暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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原作でもあまりいい目にあわなかったリディーとスールの従姉妹であるルーシャ。

いわゆる和解イベントが来るのが原作では終盤も終盤で、そこまでリディーとスールの双子はこの従姉妹の愛情と庇護を理解出来ていなかったのです。

本作でもルーシャは散々な目にあいます。

なぜなら。

ソフィーが、彼女を計画に必要だと判断したからです。


1、終焉の怪物

ルーシャ=ヴォルテールは錬金術師である。それも父親が公認錬金術師で。父親の弟に当たる叔父も、というサラブレットだ。

 

錬金術師はこの世界では超常の力を持ち。

 

ものの声を聞いて。

 

ものを変質させる力を行使する。

 

ゆえに錬金術師の作る道具は驚天の効果を発揮し。

 

普通の人間四種族がどれだけ頑張っても倒せないドラゴンや邪神にも。

 

一流の戦士と、一流の錬金術師が手を組む事で対抗することが出来る。

 

若い頃から将来を嘱望されていたルーシャは。

 

父に英才教育を受け。

 

ある程度自信も持っていた。

 

だが、その自信が、一瞬で打ち砕かれていた。

 

時間が停止している。

 

そして、その停止した時間の中。

 

かつてしったる筈の自分のアトリエの中で。

 

歩み来る存在は。

 

あまりにも異次元過ぎる魔力を全身から放出し。

 

目には邪神ですら逃げ出すほどの闇を蓄え。

 

そしてルーシャは。

 

悲鳴すら上げることかなわず。

 

へたり込んで、その歩み来る絶対的死から、目を背けることさえできなかった。

 

「「はじめまして」、ルーシャ=ヴォルテール。 あたしが錬金術師だという事くらいは理解出来るかな?」

 

そういって、そのヒトの形をした邪神でも逃げ出しそうな異次元の存在は。

 

ルーシャの至近で足を止めた。

 

そして、時間が消し飛んだかのように。

 

いつの間にか後ろに回られている。

 

瞬きさえ恐怖でできなかったのに。

 

後ろから、すっと抱きしめられ。頬をなで上げられる。

 

おしっこをちびった。

 

外で戦ったネームドなんて、この威圧感に比べれば料理に使う豆粒も同じ。つまり存在しないも同じだ。

 

「あたしはソフィー=ノイエンミュラー。 はあ、こうやって名乗るのも「もう」面倒くさいなあ」

 

「な、なんなのです、わたくしを、どうするつもりですの」

 

「発言して良いって許可したっけ? そんな覚えはないんだけれど。 まあいいか」

 

きゅうと、音がして。

 

心臓が締め付けられた気がした。

 

失神しそうになる中。

 

まったく抑揚が変わらない口調で。

 

後ろでいつでもルーシャを殺せる怪物は言う。

 

「いい? 貴方の大事な馬鹿な二人の従姉妹。 あの子達を守りたかったら、必死に努力してね」

 

「い、今までだって、おばさまを失って悲しんでいる双子のために……」

 

「そんなのは努力に入らないよ。 これから双子はそのままだと確実に死ぬから。 それを防ぎたかったら、必死に強くなってね。 戦闘の経験を徹底的に積んで、馬鹿な双子が何があっても死なないようにきっちり見張って。 勿論過保護にならないように、成長も促して。 以上」

 

ふつりと。

 

気配が消えた。

 

いつのまにか時間が動き出していて。

 

それと同時に、ルーシャは後ろに倒れていた。

 

腰が完全に抜けた。

 

ルーシャが倒れて、しかも漏らしていることに気付いたメイドが、慌てて駆け寄ってくる。

 

恐怖で凍り付いているルーシャは、まともに受け答えすることもできず。

 

粗相を自分で処理することもできなかった。

 

ともかく公認錬金術師である父が慌てて薬を処方し。

 

熱を出したルーシャを介抱。

 

そしてようやく数日して落ち着いてから、話を聞かれる。

 

適当にはぐらかすことしかできなかった。

 

アレは間違いなく幻覚ではなかった。

 

何かとんでもないものが、アトリエ=ヴォルテールに現れたのだ。

 

