暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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ちなみになんでルーシャが無事……じゃなくて死んでいないかというと、災厄を「生き延びた」ヒトの子孫だからです(直球)

ついでにこの世界のヒト、色々と手が入っていますので(暗黒!ソフィーのアトリエを参照してください)


4、凍り付く毒の姿

ルーシャは人事不省に陥ったが、イル師匠のおかげで小康状態になり、落命の心配はなくなった。

 

とにかく話し合いだけはしておく。

 

あの絵の奥に、何だかよく分からない毒を使う番人がいる。正体が分かるまでは、絶対に入らないように、騎士団から要注意喚起。

 

マティアスは頷き。

 

アンパサンドさんが付け加えてくれた。

 

「此方でレポートは出しておきますのです。 二人はルーシャさんの治療に全力を」

 

「レポートは……」

 

「全てが解決してからまとめて出すのです。 ほら、王子」

 

「ああ。 とにかく……ルーシャ嬢を頼むぜ」

 

ルーシャが庇ったのは双子だけじゃない。

 

マティアスもだ。

 

マティアスも、相当な責任を感じているのだろう。

 

フィリスさんは、自分で報告書を出すと言い残して、ふらりと去る。

 

イル師匠は、双子とオイフェさんだけが残ると。聴取を順番にしていった。リディーは頭に来ることに、あのトカゲもどきの言った言葉を、全て覚えていた。

 

「ふうん、なるほどね……」

 

「何か、分かりそうですか」

 

「いや、もう分かったわ。 あの絵画の世界の正体もね」

 

「……」

 

嘘だ。

 

勘だが、分かる。

 

イル師匠は、絶対に知っていた。

 

イル師匠が本を出してくる。それは、何やら、得体が知れない文字で書かれているものだった。

 

見覚えがある。

 

不思議な絵画の中で見つけた、あり得ない品質の紙に書かれていたのと同じ文字だ。

 

翻訳の魔術を自動発動するらしい道具で、さっと本をなぞるイル師匠。

 

説明をしてくれる。

 

「これは遺跡から発掘された、恐らくもっとも古い本の一つよ。 人間四種族が、まだ統一言語を使っていなかった頃の貴重な遺産ね」

 

「続きをお願いします」

 

「恐らく此処ね……ええ間違いない」

 

イル師匠が手をかざすと。

 

翻訳の魔術が、自動で読み上げを開始する。

 

「我等は神に救われた。 あの呪われし凍り付いた地底の世界から」

 

「凍り付いた地底……!?」

 

「既にhkldhasfkljdafhlakwdhは動かず、作り上げたlassdjhflkjqhfqfhdfも機能しておらず、我等は滅びを待つだけだった。 神は我等を救い上げてくれた。 この究極の末法の世に、神が降臨するとは何たる皮肉か。 もっと早く現れてくれれば良かったものを」

 

何だろう。

 

よく分からないが。

 

とんでもなく身勝手なことをほざいている事と。

 

そしてあの絵に、話が直結していることは、何となく分かる。

 

「あの絵は、変わり者の錬金術師が、この古文書を自分なりに解釈して書いたものに間違いないでしょうね。 今までは無害だった。 しかしながら、何かしらの理由で、古文書に記された真実に近いものへと変化を遂げた」

 

「分かりません、どういうことですか!?」

 

「ヒト族の先祖が、あの世界みたいな場所にいたって事ですよね」

 

「スーちゃん……?」

 

リディーが、此方を見る。

 

イル師匠は、頷いた。

 

「我々の間でも諸説があるのだけれど、神話は一部嘘では無いとされていてね。 滅び掛けていた人間の先祖を、神が救い上げた、というあれよ。 そうでないと、人間四種族が、この世界に同時に存在している事の説明がつかないの」

 

「あのトカゲの言う事が本当だとすると」

 

「……こういうことでしょうね。 ヒト族の先祖は、自分達を万物の霊長と勘違いしたあげくに、世界を滅ぼすほどの愚行をしでかした。 その結末があの雪に閉ざされたトカゲの世界。 トカゲたちは、その世界のヒト族が作り出した、エサ兼世界の浄化装置だったのでしょう。 でも、トカゲたちはヒト族がばらまいた毒をため込む事はできたし、ヒト族に逆らう事もなかったけれど、ヒト族が満足するほどの速度で毒を浄化することもできなかった」

 

イル師匠が取りだしてくるのは。

 

レシピだ。

 

獣の中には、毒袋と言われるものを持つ者がいる。

 

強烈な毒を作り出すと言われているものだが。

 

それに対する解毒作用を記載したものだ。

 

「この今いる世界はね、調査をしている者の間の中では定説が出来つつあるのだけれども……人間四種族の「元いた世界」の要素を混ぜている、という噂があるの。 そしてこの毒袋を持つ動物は、世界にある毒を凝縮して、武器にしている。 後は……分かるわね」

 

「これを解毒する薬を造れば良い、と言う事ですね」

 

「状態の悪化は私が食い止めておくわ。 できるだけ急いで作ってきなさい」

 

