暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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割とフーコは好きなキャラです。

好きなキャラだからこそこう……酷い目にあわせたくなるのです。

わからない人も多いかと思いますが……


1、フーコと灼熱の世界

こんな灼熱地獄に生きている人だ。

 

相応に逞しいのだろうとは思ったけれど。

 

フーコと呼ばれているだろう人は、レンプライア。それも両手に鎌を持ち、下半身が蛇に似ている厄介な奴二匹を相手に、一歩も引いていなかった。だけれど、既に全身傷だらけである。

 

素手でどうして戦っているのだろうと思ったのだけれど。

 

槍らしきものが、側に砕かれて落ちている。

 

まあそれでは、素手で戦うしかないか。

 

やっとのことで、交戦しているフーコの側まできたけれど、既にスールは暑さでへろへろである。フィリスさんは平然としているが。手伝ってはくれないはず。自分達だけで何とかするしかない。

 

アンパサンドさんが突っ込んでいき、傷だらけで脇腹を押さえているフーコらしき人に、鎌を降り下ろそうとしたレンプライアの顔面に蹴りを叩き込む。威力は小さいが、充分に怒らせることは出来る。

 

更に、残像を作って加速。

 

もう一体の目を、抉るように斬った。

 

目そのものは潰せなかったようだが。

 

それでも怒らせるには充分過ぎる程だ。

 

フーコらしき人から、レンプライアが注意をそらした隙に。その場でへなへなと腰砕けになるフーコらしき人を、抱えてマティアスがこっちに来る。流石にお嫁さん抱っこしている余裕は無く、背負っていたが。見ると傷は想像以上に深く、脇腹の傷からは内臓が見えかけていた。

 

フィンブル兄が、すぐにいざという時のために持ってきている蒸留水で傷を洗い、ナイトサポートを塗りこんで手当を始める。

 

その間にリディーが支援魔術を発動。掛ける相手はスール。

 

アルトさんが本を開き、複数の剣を投擲。

 

一匹のレンプライアに集中的に剣が突き刺さり、雷撃が走って、爆散させた。

 

更にもう一匹に、スールが残った力を込めて、渾身の蹴りを叩き込む。

 

怯んだ隙に、アンパサンドさんが喉を切り裂き。

 

其処へドナーストーンを放り投げ。

 

ゼロ距離で爆破した。

 

雷撃爆弾の直撃を受けたレンプライアは、しばし痙攣した後、爆発四散する。

 

どうやら、何処の不思議な絵でも、レンプライアには何かしらの弱点というものがあるらしい。

 

此処では雷、と言う事か。

 

呼吸を整えるが。

 

いっきに熱による疲労が出てくる。

 

意識がもうろうとしているフーコらしき人の手当を、リディーが行うが。幾つか深い傷がある。

 

ナイトサポートを持ってきていて良かった。

 

しばしして、傷が溶けるように消えるが。

 

あまり状態は良くない。

 

村にまで運ぶべきだろう。此処にいると、いつレンプライアがまた来るか知れたものではないからだ。

 

フーコさんらしき人をマティアスが背負い。

 

黙々と村に歩く。

 

時々倒れそうになるリディーをスールが支えるが。

 

単に体力がリディーよりあるだけで。

 

スールもいつ倒れてもおかしくは無い。

 

村の歩哨が、フーコらしき人を見て、慌てて駆け寄り。そして担いで奥へ連れていく。あれがフーコかと聞くと。そうだと言われた。

 

「まったく、やんちゃな子で、いつも何処かに勝手に出かけてしまうので、困っていたところです。 巫女だというのに」

 

「巫女?」

 

「ドラゴンと心を通わし、村の守護を行う者のことです」

 

「へえ……」

 

ドラゴンと。

 

心を通わす。

 

頭がくらくらするが、とにかく顛末は確認しなければならないだろう。

 

フーコという人の様子を見に行く。

 

追加でお薬がいるかと思ったが、目を覚ました様子で。少しいたがってはいたが、半身を自力で起こしていた。

 

最初、あからさまにリディーとスールを警戒していたが。

 

周囲が説明をして。

 

やっと納得したようだった。

 

「あの黒き邪悪達を倒してくれたのは感謝します」

 

「あ、はい」

 

「それにしても、どうして一人で無茶を?」

 

「黒き邪悪が多くなってきて、ドラゴンの状況が心配なので。 様子を見に行こうと思ったのです。 ドラゴンには、巫女しか会うことが許されないので」

 

そうか。

 