このアダレット王都メルヴェイユに存在する、稼働している唯一のアトリエ。

 

凄腕の錬金術師であるルーシャの父と、もう一人前になったルーシャで回しているアトリエに。

 

多分何かあった事は察してくれたのだろう。

 

昔ある意味で弟と別離することになったルーシャの父は。

 

その哀しみをある程度察してくれたが。

 

しかし、ルーシャは恐くて、あの存在が何か未だに頭の中で理解出来なかったし。思い出したくも無かった。

 

そしてはっきりと悟った。

 

双子に。

 

危機が迫っていると。

 

自分より年下で。

 

半ば廃人とかしている父親の下で、荒んだ生活をしている従姉妹の双子。一族の恥さらしなんて声もあったが。ルーシャにとっては大事な妹たちだ。

 

だからこっそり生活費の支援もしていたし。

 

少しでも自活できるように、それとなく錬金術のコツも教えてきた。

 

だが、二人とも凡庸なはずだ。

 

伝説に残るような、「ものの声が聞こえる」ような超ド級の錬金術師ではないはずだし。

 

あんなバケモノに目をつけられる理由なんて無いはず。

 

ようやく精神が落ち着いてきたのは、更に数日後。

 

父に、聞く事が出来たのは。

 

夕食のタイミングだった。

 

「お父様」

 

「何かね」

 

「ソフィー=ノイエンミュラーという名前に聞き覚えはありますの?」

 

「……っ!」

 

目に見えて父が狼狽する。

 

そうか、知っているのか。

 

無言で返答を待つ。

 

しばらく狼狽していた父は。額の汗を拭った後。周囲を見回してから、教えてくれた。

 

「その名前を何処で聞いた」

 

「凄い錬金術師がいるという噂を聞きましたの」

 

「……凄いなんてものじゃない。 文字通りの特異点。 この後の時代を変えていくと言われる程の怪物錬金術師だ。 天才なんて言葉が霞むほどの凄腕だよ」

 

「それほどに……」

 

いや、そうは言ったが。

 

今の言葉でさえ、あのバケモノが本当にソフィーだったとしたら。

 

まだ足りない気がする。

 

話を聞かされる。

 

数年前、彗星のように現れたソフィー=ノイエンミュラーは。

 

錬金術師の世界に、革命を幾つももたらしたという。

 

特に大きかったのが、空間転移を自在に行う扉の普及。

 

世界中に支部を持っているアルファ商会は、この扉を積極的に導入し。他の商会にはできないネットワーク構築で、物資の搬送に圧倒的な差をつけているという。

 

幾つもの新しい道具がソフィーによってもたらされ。

 

開発されたそれらは、各地で錬金術師を驚嘆させているという。

 

ライゼンベルグの錬金術師が束になってもかなわない。

 

そんな噂さえあるそうだ。

 

「此処アダレットでも、ソフィーは訪れる度に大きな業績を残していく。 騎士団がどうにもできなかったネームドを秒で始末していったりとね」

 

「そういえば、時々アンタッチャブル扱いだったネームドが消えていたのは……」

 

「ソフィーの仕業だ。 戦う所を私も見たが、まさに神域の技だった。 私が見たのは、凶暴な上級ドラゴンと戦う所だが、拡張肉体を数千も展開してね、しかも一人で一瞬で撃ち倒していたよ」

 

「す、数千!? 上級ドラゴンを!?」

 

拡張肉体の概念はルーシャも知っていたが。

 

まさかそれほどだったとは。

 

その数千の拡張肉体、ソフィーの場合は本だそうだが。

 

その本から、神々の雷もかくやという雷撃を放ち。

 

ドラゴンを一瞬で撃ち倒す姿を見たと言う。

 

ドラゴンを。それも上級を。

 

一瞬で。

 

しかも一人で。

 

手練れの錬金術師と、その作り出した装備品で身を固めた傭兵が挑んでも勝てるか分からないドラゴンを。

 

言葉もない。

 

もしあの、時間が止まったアトリエに現れたのがソフィーだったのなら。

 

それも頷ける。

 

