暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ 作:dwwyakata@2024
不安定な残留思念の固定化。
それは既に神域に片手を掛けている現状の双子でも、容易な話ではないのです。
昔話ではお約束になっている事が幾つもある。
例えば強くて格好良い騎士が助けるのは、いつも美しいお姫様だ。
だが、では聞きたい。
汚くて醜いホームレスには、救われる事は許されないのか。
顔が醜くて体が臭い人には、救われる余地はないのか。
スールは違うと応えられる。
例え相手が、生理的に受けつけない姿形をしていても。
助けを求めて来て。助けられるのなら。助けなければならない。
昔のスールだったら。見た瞬間、キモイとか近寄らないでとか言って、相手を蹴ったりしたかも知れない。
だが今のスールは違う。
そんな愚かしい存在では無い。
タスクを順番にこなして行く。その途中で、お城に物資を納品。この間、黒の地平線で回収してきた素材。それにネージュの要塞でも素材は回収した。納入する物資の材料は充分に確保出来ている。だからそれ自体は難しく無かった。今作っている、「結いのパステル」に比べれば、極めて簡単だ。
まず、黒の地平線に捕らわれている残留思念を救い出す。
お父さんは、また一つ、新しい不思議な絵画を描いてくれている。
見ると、穏やかな湖と、湖畔の別荘の世界だ。
緑が豊かで。
凶暴な獣もいない、静かで余生を過ごすにはもってこいの世界。レンプライアから身さえ守れれば、後は此処で過ごすのも理想だろう。
そう思えるほど、静かで優しい世界だった。
だが、お父さんもネージュと話していたが。
お父さんには、不思議な絵を安定させるだけの魔力が足りていない。
勿論、「王」がソフィーさんによって封印された今は。できたての不思議な絵画に強力なレンプライアが湧くとは思えないけれども。
それでも、処置は必要だろう。
時々進捗について打ち合わせをしながら、お父さんと一緒に不思議な絵の具を改良し。
それをベースに、残留思念の完全固定を行うための、道具を作る。
魔力を結晶化し、そして利便性を持たせる。
ネージュのように、不思議な絵画の研究に人生を注いでいた人ならば、簡単にできるかも知れないが。
ノウハウを聞かされて。
そしてハルモニウムを作れるようになった今ですら、難しいと感じる。
リディーと交代しながらハルモニウム釜を使い。休憩を挟みながら、タスクを順番に潰して行く。
時々地下から上がってくるお父さんと打ち合わせ。
昔はお父さんを軽蔑していたスール。もっと酷く嫌っていたリディー。
だが、今ではもうそれもない。
お互いの事をしっかり話しあって。
作業を的確に、無駄がないようにこなしていた。
お父さんは、もうこれ以上先には行けないとぼやいていた事もあったけれど。
不思議な絵画やお薬に限れば、まだ伸びしろがあるのでは無いかと、スールは思う。
賢者の石を作るのは厳しいと思うけれど。
それでも、少なくとも千切れた手足くらいなら簡単にくっつくお薬も作れるし。その質もどんどん上がっている。
お父さんの錬金術は。
スールから見ても、人を幸せに出来るものへと、既に昇華していると思う。
額の汗を拭いながら、またタスクをこなす。
ハルモニウムの小さな欠片を伸ばして魔法陣を刻み込む。
その全周に、六つの宝石を埋め込み。
そしてその中心部に、魔力をため込む性質を持つ鉱物を置く。極めて珍しい鉱物で、黒の地平線で採取してきたものだ。
此処に、リディーが暇を見て魔力を注ぎ込み。
そして、ある程度魔力が溜まったところで、中和剤につける。
中和剤は竜の血で作った最高品質のものである。
こうして変質させた鉱物を叩き潰し。
顔料と混ぜることで絵の具に変える。そしてその絵の具を使って、お父さんが不思議な絵に切り替える。
一週間ほど、無心で作業に没頭し。
互いに注意しながら、食事はしっかりとった。下手をすると、三人とも食事を忘れて、そのまま倒れそうだった。
実はスールとリディーに関しては、食事をもう必要としないかもしれないが。
お父さんは少なくとも違う。
だから、食事は取らなければならない。少なくとも、今の段階では、である。
お父さんが絵を描き上げた。
