蒼白のリヴァイアサン   作:黒木箱 末宝

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終焉

 エルセラリウムに来てからと言うものの、望んだ悉くが手から零れ落ちた。それは端末に始まり、エルセラリウムでの楽しめた全てだ。そして今、私は端末すら失い、私の尊厳さえ奪われようとしている。

 

 現に、このエルセラリウムの持ち主である私に向かって、生成生物である魚共が攻撃を開始しているではないか。

 私の硬い表皮に加え、分厚いヨクトマシンのシールドを生成生物の攻撃では貫けないものの、その小さな衝撃は私を揺らし、集中力を削ぐ。

 

「鬱陶しいッ……!!」

 

 私は全てを破壊するため、光線の威力を一時的に落とした。すると、それをチャンスと見たのか、奴が攻勢にでた。それが罠だとも知らずに。

 

「これで貴様は終わりだーーーーーーッ!!!!」

 

 全身をヨクトマシンが駆け巡り、体液の巡りを早める。その影響か視界も紅く染まるが、最早どうでも良い事だ。

 エルセラリウムの全てヨクトマシンに干渉し、全てを吸収する。そして、光線の威力を限界を超えて跳ね上げる。

 光線は再び拮抗。しかし、奴等はエネルギーが僅かであり、私はほぼ無限だ。

 

 そうして勝ちが確定した根比べに終わりを告げようとしたその時だった。端末を中心に、強力な音波が放たれたのだ。

 

「ふん、今更何を──」

「■■■■ッ!?」

「──モード【リヴァイアサン】を発動します」

 

 端末が何やら言うと、周囲から生成生物が集いや奴等の後ろへ回って列を作り出した。その列はどんどんと勢力をまして行き、軈て一匹の巨大な生物の形へと変わっていく。

 

 白い身体の蛇の様なシルエット。蒼い鰭を持つ水掻き付きの手足。牙の並んだ口と、水に揺らめく長い髭。

 

「ま、まさかッ!?」

 

 その姿を私は知っている。しかし、こんなところで目にするはずが無い。だってそれは──その姿は──

 

「海龍……様……ッ!?」

 

 一瞬、ヨクトマシンが魅せる幻影だと考えた。だが直ぐに、それが違うと分からされた。何せその目が──怒りで真紅に染まった、私達が畏れ憧れた龍眼が、私を睨み付けているから。

 

「お、お待ち下さい海龍様、これには訳がッ!!」

 

 どうにかして怒りを収めてもらおうとする私だったが、どうやら私は、いつの間にか海龍様の逆鱗に触れてしまっていたようだ。

 

「──【多接式直列光子加速砲】の発射許可を求めます」

「なっ、それは禁止兵器のッ!?」

 

 端末の言葉に驚愕する。【多接式直列光子加速砲】とは、文字通りヨクトマシンをエネルギーとするものが直列に繋がり、絶大な威力と速度の攻撃を放つ兵器だ。撃たれた側には衝撃波と津波による文明の破壊を齎し、撃つ側も多大なる犠牲を払わせる。文字通りの禁止兵器。

 

 ()()()、私に向かって放たれたのだ。

 

 先までの拮抗が嘘のように破られ、蒼白の光線が深紅の光線を裂いて迫りくる。

 

「嘘だッ!? 海龍様~~~~!!!?」

 

 神の名を呼び救いを懇願する。しかし、向けられた真紅の龍眼からは怒りしか読み取れない。

 

「クソ~~! ──ガッ!?」

 

 迫る破壊の光から逃げようとしたが、それは許さんと生成生物が攻撃して邪魔をし、私をこの場に縫い付けてくる。

 

「嘘だッ!? 私は貴族だぞーー!? こんな事がぁーーーー───」

 

 最後の足掻きすら赦されない。かざしたヨクトマシンを焼き壊され、全身が焼かれる。盾とした両腕が先端から消し飛ばさ、軈て光が喉を貫いた。

 

 

 

 私は海底へと沈んで行く中で、泳鯨景(走馬灯)を見ていた。それは端末を受け取りに行く朝からの出来事だった。

 

(端末を落としただけなのに……)

 

 相反する性質のヨクトマシンが全身で暴れ痛みに蝕まれる最中、私はたった一つの失敗を後悔し続けていた。

 

 軈てヨクトマシンの反発が限界を超え膨張を開始すると、身体が爆発。私はその生涯に幕を下ろされたのだった。




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