時間を停止する技術は、確か超高度錬金術に存在すると聞いているが。

 

まるで息をするようにそれを扱えるとしたら。

 

そんな次元の怪物しかいまい。

 

「若手には他にも凄いのがいる。 例えば、近年壊滅状態だったライゼンベルグ周辺のインフラを殆ど一人で立て直したルーキーの話は知っているかい?」

 

「ええと、はい。 確か破壊の錬金術師と名高い」

 

「そうだ。 フィリス=ミストルート。 此方も相当な実力者で、空を飛ぶ船を作ったり、邪神を撃ち倒したりしているそうだ。 インフラの構築を得意としていて、孤立している集落への安定したインフラを、幾つも完成させている。 それも超ド級の技量でだ。 彼女が救った集落は幾つもあるし、新しく開拓した安全な道も数え切れない」

 

「凄いですわね……」

 

そんな凄いのがいるのか。

 

しかも話によると、フィリスはまだ二十歳にもなっていないという。

 

それは、ルーシャでは悔しいけれどとても及ばない。

 

数年で其処まで行けるはずがない。

 

「そのフィリスと双璧と言われているのが、「創造の錬金術師」と呼ばれているイルメリア=フォン=ラインウェバーだ」

 

「ラインウェバーというと、あの錬金術三大名家と言われる!?」

 

「不思議な事に、その名家と縁を切っているそうだ。 ともかくイルメリアは非常に有能な錬金術師で、各地で創造的な活動をしている事で名を挙げていてね。 フィリスと組んで活動している事も多く、それぞれ「破壊」と「創造」を担当して動いているらしい」

 

凄い錬金術師もいたものだ。

 

話をした後。

 

大きく嘆息するルーシャの父。

 

「たった数年で、錬金術師の世界は変わりつつある。 立て続けに現れた三人の超新星が、何もかもを変えてしまった。 ここ五百年だと、かろうじて雷神ファルギオルをアダレット騎士団の先代団長と一緒に封じたネージュが比肩するレベルか。 ともかく、この三人の名前は覚えておきなさい。 ルーシャ、お前がこれ以上名を挙げたいと思うならば、超えなければならない壁だよ」

 

「分かりましたわ、お父様」

 

「それにしても、ソフィーの名を何処で。 ソフィーは特異点錬金術師とも呼ばれていて、異次元の凄腕であると同時に、度が外れた現実主義者で向かい合った相手を恐怖に陥れるという話もある」

 

「い、いえ、噂に聞いただけですわ」

 

「それならば良いが……。 フィリスやイルメリアは、匪賊に対しては強い怒りを示す一方で、弱き民には手をさしのべる善良な錬金術師だと聞いている。 手本にするならば其方にしなさい。 もしも会う事が出来たのなら、教えを乞うと良いだろう。 きっと力になる筈だよ」

 

できればそうしたい。

 

だが、ルーシャは。

 

もうソフィーに目をつけられてしまっている。

 

そして短時間に現れたという三人の超新星。

 

いずれも若い錬金術師ばかり。

 

とても偶然だとは思えない。

 

ともかく、考え方を根本的に変えるしか無い。

 

今までは漠然と、双子を守り、自立できるようにするにはどうすればいいかと考えてきた。

 

ルーシャは残念だけれど、錬金術師としてはともかく。自分でも自覚しているほど頭が良くない。

 

だから双子には馬鹿にされてきたし。

 

助けても感謝されたことも一度だってない。

 

三文芝居ではあるまいし。

 

助けられたからって、人間は感謝なんてしない。感謝するのはレアケースだ。

 

相手の見かけが悪ければ、助けられようと気持ち悪いと思うだけだし。

 

相手を馬鹿にしていれば。

 

助けられたら却って逆ギレする場合もある。

 

それが平均的な人間というものだ。

 

ヒト族は特にその傾向が強い。

 

ルーシャはそれくらいは分かっているから。

 

もう双子に感謝されることは期待していない。というか、人助けに見返りも求めてはいない。

 

錬金術師は力ある存在だ。

 

