蒼白のリヴァイアサン   作:黒木箱 末宝

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魚達の襲撃

 端末達の痕跡を追い、私は海流に乗り次のフロアへと向かって泳いでいた。痕跡を辿った先がこの海流が流れる道しかなかったので、このまま進めば追い付くだろうと思っていた。しかし、そう思い通りに行かないのが世の常だ。

 

「そこを退けーーッ!」

 

 前方を泳ぐ回遊魚の群れ。このままではぶつかると思い警告した。その後だった。まるい頭の魚(シイラ)が、私の口の中へと飛び込んできたのだ。

 

「グホオエッ~~~~!?」

 

 噎せて吐き出そうとするも(ヒレ)(つっか)えて吐き出せず、致し方無く飲み込んだ。素材がヨクトマシンとは言え、あまり過剰に摂取しても良いことは無いというのに。

 その後もまるい頭の魚は私に突撃して来る。衝撃は大したことがなくとも、肌を張る感覚は気分が悪い。それだけにもとどまらず、まるい頭の魚は私の(エラ)に挟まってきた。

 

「オノレェ……!!」

 

 たまらず泳ぐ速度を落として魚に対象する。いく私が頑丈で相手は魚とは言え、鰓に異物が挟まるのはマズイ。鰓から飛び出た魚の頭を潰し、ゆっくりと押し込むことで鰓に傷を付けずに魚を除去した。

 

 問題も解決したので再び加速。すると、前方から細長い魚(サワラ)が突っ込んできた。

 

「同じ手は食わん……!!」

 

 また口の中か鰓を狙われてはかなわんと口を閉じるが、細長い魚はそのまま加速し、あろうことか私に牙を突き立てた。

 

「何ィ~~~~!??」

(か、噛み付くだと~~~~ッ!? 貴族であるこの私に!? アクアリウムの生成物ごときが!?)

 

 あまりにもあり得ない出来事に身体が硬直する。例えるなら自分の端末が持ち主を通報するとか、銃が勝手に動いて所有者を撃つ様な出来事だ。そんな奇妙な現象が今、私に対して起きているッ!!

 

 驚愕に硬直した隙を突き、細長い魚は私の鰓や目を狙って噛み付こうとしてくる。

 

「ッ私に近寄るなあぁぁぁぁぁあぁッ!!!!」

 

 頭を振り、腕を払い、身体を捻る。それだけで魚は砕け散るが、今度は視界を白いモヤが覆い隠す。

 

「何だ……?」

 

 進行方向から漂う白く生臭いモヤ。見ると所々にオレンジ色の小さな粒が紛れている。

 

「ええい、まったくなんなん──」

 

 白いモヤを払い、その元凶を見付けた。するとそこに居たのは、白く生臭いモヤとオレンジ色の粒を排泄孔から放つ、銀色の太い魚(シャケ)の群れだった。

 

 それを見て私は気付きたくもない真実を知る。この白く生臭いモヤとオレンジ色粒は、銀色の太い魚の精子と卵だと。

 

「──おのれぇ~~ーー!!!!」

 

 生成物ごときが所有者の私に向かって精と卵をひっかけたのだッ! 怒りに興奮を抑えられず、怒声を上げてしまう。そうして開いた口と鰓に向かって、凶悪な顔の魚(バラクーダ)が襲来する。

 

「痛ッ!?」

 

 不意に走る痛みに怒りのボルテージが上がる。見ると、凶悪な顔の魚が剥き出しの鰓に噛み付いていた。体液こそ漏れ出てはいないものの、鰓という急所を傷付けられたのだ。

 

「貴様らぁーーーー!!!!」

 

 遂に怒りが限界まで達した私は、本気を出して生成物共を殺す事にした。周囲のヨクトマシンに思念を飛ばし、操る。嘗て戦場で【赤雷】と畏れられた赤光が全身を覆い、纏わりつく魚達を弾き飛ばし。

 しかし、それだけで終わらない。全身を纏う赤光が一つの珠へと達すると、それを爆散させて周囲への無差別攻撃を行う。

 

「クククク……ハーッハッハッハッ!」

 

 慌てた様子で逃げ惑い、光弾に当たり弾ける生成物の無様な姿に溜飲が下がる。それどころか、何かを守る様にして身体盾にし、そのくせに耐えられず四散する滑稽な姿に笑いが止まらない。

 

「ハァ~~~~…………やってしまった……」

 

 冷静になって周りを見れば、上等な景色だったであろう建造物達が、生成物と同様に塵になっていた。

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