どうやら、それが今回の仕事と、という事になるらしい。

 

いずれにしても、フーコを救出できたところで、一旦此処で引き上げたいところだ。話を確認すると、ドラゴンは「どうも様子がおかしい」程度の状態で、すぐにどうにかなる状況ではないらしい。

 

それなら緊急性はないはずだ。

 

次に数日後に来るので。

 

その時一緒に見に行こう。手伝う。

 

そういう話をすると、フーコはしばし警戒していたが。

 

全身の傷が回復しているのを確認して。

 

それで、まだ少し警戒している様子で、それでも頷いてくれた。

 

「分かりました。 しかしドラゴンはその、とても気が難しいので、出来るだけ怒らせないようにしてほしいです」

 

「えっと……」

 

「努力します……」

 

スールの言葉に。

 

リディーがフォローを入れてくれる。

 

ともかく、もう無理はしないように念押しして。

 

一度絵から出た。

 

同時に、気温が一気に変わったので、くしゃみが何度も出た。

 

これは体がおかしくなりそうだ。

 

気温差がどれだけあるのか。

 

焼け付きそうだった絵の中と違い。

 

エントランスは、むしろひんやりしているほどなのだから。

 

アンパサンドさんは、流石に修練が足りないとは言わなかった。

 

こればっかりは、精神論でどうにかなる話では無い。

 

「準備が終わったら、また数日前には声を掛けるのです」

 

「ああ、次は僕じゃなくてルーシャ嬢が一緒に行くかも知れないが、それは了承してくれ」

 

「はあ……」

 

「じゃ、わたしはこれで」

 

フィリスさんが、さっと姿を消す。

 

一瞬で、もういなくなっていた。

 

フィリスさんはずっと見守っているだけだったけれど。一度だけ、レンプライアの攻撃が向いたとき。視線だけで威圧して。レンプライアが慌てて下がるのを見た。朦朧としていたけれど。

 

あの意思も何も無さそうなレンプライアが。

 

あからさまに視線だけで逃げた。

 

フィリスさんの実力を、一瞬で悟ったと言う事なのだろう。

 

そういえば、ブライズウェスト平原で、イル師匠を見たコカトライスがその場で撤退を選んでいたが。

 

あれと似たようなものなのかも知れない。

 

単純な生物だからこそ。

 

圧倒的な実力には、むしろ敏感という事なのだろうか。

 

ともかく、戻ったらやる事がある。

 

暑さ対策だ。

 

あの中に入った後、凶悪なレンプライアにでも襲われたら、確実に死者が出ていたことだろう。

 

それほど、あの灼熱は強烈で。

 

体の自由を奪うものだった。

 

中に住んでいた角が生えていた人達は。小麦色に肌を焼いているだけでは無く、口の中に牙もあったような気がする。剣歯がより鋭い、と言う感じだろうか。

 

角に牙。

 

それにドラゴンと心を通わせる。

 

全てが本当だと鵜呑みにはできないけれど。

 

まさか、あの人達。

 

ドラゴンの要素を持った人間なのか。

 

可能性はある。

 

ドラゴンが人間と仲良くすることは絶対にあり得ない。一番大人しいドラゴンでも、積極的に街を襲撃しないだけで、近付けば襲ってくるとスールは聞いた事がある。ドラゴンは人間を見ると、見境無く襲ってくるものなのだ。それはこの世界における絶対の法なのである。

 

だが、逆に考えてみると。

 

或いは、ドラゴンが襲ってこない世界を夢見た人がいて。

 

そんな世界を、不思議な絵に託したとしたら。

 

ドラゴンが好む熱の世界に。

 

ドラゴンの要素を持つ人間達が住んでいる。

 

それならば、或いは共存が可能だと、思ったのかも知れない。

 

ヒト族に似ているのは、錬金術師の素質を持つのが、ヒト族だから。つまり筆者がヒト族だから、なのではあるまいか。

 

一旦解散して、アトリエに戻る。

 

収穫はちょっとだけ。

 

レヘルンもドナーストーンも消耗したが、コレばかりは仕方が無い。ナイトサポートの消耗は痛いが、そもそも絵の中の存在とは言え、人を救えたのだから、良しとするべきである。

 

アトリエについた頃には、ようやく調子も少し回復していたが。

 

お父さんはいない。

 

少し前まで、地下室で腐っていたようなのだけれど。

 

あれからまた外にフラフラ出ていって。

 

そしてまた帰ってくる様子が無い。

 

外に女でも作っているなら、それはそれでいい。

 

