蒼白のリヴァイアサン   作:黒木箱 末宝

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端末を取り戻せ

「許さんぞ…………」

 

 呟くと、奴は端末を背に庇い守る様にして私に立ち塞がった。

 端末を自身の物だと勘違いしているのか、それとも愚かなだけなのか……知ったことではない。

 

「──そこを退けーーーー!!!!」

 

 矮小な害虫に向けて衝撃波を放つ。それだけで奴は壁に向かって吹き飛ばされ、叩きつけられた。

 余りの呆気なさに殺意が削げる。様子を見るにこのまま放っておいてもいずれ死ぬだろう。死体の処理が憂鬱だが、今は端末だ。

 

「──りゅうじ!」

「りゅうじ……? 害虫の名前か……」

「……■■■■……■■■……!」

 

 何故か害虫へと駆け寄ろうとする端末を掴む。何やら害虫が吠えているが、端末を取り戻した今となってはどうでも良い。端末を眼前に上げ、汚れや傷の有無を確認する。

 

「……チッ……本登録が始まっている……厄介な……」

 

 汚れや傷は無かったものの、厄介な事になっていた。害虫がどうやったかは知らないが、端末の本登録が始まっていたのだ。

 とは言えだ、まだ登録対象は定まっていないので、このまま持ち帰って私を登録すれば、端末の主は私となる。古い端末を取っておいて良かったと思い、端末を喉袋へと仕舞う。

 

『──保護対象に損害が発生……りゅうじ……!』

 

 喉袋の中で端末が騒ぐ。成る程、()()()()……だから奴を案内していたのか。最優先プログラムだか何だか知らないが、忌々しい……。私は害虫を放置して、急ぎ帰るべく泳ぎ出した。

 

 

 

 海龍の像に一礼し、そのまま来た道を泳いで行く。

 

『警告、貴方は罪を犯そうとしています。直ちに保護対象の元へと戻ってください』

「奴は保護してやるほど弱くない。なんなら始末するべき害虫だ」

『注意、多種族への差別的発言をしています。気を付けて発言してください』

「喧しい物だ」

 

 喉袋の中、騒がしく暴れる端末に溜め息(泡粒)が漏れる。何が端末をこうも変えてしまったのか。これが分からない。とは言え、それも本登録して初期化すれば解決するだろう。設定は最初からになるが、今の時代は全て自動で出来る。良い時代だ。

 

 そうして次元の扉の元へと泳いでいると、後方から何やら喧しい波を感知した。見ると、ヨクトマシンを操り生成生物を従えて害虫が突撃してきたではないか。……青い光を放つヨクトマシンを纏い生成生物と一体化したように泳ぐ害虫に、奴に……私は思わず、美しいと感じてしまったのだ……ッ。

 

「■──■■■■ッ!」

「──、害虫がぁーー!」

 

 あり得ない事に一瞬固まってしまったが、直ぐ様に正気を取り戻し、害虫の迎撃に動く。

 害虫に向けて咆哮を放ち、側にある岩壁を殴り砕き、その破片を泳ぐと同時に奴に向けて蹴り飛ばしたのだ。

 

「■■ッ──」

 

 高速で泳いできた奴には効くだろう。いくらヨクトマシンを纏おうとも、奴には経験が足りず、更に形状が水中に適していないであろう身体では回避もままならないはずだ。案の定、奴は加速の影響でろくに回避運動ができていない。

 

 このまま奴は岩にぶつかり息絶えると考えほくそ笑んだ。その時だった。

 

「何ッ!?」

 

 奴の前に青い光を纏った魚が飛び出し、その身を盾に害虫を守ったではないか!

 

「チィ! 生成生物如きがッ!」

 

 ならば死滅するまで繰り返すのみ。側にある岩壁を同じ様にして奴に蹴り飛ばす。しかし、迫りくる岩弾を、魚達が全て防いだ。小魚が群れてその身を砕き盾とし、大型の魚が身を抉ってでも岩に体当たりし軌道を逸らす。

 

「ッ~~~~あり得ないッ! 何が起きているッ!?」

 

 あの魚は生成物。どこまで行っても飾りでしかないはずだ。それが己の命を投げ捨て害虫を守り、挙句砕け散る身体から自身のヨクトマシンを害虫に託す始末。

 

「ッ何なのだ貴様はッ!?」

 

 私は、始めて害虫に恐怖した。




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