暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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双子は、ある世界でどうヒトが終わったのかを知る事になります。


2、ヒトの結末

アダレット王城の地下エントランスに集合。アンパサンドさんもマティアスも既に来ていて。

 

そしてルーシャとオイフェさん。

 

更にフィリスさんと呼ぶべきか。

 

三傑の二人目。

 

一瞬にしてネームドを倒す超絶の英傑が。

 

其処で弓を背負って、にこにこと笑顔を浮かべ立っていた。

 

リディーとスール、それにフィンブルさん。

 

これで中に入る面子は揃ったか。

 

その後、マティアスに案内される。

 

案内されながら、説明を受けた。

 

「氷晶の輝窟」って言われている絵は、元々どこだかの遺跡から発掘されたものらしい。描いた作者は不明。アダレット王家に所蔵されてはいたが、どうも暗い噂のある絵らしいのだ。

 

確認すると。

 

その絵は、寒々しい洞窟を描いた絵だった。

 

全体が凍り付いてしまっている。

 

此処まで寒い場所が他にあるのだろうか。

 

「うわー、懐かしいなあ。 人工太陽作った山思い出すよ」

 

「へえっ!? じ、人工太陽!?」

 

「ええとね、太陽の役割を擬似的に果たす熱空間だけどね。 インフラが雪に閉ざされて死んでたから、暖かい空間を作り出して、其処に道を……」

 

「う、嘘……」

 

絶句しているルーシャ。

 

リディーとスールより格上の錬金術師が絶句するような行為を。

 

それこそ「楽しい思い出」感覚でやってしまうと言うことか。

 

そして、ルーシャの反応からも。

 

それがあまりにもあり得なさすぎる事だと言う事は良く分かった。

 

「ほ、本当に人間ですの……? 三傑の一角とは聞いていますけれど」

 

「うふふ、どうだろうねー」

 

「……」

 

真っ青になっているルーシャをからかうように。

 

いつの間にかルーシャの後ろに回った(まったく動きが見えなかった)フィリスさんは、背中をなで上げる。

 

「うん、凄く教育を受けている体だね。 背筋ぴったり、格好もちゃんとしてる。 うーん、骨格とか骨とか内臓とか見てみたいなあ」

 

「ご、ごごごご、ご冗談をっ!?」

 

「凄く上等な絹服。 でも此処はベルベティスでもいいかな。 色々着せてあそんでみたいなあ」

 

いきなりスカートをめくり出すフィリスさん。ひいっと本気で怖がって悲鳴を上げるルーシャ。

 

色々自由すぎる。

 

マティアスが嬉しそうに目を細めていたが、即座に踵落としが入り、床で悶絶する。

 

踵を入れたのは、アンパサンドさんだった。

 

「今の事は報告書に書いておくのです」

 

「ひっ! やめてマジでやめて! 姉貴の仕置きがどれだけ怖いかアン知らないだろ!」

 

「知っているから書くのです」

 

「ぎゃああああああ」

 

頭を抱えるマティアス。

 

咳払いしたのは。

 

フィンブル兄だった。

 

「そろそろ、周囲を警戒した方がいいのでは」

 

「……」

 

嘆息するアンパサンドさん。

 

オイフェさんは最初から周囲を警戒していたけれど。それにしても、主人が色々陵辱されているのに、助けようともしていなかった。

 

ルーシャがもうお嫁に行けないとか呟いているので。

 

こういう所は自分より線が細いなあと笑ってしまう。

 

ヴォルテール家は、アダレットに尽くした数少ない錬金術の家だ。

 

冬の時代と呼ばれるほど、錬金術師が迫害された時代もあったらしいけれど。

 

そういう時代にさえ。

 

錬金術師が一人もいなくなったらどうなるか。

 

その事を想像できない阿呆はいなかった。

 

だからヴォルテール家は、冬の時代にさえ大事にされ。

 

今も脈々とつながっている。

 

それは逆にとても過保護にされていた、と言う事も意味するのだろう。

 