正直な話気分は悪いけれど、まだ何というか生きているだけ良い。

 

しかし、お父さんがどんな無茶をしているか分からない現状。

 

生きているか分からない、という事を考えると。

 

ぞっとする。

 

あんなになってしまっていても。

 

お父さんだ。

 

前は本当にどうしようもない駄目親だと思っていたけれど。

 

スールはここ最近で、多くの哀しみを知ったし、知識だって増やした。

 

憎悪が人を変えてしまうことも。

 

絶望を目の当たりにしている人が珍しくもない事だって知った。

 

お父さんだって、最愛のお母さんがいなくなってしまったのだ。壊れてしまうのは仕方が無いと、今では何処かで割り切れている。

 

今は、話をしたい。

 

そして、アトリエに戻ってきて欲しい。

 

一緒に晩ご飯を食べたい。

 

そう思うのだった。

 

地下室の戸をノックするが、やはり錬金術で封鎖されているようで、叩いてみてもまるで手応えがない。

 

諦めて、戻る。

 

リディーは少し休んでから。

 

レシピを書き始めていた。

 

「それって、この間書いてたアクセサリ?」

 

「うん。 宝石については、もうお店で買っちゃう。 合金は鍛冶屋の親父さんに加工を頼む。 それでね、これからバステトさんに話を聞いて、周辺気温の安定の術式を刻み込もうと思って」

 

「人数分、それ作るの?」

 

「ううん、私を中心にかなりの広さ、暑さを緩和するようにするつもり。 それで充分でしょ。 他の……例えば魔力を上げたり、速く動けたりするようにする別のも作ろうと思ってるけれど、時間がないからね」

 

確かに。

 

これが一番現実的か。

 

まず、イル師匠のアトリエに。

 

また、騎士団の人が来ていた。あの怖い鎧の人だ。ぼそぼそと話しているのが聞こえたけれど、立ち聞きは良くないだろう。離れて、少し待つ。そうすると、怖い鎧の人が、アトリエから出てきた。なお、槍を手にしている。この人、本来は槍が武器なのかも知れない。

 

そして驚くべき事に。

 

リディーとスールに話しかけてきた。

 

「リディーとスールだな」

 

「は、はいっ!」

 

「よろしくお願いします!」

 

「騎士団の副騎士団長、シャノンだ。 いつも王子が世話になっている。 これからも頼むぞ」

 

凄く怖い声だった。

 

或いは鎧を使って声を変えているのかも知れないけれど。

 

声だけで強さがびりびりと伝わってきた。

 

アンパサンドさんも、一緒に戦えば戦うほど、その勇敢さと強さが分かるようになって来たけれど。

 

だからだろうか。

 

その桁外れの強さが、少し話してみただけで、よく分かった。

 

副騎士団長か。

 

凄く偉い人だ。

 

そして今の騎士団長はヒト族で、伝説ともなっている先代に勝るとも劣らない実力だという。

 

もっと強いのだろう。

 

いずれ会ってみたいけれど。

 

それはまた、別の話になるのかも知れない。

 

ともかく、イル師匠のアトリエに。

 

灼熱の世界、アンフェル大瀑布の話をした後。

 

レシピを見てもらう。

 

少し考え込んだ後、イル師匠は幾つかの部分に、細かい手直しをした。

 

「この鎖だけれど、もう少し太くしなさい。 此処で重要なのは、見栄えよりも実用性よ」

 

「はい。 おしゃれな方が良いかなと思ったんですが……」

 

「おしゃれと強さは共存できないのよ。 残念だけれどね」

 

「……はい」

 

ちょっと凹むリディー。

 

それから、アドバイスを幾つか貰って。

 

レシピには許可を貰った。

 

最初に、幾つか言われたけれど。

 

最終的には褒めて貰った。

 

「拡張性の高い道具を思いつくのは良い事よ。 ナックルガードも拡張性が高いけれども、これも悪くないわ。 色々と派生して、実用的な装備品を考えなさい」

 

「ありがとうございます!」

 

「イル師匠に褒められて嬉しいですっ!」

 

「ただ、最後のこの魔法陣加工はまだ貴方たちだけでの作業許可は出来ないわ。 此処に持ってきてやりなさい」

 

そして厳しく締められもする。

 

ともかく、これで一段落。

 

前と比べると、即座に対策を思いついて、そしてイル師匠に許可を貰えるようになっただけ進歩しているとも言える。

 

手分けして動く。

 

リディーはバステトさんの所へ。魔法陣について、相談しに行く。

 