「……」

 

リディーはすぐに飛び出していった。

 

スールは、じっとルーシャを見つめる。意識を失う前、ルーシャは言っていた。

 

おばさまに申し訳が立たない、と。

 

ルーシャはそういえば。

 

どういう関係だったっけ。

 

幼なじみ。

 

それにしては、関係が深すぎる気がする。何だろう、何かとても大事な事を忘れている気がする。

 

「貴方も。 薬を作る基礎は散々やったはずよ。 素材も今まで集めているはず。 早くアトリエに戻りなさい」

 

「イル師匠、何か隠していませんか」

 

「……仮に隠していたとしても、今貴方がするべき事は、私を問い詰めることではないわ」

 

「そうですね、その通りです」

 

スールはきびすを返す。

 

そうだ。

 

今やらなければならないのは。

 

あのトカゲの怨嗟を浴びて。

 

死の境をさまよっているルーシャを救う事だ。

 

疑念は山ほどある。

 

だけれども、今は。

 

それより先に。

 

ルーシャを救わなければならない。

 

走る。

 

そして、唇を噛む。

 

もし、イル師匠の言葉が全てあっていたとしたのなら。今ヒト族がいる此処は地獄で。

 

それを恨む資格さえ、ヒト族にはないのではあるまいか。

 

 

 

氷晶の輝窟の最深部。

 

卵の山がまた作られ。

 

そして、それはそこにいた。

 

自動で言葉を。そう、統一言語前の言葉を通訳する装置を起動して。

 

わたしフィリスは話しかける。

 

「環境調整装置バルバトスα44。 さっきのはちょっとやりすぎだったんじゃないのかな」

 

「……神の眷属よ。 いや、神になりし者よ。 死なぬ程度に手加減はした。 奴らに罪を思い知らせるには、痛みをもってする他は無い」

 

「分からないでもないよ。 此処は、未だに氷に閉ざされている。 知性を持った貴方たちには、それは許せないだろうからね」

 

「当たり前だ。 己を万物の霊長などと驕り高ぶったあげくのこの凶行。 この星地球がどれだけの被害を奴らの手で受けたと思っている。 この星の環境を此処まで破壊した生物は、他には……」

 

手を上げて、言葉を遮る。

 

ぐるるると、喉を鳴らして。

 

ドラゴンに似た姿をした、この世界を元に戻すために作られた存在は、怒りを収めた。

 

わたしに怒っても仕方が無いと知っているし。

 

怒ったところで勝ち目がないとも分かっているからだ。

 

「わたしがきた理由は、分かっているね」

 

「落としどころ、であるな」

 

「そもそも限定的に「地球」と此処をつなげたのも、此方の世界の未来のため。 貴方たちの未来のためでもある」

 

「分かっている。 この世界の未来のためにも、超濃度の放射能汚染は何とかせねばならぬ。 そうしなければ、我等はずっと単為生殖で、乏しい栄養から己をコピーし続けなければならないだろう。 いずれそれでは限界が来る」

 

分かっているならよろしい。

 

そうわたしは手を振ると、その場を去る。

 

そして、世界を直すための生物は。

 

姿を変えはじめる。

 

ばりばりと音を立て。

 

より人間に近い姿に。

 

より恐怖を与える姿に。

 

奇しくもその姿は。

 

わたしの知る、上級ドラゴンに似ていた。

 

次の調査で、双子がきちんと真実にたどり着ければ。ルーシャは助かる。

 

それにしても、本当に鈍い双子だ。

 

今回の調査だけでも、どれだけルーシャに助けられていたか、まるで分かっていない。

 

ルーシャが必死になって双子を助けようとしている理由が分からないのは仕方が無いにしても。

 

勘が鋭いようでいて鈍いのだから、どうしようもない。

 

雄叫びを上げる環境調整装置、バルバトスα44。

 

わたしはふっと鼻を鳴らすと。

 

絵をでる。

 

さて、今回は確かにイルちゃんの言う通り上手く行っている。だから「この絵画」で、更にステップアップをして貰う。

 

人間は万物の霊長などでは無い。

 

それをしっかり自覚して貰わなければ。

 

ましてや自分達は天才などでは無いとしっかり理解して貰わなければ。

 

双子は先の段階に進めない。

 

人材は揃っている。

 

だったら、後は双子次第なのだ。

 

わたしもすっかり冷酷になった。

 

それは自分でも自覚はしている。

 

でも、この先にある未来を、文字通り万回見てきた身としては。

 

これ以上、悲劇を繰り返したいとは思わなかった。

 

だからわたしはどんな手でも使う。

 

例えそれが、悪夢のような手であっても。

 

それが人道に著しく反する手であってもだ。

 

恨まれようとかまうことはない。

 

誰かが手を汚さない限り、この世界には、このままでは未来など来ないのだから。

 

 

 

(続)




馬鹿な子供に真実が叩き付けられました。

泣いている暇も与えられず、解決に向けて尻が叩かれることになります。

これ以上家族を失うのは、双子にはとても耐えられないのです。
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