西エウロペ戦役―砂塵の中の虐殺竜―   作:Ocean501

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ドーモ、読者=サン。なぜか続いたクレイドルです。

細かい設定は全部この世界線だけの非公式オリ設定ですご了承(ry





2nd Sortie 標的捕捉、距離2000

 背部に備えられた大口径スラスターが青白いイオンの奔流を吐き出すと、宙に浮いた全備重量125tの虐殺竜を虚空へと蹴飛ばした。

 バックパックの容積のほとんどを占めるIAA-130IB『メテオールⅢ』は、ジェノブレイカー用のウィングスラスターに搭載されていたIAA-100IB『メテオールⅡ』の改良型に当たる大出力イオンブースターだった。先代が小口径稼働ノズルを採用して直線での加速能力と細やか(かつ殺人的)な機動力を両立したのに対し、『メテオールⅢ』はイオン噴流を2つの大口径ノズルに集約する事で重量を2割削減するとともに、3割程度の出力増を達成していた。新型の台頭や近代化改修により昔日の絶対的な優位性を保てなくなってきたジェノザウラーを、今一度最強の座に押し上げるために作られたスラスターは、今のところその能力を十全に発揮している。

 強烈なGに震える真正面のモニターの中で、味方を追走している方のライガーゼロがその精悍な顔を此方へと向けた。2機のレブラプターを追いかけている方も、一瞬遅れて上空へと視線をやるが、もう遅い。

 

 ──標的捕捉、距離2000

 

 本来なら照射するべき照準レーザーの照射を待たずに、視界に収めた敵──先行するライガーゼロ──に向けてフリッツは引き金を引く。ジェノザウラーの砲身に紫電が迸り、65口径長の砲身によって収束・加速された荷電粒子の閃光が焼けた空を裂いた。

 青白い光条は飛来する災厄から逃れようと両足に力を込めたライガーゼロの周辺に突き立ち、急速に熱せられた砂塵が周囲の砂と共に爆煙のように舞い上がる。一瞬遅れてイオンの流星を背負った黒い影が爆煙の中に飛び込み、鉄が拉げる大音響が砂漠を揺らした。

 後続するライガーゼロは増設されたパイルバンカーで急制動をかけながら、味方を覆い隠した爆煙に向けショックカノンを打ち放つ。無論本気で当てるつもりは無い。例えモニター上の味方のバイタルデータ画面が【NO SIGNAL】と喚いていようと、自身の眼で確認するまでは同士討ちの危険は冒せない。連装の砲身から吐き出された光球が地を這い、舞い上がった煙を吹きとばさんと突き立った。

 

『ぐっ⁉な、なんだ?』

 

 弾き飛ばされる砂煙の向こうを見透かそうとした瞬間、コクピットに衝撃が走り、けたたましいアラートと共に相棒の新獣王が苦悶に呻く。危険を感じたライガーゼロが自らの意志で距離を取ろうと咄嗟に地を蹴った瞬間、85tの巨体が()()へ向けて吹き飛んだ。

 モニターは晴れ行く砂塵の向こうから自機の喉元に伸びる二条の黒いワイヤーの姿を捉えている。ワイヤーを手繰るのは彼方から飛来した災厄の流星、漆黒の巨体の袂には見慣れたパールホワイトが意味を持たぬガラクタとして転がっている。一週間ほど前に送り込まれた見どころの有る若者の末路を察したパイロットは、躊躇せずスロットルを全開に入れた。

 同時に近接格闘(CQB)スイッチを入れ、機体の反応速度とゾイドコアの自身の思考を汎用戦から近接戦に最適化する。長年連れ添った愛機は、それだけでこちらの意図を察し、ストライクレーザークローにエネルギーを優先的に供給し始める。

 腰部から展開された空力翼によって器用に体勢を入れ替えたゼロの両前足に、黄金の輝きが迸った。

 

『悪手だ、それは』

 

 刹那、どこか呆れた様な言葉と共に、尋常では無い衝撃がコクピットを襲った。

 

 ◇

 

 ワイヤーキラークローに捉えられた敵は、引いて駄目なら押してみろとばかりにブースターに灯を入れた。同時に、ストライクレーザークローの準備動作も目に入る。このまま最大速度で突入しクローを叩きこむつもりらしい。教官としては落第に近いがゾイド乗りの腕は決して悪くは無い。むしろ、そこそこ有能なパイロットとすら言えるかもしれない。だが──

