暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、不思議な絵画の深奥

Sランクのアトリエ昇格の連絡は、なかなか来なかった。むしろ、レポートを出しに行った時申請した、アンパサンドさんとマティアスさんの護衛の日時の方が先に来てしまったくらいである。

 

いずれにしても、フィンブルさんにも声を掛け。

 

お父さんも連れて。

 

六人で、ネージュの要塞に出向く。

 

お父さんもこの絵には入った事があったのだろう。

 

懐かしそうに目を細めて、周囲を見ていた。

 

アンパサンドさんが、絵に入る前に注意を促していた。ネージュはあれでかなり気むずかしいと。

 

もう一度の話に応じてくれるかは分からないし、気を付けるようにとも。

 

それは分かっている。

 

リディーだって、ネージュの立場だったら、断るかも知れない。

 

ともかく、要塞の入り口に立つと、中に呼びかける。

 

残留思念について、話がしたいと。

 

もう此処には来るなと言われたけれど。どうしても大事な人を助ける必要が生じて。知恵を借りたいのだと。

 

しばし、待つ。

 

沈黙だけしか帰って来ないけれど。此処はネージュの空間だ。悪態とかをつくことは許されない。相手に全て把握されているし。何よりも、ネージュという偉大な錬金術師の尊厳を全て破壊したのはアダレットの民だ。ネージュの恨みも、アダレットへの不信も、嫌と言うほど分かる。

 

かなり待ったが。

 

やがて根負けしたのか。

 

要塞の扉が開く。

 

そして、複数の鎧の兵士が、威圧的な足音と共に出てきて、此方を囲む。そして、最後にネージュが、自分自身の足で、姿を見せた。要塞からは出ずに、その中に留まったが。

 

「面倒事はごめんよ。 さっさと話しなさい」

 

「不思議な絵画に取り残された残留思念を安定させる方法について、技術的な話を聞かせて貰いたいんです。 それだけ聞かせて貰えれば、すぐに帰ります」

 

「……ひょっとして、干渉力が弱まった黒く染まった絵に関係している事か」

 

「!」

 

流石だ。

 

此処にいながら知っているのか。

 

確かにあの黒い絵からは、他の絵へ悪しき影響が漏れていた、と言う話だが。ネージュもそれは把握していたと言う事か。

 

そうなると、不思議な絵画が黒く染まることは、想像以上に危険な事なのかも知れない。一つが黒く染まれば、連鎖的に他も染まっていく可能性がある。

 

それは、困る。

 

どの絵も、それぞれ描いた錬金術師の心の映し鏡だった。

 

それに氷の世界の絵に至っては。

 

彼処は、ヒト族の故郷が罪を犯した世界とつながってもいる。

 

彼処が塗りつぶされることなど、絶対にあってはならないだろう。

 

顎をしゃくる。

 

お父さんが頷いて、前に出る。

 

専門的な話を始めるので、メモを取る。その間、ずっとアンパサンドさん達は、周囲に対して睨みを利かせ、護衛を続けてくれていた。

 

「なるほど、やはりエーテルが足りないのか……」

 

「貴方の気配で分かったけれども、恐らく貴方の絵にいる残留思念そのものは、既に安定状態にある。 問題は安定して弱って行っている事。 それを覆すには、不思議な絵画の中で、直接高濃度のエーテルの凝縮体を使う必要がある。 レシピはくれてやるから、勝手に使うといい」

 

紙切れが落ちてくる。

 

受け取ると、思わず呻いた。

 

今でさえ、理解出来るかかなり厳しいレシピだ。流石にネージュ。戦闘力だけなら並べたかも知れないけれど。

 

まだこの人の方が、リディーやスールよりずっと上の錬金術師である事は確実だ。

 

いずれにしても、帰ってから。

 

お父さんと連携して動く必要がある。

 

後は黒い絵の方に残っている残留思念の方だが。それについては、ネージュが厳しいと言った。

 

「そもその黒い絵は数百年は経過しているはずよ。 其所に捕らわれた残留思念となると、引きはがすのは厳しいし、今の状態で安定してしまっている可能性が高い」

 

「そんな、何か手はありませんか」

 

「あるにはある」

 

新しく不思議な絵画を作り。

 

其所に説得して移動して貰う、という事らしい。

 

ただし、相応に覚悟はいると言う。

 

