蒼白のリヴァイアサン   作:黒木箱 末宝

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端末を探して

「退け雑魚共!」

 

 コンクリート(灰砂利)で造られた建造物や石油(黒油)で造られた未知を泳ぎながら、私は進行方向に存在する生成生物を薙ぎ払い泳いでいる。

 

「~~~~ダアッ!!」

 

 沸き上がる怒りを発散させるため、思い切り地面を殴る。背を反り全身を使った叩き付けは、大地を酷く揺り動かした。その衝撃で建造物が幾つか壊れたが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

 

「クソッ本来ならこの景色も楽しめたものを……おのれ化物め……ッ!」

 

 舞い上がる砂煙を払いながら愚痴を吐く。自身の招いたミスだと言うのに、それが認められず原生生物に責を押し付け一人怒りに震える。とは言えだ、事の始まりはあの気色の悪い原生生物を視てしまった時から起きているので、この怒りの矛先も間違いではないだろう。

 

 そこでふと、私の頭に戸締まりの不安が過る。海龍の故郷の星に不法入星した時、あまりの美しさと居心地の良さに、私は大人気なく海面へと飛び跳ねてしまった。そして、そこで原生生物を目にし、端末を落として──

 

「不味いッ次元を閉じ忘れていたッ!!」

 

 不法に次元に干渉し、穴を開けることは第九銀河系法に抵触してしまう。貴族の自分としては安い罰金か、高々数千年の懲役が課せられてしまう。家の名を使えばどうとでもなるが、対価に悠々自適な独身貴族生活ができなくなってしまう。そんなのはごめんだ。

 

 私は端末の捜索を後にし、次元の扉を閉じに急ぐのであった。

 

 

 

「ハァー……間に合った……」

 

 急ぎ次元の扉へと泳いだが、そこには最初と変わらない光景が広がっていた。海面へと顔を出し周囲を確認したが、原生生物はおろか調査用のドローンすら飛んでいなかったのだ。

 そうして扉を閉じた私は、息入れる間もなく端末の捜索を再開したのだ。しかし、生成生物様の通水孔の出口を探しても端末の痕跡が見当たらない。

 

「冗談は止してくれ……」

 

 おそらく孔の出口は幾つか分岐しているのだろう、そのことに気付いた私は、急いで他の出口を探す。

 

 砂にまみれ、洗体マシンに似た魚に纏わりつかれ、縄張りを守るためか細長い縞模様の魚に噛み付かれしながらも、ようやく端末の痕跡を発見した。

 

「……は?」

 

 そこに、痕跡は二つあった。()()()()()()()()。片方は端末のであろう、私が選び抜いたパーツと、それが刻む痕跡だ。理想の端末をオーダーする際にレーザーが漏れる程にカタログを見て選び抜いた龍鱗模様のサンダル、その足跡だ。

 

 では、その横にあるこの痕跡は何だ? ……いや、分かっている……理解している。その痕跡の持ち主が何なのかを。私は……俺は知っているッ……!!

 

「あの原生生物(害虫)がッ!!」

 

 怒りと悍ましさに鱗が逆立つ。中途半端に端末に似た悍ましい有機生命体が私のエルセラリウムに侵入した挙げ句、私の大切な新品の端末に近付いているッ!?

 

「ま、まさか……~~ッ!?」

 

 嫌なことを想像してしまった。もしも、もしもだ。あんな悍ましい異形の化物が、気色の悪い害虫が私の端末に触れていたら。同行なんてしていたら……ッ!!

 

「アアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?!?」

 

 想像しただけても脳が焼け爛れる感覚を覚えた。医学を齧った時に嫌に記憶にこびりついた内容が浮かび上がる。()()()()()()()()()()()()()()()()()正しく今、私の脳はストレスに焼かれているのだ。パチパチと過剰な電気信号がシナプスを焼く。

 

「お、おのれえぇぇぇえッ!!!!」

 

 私は端末と連なる忌々しい痕跡を追いかける。自身をこうも傷付けて荒ぶらせるその存在を。

 

 その先に何が待ち受けていようとも、必ずあの異形を端末から引き剥がし始末する。この時私は、そう勇ましく考えていたのだった。




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