前にエーテルが足りなくて、補修をさんざんしなければならなかった、「天海の花園」と違い。
溢れるような魔力が感じられる。
使った顔料もいいし。
お父さんが、ハルモニウムをつかった錬金術装備を身につけている。それもあって、魔力がパンプアップされているからだ。
これならば、エーテルは充分だろう。
中に入って確認して見るが、不安定な要素はほとんど感じられない。
レンプライアも、ごくごく弱い存在だけしかいなかった。
素材もそこそこに良いものが採れるが。やはりレンプライアに汚染される方が、素材の質は上がるらしい。
ありふれたものしか、採取することは出来なかったが。
偵察した分には、護衛は不要だろう。
リディーとお父さんも呼んで、内部を調査する。これならば、心を傷つけた人が休むには、丁度良い場所に仕上がっている筈である。
それに、レンプライアはどうしても湧く。
騎士団が演習をするにも良いだろう。
これくらいの絵ならば、多分成り立ての従騎士が、演習代わりに入るのに丁度良い筈である。
勿論そのまま納品はしない。
始めて作った品だ。
まずは、アルトさんに見せに行く。何故アルトさんかというと、イル師匠が何処かに出かけていたからである。
多分堤防工事だろう。
アルトさんは、「湖畔」と名付けた絵を見ると、しばし考え込んでから、頷いてくれた。
「まあいいだろう。 僕から見るとあまりおもしろみはないが、良いんじゃないのかな」
「ありがとうございます」
「それで二人とも、この絵関連の作業が終わった後、また来るように。 二人だけでね」
口を引き結んだのはお父さんだった。
分かっている。
ソフィーさんと話した通り。
深淵の者に、正式に所属しなければならない。
これ以上、お父さんにもルーシャにも手は出させない。お母さんだってそうだ。それに、世界の詰みを打破しなければならないのも事実なのだ。
断る事は出来ない。
ならば、結いのパステルは、早々に完成させなければならないだろう。
お父さんには戻って貰う。不思議な絵画を描いた直後だ。消耗が激しいのだから、休んで貰いたい。お父さんは無言で頷くと、凄く眠そうな顔で、家に戻っていった。あの様子だと、二日くらいは寝たままかも知れない。
回復魔術が常時発動する装備も渡してはあったのだが。それでも取り切れないくらい疲弊していたと言う事だ。
今後不思議な絵画を描くときは、気を付けなければならないなと、スールは思った。
不思議な絵画「湖畔」は、お城に納品する。
これについては、お父さんと話し合っての結果である。
そもそも、レンプライアが常時湧く以上、個人で所有しておくのはあまり好ましい事では無い。
弱いレンプライアばかり湧くとしても。放置しておけば強くなるし。引き継ぎが行われないまま地下倉庫にでも放置されたら、最悪の事態を招きかねないからだ。
受付の役人は、モノクロームのホムでは無かったが。しかしながら、不思議な絵画については聞いた事があったのだろう。
すぐに上位の役人を呼びに行った。
今日はあのモノクロームのホムの役人はいないらしく。
大臣らしいヒト族の役人が来る。
ナマズ髭のおじさんだが、決して傲慢不遜ではなかった。恐らくSランク内定している錬金術師が相手だから、だろう。
ミレイユ女王に、しっかり教育されているのかも知れない。
「これが不思議な絵画。 ふむ……」
「地下のエントランスにお願いします。 扱いについては、他の絵画と同じですが、まだ出来たばかりの不思議な絵画ですので、内部には「弱い」レンプライアが湧きます」
意味は伝わっただろうか。
今、騎士団は増員したてで、質の低下に困っていると聞いている。
鷹揚に頷くと、大臣は何人か錬金術の知識があるらしい役人を連れて来て、話をしていたが。
ほどなく咳払いしながら戻って来た。
「あー、おほんおほん。 それでは有り難く受け取らせて貰う。 納品、ご苦労であったな」
「はい。 それでは」
「丁寧な保管お願いします」
リディーに続けてスールも頭を下げる。
余計な事を言ったかな、とスールは思ったけれど。
リディーに、城を出た後何も言われなかったので。特に問題はなかったのだろう。
アトリエに戻ったのと、丁度同時に。
マティアスが歩いて来るのが見える。
ちょっと窮屈そうに、皮鎧から騎士鎧に替えたフィンブル兄が、一緒について歩いて来ている。
従騎士の勲章では無い。
