暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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アトリエと言えばフラムですが、海外版ではそのまま翻訳が「ボム」になったりしているケースもあります。

日本でもドイツ風と英語風と、他の言語圏の言葉がごっちゃになっているので、これはまあ仕方が無いかもしれませんが。


1、火薬爆弾

新しいハルバードを作ってもらってご満悦のフィンブルさんが、機嫌良さそうにマティアスさんと話している。

 

アンパサンドさんは寡黙に腕組みして、側の木に背中を預けていた。

 

リディーとスールが出向き。

 

挨拶した後、獣の腕輪を渡す。

 

そして、その場でつけて、使って貰うように促した。

 

アンパサンドさんは、少し使っただけでコツを掴んだ様子だが。少し時間が欲しいと言われる。

 

マティアスさんはいきなりその場でびたーんと地面に倒れ込む。

 

多分、体の制御が上手く行かないのだろう。

 

フィンブルさんはある程度は動けるようだったが。

 

三人揃って大丈夫、というまで、思ったより時間が掛かった。

 

「あげるので、使ってください」

 

「お、サンキュな。 これでもっと俺様格好良くなる、と」

 

「いきなりすっころんでおいて何言うか残念イケメン」

 

「だから、それを人前で……」

 

マティアスさんは周囲を見回して慌てていたが。

 

何を今更、である。

 

バカ王子の話を知らないアダレットの民なんていない。今更悪評は、消しようがないのが事実である。

 

城門を出る手続きをして。

 

照会をしている間にも、アンパサンドさんは少し体を動かしていた。

 

防御能力が多少上がると言っても、何にしても軽い。アンパサンドさんにとって攻撃を受けることはあってはならないのである。

 

機動力が上がるにしても。

 

身体制御をしっかりこなすのは絶対条件なのだろう。

 

その後は、森を抜けて街道に。荒野に出ると、リストにある獣を見つけ次第、順番に狩っていく。

 

今回はそれほど大きいのは狩らないとはいえ。

 

この間の肉食植物の奇襲の件もある。

 

森を出たら其処は死地だ。

 

そう想定して、いつ何に襲われても大丈夫なように、ハンドサインを見ながら、黙々淡々と動く。

 

獣は基本的に奇襲を許してくれない。

 

人間よりも獣の方が感覚が鋭いからだ。

 

ただし、獣は人間を襲う。

 

その習性を利用して、ある程度有利に立ち回れる。相手が襲いに来ることを前提に動けば良いのだから。

 

つまりアンパサンドさんが釣ってきて。

 

袋だたきにして仕留める。

 

そうやって処理していくのが基本となる。

 

そして、戦っている内に、嫌でもアンパサンドさんの体力については再確認させられる。

 

何度も何度も釣りをしているのに、まるで疲れる様子が無い。

 

一度森に入るようにハンドサインをアンパサンドさんが出してきたので、頷いて皆で森に戻る。

 

そろそろ日が傾き始めていたが。

 

予定の獣は全て処理し終えていた。やはり身体能力が倍になると、かなり違う。

 

「少し大きいのがいるのです。 血の臭いを嗅ぎつけて来た、という事です」

 

「まさかネームド!?」

 

「ネームドだったら、即時撤退の合図を出しているのです」

 

「そっかあ」

 

今の時点で、ネームドはとても相手に出来る存在では無い。

 

獣の中でも、強大が故に名を持つに至った存在。

 

手練れの錬金術師が、騎士団と連携して、やっと戦えるほどだと聞いている。勿論今のリディーとスールなんて、文字通り蹴散らされるだけである。

 

戦力としてアンパサンドさんは判断してくれている。

 

それを裏切る訳にはいかない。

 

無謀な戦いだけは、絶対にしてはならなかった。

 

「アンパサンドさん、手に負えそうな相手かそいつ」

 

「……まあどうにかなるでしょう」

 

荷車の在庫にあるクラフトを一瞥して、アンパサンドさんはフィンブルさんに応える。そういえば、フィンブルさんがいつのまにかアンパサンドさんに対して、「どの」から「さん」づけに変えている。何か色々話しあったのだろうか。それに対して、わかり易いほどの反応をマティアスさんは返していた。