魔術の中には、周囲の環境安定をさせるものもあった筈なので。

 

これは大丈夫だろう。

 

スールは鍛冶屋の親父さんの所へ。

 

機嫌が良いのか、鍛冶屋の親父さんは酷い声で、自作らしい歌を歌いながらカンカン金属を叩いていたが。

 

これについては、客も閉口しているようだった。

 

「親父さーん」

 

「おー、スーか」

 

「はい。 このインゴットで、鎖作って貰えないですか?」

 

「ふむ、見せてみろ」

 

インゴットを渡す。

 

シルヴァリアとゴルトアイゼンの合金である。何度も作っている内に、少しずつイル師匠の評価も上がって、今では21点を貰えている。

 

親父さんは厳しい目で見ていたが。

 

頷く。

 

「まあこれなら、最初の頃とは雲泥だ。 良くもこれだけ良いインゴットを作れるようになったな」

 

「練習しましたので」

 

「調子に乗るな。 まだまだだ」

 

こつんと叩くふりをされたので。

 

首をすくめる。

 

お父さんが駄目になってしまったとき。

 

本当に親父さんには世話になった。親父さんのほうでも、伝手を辿ってお父さんの事を調べているらしいのだが。

 

どうもよく分からないらしい。

 

かなり危ない所をフラフラ歩いている、という目撃証言はあったらしいが。

 

危ない薬とかを試したりとか。

 

女を買ったりとか。

 

そういう事はしていないようだ。

 

何かを探しているようで。幽鬼のようなその雰囲気が恐ろしくて、路地裏に潜んでいるような連中も、怖がって手出しをしないらしい。

 

「三日前に目撃証言があったが、他の街に出ている傭兵から見たって証言も上がってるからなあ。 まったくロジェの野郎、何をしてやがるんだか」

 

「その、生きていれば良いです。 生きていてくれれば……」

 

「ふん、まあ少しは、子供じゃなくなってきたな」

 

「もう」

 

レシピを取りあげられると。

 

そのままじっと親父さんは見る。

 

鎖の作成だが。

 

明日には終わらせてくれるという。ついでに取り付けの金具も作ってくれるそうだ。ロケット部分についても、やってくれるそうだが。その代わり、これは実際に宝石を手に入れてから、になるらしい。

 

そして作業費用を聞いて、思わずうっと唸る。

 

ドロッセルさんの雇用費並みだ。

 

仕方が無いとはいえ、こればかりはしようがない。

 

いずれにしても、泣く泣くだが、頼むしかない。鍛冶師は他にもいるのだが、この人より信用できる人は、少なくとも王都にはいないのだから。

 

それから、コルネリアさんのお店と、ラブリーフィリスを見に行く。

 

コルネリアさんのお店の方に、良さそうな宝石が幾つかあった。

 

これは後でリディーと一緒に見に来るのが良いだろう。

 

スールは魔力が殆ど見えないので。

 

宝石として質が良いものかは、何とも判断が出来ないのだ。

 

それなのにどうして勘ばかり備わっているのか。

 

色々よく分からない。

 

リディーが戻ってきたので、コルネリアさんのお店に行く。宝石はちょっと高いけれども。

 

奮発して、大粒のエメラルドを買う。

 

支援金もあるし、これくらいの出費は許容範囲内だ。まだまだお金は余裕があるので、大丈夫である。そもそも、毎月の義務を果たす度に、相当なお金が振り込まれる。エメラルドくらいはすぐに買える。

 

そして、翌日は。一旦鎖が出来るのを待つと同時に。

 

楽しみにしていた事があるので、一旦休憩にする。

 

そう。

 

教会で、人形劇がある、と言う話だ。

 

孤児達の慰問のために、本職が来てくれるという事だが。

 

教会で過ごしたことがあるリディーとスールにとっても、シスターグレースは大恩人である。

 

シスターグレースは子供が好きそうなことを色々把握していて。

 

そして、自分でもゲームやら何やらが大の得意だった。

 

子供達を自立させるためのスキルを叩き込むのと同時に。

 

子供達の支えになるためには。

 

同じ目線で、色々な事が出来ないと行けないと。

 

シスターグレースは知っているのである。

 

恐らくは、そういう事なのだろう。

 

或いは、見かけ通り。

 

心の方も、若作りなのかも知れないが。

 

ルーシャも誘って、翌日人形劇を見に行く。

 

きっと。

 

たまには、気晴らしになるはずだ。

 

ここのところ、怖い事や、嫌な事。危ない事ばかりあったのだから。

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