暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ 作:dwwyakata@2024
それに不意打ちを許した最悪の展開。
荒野に住まう生物は、図体がでかいだけで生き延びてきている訳ではないのです。
狡猾で強靭で。そして例外なく人間への敵意に満ちています。
そういう世界だからです。
最後尾の馬車が、また下から襲われる。
高々と、何か巨大な手に掴まれたかのように。
馬車が空中に浮かび上がる。
食らいついているのは、あれは何だろう。
御者は必死に飛び降りたが。
悲痛な声を上げる二頭の馬ごと、馬車と荷が、丸ごと地面の下に引きずり込まれ、ばりばりと凄まじい音と一緒に食われ始めた。
何だ。
どうすればいい。
必死に頭を巡らせる。
ネームドは桁外れな生物ばかりだった。
いや、生物と呼んで良いのかさえも分からないような連中ばかりだった、というのが正しいはずだ。
いずれにしても、まともに戦おうとしてもやられるだけだ。
どうにかするしかない。
「スーちゃん、あの穴に発破、できるだけ!」
「ルフトでいい?」
「何でも良いから!」
「ふーん。 じゃあぽい」
それでも正確に、一旦足を止めると、自分達用の荷車に残っていたルフトを、馬車が引きずり込まれた穴に放り込むスール。
六つ同時に放り込まれたルフトは爆裂。
しかも穴の中という閉鎖空間だ。
充分に内部で猛威を振るったはずで。竜巻が引き起こされ、それに絶叫が重なるのが聞こえた。
その間に、逃げ遅れた傭兵達が逃げてくるが。
此方を見つけたフィンブルさんと、マティアスさんが合流してくる。
アリスさんは何をしているんだろう。
そういえば、姿が見えなかったが。
アンパサンドさんは、傭兵の撤退を支援しているのが見える。あの様子だと、最後の一人が逃げ切るまで、こっちで時間を稼ぐ必要がありそうだ。
揺れ始める。
まずい。
そう判断して、すぐに下がってと叫ぶ。フィンブルさんとスールが協力して荷車を押して、その場を離れた瞬間。
マティアスさんの至近を。
何か、すごいものが掠めていた。
ようやく、至近で見て、正体が分かった。
それは、四つ重なった、牙だ。
虫の中には、後ろに牙がついているハサミムシという種類の生物がいるけれど。多分このネームドはその超特大変異版。
がちがちと凄い音を立てている牙は。
馬の血に塗れ。
そして獲物を食い損ねたことで、猛り狂っていた。
しー。しー。
必死にマティアスさんに向けて動作する。
完全に青ざめて固まっているマティアスさんは、だらだら冷や汗を流しつつ、こくりと頷く。
多分此奴。音を頼りに攻撃を仕掛けてきている。
今のも、ルフトを投げる前の音と。
移動音を頼りに仕掛けて来ていた。
今までは、一番大きな音。
つまり馬車を狙ってきていたのに。
急に此方を狙ってきたのは、それは故だ。
傭兵達が周囲でばたばた逃げ回っているのには、ハサミムシのバケモノは見向きもしていない。
コレは恐らく、今の能動的な攻撃に対して反撃しようと思って出てきたからで。
攻撃を仕掛けるのは逆効果だ。
その瞬間。
ハサミムシの、ご自慢だろう牙の一つが、消し飛んでいた。
着地したのはアリスさんである。
無表情で。
今のも、音一つ立てなかった。
絶叫しながら、地面にもぐろうとするハサミムシから、更に牙をもう一つ持っていく。これで牙は三重になったが、そういう問題ではあるまい。
アリスさんは音も無く動きながら、更に斬り付けに掛かるが。
其処までだった。
ぐっと地面が盛り上がり、
正体を見せるハサミムシ。
どうやら、音だけでは無理と判断したのだろう。
同時に、リディーは撤退を指示。わっと逃げる。