というと、実力を見込まれて、最初から騎士採用された、ということか。
前は確か、誰でも従騎士からだったはずだが。
人数を増やしたことで、騎士団は質の低下に悩まされていると聞いている。或いは、ミレイユ女王が、今回の件で丁度良いと、実力者を抜擢する仕組みを作ったのかも知れない。いずれにしても、フィンブル兄は騎士三位として、今後は独立してミレイユ女王の影として盾として動く、マティアスの腹心となるわけだ。
「おーっす。 丁度城から帰りか?」
「マティアスさんは、お仕事ですか?」
「そういうことだ。 アトリエで話そうぜ」
皆でアトリエに入る。
換気が足りないので、ちょっと絵の具の臭いが強い。リディーが窓を開けて、スールは換気のために作った道具を発動。
風の魔術を起こして、外と空気を満遍なく入れ換えるもので。
バステトさんと相談して、弱い弱い風の魔術を起こす魔法陣を学んだ。
スールも、魔力を得たのだ。
いつまでも、魔術はリディー頼みではいけない。
こういう簡単で、しかも利便性が強い道具からと思って、始めたのである。
なお形状はキノコに似ていて。
赤いキノコの傘の部分から風がよわいよわい竜巻のように渦巻いて。外と空気を入れ換えていくのだ。
心地よい風が、絵の具の強い臭いを外に捨てていく。
夏場、涼しいかも知れないな。
そう思いながら、スールは二人にソファを勧める。このソファも、少し弄った。魔術が使えるようになったので、少し反発するように仕込んでみたのだ。その結果、とても座り心地が良くなっている。
そうしている内に、リディーがお茶を淹れてくれた。
「もうほぼ完璧に連携できているな」
「フィンブル兄、おつきの仕事正式に始めたの?」
「まあ騎士になったからにはな。 それにそもそも、「閣下」はかなり立場的に危うい状態だ。 俺は閣下の護衛だが、アンパサンドどのは公認スパイだ」
「へえ……」
マティアスが居心地悪そうに頭を掻く。
まあ、アンパサンドさんは最初からそういう所はあった。だから、マティアスも「アン」と愛称で呼んではいても、終始怖がっていたのだろう。アンパサンドさんも、自分の役割を理解して、怖がられるように振る舞っていたのが今になって見れば分かる。
お茶を飲んで一息つくと。
スクロールを渡してくるマティアス。
開いて確認する。
Sランク昇格の通知だった。
長かった。
とうとう、Sランクだ。一応これで、お母さんに報告にはいける。でも、その前にやらなければならない事がある。
それと、義務についても確認する必要がある。
「ええと……今後国家危急の際には、最前線で騎士団部隊の指揮を執る権限を認める?」
「それなんだけれどな。 あのファルギオル戦での反省を踏まえて、姉貴が会議で通した内容なんだよ。 武門の国なんていっても、騎士だけじゃドラゴンにも邪神にも勝てないし、ネームド相手でも大きな被害を出す。 それならば、錬金術師に危険な相手の場合は、いっそ最初から部隊の指揮権を渡すって話になってな」
なおその部隊は、一部隊だけ特別編成されているという。
その内アンパサンドさんが責任者になるらしいのだが。
基本的に魔族の隊長と、騎士九名、従騎士二十名で編成される予定らしい。(アンパサンドさんの就任は半年後だが)副団長が責任者になると言う事は、アダレットの本気ぶりが窺える。
確かに、今までがおかしすぎたと言えばそれまでなのだが。
今回の件を通すのは大変だっただろう。
アダレットは、ネージュを国家レベルで迫害し。それ以降も錬金術師を軽視する政策を採り続けた。
ミレイユ女王の代に入ってから全てが変わった。
勿論、彼女だけの力ではない筈だ。
深淵の者が影から相当にバックアップしているのだろうなとも思った。
「勿論死者が出た場合は責任も取らなければならない。 それについては、理解してくれよ」
「分かってる。 スーちゃん達が出るときは、一人だって死なせはしないよ」
「頼もしいぜ」
「マティアスは、今後戦いには出てくれないの?」
少し考えた後。
マティアスは、頷いた。
戦いには出ると言う。
基本的に、今後危険な相手が出現した場合は、マティアスが前線に。ミレイユ女王が総指揮を、という方法をとるらしい。
更に言うと、インフラ工事関連が完了したら、三傑は一度アダレットを離れるらしい。
