暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ 作:dwwyakata@2024
この間の肉食植物の残骸から、会心の出来のゼッテルを造り。それにリディーが慎重に魔法陣を描き込む。
筋力強化の魔法陣だ。
魔術の知識があるリディーだけれども。失敗したら何もかも台無しだから、非常に緊張する。
仕上がったので、今度はこのゼッテルを、この間リアーネさんのお店から買ってきた本に書かれていたアクセサリに仕込む事を考える。
腕輪が良いだろう。
指輪はまだハードルが高い。ネックレスは魔法陣を仕込むには小さすぎる。
まず、この間少量採取してきた、ボスヤギの皮をなめす。皮をなめす液や、なめし革の作り方については、この間覚えたばかりだ。
しっかりなめした後。
その分厚く頑強な皮の裏側に、ゼッテルを仕込もうと思ったが。
そうすると気付く。
多分汗でゼッテルが痛んでしまう。
なめし革自体もある程度の湿気を帯びているので。
ゼッテルがダメになってしまう。
さてどうするか。
帯状のなめし革を二つ用意して。それで挟むことは考えたのだが。そこからが上手く行かない。
二人で試行錯誤して、そして考えついた。
まず、ヤギ皮そのものに、魔法陣を仕込む。
リディーは考えた末に、防御魔術をなめし革の内側に仕込んだ。
そしてそのなめし革に、油紙を貼り付ける。これで、水分そのものを飛ばす事が出来る筈だ。
更に油紙で挟み込むようにして、先ほどのゼッテルを仕込み。
ヤギ皮を二つあわせて、縫い合わせ。
そして腕輪にまとめる。肌触りが良いように、毛皮の外側が肌に触れるようにもする。長時間の戦闘では、ちょっとしたストレスが命取りにつながっていくことを、もうスールは知っていた。
腕輪は調整出来るように、ベルト式にするが。この時魔法陣を傷つけないように、加工をするのがかなり大変だった。なお金具は流石に作れないので、小物屋で買ってくることにした。
さて、此処からだ。
レシピをイル師匠に見せに行くが。
そうすると、幾つか指摘された。
「発想は悪くないわ。 ただ、耐久力が足りなさすぎるわね。 このヤギ皮は良い品のようだけれど、この魔法陣を此処に刻みなさい」
「これは?」
「防腐と防水の魔術」
「あ、なるほど……」
できれば金属で覆うのが一番だと言われたが。まだそれはちょっとリディーとスールの手に余る。
それを理解しているからか、イル師匠は、さっきの魔法陣だけを加えて、完成させて持ってくるように、と言ってくれた。
試行錯誤しながら何とか完成させる。
そして手につけて見ると。
確かに効果は明らかだ。
詠唱しなくても、魔術の効果が最初から体にみなぎる。ただし、筋力が上がっているので、腕輪がぶちっと壊れてしまいそうだ。確かに耐久力が足りなさすぎる。イル師匠の言ったとおりだ。
リディーにもつけて貰うが。
やはり同じ感想を抱いたようだった。
「どうするリディー」
「そうだね、必要なのは柔軟性と、傷を受けてもすぐに壊れない強度だよね。 やっぱり金属で外側を覆うべきなのかな」
「もう一重ヤギ皮で覆ってみる? 同じように加工して、耐久強化の魔法陣仕込むの」
「……分かった、試してみよう」
何しろ大きなヤギだった。皮は余っている。丁寧に加工して、留め金の部分も工夫していく。
やがて、仕上がった腕輪は。
随分としっくり腕に馴染んだ。
師匠にレシピもろとも見せに行く。イル師匠はまだ渋い顔をしていたが。まあ最初はこんなものだろうと、許可を出してくれた。
良かった。
これで、最初の錬金術装備の完成だ。
ただ、イル師匠には言われる。
「ネームドと戦う位になってくると、これよりずっと良い装備を、体に四つか五つ身につけないとそもそも戦闘にならないわよ。 品質を上げていくこと、量産できるようにすること、能力を更に高められるよう工夫すること。 どれも意識しなさい」
「はいっ」
頭を下げる。
とりあえず、これでまた一歩、一人前に近付くことができた。
まだまだ半人前なのは自覚しているが。
それでも小さな一歩ではないはずだ。
次は火薬爆弾。
その前に、まずはこの腕輪を量産する。アンパサンドさん、マティアス、フィンブル兄、それとリディーとスールの分。
作っていく内に欠点も見えてくる筈。
反復練習と復習が進歩の近道。
その言葉を何度も思い出しながら。
まずは人数分。
この獣の腕輪とでも呼ぶべき装備を作るところから、スールはリディーと協力して作業開始した。
(続)
力が足りない事を自覚して、上を目指すのは上達の早道です。
双子はそれに気付けました。
少なくとも今回は……