相手が手の内を全て見せるまでは、そうするべきでは無いと判断していたのだが。
相手がしびれを先に切らしたのだ。
好機は今しか無い。
マティアスさんも、逃げ始める。
傭兵の撤退支援を終えたアンパサンドさんが此方に来るが、ステップしながら目を細めている。
何だアレは、と言いたげだ。
同じ事はリディーも言いたい。
もはや昆虫とはとても思えない姿をしたそれは。
確かにハサミムシなのではあろうが。
全身が極大まで肥大化し。
地中で暮らすためか全身がおぞましく淡く輝いており。
全身に多数の目と口があって。
そしてぶよぶよながら弾力性の高そうな皮膚と。柔軟性が高そうな体。地中でも進める多数の無茶苦茶に生えた足。
そして何より、背中にある巨大な本命らしい口と。
見た瞬間、土下座をして命乞いをしたくなるような怪物になっていた。
びりびり次元違いの魔力を感じる。
とても勝てる相手じゃない。
パイモンさんとルーシャがこの場にいて、やっとどうにかなるかという相手だ。近くにフィリスさんがいるなら、騒ぎを聞きつけて来てくれるかも知れないけれど、それにしても時間は稼がなければならない。
かちんと、短い音。
ネームドが牙を鳴らしただけ。
それだけで詠唱が完了したことを。
リディーは、上空に出現した、百を超える火球を見て知った。
瞬時に、殺意の塊に等しい火球の群れが降り注いでくる。
吹っ飛ばされる。
悲鳴を上げて、地面に叩き付けられる。
荷車が横転。
単に制圧火力をぶちまければ良い。
ハサミムシはそう思ったようで、第二射を即座に打つつもりのようだ。また、牙を鳴らそうとしているのが見える。必死に立ち上がろうとするが、マティアスさんでさえ今のでぼろぼろだ。
力が。
違いすぎる。
体勢を立て直した騎士達も、撤退の銅鑼を鳴らし続けている。
ネームド戦は想定していないし。
装備も人員も足りていない。
だから引け。
そういう判断なのだろう。
分かっているが、このまま引けば、多分此奴は近くの村とか街とかを襲って、人間を食い尽くす。
さっそく敵の至近に躍りかかっていくアンパサンドさんだが。
ハサミムシはなんと全身から二十以上のハサミ(正確には交差した棘状の骨?)を生やすと、それで一斉に地面を突き刺してきた。
初動から突き刺さるまで、流れるようにまるで隙が無い。
アンパサンドさんが舌打ちして、間合いから外れるが、追撃するようにまた無数のハサミがハサミムシの体から出現し、一旦打ち上げられた上空からアンパサンドさんを追う。いずれも回避できているが、紙一重だ。そしてハサミムシは、それを全自動で魔術制御している。早い話、アンパサンドさんを近付かせない方法を、一瞬で判断したと言う事だ。
更に、別方向から斬りかかろうとしたフィンブルさんとマティアスさんを、鬱陶しそうに尻尾を振るって、二人まとめて吹っ飛ばし。
アリスさんが二人を受け止め、数十歩分はずりさがる。
双子を守る者は。
もう何もいない。
ゆっくり向き直るハサミムシ。
背中の口が、がちん、がちんと威圧的に鳴り。
一瞬早くスールが残っていたルフトを投げつけるが。
それらは空中で、溶けるようにして消えてしまった。
冗談だろう。ぼやきたくなったが、残念ながら事実だ。空中に酸を展開したらしい。酸で作るルフトを、一瞬で溶解させるほどのものをだ。
「やるしかない……」
スールが、最後のピンポイントフレアフラムを掴むと立ち上がる。
駄目だ。
まだイル師匠の許可は得ていない。
そう諭すけれど、スールはレンプライアの欠片をフラムに塗りたくり始める。
確かに、此奴は今まで見てきたどのネームドよりも次元違いの相手だ。同じネームドでも、驀進の多眼とかと雲泥の差があると見て良いだろう。イル師匠は言った。最強クラスのネームドは、弱めのドラゴンより強い。