 

帰ろうと。

 

「こえーし! この間のヤギの時だって、死ぬ所だったし!」

 

「……リディーさん、どうするのです? 判断は貴方がするのです」

 

「はいっ!」

 

まあそう来るだろうなとは思っていたので。

 

既に考えてはいた。

 

「強くなりつつある獣で、手に負えるなら、倒すべきだと思います。 もっと強くなったら、この街道を行く人が襲われます」

 

「分かりました。 釣ってくるのです」

 

「おいおい、マジかよ……」

 

「覚悟を決めろ殿下」

 

フィンブルさんは、マティアスさんを王子では無く殿下と呼ぶようになっていた。どうやらそれが敬称らしい。

 

マティアス殿下と呼ばないのは、恐らくは二重敬称になること。

 

それに、マティアスさんが、自分を呼び捨てで良いとフィンブルさんにも言っていたから、なのだろう。

 

それにしてもフィンブルさんの新しいハルバード。

 

いぶし銀の鋭い輝きを刃先が放っていて、前の古めかしいものとはまるで別物だ。形見だと言っていたが。それをあのツィンクのインゴットで打ち直したのだろう。そして結構今日の戦いで獣を切っているのに、小物ばかりが相手だったとは言え、刃こぼれ一つしていなかった。

 

鍛冶屋の親父さん。

 

腕については本物だ。それについては再確認させられる。恩人だからという理由で良くは見ていたが。そんなひいき目関係無しに、あの人は凄い人である。音痴なのとデリカシーに欠けるのが欠点だが、それを補ってあまりある程凄い。

 

「来た!」

 

スールが声を掛ける。

 

そして、皆で森を飛び出して、構える。

 

追ってくるのは、巨大なミミズのような生物である。無数の足が生えていて、筒状の体をしていて。そして体中に目がついている。

 

その目の幾つかが魔法陣を展開し。

 

魔術をぶっ放しては、アンパサンドさんを狙っている。主に風の魔術のようだが。発動と同時に全てをアンパサンドさんは紙一重でかわしていた。

 

「足一杯! 気持ち悪い! やだあ!」

 

「スーちゃんっ!」

 

「分かってるよう!」

 

半泣きになりながら、セーフティを解除したクラフトを手に取るスール。

 

そして、ハンドサインをアンパサンドさんが出した瞬間投擲。

 

危険物と判断したか、ミミズの怪物が魔術を展開。四つ同時。シールドを張った。流石荒野の獣。まだネームドでもないのに、同時複数の魔術展開。だが、クラフトの爆圧は、そのシールドを打ち砕いていた。

 

思わずのけぞるミミズに、反転攻勢をしかける。

 

アンパサンドさんが逃げから一転、攻勢を掛け始めるのと同時に。

 

リディーは叫び、自分も詠唱を開始する。

 

「目を狙って全て潰してください!」

 

スールが先陣を切ると、銃を乱射。目を狙っていくが、瞼だけで弾丸を防いでくる。だが、その間は魔術を発動できない。

 

その間に接近したマティアスさんが、絶妙のタイミングで魔術を放とうとしたミミズにカウンターでナイフを突き込んだアンパサンドさんの助けもあって。ミミズの体に剣を突き刺し、一気に切り裂きながら走る。

 

更に跳躍したフィンブルさんが、ミミズの頭に、逆落としにハルバードを叩き付ける。

 

やはり斧ほどの重量のある一撃は出ない。

 

更に突きかかる。

 

槍ほどの鋭さがない。

 

だが、それぞれ有効打になる。それでいいと、フィンブルさんは判断しているのだろう。

 

痛打を浴びたミミズは、巨大な体を振り回して、敵を遠ざけようとするが。

 

そのタイミングで、リディーが魔術を発動。

 

マティアスさんの筋力を倍加する。獣の腕輪の効果で、更に火力が上がっている。

 

叫びながら、一撃を叩き込むマティアスさん。

 

胴を真っ二つにされたミミズが、悲鳴を上げて大量の血を噴き上げる。

 

更に其処へ。ありったけの弾丸をスールが叩き込み。

 

そしてとどめとばかりに、フィンブルさんが突き込んだハルバードを、気合いを入れて押し込んでいた。

 

