暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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流石の本職の騎士がいても、お荷物二人、新米一人、お情けで騎士をしているのが一人いれば、全部守りきるのは不可能です。ましてやそもそも回避と陽動と誘引が主戦術の回避盾なのですアンパサンドは。

双子は少しずつ、自分らの現状の実力というものを見せつけられていくことになります。


1、ようやくの巣立ちと見せつけられる現実

城門でマティアスさんとアンパサンドさん、それにフィンブルさんと合流。

 

そしてその時には。

 

なけなしのお金をつぎ込んで、箱状にした荷車、それも四輪のを仕上げていた。

 

ただしこれはまだ完成品では無い。

 

荷車が揺れると、瓶とかが割れてしまう可能性があるので。

 

これから獣を仕留めて毛皮を敷き詰め。

 

そして油紙も敷かなければならない。

 

だからまだ、荷車には籠を詰め込んでいる。

 

こうすれば、少しはクッションとして役に立つからである。

 

何とも不格好だけれども。

 

今は格好を気にしている余裕は無い。

 

「騎士団との任務は久しぶりだ。 よろしくお願いします」

 

「ああ、よろしく」

 

「戦歴を軽く話して貰えますか?」

 

「騎士団と一緒に外で獣狩りをしたのは八回。 民間人の別の街への護衛が六回。 後は警備任務だ」

 

具体的な戦歴を聞くと。

 

フィンブルさんもそれほどたくさんは戦っていないことが分かる。

 

まあそれは仕方が無い事だろう。

 

最初の戦いで命を落とす傭兵や従騎士は、珍しくも無いと聞いている。むしろ年齢的には充分な戦歴なのではあるまいか。

 

ただ、傭兵業にしても、十代半ばから働くのが当たり前なので。

 

既に二十歳を超えているフィンブルさんは、生き延びている中ではごく平均的なのかも知れないが。

 

「ふむ、まあ最低限の経験は積んでいそうなのです」

 

「二人とも騎士なのか」

 

「其方の王子は騎士一位、自分は騎士三位なのです」

 

「うわ、空の上の相手だな。 失礼なことがあったら言って欲しい。 何しろ駆け出しなものでな。 後、何か技術が足りないと思ったら、遠慮無く言ってくれ」

 

フィンブルさんは向上心も高い様子で、アンパサンドさんに、外に出る照会の最中に色々と話をしていた。

 

騎士の実力は、良く知っているのだろう。

 

逆に言うと。その限界も知っている筈だ。

 

錬金術師がメイン火力として動かなければ、その力は発揮できない。

 

荒野に住まう獣の戦闘力は。

 

普通の人間では、どうにもならないレベルなのだから。

 

戦闘時の役割についても話をしていたが。

 

アンパサンドさんの事を聞くと。

 

フィンブルさんは、聞き慣れない言葉を口にした。

 

「回避盾か。 たまに手練れにいるって噂は聞くが、本物は初めて見た……」

 

「回避盾?」

 

「そういう用語があるのです。 相手の注意を徹底的に引きつけて、その攻撃を回避し続けることで味方を援護する。 口で言う程簡単ではないので、殆どやる奴はいないのです」

 

「ホムの回避盾で騎士にまで成り上がるとは……凄いな。 最大限の敬意を払う。 後頼りにさせて貰う」

 

改めて敬礼するフィンブルさん。

 

そうか、どうやらリディーが思っている以上に、アンパサンドさんはレアな戦い方でのし上がったらしい。

 

それにしても本当に評価されづらいだろうに。

 

何というか、苦労については、それを察してしまった。

 

門を出て、歩く。

 

今回は、森の外にまで行く。其処で獣を数体狩る。

 

今回狩って欲しいと言われているのは、アードラと呼ばれる鳥だ。鳥と言っても、子供をかっさらっていく位のことは平気でする獰猛な獣で、爪も嘴も鋭い。戦闘力は高く、上位種になると魔術も使う。

 

獣には知能がないらしいけれど。

 

魔術は平気で使いこなしてくる。

 