きっと此奴が。
多分それだ。
「駄目、スーちゃん! まだ許可が出ていないって事は、イル師匠からみても危険すぎるって事だよ!」
「じゃあ死ねっての!?」
「そうじゃなくて」
「じゃあ手は? どうやって生き残る? 前衛は近づけもしないし、もう彼奴は至近距離なんだよ」
その通りだ。
だからこそ、今は。
放り投げる。
ハサミムシがそれをかき消すが。
その時には、リディーはスールの手を引いて、走っていた。
悠然と追ってくるはさみ虫。
併走して攻撃を仕掛けようとするアンパサンドさんには見向きもしない。メインアタッカーがリディーとスールだと見きっているのだ。アンパサンドさんの戦闘スタイルも、だろう。
其処に相手の油断がある。
詠唱をしながら、走る。
アリスさんがしかけるが。
ハサミムシが瞬時に展開した、およそ三十枚はあるシールドが、アリスさんの剣撃すら弾き返した。
こっちも当然警戒しているか。
だったら。
跳躍し、頭上からハルバードを投げつけるフィンブルさん。
面倒くさそうに尻尾を振るって払い落とすハサミムシだが。
その瞬間。
マティアスさんが、走り。
その体の一部を、文字通り抉り跳ばしていた。
ナックルガードの完成により。
魔術強化が出来るようになって。
身体能力強化と。
更に速度強化を同時に掛け。
さっきとは別物の動きになって貰ったのである。
思わず揺らいだハサミムシに、反転してアリスさんが斬りかかる。
全周囲にシールドを張るハサミムシだが、それが却ってまずい。体勢を立て直した騎士団が、此方の様子を確認したか、支援に戻ってきたのである。
「総員放て! 足止めしろ!」
無数の矢と魔術が、全周展開して薄くなっているシールドを乱打し、一部が貫通する。
五月蠅そうに反撃に出るハサミムシに、決定打となる一撃が突き刺さる。
上空から降り注いだ矢だ。
そう、あのフィリスさんの矢。
やはりまだ近くにいてくれたか。
岩隗に押し潰され。
初めて苦痛の絶叫をあげるハサミムシを。
更に氷塊が雨霰と襲う。
もはや言葉も無く、押し潰されていくハサミムシの口に、スールはレンプライアの欠片をぬぐい去ったピンポイントフレアフラムを放り込んでいた。
爆発が、直接ネームドの体内に叩き込まれ。
それでもハサミムシは動いていたが。
更に二本目の矢が横殴りに叩き付けられると。
灼熱が全身を瞬時に蹂躙し、更に稲妻の如き雷撃がハサミムシを内側から吹き飛ばしていた。
濛々たる煙。
慣れたもので、騎士団が下がれ、と声を掛けて来る。
相手はネームド。
異常な生物だ。
これだけやっても、死ぬとは限らないのである。
内側から爆裂して死なない生物とはこれ如何にとも思ってしまうけれども。
事実あり得るのだ。
リディーは、下がってと叫ぶ。
ハンドサインはこの煙幕では届かない可能性がある。
ハルバードを拾い、下がってくるフィンブルさん。
アンパサンドさんは、敢えて棒立ちになっている。
最悪の場合、囮になるつもりなのだろう。
リディーも、此処で見極めて、味方を支援しないと。そう思って、最後まで踏みとどまっていると。
影が、できた。
顔を上げると。
体が吹き飛ばされ。
尾っぽだけになり。
それも殆ど形を残していないにもかかわらず。
ハサミムシの残骸が、リディーにめがけて。まだ少し残っていた牙と。リディーを一瞬でミンチにするには充分な口を、叩き付けようとしていた。
音も無く、こんな近くまで来ていたのか。しかも、どう考えても生きている筈が無い状態で。
ネームドを侮りすぎた。
ゆっくりゆっくり、落ちてくる絶対的な死が見える。
駄目だ、誰も間に合わない。