三傑がアダレットを離れれば、当たり前だがアルトさんとプラフタさんもいなくなる。それに、パイモンさんも故郷に戻るはずだ。
リディーとスール、ルーシャだけしか残らない。
正確には、殆ど全員が、拠点を深淵の者に移すだけだろうし。
リディーとスールも、本籍はそちらになる。
ルーシャももう粉を掛けられているはず。
アダレットとしては、危急時の人員を確保するのに必死だろう。ミレイユ女王は、それを理解しているのかも知れなかった。
「というわけで、まだ当分は声を掛けられたら護衛には出るから安心してくれ」
「うん、頼りにしてる」
「スーも素直になったなあ」
「そう? むしろ今はさ、自分が静かすぎて、ね」
フィンブル兄が、敢えて茶を口に入れた。
多分意味を知っているから、なのだろう。
ともかく、Sランクで増えたのは責任だけ。勿論その責任も、今ならこなすことは出来る。
流石に邪神が相手になるとまだ厳しいが。
リディーとスールの実力はまだ伸びる。
これについては、実力の上限をまだ感じていない。客観的な事実である。まだ伸びるなら、その内強烈な弱体化をかけなくとも、邪神とやり合えるようになる筈だ。
ただし、本音を言えば。
Aランクでも結構負担が大きかった事もある。
Sランクでの追加負担が、事実上強敵との戦闘でかり出される事だけになったのは有り難い。
「それじゃ、俺様上がるわ。 出るときは早めに声かけてくれな」
「ねえマティアス、ルーシャとパイモンさんは合格したの?」
「それは機密だから言えない。 本人に聞くんだな」
「それもそうか」
マティアスとフィンブル兄を見送る。フィンブル兄はあまり機嫌が良く無さそうだったけれど。
騎士鎧は、思ったよりずっと馴染んでいた。
お父さんは地下室で寝ているのを確認。
今のうちに、タスクを潰しておく。
負担が思ったより増えなかったこと。
それに、もうすぐすってんてんに近かった資金が振り込まれることを考えると、少しばかりありがたい。
作業をまた黙々と進める。
予想通りというか。
お父さんは、夜中近くになるまで起きてこなかった。
結いのパステルは、ネージュに聞かされたとおり、超圧縮した魔力そのものである。固形化し、扱いやすくしたものと考えるとほぼ間違っていない。任意に魔力、要するにエーテルを与える事によって、絵の中に生きている残留思念を固定化安定化させる。場合によっては、移動も可能にする。
実の所、残留思念の実力次第では、不思議な絵画間の移動は難しくはないらしい。
これは前お母さんがやっていたようだし。
ネージュも他の不思議な絵画の事を把握していたこともある。
それらからも明らかである。
お父さんと話し合い、タスクを潰し、内容を確認しながら作業を進めていく。どうせソフィーさんがじきに無理難題を口にしてくる。
それまでに、やる事はこなしておかなければならない。
お父さんも、リディーとスールが焦っているのには気付いている様子で。それで、多少の無理はしているようだった。
役人がアトリエに来る。お父さん宛だったから、多分お薬だろう。応接しているのを横目に調合を進める。
最近は換気装置を定期的に使っているので、絵の具の臭いも籠もらなくなっている。
役人も嫌そうにはしていなかった。
四半刻ほどで役人は戻る。
お父さんはやれやれといいながら、話をしてくれた。
「「湖畔」な。 確認したが、いつもの振り込み金額を次だけ倍額にすることで決まったよ」
「んー、思ったより安い?」
「内部で其所まで良い素材が手に入らない事や、レンプライアの駆除が結局は必要になるのが原因らしいな。 ただ、見習いの従騎士や、有志の傭兵に対する訓練施設としても使用したいらしい」
まあ、それくらいなら。あの黒の地平線に取り残された錬金術師も困る事はないだろう。
湖畔にある別荘は、そこそこ広い施設になっているが。内部には盗んでいくようなものは特にない。
不届きな考えを起こす傭兵などはいるかも知れないが。
強盗しようにも盗るものがないし。
そも残留思念を殺すのは難しいだろう。
残留思念が静かに暮らすためだけの別荘である、と言う話は役人にしてあり。入る場合には周知するようにもマニュアルには書いてある。
不思議な絵画で問題を起こせば、色々面倒な事になる。何しろ価値が国宝級だから、である。
それを考えれば。流石に内部でバカをする輩はいないだろう。