強いネームドにもなると、数十の魔術を同時展開するとんでもないバケモノまでいるらしく。そういうのが相手になると、腕利きの錬金術師と、手練れの戦士が連携して、ようやく戦いになるのだとか。ドラゴンは更にその上を行き。邪神はドラゴンが束になったより強いとか。

 

あまり想像もしたくないが。それでもやるしかない。

 

とにかく幸いなことに、今回縄張りを作ったらしいアードラは、街道付近に姿を見せるものの、魔術まで使う上位種ではないらしい。

 

クラフトの出番だ。

 

「スーちゃん、投げるのは頼むよ。 セーフティの解除と爆破私がやるね」

 

「俺たちはどうすればいいんだ?」

 

「マティアスさん達は、敵の攻撃を防いでください。 叩き落とした後は、迅速な処分もお願いします。 それに、獣はアードラだけとは限りませんし、周囲の警戒もお願いします」

 

「ああ、分かった」

 

マティアスさんが若干青ざめているが。

 

それもまた仕方が無い。

 

リディーは急速に言動が物騒になっている事を自覚している。戦いに勝つと言う事は、相手を殺す事だ。

 

ましてや獣の場合は、下手に手負いにして逃がすと、大変な被害を出す事がある。

 

獣は際限なく大きく育ち。

 

大きくなればなるほど危険度が増す。

 

更に荒野からは際限なく湧き出してくる。

 

だから狩り続けなければならない。

 

森を朝の内に出る。

 

少し鍛えているからか、それほど苦労はしなかった。既に皆黙り込んでいる。スールはしっかりハンドサインを覚えさせた。流石に駆け出しとは言え傭兵。フィンブルさんも、すぐにハンドサインを覚えてくれた。

 

後は、アードラだが。

 

上空、雲の影などにいて、いきなり急降下攻撃を仕掛けてくると聞いている。

 

今回は四羽仕留める事がノルマだ。

 

仕事としては、それほど緊急度は高く無いのだが。街道近くを縄張りにした個体が増えてきているのが問題視されている。

 

まだ街道を行く民は襲われていないが。

 

襲われてからでは遅い。

 

そして騎士団では、もっと危険な獣を狩るために人員を出しているため、手が足りないのである。

 

基本的に前衛にアンパサンドさん。最後尾をマティアス。荷車をスールが引いて、その前をリディーが歩く。右側にフィンブルさんについて貰う。陣形は現在は、基本的にこれで動かす。

 

勿論問題が発生したら都度変えるし。

 

現状では人員が足りない。

 

火力は今回やっと用意できた。

 

だが、できれば錬金術の装備を作りたい。

 

まだインゴットもロクに作れない現状では、手が届かない話ではあるのだが。

 

皆の能力も上がってくれば。

 

相応に助けにはなる筈なのだから。

 

しばらく無言で歩く。

 

そして、アンパサンドさんが、手を横に。

 

とまれ、という合図だ。

 

遠くに何かいる。地上だ。

 

見ると、狼である。数頭が群れて、何かを貪り喰っている。見た感じ、人間ではないだろう。

 

多分大型の牛とか羊とか、ヤギとかだ。

 

どちらも荒野では雑食性のものが存在していて。

 

人間を襲う。

 

特にヤギは非常に凶暴な個体が時々出るらしく。

 

大型のヤギは、下手な肉食獣より凶悪で手強いと、以前アリスさんに聞かされた。恐らく交戦経験があるのだろう。

 

一度下がるように、リディーは指示。

 

森の辺りまで戻る。

 

街道を外れると、其処は死地だ。アンパサンドさんは大丈夫かも知れないが、マティアスさんやフィンブルさんを含めて、他は皆いつ死んでもおかしくない。

 

地下からいきなり強襲してくる獣もいるらしいし。

 

この間スールがファンガスにあっさり絞め殺されそうになった事から考えても。

 

獣はその戦闘力で人間を大きく凌駕している。

 

とにかく、石橋を叩きながら行くしか無いのだ。

 

一度森の辺りまで戻り。

 