 

「悪手だ、それは」

 

 憐れみすら籠ったボヤキが漏れると同時に機体を前方へと跳躍させる。数秒前に踏みつぶしたライガーゼロのコクピットの残骸が四方へ弾け飛び、薄くなった砂塵を切り裂いて突進する敵の鼻先へ伸ばした右足を躊躇なく叩き込んだ。

 幾ら共和国にしては強固な防御力を誇るライガーゼロのコクピットであっても、彼我合わせて200t以上の鉄塊の正面衝突に耐えられるはずもない。流線型の頭部が機械油を噴き出しながら拉げ、地を這うような跳躍のベクトルが強制的に地表へと向けられる。突き立ったハイパーキラークローを後ろへと掻く様にしながら、フリッツのジェノザウラーは暴力的な衝突のエネルギーを上方への跳躍に利用した。125tの巨体が脚部の出力と衝突の衝撃のみで宙を舞い、そのまま前宙するように頭部を潰された獣王を飛び越えた。

 砂塵を巻き上げながら着地し背後を振り返ると、足蹴にされてコントロールを失ったゼロは友軍の残骸に突っ込んで巨大な砂煙を上げている。パイロットはともかく、ゾイドコアが無事かどうかは五分五分と言ったところだろうか。他に伏兵が居ないか周囲を見渡すが、彼方此方に部品が突き刺さった砂漠と、砂の稜線から頭だけ出して様子を伺うお気楽ラプトル(レブラプター)共以外には何も見えない。撃墜2機、残敵無し、状況終了。

 自分でも理由のつかない溜息が細く漏れた直後、インカムに能天気な声が響くと同時に、モニター上では通信相手を表示する無機質なウィンドウが立ち上がった。

 

『決まったー! フリッツ選手、猫ちゃん踏みつつ無慈悲な前宙! これは金メダル待ったなし!』

『ウルトラC超えてウルトラZiですね。的確にコクピット踏み抜くとは汚い、流石フリッツ汚い』

「──バカやってないでさっさと出てこい」

 

 ジェノザウラーも流石にイラついたのか、此方が指示を出す前に背中に背負ったビームライフルを審査員気取りのレブラプターが陣取った丘に向ける。ご丁寧に照準用レーザーまで照射したものだから、丘に隠れていたレブラプターが手足をばたつかせて駆け寄ってきた。

 

『わぁー! うそうそ! ごめんって!』

『加勢しようと思ったら蹂躙してたし、邪魔しちゃ悪いかなって思っただけなんだよー!』

 

【SOUND ONRY】と示された2枚のウィンドウからは、相変わらず無邪気な子供のようなセリフがたれ流されている。表示されている名前は【グスタフ07】、【ハインリヒ08】。彼らの顔が映らないのは、向こうのコクピットカメラが故障しているわけでも、電波状況が悪いわけでもない。そもそも、表示すべき顔が()()のだった。

 

「まあいい。1年ぶりか? 二人とも」

『正確には1年と23日10時間12秒かな?』

『ボクはプラス20分1秒~。ロっちゃんもおひさ~』

 

 足元でぴょんぴょんと跳ねる小型ゾイドに「おぅ」とでも言う様に乗機が唸る。

 

「で、こんな砂漠の真ん中で何をやっていたんだ?」

『ヒミツ~』

『部外者には教えられませーん』

 

 妙なところで任務に忠実なレブラプターに、そう言えばこんな奴らだったとコクピットの中で脱力する。

 実験小隊に居た頃、このお気楽さでアグレッサー部隊と対等に渡り合うものだから試験官にドン引きされたことも有った。無線封鎖中に世間話を始めだすほどではないが、改めて考えてみても上層部が彼等の実戦投入に何故踏み切ったのか疑問だった──計画中止による体のいい在庫処分だとしてもだ。

 EZ-027SA【レブラプターD】、頭部のコクピットへ人の代わりに高性能電算機を乗せた完全自律戦闘が前提のレブラプター。ゾイドコアとリンクした高性能電算機は大脳新皮質として機能してゾイドの人格を再現し、人と変わらないコミュニケーションを実現している。とはいえ電算機の性能不足か、はたまたレブラプターと言う種の性質なのか。表出した人格は悪い意味で戦闘兵器らしくなく、時期尚早と見て計画は破棄。試作品の1個中隊は最前線での評価試験と実戦投入という名の厄介払いに回されていた。

 