ルーシャについては、もう馬鹿にしていない。

 

尊敬さえしている。

 

格上の錬金術師で。

 

本当に苦しいときには、裏から支援までしてくれていた。

 

謝る機会を早く見つけないととさえ思っている。

 

それなのに、それ一つできない自分が情けなくて仕方が無い。

 

ともかくだ。

 

ぱんぱんと、手を叩くフィリスさん。

 

「前も言ったけれど、わたしは監督だから、戦わないからね。 勿論攻撃が飛んできたら自衛するけれど、基本的に他の皆で身を守ることは考えてね」

 

「はい、分かりました」

 

「分かりましたあ」

 

「指揮は今回も貴方たちが執りなさい」

 

ルーシャが少し突き放すように言う。

 

何でもDランクの試験で手こずっているとかで、このままだと追いつかれるかもしれないと、この間ぼやいていた。

 

勿論そう簡単には行かない事は、スール自身が一番よく分かっている。Fランクの通常任務だけでさえひいひい言っているのだ。

 

この昇格試験だって。

 

少し早すぎるのでは無いかと思っているくらいである。

 

ルーシャの方が錬金術師としてずっと格上。

 

その考えには、今も変わりは無い。

 

だが、ルーシャはどうなのだろう。

 

他人の考えは。

 

分からない。

 

或いは、まったく別の事を考えているのかも知れない。

 

それにしても。

 

凄まじい寒さだ。

 

声は白く凍るし。

 

冬の一番寒い時期よりもきつい。

 

空気そのものが、一気に吸い込むとおかしくなりそうなほど冷たいし。

 

それになんだろう。

 

どうしてここ、明るいんだろう。

 

洞窟の中のように思えるんだけれど。

 

周囲は明るくて、特にカンテラの類は必要なさそうである。

 

此処が不思議な絵画の世界だから、だろうか。

 

いや、そんな安直な理由ではないような気がする。

 

「スーちゃん、見て」

 

「!」

 

洞窟の上の方。

 

何か灯りを発している。

 

天井が高い洞窟だけれども。

 

そういえば妙だ。

 

洞窟らしい曲がりくねった構造も見当たらないし。

 

凍っている場所は兎も角。

 

全体的に丸くなく、四角い場所が目立つ。角っこなどに至っては、何かの金属素材かと思うほど、鋭角に尖っている。

 

何だ此処は。

 

警戒しながら、進む。

 

咳き込んだのはリディーである。

 

寒すぎて、どうも上手く動けないらしい。意識が飛ぶ前に、一度寒さ対策をした方が良いかも知れない。

 

一度ハンドサインを出して。

 

全員外に出る。

 

まだ戦っていないが。

 

これは、戦うどころではないと判断した。一度絵の外に出る。絵の外に出る方法は、ざわめきの森や。

 

アトリエの地下にある、お父さんが描いた絵と同じだった。

 

「まだ敵の姿も見ていませんのよ」

 

「いや、もし戦ったら死人でると思う」

 

「うん。 ちょっと準備くらいはしないと……」

 

「確かに寒すぎる」

 

毛皮のフィンブル兄がそういうくらいである。

 

意外に平気そうな顔をしているのはマティアスである。

 

鎧なんてきんきんに冷えそうなのに。

 

聞いてみると、やっぱり特殊な加工がしてある鎧らしくて。

 

ずるいと、内心で思ってしまった。

 

「ごめんなさい、一刻くらい待ってください。 ちょっと防寒具をアトリエから持ってきます」

 

「いってらっしゃーい」

 

楽しそうに手をヒラヒラ振るフィリスさん。

 

そういえばこの人も、ミニスカで平然としている。

 

多分服が違うのだろう。

 

ルーシャも平気そうだし。

 

ある程度の備えはしている、ということか。

 

ずるいとは思うけれど。

 

多分これは。

 

あの絵に入る錬金術師、皆が入る道だ。

 

その証拠に、アンパサンドさんは何も文句を言わなかった。

 

もしも此方に不備があったのなら。

 

