暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、黄昏

深淵の者本部。既に、幹部が全て集まっていた。幹部が全て集まる規模の会議は久しぶりである。

 

ソフィーが招集したのだが。

 

食客、外部顧問という形になるソフィーも、あまり横柄に振る舞う事は出来ない。というか、しない。

 

大事な話がある時にだけ、こうやって人を集める。

 

それを知っているからだろう。誰も、ソフィーに文句を言う者はいなかった。

 

こういった会議では、最初にもっとも重要な議題を扱う。

 

そうやって精神を引き締めるのである。

 

ソフィーも、そのやり方を、今回も踏襲した。

 

「双子が賢者の石の作成を出来る実力に到達しました」

 

「おおっ!」

 

声を上げたのはイフリータである。

 

この世界の仕組みと理不尽を最も憎んでいた、赤い体を持つ魔族は。怒りそのもののような体色同様の激情家だが。今は、着実に事が進んでいる事を、本気で喜んでいるのが分かった。

 

ティオグレンも、同じように頷いている。

 

ケンタウルス族の長として。最強の獣人族である彼も。パルミラ信仰をしている獣人族の村を管轄しつつ、其所から人材を深淵の者に取り込んでいる。

 

人材は幾らでもいる。

 

それをいつもルアードが口にしているから、皆人材の育成には熱心だ。

 

一部の相手。例えば双子のように、徹底的に鍛え上げないと駄目な人材以外は、むしろ長所を伸ばすやり方で、丁寧に育成を行っている。そして人材の到達点を見極めると、それ以上は無理をさせず、その時点で出来る事をやらせる。

 

応用が出来なければ駄目だとか。

 

教えなくても出来なければ駄目だとか。

 

そう言った寝言は言わない。

 

きちんと教えれば、一つの事については極められる者もいるし。一つに特化している人材の方が、何でも中途半端に出来るような輩よりもずっと役に立てるのである。

 

だからこそ。スペシャリストの誕生は好ましい。

 

「恐らく一月は掛かるでしょうね。 それともう一人……」

 

ソフィーが顎をしゃくると。

 

真っ青になっているルーシャちゃんが、この場に入ってくる。フィリスちゃんが、うふふと楽しそうに声を上げ。イルメリアちゃんが、唇を引き結んで無表情になる。

 

「ルーシャちゃんも、同じように賢者の石を作成して貰います。 双子の倍は時間が掛かるかな……。 プラフタ、手伝ってあげてくれる?」

 

「分かりました。 しかし驚きました。 この子が、此処まで育つとは……」

 

「仮説だがね」

 

仕事を一旦切り上げて会議に出てきたシャドウロードが、咳払いする。

 

彼女は、ルーシャを容赦の無い目で見ながら言う。

 

「今まで貰った他の世界のデータを見る限り、どうも叩けば叩くほど伸びる者と、そうでない者がいるらしいんだよ。 無論精神論とかそういうのではなくて、単純にそういう性質であるらしい。 その正体は恐らくだが、遺伝的な特性で、ごく希に現れるもの……しかも今まで着目していなかった部分に出るんだろうね」

 

「彼女はそうであったと」

 

「恐らくは。 命に替えても守らなければならない双子を守るために、必死に努力を続けるだけでは無く、「あらゆる意味で」ストレスを受け続け、それでも死ななかったことが、現在の実力につながっているんだろうさ」

 

そういって、シャドウロードはソフィーを一瞥する。

 

散々虐めて、こんなになるまで壊して。

 

そう責められている気がしたが。

 

肩をすくめるだけだ。

 

世界の詰みをどうにも出来ない状態だ。

 

手段なんぞ選んでいられない。

 

もともとソフィーは、世界の理の外側にいた存在といえる。生まれながらにギフテッドを持ち。強い魔術の力も最初から持っていた。多分突然変異だったのだろうけれど。いずれにしても特異点である。これは驕りでは無く、単なる客観的事実である。自慢するつもりもない。

 

「プラフタ、それとルアードさん」

 

「うむ。 今後我等も、この体にて、賢者の石を作成する」

 

「お……おお!」

 

興奮した声が上がった。

 

カリスマであるルアードだが。そもそも今までは様々な要因もあって、賢者の石を作る事が出来なかった。

 

だが、錬金術を使えるように調整した新しい体。

 

それに、ようやく仲直りすることが出来た500年の時を経た比翼であるプラフタの存在もある。

 

そしてプラフタは、ついに今までの試行錯誤の結果、概念を変更するという驚天の技術によって、錬金術が出来るヒトの体を取り戻した。

 

二人が揃っていれば。賢者の石は作れる筈だ。

 

「今まで三人だった超越者が、一気に五人増えるという事なのです?」

 

「そういうことだよアルファさん」

 