マティアスさんは下がりすぎていたし。フィンブルさんは遠すぎる。
スールは激戦でフラフラ。
アンパサンドさんは、なんと同時にまだ生きていた多数の足に襲われていた。回避に精一杯の様子である。
バラバラになっても、まだ動くのか。
これは、生物という概念で相手を考えたリディーの方が負けだ。
シールドを張ろうにも、間に合わない。
終わった。
素直に目を閉じて、死を受け入れようとした瞬間。
雄叫びと共に。
割り込んできたのは、キホーティスさんだった。
多分隊長という立場の上級騎士に渡されている錬金術の装備。盾の出力を全力に上げる道具。
ただし見た感じ、命も盛大に削る……を用いて。
リディーをミンチに喰い破ろうとしたハサミムシの残骸を塞ぎ止める。
「総員突貫! 敵残骸を屠り去れ!」
わっと、散っていた騎士団と傭兵達が躍りかかり。
まだ動いていた敵の残骸。
内臓までもが独立して動いていたが。
それを一つ一つ叩き潰していく。
巨大なワームのようなハサミムシの残骸も、我に返ったマティアスさんが先頭に、滅多切りに斬り伏せ。
やがて残骸がなくなるまで切り刻み、動かなくなった。
呼吸を整える。
膝から崩れ落ちるリディーを見て。
盾を地面に突き刺しながら、キホーティスさんはぼやく。
「まだまだですな、リディーどの。 彼処で出せる切り札くらい用意しないと、もっと色々な獣と今後戦う時に対応出来ませんぞ」
「ご、ごめんなさい、腰が……」
「撤退支援のおかげで、此方は体勢を立て直す事が出来ました。 それで良しとしましょう」
見ると、キホーティスさんの手は。
ぐちゃぐちゃに骨折していた。
あんなのの攻撃をモロに食らったのだ。
錬金術装備の支援があったとしても、それはそうなっても不思議では無いだろう。
思わず涙が出そうになるが。
手当を始めなければならない。
失った二台分の馬車の荷物はもう仕方が無い。
残っていた馬車にあった薬を使い。
トリアージから。
けが人を分類すると。
怪我が重い人から、順番に手当てしていく。
傷が痛むか、ではない。
傷が深い順番に、だ。
幸いというか。
今のとどめとなった一撃を放ってくれたフィリスさんが、手を振って駆けて来るのが見えた。
彼女は魔法のように、懐からテントを取りだして拡げると。
中に入って、荷車を出してくる。
今、そのテントは。
ハンカチのように拡げたように見えたのだが。
荷車にはお薬が満載されていて。
一緒に出てきた手練れらしい戦士達十人ほどと、てきぱき手当を始めてくれる。
「嫌な予感がして戻ってきたんだけれど、正解だったね。 間に合って良かった」
「これは……」
キホーティスさんは、腕を捨てる覚悟で、最後の特攻を掛けたはずだ。
だが、無惨に壊し尽くされていたその腕も。
まるで奇蹟のように傷が溶け、骨折も消え、治っていく。
同じ傷薬でも違いすぎる。
リディーとスールが作るナイトサポートは、人間に理解出来る範疇のお薬。
この人。恐らくイルメリア師匠もだけれど。この人が作るお薬は、もはや神話に出てくる神々の秘薬だ。
「これで引退かと覚悟していたのだが……流石は三傑の一角だ。 動くどころか、痛みも残っておらぬ」
「いやいや、わたしなんてまだまだですよ」
「更に他二人は凄いと……」
「ええ、まあそんなところです」
言葉を濁したが。
フィリスさんは残像を作ってぬるぬる動きながら、けが人を爆速で手当てしている。リディーも起きて手当てしようと思ったけれど。
いつの間にか、スーちゃんと一緒にけが人の列に並ばされて。
手当を受けていた。
更に、どこから出したのか。
複数の荷車を追加で提供され。
一度討伐部隊は引き上げる事にする。