ルーシャだって、もうこの年で騎士団に装備を納入し。少しでも人間に害ある獣や、獣の領域を超えてしまった怪物であるネームド、更には人間の道を踏み外した匪賊と戦う騎士達の生存率を上げるべく頑張っている。

 

自身が騎士団の支援をするべく、戦場に赴くこともある。

 

その過程で人間が死ぬ所はいやというほど見てきた。

 

騎士団の損耗率は低くない。

 

匪賊は人間を喰らう。

 

だから、匪賊のアジトを殲滅したときには。

 

吐き気がするような悪鬼の所行や、その結果も散々見てきた。

 

見ない方がいいと騎士は言ってくれたが。

 

力ある者の責務だからと全てを見届けた。

 

ルーシャの納入した装備のおかげで死なずに済んだ。

 

作った薬のおかげで腕を失わずに済んだ。

 

そういった感謝の言葉もたまには聞くが。

 

それはそれだ。

 

むしろ、お前の作った装備がダメだったせいで死人が出た。

 

そう罵られたことだってある。

 

いずれにしても、甘受しなければならない言葉だった。

 

ルーシャにとっては、できる事をできる範囲内でしているに過ぎない。万能でも全能でもない。

 

でも、これからは。

 

それではダメなのではあるまいか。

 

翌日。

 

王都にある見聞院に出向く。

 

ラスティンにも存在しているらしい、あらゆる知識を蓄えるための組織。情報を提供することで、本を貸し出したり、色々な貴重な素材を提供してくれる。其処で、今までの力量では手が出なかった本を幾らか借りて来る。

 

これから、爪を隠しながら。

 

実力を伸ばさなければならない。

 

もっと力をつけなければ。

 

きっと双子は。

 

ソフィーに殺される。

 

あの怪物が何をするつもりなのか分からないが。

 

いずれにしても、そのまま放置しておくことは絶対に許されない。

 

本をメイドに半分持って貰う。

 

どこからか来て、いつの間にか雇われていたヒト族のメイドは。

 

そういえば、素性が分からない。

 

とても良く出来るメイドなのだが。

 

時々できすぎて恐い、と思う事もあった。

 

「ルーシャ様、かなり難しい本のようですが、よろしいのですか」

 

「かまわないわ。 それと、双子にこの話はしないこと」

 

「はい」

 

そのままアトリエに戻ると。

 

少し無理して、徹夜して本を読み切る。普段は此処までは絶対にやらない。

 

頭に入ったかは微妙だが。

 

重要な箇所は全てメモした。

 

呼吸を整えると。

 

徹底的に、練習を開始する。

 

ルーシャは物覚えも良くない。

 

父親が公認錬金術師。叔父も公認錬金術師。今叔父は完全に廃人になってしまっているが。それでもあの難しい公認錬金術師試験を突破しているのだ。才覚の学問である錬金術で、その最低限のスタートラインである才覚はある筈。

 

だから努力して、才覚を磨き抜くしかない。

 

分かっている。

 

自分は父すら超えられない凡庸な錬金術師だと言う事は。

 

それでもできる範囲で。

 

大事なものを守りたい。

 

生意気で、感謝という言葉もしらなくて。自分達がどれだけ周囲に守られているかも分かっていない双子でも。

 

大事な妹たちなのだ。

 

あんなバケモノに、好きなようにさせてたまるか。

 

凡人には凡人の意地がある。

 

絶対に守り抜いてやる。

 

ルーシャは難しい調合を続けながら、ひたすら反復練習と復習を行う。これが上達の近道だと知っている。

 

天才は一足飛ばしでいけるのだろうが。

 

ルーシャはそうではない。

 

だから一歩ずつやっていくしかないのである。

 

あの恐怖の日からしばしして。

 

父が話をしてくる。

 

国が重要な決定をした、と言う事だった。

 

「重要な決定、とは」

 

「この国では錬金術師を優遇してこなかったことは知っているね」

 

「はい。 ラスティンからもっと錬金術師を招いて、各地で活躍して貰うべきだという声も聞いていますわ」

 

「実情から言うと、ラスティンにさえ公認錬金術師は足りていないのだ」

 

「……」

 

父は悔しそうに俯く。

 

特異点ソフィー=ノイエンミュラーが現れる前。

 