それから、また別方向に移動する。

 

幾つかある街道を、順番に行くのだが。

 

こうやって、エサがいるぞと、自分達で釣りをするのである。

 

そして、日が真上に上がって来た頃。一羽目が釣れた。

 

アンパサンドさんの合図と殆ど間を置かず。

 

太陽の中から、急降下してくるアードラ。凄まじい速度で、アンパサンドさんが合図してくれなければ、とても間に合わなかった。

 

セーフティ解除。

 

スールが投げる。

 

空中で爆発は非常に広く拡がる。

 

炸裂した爆風は、鳥の翼に致命傷を与える。

 

爆裂。

 

ドガンと、凄い音がして。

 

悲鳴を上げたアードラが、そのまま体勢を崩して落ちてきた。

 

地面でぐしゃりと嫌な音がして。

 

それでもまだもがいているアードラを、ハルバードを手にしたフィンブルさんが真っ先に躍りかかって、勇敢に突き伏せる。アンパサンドさんは、何度も突き刺しているフィンブルさんを横目に、ナイフ一閃。

 

アードラの首筋の血管を切り裂き。

 

鮮血が噴水のように噴き上がった。無駄な攻撃と、適切な致命打。違いは一目瞭然だ。

 

すぐに森の中に引き上げて、吊して捌く。

 

羽根もむしる。

 

アードラは大きくて、ヒト族の子供くらいならそのままさらっていくことが出来ると言うのも納得だ。間近で死体を見るのは初めてだが、凄い。とても恐い。

 

「スールさん、少しクラフトを投げるのが遅れたのです。 リディーさんは、もう少し早い爆破なら完璧だったのです」

 

「すみません」

 

「次は気を付けます」

 

「とはいえ投擲は完璧。 躊躇無い爆破はもっと完璧だったのです。 前とは雲泥なのです」

 

お、褒めて貰った。

 

スールと顔を見合わせる。少し嬉しい。

 

そのままアードラを解体し、肉を取り、骨も分解し、内臓もより分けていく。火を焚いて防腐処置をし。

 

使えそうなものはそのまま分別して籠に入れていく。

 

特に羽根は非常に役立ちそう。

 

色々な用途がありそうだ。売ってもお金になりそうである。これだけ大きな羽だと、羽毛布団にもできそうだ。

 

後三羽。

 

気を入れ直す。

 

太陽の中から、急降下攻撃をして来たアードラは、文字通り一瞬の勝負だった。もしもクラフトによる爆破をし損ねていたら、一瞬で爪に掛かっていた可能性が高い。

 

首から上はそのまま残す。狩ってきた証拠として役人に納品するからだ。

 

森の中で燻製をしている間に、薬草などを採取しておく。

 

今回できれば一緒に、Gランク維持のための素材が欲しかったのだけれど。

 

流石にそれは欲を掻きすぎだろう。

 

まずはアードラを狩って日銭を稼ぎ。

 

戦闘経験も増やして。

 

スールはハンドサインを一とした集団戦術になれて貰い。

 

リディーは自分で教わった戦略と戦術について実践していく。

 

続けて、外に出ると。

 

比較的低空飛行していたアードラを発見。

 

此方に気付くと、威圧的に、地面スレスレにまで高度を下げ、一気に加速して来た。凄まじい速度で、獰猛な殺気がびりびりと叩き付けられるかのようだ。

 

「王子!」

 

「おうっ!」

 

ハンドサインを出すと、マティアスさんが飛び出す。

 

そして印を切る。

 

騎士は錬金術の装備を支給されているらしいが、その力を解放したのだろう。

 

剣を地面に突き立てると、シールドの魔術を展開。

 

それを見て、アードラは正面突破は無理と判断したか、急激に角度を変え、上に逃れようとしたが。

 

其処には既にスールが投擲したクラフトがあった。

 

爆破。

 

今度はタイミングも完璧。

 

煙を吹き飛ばして、きりきりまいしながら落ちていくアードラ。

 

二羽目は、上手く行った。

 