いつもレポートには四苦八苦するが。
これはどうかいていいものか。
いずれにしても失格だろうなと、リディーは苦笑いしかでない。結局フィリスさんに助けて貰ったのだ。
情けなくて。
悔しくて。
言葉も出なかった。
それからは、翌日に歩けるようになるまで、荷車で運ばれて。
翌日からは、帰路を歩いた。
スールもずっと黙りこくっていた。
悔しくて、何も喋る事が出来ないのかなと思ったけれど。
予想は当たっていた。
途中、思い切り小石を蹴飛ばしているのを見た。
自分の弱さに対する怒り。
それが、無言になってでている。
リディーも今は同じだ。
自分の弱さが腹立たしくさえある。
やっと王都の城壁が見えてきたとき。
何だかもう終わりなのかなとさえ思った。
帰路では獣との戦闘も殆ど起きなかったが、実は起きていたという話を聞かされる。どうやら、それにさえ気づけなかったらしい。比較的余裕があるアンパサンドさん達が対応してくれていたそうだ。
城門で解散。
キホーティスさんが、咳払いして、説明をしてくれた。
「今回は、ネームドによる想定外の襲撃が二度あったものの。 どちらも想定外の支援者の援護で撃破する事が出来た。 そもそもネームドの事前情報は無く、戦闘を行う前提装備もしていなかったこともある。 これについては、我が輩の方からレポートを出しておくので、諸君は気にしなくても良いだろう。 本来の目的である沼地に住まう獣の処理に関しては、充分な成果を出す事が出来た。 成果の一部は、残念ながらあの憎らしい虫めに食われてしまったが……」
はははは、と笑いが起きる。
いや、笑い事では無い。
合計で四頭もお馬さんが食べられてしまったし。
貴重な資材で作った馬車も二両失われてしまったのだ。
今は笑いでもしないと。
やっていけない、ということなのだろう。
「錬金術師殿達は、無理な状況で未熟でもあるのに良くやってくれた。 二人ともまだ成人するや否やの年齢でこの任務、さぞや厳しかっただろう。 我等が今生きているのは、最後に支援に来た三傑の一人、破壊神フィリスどののおかげでもあるが。 撤退判断と時間を稼いでくれた二人のおかげでもある。 皆、感謝を欠かさぬように」
「ありがとう、助かったぞ!」
「今後も何かあった時には頼む!」
揶揄、ではない。
本当に感謝してくれている。
ちょっと、どういう顔をしたら良いか分からない。
ポンコツと言われる方が慣れていたし。
そうとしか思われていないと思っていたから、である。
「先に言い渡しておこう。 最後のネームド戦での早い判断につながったこともあるし、第一次試験は合格とする。 これについては確定事項だ。 我が輩が責任も持つ」
「うそ……」
「いいの?」
「何、試験の全件は我が輩が渡されておる。 誰も文句を言うものはおらんさ」
そうか。
どっと力が抜けるのを感じた。
いずれにしても、力尽きる寸前だったのは事実だった。
後はアトリエに、マティアスさんとアンパサンドさん、フィンブルさんに送り届けて貰う。
アリスさんは、いつの間にか。
多分結果を報告するためだろう。
いなくなっていた。
アリスさんも、戦闘時には随分役立ってくれた。
ただ最後の瞬間、いなかった気がする。
あの時、何をしていたのだろう。
ただ、あれだけの手練れが、手を貸してくれていた、というだけで充分。これ以上は望めない。
次の試験はどうせまたマティアスさんが告知に来る筈。
それまで、ただ疲れを癒やすため、眠りを貪りたい。
食事をする余裕さえも無く。
体を繕う余裕さえも無い。
ただ泥のように。
やっと入った安全圏で。
リディーは、ふてくされているように膝を抱えているスールと。
ならんで、ひたすら眠りを貪り続けていた。