何か文句を必ず言ったはずである。

 

ともかく、マフラーとかセーターとか、防寒具を取りだしてくる。

 

フィンブル兄と、リディーとスールの分だけで良いだろう。

 

他の人は、誰一人として寒そうにしていなかった。

 

知っているから。

 

対策していたのだ。

 

ただ、これも試験の一環だろうし。

 

こればかりは仕方が無いとも思う。

 

すぐにエントランスに戻り、防寒具を着込む。フィンブル兄にも渡す。お父さんのお古だけれど、それほど窮屈そうでは無かった。お父さんはそれなりに背が高いので、伸びさえすれば大丈夫なのだ。

 

「うむ、多少はこれでマシになるか……」

 

「ごめんね、フィンブル兄、待たせて」

 

「無理に突っ込んで怪我をするよりはなんぼもマシだ。 それにこれでは、初見殺しも良い所だし、仕方が無い」

 

リディーもスールも防寒対策はしたが。

 

あの凍えるような空気。

 

これだけで足りるかどうか。

 

中に入ってから。

 

何か色々と、対策はしなければならない。

 

もう一度、絵に入る。

 

先ほども観察したが。

 

やはり自然の洞窟にしてはあらゆる意味でおかしすぎる。ちらっと動くものが目に入ったが。

 

間違いない。

 

レンプライアだ。

 

即座に戦闘態勢に入る。

 

幸い一匹だけだけれど。

 

あの翼が生えた鎧のような奴。

 

つまり近付くだけで切り刻まれる奴だ。

 

即座にルフトを放り投げて起爆。

 

動きを止めたところに、ルーシャが光弾を放って貫く。それでも、レンプライアは動いていたが。

 

もう1丁、ピンポイントフレアつきのフラムを放り込んでやり。

 

灼熱の劫火に包むと、流石にバラバラになって砕け散った。

 

落ちてきた死骸を調べて、欠片を見るが。

 

純度が、ざわめきの森のとは段違いだ。

 

ずっと濃い。

 

ぬらぬらと動いているようで。

 

何だか、瓶に入れておかないと、不安になりそうだ。

 

見ているだけで、心が何かおかしな方向に引っ張られそうと言うか。

 

あまり良い気分がしない。

 

有り体に言うと、怖い。

 

壁を見ると。

 

すごく大きなトカゲが、かさかさと這っていた。

 

大きいと言っても、人間を脅かすほどのものではない。

 

でも、随分大きい気がする。

 

此方のことは気にもしていないようで。

 

さっと物陰に隠れてしまう。

 

興味津々の様子で、目を細め、手をかざして彼方此方を見ているフィリスさんだけは楽しそうだけれど。

 

他の皆は、この異様な光景に、沈黙するばかりだった。

 

移動を開始する。

 

彼方此方につららが見える。

 

それも鋭く尖っていて。

 

転んで刺さりでもしたらと思うと、ぞっとしない。

 

壁に妙なものを見つけた。

 

何かの機械だろうか。

 

見た事も無い文字が書かれている。少なくとも統一言語では無い。ひょいとフィリスさんが覗いてくるが。

 

びっくりするスールを完無視。

 

むしろ、嬉しそうにメモをとっていた。

 

「カルドさんに後で見せてあげようっと」

 

「カルドさん?」

 

「研究が得意な人なんだよ。 標の民って言ってね。 今では先生してるんだ」

 

昔の戦友らしい。

 

なるほど、友達のために、そういうものを集めていると言うことか。

 

ただ、不思議な絵の中の文字なんて、喜ぶのだろうか。

 

それはちょっと、スールには分からなかった。

 

道が狭くなってくる。

 

先行していたアンパサンドさんが、警戒のハンドサイン。

 

壁に貼り付いて、向こうを伺う。

 

レンプライアだ。

 

球体の奴が二匹。

 

確か、たまに姿を見せる、一番弱い奴だが。

 

あれでも確か、ブレスを吐いたり、わけがわからない超短時間詠唱からの広域攻撃をぶっ放したりしてくる。

 