びくりと痙攣すると。

 

地響き立てて、巨大なミミズは倒れる。

 

大きく息をつきながら、マティアスさんはぼやく。

 

「これでもネームドよりずっと弱いってんだから、やってらんねーよ畜生」

 

「グリフォンはこれより強いのです」

 

「ひえっ」

 

「嘆いていても仕方が無いのです。 それより、色々素材が採れるのでは?」

 

アンパサンドさんが促して。

 

嫌そうな顔をしたけれど、それでもマティアスさんが、フィンブルさんと協力してミミズの体を森の中に運び込み、吊して捌く。

 

肉は食べられるのか分からなかったけれど。

 

スールは吐きそうな顔をしていたので、その話題は口には出さなかった。

 

頭だけは切りおとす。

 

ただ、牙は切り取っておいた。これは或いは、何かの素材に使えるかも知れないと思ったからである。

 

改めて見ると、凄い牙だ。普通のナイフより鋭く堅いかも知れない。

 

肌も弾力性があり、乾かすと色々と利用方法がありそうである。眼球は強い魔力を込めていて。魔術を発動できる訳だと納得した。

 

これがあまり腕利きでは無い傭兵を襲ったらと思うと、ぞっとしない。

 

早めに駆除できたのは良かった。

 

後は、森の中でうにや薬草を、陽が落ちるまで採取。後はファンガスなどの例外的に森の中でも危険な獣に襲われる前に、さっさと退散する。荷車は一杯一杯。ただ体力には少し余裕があったので、門前で別れてからは、そのままその足で掲示板の所に直行。獣の駆除依頼について、全て終わらせた。

 

獣の首をカウントしていた役人が。

 

ミミズの首を見て、おっと叫ぶ。

 

そして、新しく貼られたばかりの依頼を渡してくれた。

 

「此奴に間違いないですね。 この種類のミミズは、巨大化してネームドになると、手練れの傭兵団を容易く壊滅させる戦闘力を発揮します。 まだ小さい内に狩る事が出来て良かった」

 

「偶然遭遇したんですけれど、倒せて良かったです」

 

「すぐに倒してくれたという事で、追加報酬も出しましょう。 目撃報告があったのが今日の昼だったので、異例のスピード撃破ですね。 幸運だった、というのあるのでしょうが」

 

思わぬ追加報酬だ。

 

一応大物の獣をしとめて報告すれば、相応に国家への貢献と見なしてくれるようなのだけれども。

 

これはとても幸運だった、と判断するべきだろう。

 

ともあれ、納品は全て終わったので、新しく良い依頼が出ていないかを確認する。

 

残念ながら、そううまい話はない。

 

まだ手が届きそうにないものか。

 

逆に、小物の依頼で、今すぐに取っていかなくてもいいものばかりだった。

 

「あれ?」

 

「リディー、どうしたの?」

 

「ほら、疾風のかぎ爪って覚えてる?」

 

「ああ、アンパサンドさんが言ってたネームドでしょ。 グリフォン十体分に匹敵するとか」

 

その討伐依頼がなくなっている。

 

役人は応えてくれなかったが。

 

つまり誰かが倒した、と言う事だ。

 

いずれにしても、少しは王都の周辺が安全になった、という判断で良いのだろう。少しだけほっとした。

 

アトリエに戻ると、すっかり夜だ。

 

荷物をコンテナに入れて。

 

現状の在庫を確認。

 

クラフトは少し残ったが。

 

獣の素材を分別して、コンテナに入れるのが大変だった。

 

「やだあ、これあのミミズのでしょ!? 触るのやだー!」

 

「そんな事言って、もたもたしてるとお化け出るからね」

 

「もっとやだー!」

 

スールが泣き言を言うので、溜息。

 

大体ミミズは虫じゃないのに。

 

足が一杯あるとその時点でダメなのだろうか。リディーにも、その辺りの法則性はよく分からなかった。

 

仕留めた獣の肉を使って、夕食にする。

 

野草類にもいいのがあったので、それも炒めて一緒に食べる事にする。

 

食事の間もスールはくすんくすんと泣いていたが。

 