大きくため息をつくフィンブルさん。

 

保険として連れてきているのだ。

 

出番がないのは、むしろ良い事なのだと、二羽目を捌きながら話をする。

 

三羽目もすぐに釣れた。

 

そして、次で。

 

試練が訪れた。

 

 

 

夕方近く。

 

もう少しアードラを探したら切り上げようと話をし始めたタイミングだった。

 

アンパサンドさんが、ハンドサインを出し、体勢を低くする。

 

ハンドサインの意味は、最大限の警戒。

 

ぞわっと、背中に悪寒が走った。思わず叫んでいた。

 

「撤退! 森の中へ!」

 

殿軍はアンパサンドさんに任せるしかない。

 

同時に、地面を吹き飛ばして、複数の触手が躍り出てくる。あれは恐らく、肉食性の植物。森を形成することがない、純粋な捕食者だ。獣の一種である。

 

地面から這い出ながら、凄まじいうめき声を上げる植物。それが呪文詠唱だと気付くよりも早く。

 

リディーを、マティアスさんが突き飛ばしていた。

 

地面から多数の杭が突きだし、

 

辺りを地獄へ変える。

 

リディーが顔を上げたとき見たのは、地面で呻いているフィンブルさんと、動けないでいるマティアス。

 

また詠唱を即時開始している植物と。

 

それに果敢に挑んでいるアンパサンドさんだ。

 

スールはあわあわしているばかり。

 

こう言うとき、本当にスールは役に立たない。

 

それを分かっているから、リディーは怒らない。

 

持ってきた薬を取り出しながら、スールに言う。

 

「クラフト、指示するからタイミングに合わせて投げて!」

 

「で、でも、巻き込むって」

 

「いいからっ!」

 

まずフィンブルさん。

 

装備が薄いから、傷が酷いかと思ったが、その通りだった。皮鎧だと、どうにもならかったようで、脇腹を激しく抉られている。傷薬をねじ込むと、呻く。

 

「くっそお、面目ねえ……」

 

「大丈夫、ターゲットを分散してくれたから、みんな生きてます!」

 

「……」

 

傷口が見る間に回復していくが、血をたくさん失ったのだ。いきなり戦闘するのは無理だろう。できても短時間だ。

 

続いてマティアス。

 

鎧は今の錐を防ぎ抜いていたが、目を回している。

 

リディーを庇ってくれたのだから、どうこうはいえない。

 

うんうん言いながら引っ張って、何とか擱座しなかった荷車の影に。

 

アンパサンドさんは。

 

多分相当に本気なのだろう。

 

無数の蔓を振るい、猛攻を仕掛けて来ている植物相手に、一歩も引かずに接近戦を挑んでいる。今の様子からして、かなり強い相手だ。それでも。

 

一発でも貰えば終わり。

 

その言葉が耳に残っている。

 

危険すぎる戦い。

 

分かっている。だから、一秒でも早く援護しなければならないのだ。

 

詠唱開始。

 

ハンドサインも出す。

 

そして、詠唱を終えると、地面に手を突いた。

 

筋力強化。

 

対象はフィンブルさん。

 

ハンドサイン通り、フィンブルさんがハルバードを投げ。

 

残像を作ったアンパサンドさんが、すり足で真横に逃れる。

 

植物のど真ん中に、ハルバードが突き刺さるが、貫通まで行かない。強烈に堅い、と言う事だ。

 

まずい。少なくともスールの銃なんて役に立つ相手じゃない。だが、此方にはクラフトがある。

 

続けてスールがクラフトを投擲。セーフティ解除。

 

鬱陶しそうに植物が触手で払った瞬間に爆破。

 

触手を数本吹っ飛ばすが。

 

しかし、植物は即座にそれを再生、また凄まじい声を上げはじめる。

 

まずい。同じ広域攻撃魔術の詠唱だ。

 

アンパサンドさんが、真上から蹴りを叩き込み、植物の動きを一瞬阻害するが、それが更に危険な結末を呼ぶ。

 

どうやら動きを読んでいたらしい植物が。

 