「素晴らしい。 ただ、アルファ商会はそろそろ金欠で死にそうなのです」

 

「ふふ、ごめんなさい。 ……少し地下の深くに金鉱脈があるのを見つけてね、其所の権利を全て譲るから許して貰えるかな」

 

頷くアルファさん。

 

まあ、再建策があるのなら、この人は文句を言わないだろう。

 

さて、此処までで重要議題は終わりだ。

 

ルーシャには、末席に座って貰い。順番に以降の議題をクリアしていく。

 

毒薔薇の報告はごく穏当だ。

 

既に苛烈な作業は終わっているのだから当たり前か。

 

「アダレットですが、ほぼ腐敗官吏の掃除は終わりました。 抜擢した若手についても、監視は続けています」

 

「次」

 

「ラスティンですが、ライゼンベルグでの人員管理は佳境です。 元々連合国家という事もあって、役人は非常に権力が弱く、その分不正に弱いようですね。 全員を粛正するとライゼンベルグが崩壊してしまうので、少しずつ切り崩しと浄化作戦を行っていますが、後10年は掛かるでしょう」

 

「ふむ、やむを得ぬか。 パメラ、そのまま続けてくれ」

 

ルアードの言葉に頷くと、パメラは席に着く。

 

見知った顔が深淵の者幹部だと最初に知ったとき。ルーシャちゃんはどう思ったのだろう。それがソフィーには興味深いが。まあどうでもいいか。

 

続けて、オスカーが席を立つ。

 

「アダレットのインフラ整備だが、あらかた完了したぜ。 ただし主要街道だけだ。 おいらから見ても、現状がちょっとばかり酷すぎる。 末端部分へのインフラ構築は、まだ数年はかかると見ても良い」

 

「そのまま頼めるかな」

 

「ああ、おいらも植物たちが喜ぶ世界になってくれれば嬉しいから手伝うけどな。 ただな、植物に悪さをする奴がどうしてもいる。 それは、深淵の者でどうにかしてくれよ」

 

「うむ、それについては周知を徹底する。 問題は、緑化が済んだ直後は言う事は聞くだろうが、世代を跨ぐとどうしても……と言う事だな」

 

会議は徐々に優先度が下がっていくが。

 

それでも、重要な事ばかりが扱われる。

 

間もなく最後の議題が終わり、会議が解散。皆、めいめい持ち場に戻る。深淵の者幹部は皆忙しい。

 

人間を止めていても、それに代わりは無いのである。

 

シャドウロードが、ルーシャちゃんとソフィーを呼び止めた。

 

「特異点。 それと其所のひよっこも聞いていけ。 まだ検証段階なんだが、先に報告しておこうと思ってね」

 

「お願いします」

 

「多分だが、今世界にいる人間達は、なんぼ鍛え抜いても無理だよ。 上手く行ったケースを検証したんだが、共通して「変化」が加えられている」

 

「……問題はどう変化を加えるか、と」

 

頷くシャドウロード。

 

例えば、魔族の故郷の世界。其処に住まう知的生命体は、「唯一神」に都合良く改良され、永遠に「光を崇める」存在として作り直されていた。其処まで行くと生命体と言うよりも装置に近い気がするのだが。よく分からない。

 

そしてもう一つ。

 

ホムの故郷の世界なのだが。

 

その世界の人間達は、壊滅的な世界を生き抜くために、強くなるように己の体を改造した節があるという。

 

その改造された体の持ち主達は、様々な種族に分岐し。

 

元が同じ人間だったから、破滅を共に乗り越えた後、一緒に生きる事が出来ているようなのだ。

 

其所まではソフィーも大まかには知っているのだが。

 

なるほど。専門家が、何かしら手を入れないと絶対に無理と言ってくるか。

 

ならば、検討の余地はあるだろう。

 

ルーシャちゃんを一瞥。

 

この子もモノになれば、超越級錬金術師は八人になる。

 

それぞれ違った観点から意見を出し合い。そして今まで無かった意見を実行できる段階にまで行けば。

 

世界の詰みは、打破できる。

 

人間の可能性なんてものは有限だが。だったら可能性を増やしてやれば良い。

 

最低でも五人と思っていたが。八人の超越者を用意できれば。更に可能性は増える事になる。

 

さて、此処からだ。

 

ソフィーはほくそ笑むと、土気色の顔色をしているルーシャちゃんを連れて、アトリエを案内した。

 

賢者の石をつくるための、特別製のアトリエを。

 

既にプラフタが待っている。

 

ルーシャちゃんは、これから此処で。過酷な戦いに臨むのだ。

 

 

 

(続)







双子のために自ら地獄に落ちることを選ぶルーシャ。

手駒は多い方が良い。

ソフィー先生は、大喜びでそれを迎え入れます。
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