ラスティンの首都ライゼンベルグは、腐敗した錬金術師達の巣窟となっていた。

 

それから改革が進み。

 

現在では実力主義が導入され。

 

年ばかりとった無能な錬金術師は、少なくとも錬金術の最前線である現場からは遠ざかっているし。

 

実力があっても匪賊と結託したり。

 

或いは錬金術で民を苦しめているようなクズは減った。

 

だが、人材は湧いてくるものではない。

 

超新星三人のような活躍が出来る錬金術師を育成するノウハウもない。

 

錬金術は才能の学問で。

 

才能がなければ、そも何もできないのだ。

 

「そこで、ラスティンで実績を上げた錬金術師に大金を払い、此方で活動してもらうという計画が持ち上がっている」

 

「大丈夫ですの? 確か……」

 

「ああ、ネージュの逸話だね」

 

数百年前。正確には200と少しの年前。

 

この地方を灰燼と化しかけた雷神ファルギオルを魔族の中のレア種族である巨人族の先代騎士団長と共に倒した錬金術師ネージュは。

 

この地方では、悲しい伝説と共に伝わっている。

 

強すぎる力は怖れられる。

 

ネージュは騎士団長が庇護したにも関わらず。

 

周囲から拒絶された。

 

邪神さえ倒した錬金術が自分に向けられたら。

 

それを怖れるものが多かったのだ。

 

結局人間と関わるのが嫌になったネージュは、追い出されるようにしてアダレットの首都を出ていった。

 

当時はメルヴェイユなんてしゃれた名前では無く。

 

無骨な城塞都市だった首都を。

 

そして一人寂しく亡くなった。

 

騎士団長はその哀しみからか、国葬をするべきだと訴えたらしいが。

 

それに同意する文官は殆どいなかった。

 

それからも、この国アダレットは、武門の国を自称したいが故に、錬金術師の育成を行わず。

 

結果として騎士団にも民間人にも。

 

甚大で余計な被害を出し続けてきた。

 

近年では、ようやくラスティンから来た錬金術師を歓迎する風潮が出来はじめたが。

 

それまでには本当に長い長い苦労があったと聞いている。

 

ルーシャが聞いているくらいだ。

 

事実は、もっと生臭かったのだろう。

 

「具体的には、三人の超新星と他にも腕利きを招き、アトリエランク制度というものを作る予定らしい」

 

「ランク制度、ですの?」

 

「ああ、競争した方が人材を育成できるという話らしくてね」

 

アトリエランクについては、父が担当するという。

 

だが、ルーシャは首を横に振った。

 

多分あの双子も、それに参加するはずだ。

 

この手の制度には、金がつきものである。

 

本人達は理解出来ていないが、双子には最低限の生活費をルーシャが支援している。それにもかかわらず、双子は自分達が極貧だと思い込んでいる。

 

最近は特に金に貪欲になって来ている。

 

必ず食いつくはず。

 

そうなれば、見張るのも容易になる筈だ。

 

危険に近付かせるわけにはいかない。

 

ただでさえ、生半可なネームドなど豆粒にしか思えないようなバケモノが、側で爪牙を研いでいるのだから。

 

「わたくしがやりますわ」

 

「だがお前は一人前になったばかり。 最低より少しマシ、くらいの評価しかしてもらえないぞ」

 

「かまいませんわ」

 

「そうか……では好きにしなさい」

 

父も哀しみを知っている人だ。

 

弟、つまりルーシャの叔父が嘆いている姿を、一番近くで見ていたからだろう。

 

ルーシャは呼吸を整えると。

 

決める。

 

双子には、絶対に素の姿を見せないことに決めている。道化だと思われているのなら、別にそれでもかまわない。

 

あの子達を、死なせる訳にはいかない。

 

叔父様のような悲しい目には絶対にあわせない。

 

例え相手がどんなバケモノだろうと。戦いを挑まなければならない時はある。

 

それが今だ。

 

ルーシャは覚悟を決め直すと。王城へ出向くことを父に告げる。まずは、その制度の詳細を聞き。

 

そして、双子が確実に食いつく事を知った上で。

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