さっき貰ったレシピを応用すれば、残留思念の安定は出来る。それを利用して、残留思念の移動も可能になる。

 

黒い絵からまず切り離す。

 

残留思念を安定させる。

 

そして別の不思議な絵に住んで貰う。

 

その三つを、こなす必要があるという事だった。

 

もちろんだが、重要なのは此処からで。

 

そもそも残留思念を説得する必要もある。あの黒い絵に捕らわれている残留思念に、其所までする必要があるのかと聞かれて。

 

リディーはあると応えた。

 

「あの人は充分過ぎる程苦しんだと思います。 あの人くらい助けられなくて、今後の大望何て果たせません」

 

「……そうか。 好きにするといい」

 

ネージュは、後は勝手にしろと言い残して、要塞に戻っていく。

 

頭を深々と下げた。

 

最後まで此方に武器を向けながら、鎧の兵士達も戻っていく。護衛の皆は、兵士達がいなくなるのを見計らって、すぐに絵から出るように促した。

 

皆で絵から出る。

 

アンパサンドさんが、咳払いした。

 

「ネージュのいう事は正論なのです。 本当に、其所までの手間を掛けて、あの黒い絵の残留思念を救うのですね?」

 

「アンパサンドさん。 多分今後、深淵の者に協力して動かなければならなくなると思います。 そして今後行う事業は、人を助けるという意味でも、もっともっと難易度が上がると思います」

 

「リディーの言う通りだよ。 スーちゃんも思うけれど、あの人くらい助けられなくて、今後の事は出来ないと思う」

 

「そう、ですか。 Sランクアトリエの試験結果は、まもなく届く筈なのです。 その後はまたしばらく忙しくなる可能性も高い。 もしも人助けを本気でするつもりなら、急ぐのです」

 

頷く。

 

後は、その場で解散。

 

アトリエに戻って、三人でレシピを囲んで話し合う。

 

お父さんは流石に専門家だ。レシピを読み解いて、わかり安く黒板に描いてくれる。それをゼッテルに写し取り、拡げていくと。相当な巨大レシピになった。

 

名付けて結いのパステル。

 

絵の中に存在する残留思念に対して、安定化を行う道具。

 

同時に、少し調合を変えることによって、残留思念の絵からの切り離しや。再固定も可能になる。

 

ただし残留思念への説得が絶対不可欠になるが。

 

材料に関しては、それほど難しいものはいらない。

 

不思議な絵の具の材料と。

 

後は超高密度の魔力が必要になってくる。

 

エーテルというのは、魔力の素みたいなものの事なので。

 

これに関しては、今のリディーが、全力を振り絞れば解決する事はそれほど難しくはない。

 

調合については試行錯誤がいるが。

 

今まで作ってきたハルモニウムやヴェルベティスに比べればどうと言うことも無いし。

 

多分、今までお母さんのいる絵を修復していたのだろう。

 

お父さんが、エーテルの固定化技術についてはかなり研究してくれていて。

 

レシピについて、かなり捕捉を入れてもくれた。

 

これならば、出来る。ただし、一週間はかかるが。

 

今後、ソフィーさんが動くと、多分身動きが取れなくなるほど厳しい状況が来る可能性が高い。

 

時間は想像以上にないと思わないといけない。

 

すぐに手分けして動く。

 

それに、お父さんには。黒い絵の話をして。あの錬金術師の残留思念が過ごしやすい、穏やかな新しい不思議な絵画も描いてほしい。これについては、快くお父さんは引き受けてくれた。

 

あの究極の孤独にいた錬金術師を。

 

救えるだろうか。

 

救えなくて、この世界の詰みなんか打破できるか。

 

そう言い聞かせると、リディーはレシピに目を通して。まずはフローチャートから作り始める。

 

タスクはざっと百を超えるが。

 

難易度そのものはハルモニウムほどではない。

 

時間さえあれば、行ける。

 

頷くと、順番にタスクを処理し始める。三つある錬金釜を使って、効率よく三人で動く。

 

お母さんを救う。

 

そしてあの黒い絵の錬金術師も救う。

 

時間との勝負が。今、始まった。

 

 

 

(続)




此処からは残留思念となったオネットさんの救出作戦です。

原作でトゥルーエンドを見る為に必要なあれを作りにいきます。
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