『で、フリッツは何でここに?』

 

 いけしゃあしゃあと問いかけてくるグスタフに、ツッコミを入れたくなるがそこは抑える。赴任先を教えたところで如何と言う事も無いし、何より、同じように返すのはなんだか負けた様な気がするのだった。

 

「今日付で605大隊に配属になってな。本来ならノンビリ遊覧飛行の筈だったんだが──」

『605? じゃあ、ちょうどいいね!』

 

「何?」自身の言葉を遮った台詞に、何か不穏なモノを感じとる。脳裏に浮かんだ馬鹿げた予想を振り払う前に、レブラプター達は自慢するように頭を振った。

 

『だって、今ボクら姫様の部隊に居るし』

『独立混成第605装甲擲弾兵大隊、無敵の第1装甲中隊第3機動偵察小隊とはボクらのことさ! 今から帰還するところだし、一緒に行こうよ! いいでしょ?』

 

 嬉しそうに飛び跳ねるレブラプターに、今度こそフリッツは盛大な溜息を吐き出した。

 実戦投入が決まった際には「運の悪い部隊もあるものだ」と他人事のように憐れんでいたが、そのツケがまさか此処で回ってくるとは。ハインリヒの言葉を信ずるならば、連中は自分の所属する中隊傘下の部隊となる。ええい、まさかとは思うがまた丸投げされないよな? 

 先進技研で散々振り回された悪夢がまた繰り返されるのかと思うと、転属の話に飛びつく()()を打ったのは自分だったかと自嘲すらこみあげてきた。

 

『どしたの? フリッツ』

 

 急に黙り込んだ自分に不思議そうな声を上げるグスタフに「何でもない」と投げやりに返す。少なくとも、今やるべきは己が身の不幸を嘆く贅沢ではないはずだ。輸送用のモルガ・イメイゴは先に帰してしまったが、今日中にランデブー・ポイントまで移動せねばならない。彼らの申し出が渡りに船であることには変わりなかった。

 

「君らの厚意に感謝するよ、回収地点までは遠いのか?」

『ここから北へ50.24㎞ってところかな。ところで、あのゾイドコアはどうする?』

 

 レブラプターの小さな頭が黒煙とスパークを纏う残骸の山へと向かう。

 戦場で破壊されたゾイドからコアを抜き取り後送するのは、戦場ではありふれた行為であり確立された技術だ。ゾイドコアを収める格納容器(クレードル)に大きな損傷さえなければ、周りの機材がどれ程傷ついていても本体に影響はない。そのため、残骸から格納容器をマニピュレーターで引き抜く荒っぽいやり方も許可されている。

 不意に残骸の山で小爆発が起こり、ストライククローの破片が宙を舞った。タイプ・ゼロは実弾兵器を持たないが、レッゲルと呼ばれる燃料は長時間高温に晒されると今のように爆発的な反応を示す。このまま放っておけば、間違いなくゼロのコアは失われるだろう。

 

「コアを引き抜くにしても、敵味方識別装置(IFF)を偽装しなければ自壊するんじゃないか?」

『ところがどっこい。自壊装置の作動を妨害するウィルスがジャンク屋に出回ってるんだよね。それでボクらも敵もジャンク屋の皆さんの恩恵に預かってるから、下手に対策も摘発も出来ないってわけ』

『コアが無事なままやられる方が悪いのさ。そんなわけで催眠NTRがグレイラストのトレンドってわけ』

「ろくでもないトレンドだな」

 

 嬉々として“戦利品”の確保に向かう2機に、呆れた様子の虐殺竜が続く。

 

 

 ◇

 

 

 それから2時間後。首尾よく手に入れた手土産のゾイドコアと共に回収ポイントに到着した3機は、回収班のレドラーⅡに抱えられて夕焼けの迫る赤い空に飛び立ったのだった。

 




基本的に本作はジェノザウラーがジェノザウラー(動詞)するのでライガー系を始めバトスト・アニメでは主役サイドの機体はワリを食いやすいです(帝国派)

主にライガーとかライガーとかライガーとか

また、時代設定の関係上、登場ゾイドはほぼ何かしらの近代化改修とか(魔)改造とかされてるので、勝敗は作者の癖とライブ感で決まります。

なのでゴジュラスがジェノザウラーをブチ転がしたり、レドラーがストームソーダをストーム/ソーダしたり、デスザウラーがマッドサンダー蹴り飛ばしたりします。ご注意ください()
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