにしているのも事実。

 

勿論あの二人のことだから、人夫を事故死などさせないだろう。

 

頷くと、アトリエに戻る。

 

アトリエに戻ると、後はしばらくヴェルベティスのレシピを調べて、準備を色々と進めていく。

 

お父さんが起きだしたのは夕方少し前。

 

食事を取って貰った後、お風呂に無理矢理にでも入って貰う。

 

ここ数日徹夜が続いていたし。

 

このままでは体を壊すと判断したからだ。

 

お父さんを無理矢理休ませると。

 

夜、適切な時間までヴェルベティスの研究を続ける。二人の作業は、いつの間にか。以前より遙かに、息が合うようになっていた。

 

今までは人間であることが足枷になっていた。

 

その足枷が外れたのは。

 

実績からして、明らかだった。

 

 

 

王城に出向き、レシピを受け取る。

 

モノクロームのホムの役人と一緒に、かなり険しい顔をした、獣人族の男性がいた。珍しい獅子顔である。獅子顔の獣人族はかなりレアなのだが。十万からなる人間が住む王都だ。いても珍しくない。

 

「この方は芸術顧問なのです。 レシピを見て、幾つか話をしたいということなので、連れてきたのです」

 

「よろしくたのむ」

 

芸術顧問か。

 

口うるさいのかなと警戒したが。応接室で始まったのは、王冠のデザインの最終チェックだった。

 

開口一番に、芸術顧問さんはこれで大体は大丈夫、という話をしてくれた。それはとても有り難い。

 

だが同時に、細かい部分で、幾つか説明を受ける。

 

「王冠はわかり易い象徴でなければならない。 このデザインは優れているのだが、この辺りを少し直して欲しい」

 

そして、幾つか細かいデザインについて調整する。

 

頭に被ったときに、落ちにくくなるようにというような意図でバランスを取る調整もあったので。ちょっとだけ驚いた。この手の人は、芸術的である事にこだわるため、非実用的なデザインを採用しがちなイメージがあったからだ。

 

或いは、ミレイユ王女が、そういうのは追い出したのかも知れない。

 

「……このくらいで良いだろう。 これで作ってきて欲しい」

 

「あの、良いですか?」

 

「何だろうか、錬金術師スール」

 

「はい。 これって、ミレイユ王女とマティアス……王子も納得している感じでしょうか」

 

頷く獅子顔の芸術顧問。

 

その辺りは、既に二人とがっちり話あっているという。

 

ただ、一つ面倒な事があるかも知れない、と言っていた。

 

それが何かは分からない。

 

だが、先代王の愚行の結果、新しく王冠を作らなければならなくなったのだ。その面倒が、多分武力も関係することなのだろう事は容易に想像できる。

 

いずれにしても、デザインの許可は貰った。

 

後は作るだけだ。

 

アトリエに戻る。

 

必要量だけ、ハルモニウムを切り分ける。この作業が、兎に角凄まじく大変なのだが。兎に角順番にこなして行く。

 

ハルモニウムの声を聞きながら、デザインを見つつハンマーを振るう。

 

武器などは流石に無理だが。

 

装飾品は散々作ってきたのだ。

 

細かい細工などは、リディーもスールも出来る。

 

流石に釜などの、超級の精度が必要になるものは作れないが。それは鍛冶屋の親父さんに頼めば良い。

 

リディーがミレイユ王女の。

 

スールがマティアスさんのを作る事に決めて。

 

二人で黙々とハンマーを振るった。

 

宝石も幾つか埋め込むが。

 

宝石なんか別に今までの戦いで、レンプライアがぼろぼろ落としている。高品質のものだってたくさんある。

 

宝石なんて、今更高級品でもなんでもない。

 

お父さんが、また出かけていく。

 

お父さんの方ももう少し。

 

残留思念とは言え、お母さんに会えるとなれば。無理もするのは分かる。だから、無理しすぎないように、支える事しか出来ない。

 

それに比べれば、王冠なんて。

 

ささやかなものだと思う。

 

国の象徴、か。

 

先代王が滅茶苦茶にした国の威信を回復しなければならない、か。

 

ミレイユ王女は充分以上に良くやっている。物理的な王冠なんて、必要がないと思うのだけれども。

 

それでも、やはり象徴は必要なのだろうか。

 

必要なのだろう。

 

無言で、声を聞きながら作業を進める。細かい部分を仕上げていくのが大変だ。ハルモニウムの硬度は尋常では無い。嫌だ、とハルモニウムが拒否すると、途端にまったくびくともしなくなる。

 

なだめながら、少しずつ直していき。

 

そして修正が終わった所で、もう一度様子を聞く。ハルモニウムが文句を言う場合、大体其処に何か問題がある。気泡が入り込んでいたり、薄くなりすぎていたり。頷いて、丁寧に直す。

 

いずれにしても、神経を凄まじく削る作業だ。

 

二日掛けて、進捗は五割ほど。

 

お父さんが帰ってきて、気付くと半日経過していたこともあった。お父さんもかなり窶れているが。

 

それでも、そもそも戦闘が得意ではないお父さんだ。

 

出来る事は限られているし。

 

錬金術師としての出来る事の粋を尽くしている事も分かる。

 

止める事は出来なかった。

 

無言での作業が更に四日続く。

 

進捗九割からが長かった。ハルモニウムから聞こえる声を聞きながら、ルーペを片手に徹底的にチェック。更に、設計図を見ながら、何度も何度も寸法を測った。本当に心を込めて作る。

 

装飾品として、身を守るための防御も出来る代物だ。

 

実用性はあるのだと、言い聞かせて作る。

 

身を飾るためだけのものではないと、何度も自分に言い聞かせる。

 

勿論血税をドブに捨てているわけでもないとも。

 

何とか、一週間がかりで完成させる。

 

最後のハンマー入れが終わったのは、リディーもスールもほぼ同時。

 

終わると、二人ともへたり込んでしまう。

 

疲れ果てた。

 

納品は明日でも別にかまわない筈。

 

無言でベッドに這いずりこむ。眠りに落ちると、後はもう闇に掴まれたように、何も考えられなくなった。

 

それでも。

 

起きると、ぱちんと意識が戻ってくる。

 

時間もどれくらい経過したのか、分かってしまう。

 

ああ、人間を止めているな。

 

そう、静かにリディーは思った。

 

もう、逃れられない。

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