満腹になると正直だから、すぐに機嫌を直して寝入った。

 

先に寝てしまったスールを見てから、リディーはこの間ラブリーフィリスという真顔になるような名前の店で買ってきた本を読んでおく。

 

獣の腕輪は非常に使える。

 

そしてイル師匠が言っていたけれど、ネームドとやりあうには最低でもこれ以上のものを五つか六つは身につけないと話にならない、と言う事だった。

 

かといって、装飾品を身につけるとなると、色々ハードルがある。

 

体の動きを阻害しない。

 

つけていてストレスにならない。

 

重くならない。

 

その他色々、である。

 

ネックレスはそういう意味ではかなり厳しい。ピアスもダメだろう。

 

そうなるとベルトか。

 

ベルトは、基本的に体をしっかり固めるためには必要な装備品だ。今必要なのだとしたら、体力の自動回復だろうか。勿論体を強くする機能も欲しいが。

 

後は靴や手袋など。

 

日常的に使う道具も、錬金術の装備にしたら。

 

或いは、効率が何倍にも跳ね上がるかも知れない。

 

少し遅くなったので。

 

もう寝ることにする。

 

スールは昔はうなされて。悪夢を見ていることが非常に多いようだった。リディーもあまり夢見は良くない。

 

お母さんが病気になって倒れたとき。

 

どんどん窶れていく様子。

 

全て覚えている。

 

偉そうな騎士の人も来て。色々話を聞いていったが。とても復帰は無理だとお父さんに言われて、残念そうにしていた。

 

優秀な人材が足りない。

 

彼女ほどの騎士には、育休が終わったら是非復帰して欲しかった。

 

そんな事をヒト族のベテラン騎士は言っていた。

 

その時は、無情なことを言うと思って内心反発もした。つい最近まで、嫌なおじさんだと思っていた。

 

だけれども、荒野で獣と戦うようになってきてから。

 

あのおじさんの言葉は、文字通り余裕がまるで無い騎士団だから出るものだと分かった。だから今は恨んでいない。

 

灯りを暗くして、リディーも眠る。

 

Fランクの試験を受けるまで、後どれくらい掛かるのだろう。

 

まだ獣を狩らないとダメだろう。

 

そう思った。

 

 

 

コバルト草を取りに行き、ついでに周辺の獣も駆除して行く。まだ火薬爆弾を作るには少し早いけれど、やはり獣の腕輪による身体能力の倍加は大きい。以前に比べて、小物の処理が格段に楽になっていた。

 

小物退治の依頼はこれで何件目か。

 

そろそろ、次のナイトサポートを納入しなければならない時期だが。一応在庫はまだ五ヶ月分残っている。

 

今回コバルト草を追加するので。

 

帰ったらまたすぐに作るつもりだ。

 

難しい調合だが。

 

前にイル師匠の所で丁寧に教えて貰ったし。今ならば、それほど苦戦はしない自信はある。

 

そしてこの間のミミズで(金銭的な意味で)味を占めたからか。

 

スールは、周囲に手頃な「大物」がいないかアンパサンドさんに毎回聞くようになっていたが。

 

毎度呆れられていた。

 

「死にたいのですか貴方は」

 

「ええー」

 

「強めの獣になると、初見殺しの能力持ちも珍しくないのです。 ひよっこが調子に乗っていると、死ぬだけなのです」

 

ずばり言うアンパサンドさん。

 

マティアスさんも、口を引きつらせる。フィンブルさんは、あんまりそれについては口を挟まなかった。

 

厳しい言葉だが、正論だと分かっているからだろう。

 

「スーちゃん、反復練習と復習だよ。 錬金術も戦闘技術も同じだと思う」

 

「分かったよもう」

 

「それと、そろそろ獣を捌くのをもっと手際よく」

 

うっと呻くスール。

 

リディーは頷くと、吊した鹿を一緒に捌く。鹿といっても角が刃のように鋭く、更に大きさはヤギ以上。この間倒したボスヤギくらいはある。

 

これを捌くのだから、相当な重労働だが。

 

力のかけ方とかコツがあるのか。

 

つり下げるのも、アンパサンドさんは上手に行う。勿論マティアスさんとフィンブルさんもてきぱき手伝うが。

 