危険であることに変わりは無い。

 

頷くと。周囲に廻り。

 

一斉攻撃を仕掛ける。

 

まずフラムで爆破して。

 

生き延びているなら、周囲から一斉攻撃、だが。

 

フラムで二体とも、平然としていた。

 

とんでもないタフさだ。

 

ピンポイントフレアが直撃したのに。

 

マティアスが、リディーの支援を受けて一閃するが、剣撃が途中で止まるほどである。

 

堅い。

 

ブレスを吐こうとした一体を、頭上からアンパサンドさんが蹴りを叩き込み。動きを止めて、注意を惹く。

 

更にもう一体に、フィンブルさんとマティアスが連続して斬撃と刺突を叩き込むが。

 

斬られてもまるで平然と動き回っている。

 

ルーシャの光弾も殆ど効果がない。

 

まずい。

 

こんなにレンプライアが強くなるのか。

 

至近に飛び込むと。

 

蹴りを叩き込み、わずかに揺らがせ。

 

傷口にルフトを突っ込む。

 

飛び退いて。爆破。

 

内側から吹っ飛んだ球体レンプライアだが。

 

それでもまだぴくぴくと動いている。

 

残り一匹に皆で攻撃を集中するが。

 

倒すまで、たっぷり四半刻掛かってしまった。

 

肩で息をつきながら、まだ動いている肉片を踏みつぶして、ぐりぐりとやるが。それでもまだ動いている。

 

どれだけタフなんだ。

 

フィリスさんはというと、戦闘の途中で飛んできた攻撃を、あろうことか素手で弾き。弾いた攻撃は傷の一つもつけられなかった。

 

火力も人外だが。

 

守りも同じと言う事か。

 

正直ぞっとするが。

 

ただ、敵に回らないだけでも、今は良いとするべきだろう。

 

辺りの素材も回収する。

 

確かコレ。

 

ハクレイ石。

 

リディーと一緒に図鑑で見た。

 

強烈な冷気を発する爆弾の材料になるものだ。上手く使えば、レヘルンと呼ばれる氷結爆弾を作れるかも知れない。

 

ただ、無造作に辺りに散らばっているのが気になる。

 

この洞窟。

 

何だか人工物の雰囲気があるのに。

 

どうして資源を放置しておくのだろう。

 

狭い所を抜ける。

 

天井が抜けている場所があったが。

 

あっと、思わず声が出てしまう。

 

真っ白だ。

 

凄まじい音と共に、風が吹き荒れ。

 

見た事も無い凄い雪が飛んでいる。

 

何だアレ。

 

あんな雪、見た事も無い。

 

おおーと、フィリスさんが嬉しそうに言った。

 

「こんなに密度の高い雪、見るの久しぶりだなあ」

 

「れ、例の山、ですか」

 

「他にも何カ所かで見たことあるけど、滅多に見られないんだよね、ずっしりつもるような雪。 対策できないとそのまま死んじゃうけど、対策できると色々遊べて楽しいんだよ!」

 

無邪気な子供みたいに言うフィリスさんだけれど。

 

対策云々の辺りが怖すぎる。

 

この人には何でも無い事なんだろうけれど。

 

他の人には絶対違う。

 

ともかく、周囲を見晴らせる。奇襲も受けづらい。そして天井に穴が開いているにしては、此処は寒くない。

 

焚き火を熾して。

 

一旦休む事にする。

 

うんざりした様子で。

 

マティアスが、剣の手入れをしていた。

 

「さっきの手応え、冗談じゃねえよ。 この剣で彼処まで切れないなんて……。 アン、お前はどうだった」

 

「自分はそれほど苦労は感じなかったのです」

 

「まあ避けてれば良いもんな」

 

「ほう?」

 

マティアスが、冗談と引きつった笑いを浮かべて、視線をそらす。

 

知っている筈だ。

 

回避盾が如何に危険で、技術的に高度な戦い方か。

 