問題は、不思議な絵画そのものを盗もうとする輩だが。
それについては、強力極まりない防犯魔術、勿論錬金術で超強化済みのものが掛かっているので大丈夫だ。
今回役人が来たのは、お金の支払いと、お薬の要求。それに「湖畔」に関する扱いの確認で。
役人は懸念していたという。
「他の絵では基本的に錬金術師が一緒に入ったから良いんだが、「湖畔」は素人向けだというのをあの役人は気にしていてな。 色々と聞かれたよ」
「なら、結いのパステルを活用する?」
「……どう活用する」
「ガーディアンでも作ろうか」
ふむと、お父さんは唸る。
そもそも内部の管理が面倒なら、ガーディアンを作るのは手だ。ネージュの要塞では、強力なガーディアンが守りを固め、何よりネージュ自身がレンプライアを独自の方法で駆除していた。
ああいう仕組みを、内部に後付で作れるかも知れない。
結いのパステルそのものは強大な魔力の塊に過ぎないが。
そも不思議な絵画の世界は、それぞれの心の世界に等しい。
ならば。其所では様々な応用が聞く。
残留思念の固定化が可能なら。
ガーディアンの構築も可能なのではあるまいか。
問題は、稼働するための仕組みだが。
リディーがそれについては考えると言ってくれたので、任せる。お父さんも頷くと、また手分けして作業に戻った。
黙々と、作業を続ける。
時々、お母さんの事を考える。まだ時間は充分にあるはず。そして残留思念とは言え人命が掛かっている以上、失敗は許されない。
順番は決まった。
むしろガーディアンの作成という発想は、僥倖だったかも知れない。そも、実験は失敗が許されなかったのだから。
まずガーディアンを作る。これで結いのパステルの試運転を徹底的に行う。
その後ノウハウを反映し、黒の地平線にいる残留思念を救助して、湖畔に移動して貰う。
そして最後に。お母さんの残り時間を延ばす。
最後に関しては、永続で延ばしたい。
元々お母さんは優れた騎士だった。お母さん自身の力を戻せば、触ることはできないにしても。
レンプライアに対しては、駆除くらいは出来る筈。
お母さんが対応出来なくなったのは、色々な諸要因があったからで。力を取り戻せば、あの「天海の花園」のガーディアンそのものになる事が出来るはずだ。それならば。安心である。
お父さんが、不思議な絵画を完成させるのに使った、超高密度魔力が籠もった不思議な絵の具をベースにして。
結いのパステルを作り上げるまでに一週間。
その三日前に、タスクを見てアンパサンドさんとフィンブル兄、マティアスにも声を掛けておいた。
ルーシャにも声を掛ける。
ルーシャは、少し様子がおかしかった。
黒の地平線で非常に辛そうにしていたし、行かないという手もある。だけれども、ルーシャは静かに首を横に振った。行くというのである。ならば、止める事は出来ない。
それにしても、何か疲れ果てているように見える。
何かあったのだろうか。
ルーシャが行くというのなら、戦力も充分。昔も強かったが、今のルーシャは充分以上に頼りになる。とっくにルーシャのお父さんを超えているだろう。
黒の地平線も、普段は騎士団が演習に使っていると聞く。この間のような大きいレンプライアばかりが出ると言うことはないだろう。
最後のタスクを処理。
出来上がったのは。
クレヨンのように固めた、不思議な絵の具だった。
後はこれで、絵の中にて魔法陣を描けば良い。描く魔法陣についても、入念にリディーが検証済みである。魔法陣を描くのは、強い魔力を内蔵した石材だ。この間、黒の地平線で入手した。
これを不思議な絵画に持ち込み、魔法陣を描いて埋め込むことで、様々な効果を発生させられるはずである。
どうにか、間に合った。
カラフルなパステルは、一見すると子供用のお絵かき具(ただし実際のパステルは相応の高級品である)にも見える。
だがこれは、リディーとスールが、アドバイスを受けながら。お父さんの助けも借りて作った、最高の道具の一つである。
まず最初の実験にはお父さんにも来て貰う。ガーディアンがどうなるかは分からないが、暴走の時に備えて戦闘メンバーも連れて行く。
予定通り、皆はお城に集まってくれていた。
ソフィーさんが何を言い出すか分からない今。
こうして、この面子で集まるのも。
いつまで続けられるか、分からなかった。