「鹿肉も、もっと小さいのだと美味しいんだけれどなあ」

 

「この皮、結構良いですね。 何かに使えないかなあ」

 

「内臓気持ち悪い……」

 

「内臓は結構美味しいのです」

 

スールが真っ青になり、口を押さえる。リディーが見かねて背中を撫でようとすると、手をアンパサンドさんに掴まれた。

 

いずれ自分で慣れなければならない。

 

過保護は却って芽を摘む。

 

そういう事だろう。

 

コバルト草もある程度採取できたので、切り上げて戻る。

 

そろそろ、貢献度は充分なのではあるまいか。そう思うが。役人に狩ってきた獣の首を納品しても何も言われない。

 

この辺り、ちょっとじりじりする。

 

いつまで最底辺なのだろう。ルーシャは確かもうEランクになっていると聞いているし、Dランクにも近々なるだろう。悔しいけれど、ルーシャが言っていたことは全て的を射ていた。イル師匠にも同じ事を言われたのだから当然だろう。

 

アトリエに戻ると、ナイトサポートを作る。

 

コバルト草は色々使い路があるから、ある程度在庫は残しておけ。

 

そうイル師匠に言われているので、今回は三ヶ月分だけ作る事にする。まだまだ品質についてはそれほど自信が無いので、以前のことを思い出しながら丁寧に作り、完成品はイル師匠に見せに行く。

 

イル師匠は、ため息をつく。

 

「ギリギリ合格よ。 今の貴方たちの腕だと、もっと良い素材を取ってこないとダメでしょうね」

 

「うっ……やはり遠出?」

 

「……近々貴方たちにも開示があるでしょうし、黙っておくわ。 良い情報が来ているからね」

 

何だろう。

 

ただ、イル師匠は嘘をつかないし。

 

きっと何か良いことがあるのだろう。

 

そして、来るべき時が来た。

 

「カーエン石、あるだけ持ってきなさい。 そろそろ良い頃合いだから、火薬爆弾の作り方を教えるわよ」

 

ついに来たか。

 

クラフトより一段階上の、火薬を用いた殺戮兵器。作る時の危険度も文字通り段違いの危険物。

 

だがこれを使えるようになれば。

 

もっと強力な獣にも、対処できるようになる。

 

すぐにアトリエに飛んで帰って、カーエン石をイル師匠の所に持っていく。

 

頷くと、師匠はまずはと前置きした。

 

「いい、火薬は錬金術におけるもっとも偉大な発明の一つよ。 高度な錬金術は、達人にしか触れられないけれど。 火薬はある程度の実力がある錬金術師にも触れるし、何よりも一度作れば誰にでも使えるわ。 だから戦略物資として扱われるのよ」

 

危険だから。

 

一般には流通させられない。

 

させるとしてもごく少量。

 

威力が小さいのを、銃の弾丸用などに流通させるだけ、と言う事だった。

 

なるほど。

 

本来は、火薬は色々な素材を用いるのだが。

 

近年では作り方に改良が加えられ。

 

カーエン石を基本に用いて、此処から爆弾を作る事が出来るようになっている、という事だ。

 

更に、方法論を変えれば。

 

相手を雷撃で焼き尽くす爆弾や。

 

真空波で切り刻む爆弾。

 

更には、相手を瞬間凍結させる爆弾も作る事が出来るという。

 

ごくりと生唾を飲み込む。それが如何に怖い事かは、よく分かる。クラフトは単純な爆圧だけであの火力だ。

 

ここに、更に破壊力を増した上に。

 

より高い殺意が加わるのだから。

 

ふっと、表情を緩めるイル師匠。

 

「クラフトをある程度使って、その怖さを分かったところでこれを教えるつもりだったのよ。 貴方たちはもうクラフトが如何に恐ろしい代物か知っているわね。 技術的な問題ではなくて、如何に危険なものを使っているか、その自覚が必要だったの」

 

そうか。

 

それが今までのリディー達には無かった。

 

確かにその通りだ。

 

「それでは、作り始めるわよ」

 

後は言葉も無い。

 

ただ黙々と。

 

イル師匠に従って、作業をする。

 

それが全てだった。

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