アンパサンドさんを、無造作に払ったのである。

 

飛び退いたのは見えたが、今のは多分擦った。

 

一撃でも貰えば終わり。

 

そう言っていたのを思い出す。しかも歴戦のアンパサンドさんが擦った。そんな敵だと言う事だ。

 

リディーは、その時。驚くほど冷静になっていた。

 

ハンドサイン通りに、スールが動く。

 

フィンブルさんも。

 

そして詠唱を終えたリディーが、地面に手を突く。

 

植物が、錐をぶっ放すが。

 

一瞬早く、筋力強化の支援を受けたスールが、錐の飽和攻撃を受けたアンパサンドさんを抱えて死地から飛び退く。間一髪間に合い、アンパサンドさんが全身串刺しにされるのを阻止。

 

立て続けに、飛びかかったフィンブルさんが、文字通り獣のような唸り声を上げて、ハルバードを更に押し込む。

 

傷口を抉られ、植物がうなりを上げながら触手を振るうが。

 

その口に。

 

スールが投げたクラフトが飛び込んでいた。

 

起爆。

 

流石にこれは、ひとたまりもない。

 

煙を上げながら、横倒しになる巨大な植物。

 

呼吸を整えながら、叫ぶ。

 

「トリアージ! 急いで!」

 

普段ならこう言う状況で右往左往するスールには期待していなかったが。スールは煤だらけのまま、アンパサンドさんを担いで連れてくる。一皮剥けたのかも知れない。フィンブルさんも傷だらけだ。爆発は植物が全部受けたとは言え、かなり耳も調子が悪い様子である。

 

二人ともクラフトの爆発が近かったのだ。

 

まあこうなるのも仕方が無い。

 

森の中に待避。

 

ファンガスが出たらもう諦めるしかないが、幸い奴の影はなかった。

 

間もなくマティアスさんが目を覚まし。

 

足の辺りを派手に抉られたのに、眉一つ動かしていないアンパサンドさんを見て、絶句していた。

 

「おい、リディー、スー! 誰か死んでないだろうな!」

 

「今日はこれで引き上げます」

 

「……」

 

「死者はないです」

 

マティアスさんは、気絶していたことで悔しそうだったが。

 

あれは仕方が無い。

 

むしろ助けてくれた事に、礼を言わなければならない。

 

強めの獣が相手になると、魔族の騎士が中心になった部隊でも、返り討ちに遭うことがある。

 

その言葉の意味を、嫌と言うほどリディーは思い知らされていた。

 

とりあえず、アンパサンドさんの足。擦ったときに抉られた傷は。かろうじて回復させたが。

 

しかし機動戦をいきなりやるのは止めた方が良いだろう。

 

街も近いのだから。

 

一旦引き上げる事にする。

 

別に一日でアードラ四羽を仕留めろという話ではなかったのだ。

 

二回に分けても問題は無いし。

 

フィンブルさんに払う報酬の事を考えても、アードラ四羽を仕留めればお釣りが来る。

 

色々思うところがあったのか。

 

マティアスさんが、植物の残骸を抱えて引きずって来た。フィンブルさんもそれを手伝う。

 

後は、二人が黙々と植物を解体。

 

かなり良質な木材や良くしなる蔓。それに薬草としても使えそうな、みずみずしい草を解体しつつ渡してくれた。また内部から採れた体液はとても澄んでいて、甘い匂いがした。硝子瓶に体液は入れられるだけ入れる。

 

今日は引き上げだ。

 

それ以上は、言う事も無かった。

 

継戦は不可能。

 

誰の目にも、それは明らかだった。

 

悔しいけれど。

 

これが現実。

 

もっと強かったら、あんな奴、好きかってさせなかった。

 

他の錬金術師だったら、あんな奴、簡単にやっつけていた。

 

そう思うと、涙が出そうになる。

 

アンパサンドさんだって死ぬ所だったのだ。回避はできたかも知れないが、怪我は更に悪化していただろう状況だった。

 

無理は絶対にできなかった。

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