それに、なんだかんだ言って、敵が引きつけられる程度の攻撃はしっかりアンパサンドさんもしている。

 

この間外で戦ったハサミムシみたいな規格外は仕方が無いにしても。

 

さっきのレンプライアは、何か戦い方を間違えた気がしてならない。

 

それにしても、此処は何なんだろう。

 

そう思ったら、リディーが先に聞いていた。

 

「フィリスさん、此処って何なんでしょう」

 

「んー、何だろうね。 でも、この様子だと、そとはずっと全部吹雪なんじゃないのかな」

 

「えっ……」

 

「それじゃ生きていけないよね」

 

笑顔で言うフィリスさんだけれど。

 

今、とんでも無い事を言わなかったか。

 

外が、ずっと吹雪。

 

想像もしたくない世界だ。

 

確か見聞院の本に書いてあったとかでリディーが教えてくれたけれど。どんなに寒い地域であっても。

 

短くても、暖かい季節はあるという。

 

此処にはそれがない。

 

つまるところ、世界そのものがおかしい、と言う事だろうか。

 

ともかく、少し休んだ後、更に奥へと進む。

 

奥へ行けば行くほど、壁は崩れ。空が吹雪いているのが見えるようになりはじめる。天井も、まるまる壊れている場所があった。

 

そして、見てしまう。

 

凍っているヒトの死骸だ。人間の中でも、間違いなくヒト族。

 

いや、格好からして、アダレットの住民や、錬金術師ではない。

 

この絵の世界の住人、なのだろうか。

 

あの、ざわめきの森のお化け達のように。

 

いや、あのお化け達は、番人だった。

 

だったら、この死骸は。

 

葬ろうにも、完全に凍ってしまっているし。それどころではない。

 

中には、折り重なるようにして。

 

氷の中に閉じ込められてしまっている可哀想な死骸もあった。

 

子供のものらしきものもある。

 

妙だな。

 

小声でフィンブル兄が呟く。

 

スールも同意だ。

 

ヒト族の死体しか見当たらない。

 

見えない壁にぶつかった。

 

どうやら壁が本来はあったらしい場所が、崩れた様子だ。

 

吹雪は入ってきていないけれど。

 

むしろ暖かいほどなのだけれども。

 

もしもこの吹雪に入ったら。

 

視界を奪われ。体力は一瞬でなくなり。

 

秒で死ぬ。

 

それが一目で分かるほど、ヤバイ場所だった。

 

また大きなトカゲが、かさかさと歩いて行く。此方は完全に無視している。レンプライアは避けているようだが。それだけだ。

 

何なんだろう此処。

 

「スーちゃん」

 

袖を引かれる。

 

紙だ。

 

だけれど、ゼッテルじゃない。

 

異常なほど白くて、文字も、人間のものとはとても思えなかった。

 

解読の魔術があると聞いている。

 

バステトさんがいれば、或いは。

 

いずれにしても、此処はおかしい。

 

棚のようなものが林立しているのだけれど、その全てが未知の金属だ。ツィンクに似ているけれど、どうも違うように思う。

 

雑に散らばっている鉱石。

 

ハクレイ石だけでなくて、色々なのがたくさんある。

 

そして、奥の方には、トカゲがたくさんいて。

 

卵をたくさん守っていた。

 

近付いても、警戒の声一つ挙げない。

 

フィリスさんが、無造作に捕まえると、ばたばたはしたけれど。抵抗はしなかった。

 

「フィリスさん!?」

 

「ふーん、人間に抵抗しないようになっているみたいだね。 ほら、触っても噛みつかないよ」

 

「ほんとだ」

 

スールも、言われたままトカゲを触ってみるが。

 

確かに抵抗もしない。ちょっと目を閉じるくらいである。

 

こんなに大きくって、爪も鋭いのに。

 

トカゲを離してあげると、卵の方に戻っていく。

 

そのトカゲを蹂躙しようとでもいうように。

 

奥から現れるレンプライア、それも複数。

 

どうやら、もう此処では。

 

ゆっくりはしていられないようだった。

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