西エウロペ戦役―砂塵の中の虐殺竜―   作:Ocean501

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いまさらヒロインが出てきたので初投稿です




5th Sortie アストリッド・フォン・プロイツェン騎兵大佐

 

「来たな、若造」

 

 執務室に入ったフリッツを迎えたのは、女盛り──と言うには少々勇ましさが勝る女性将校だった。

 ガイロス帝国陸軍大佐の軍服を隙なく着込み、肩には年季の入ったコートをひっかけている。平均的な背格好のフリッツがやや視線を上に向けねばならないほどの長身であり、頬に大きな傷が残る整った狐のような顔立ちには、不敵な笑みが張り付いていた。

 ざっと20年ばかりさかのぼれば、ラプトル共の言う”姫様”の敬称がピタリと当てはまるだろうが、こうして対峙すると自然と姿勢を正さざるを得ない雰囲気は”姉御”という言葉の方が的を射ている。右手に持った愛用の鉄扇が飛んでこないうちに、踵を鳴らすように直立不動の姿勢を取った。

 

「フリードリヒ・フォン・ハイゼンベルグ騎兵中尉、ただいま着任しました」

「独立混成第605装甲擲弾兵大隊、大隊長。アストリッド・フォン・プロイツェン騎兵大佐だ、貴様の着任を歓迎する。──コーヒーでいいな?」

 

「可能であれば、塩を一摘まみ入れていただければ」自身の好みを覚えていた昔なじみに、わずかにフリッツの相好が崩れる。

 

「相変わらず妙な飲み方をする奴だ──従兵! 塩の瓶も持ってこい!」

 

 執務室の壁に控えていた従兵が給湯室に消えると同時に、アストリッドは形の良いあごを執務室の応接セットへ向けてしゃくった。

 

 ◇

 

「さて、士官学校に入る前だからかれこれ10年近くはなるか」

「そんなところでしょうか」

 

 流石に名品を使っているのか雲に座っているかのようなソファに内心驚きながら、対面で優雅に足を組んだアストリッドに相槌を打つ。

 

「で、私がこんなクソ辺鄙(へんぴ)な場所で駆けずり周るハメになって5年だ。──貴様、よくもまあこんなところに志願したな?」

 

「これでもハイゼンベルグの男だから、では理由になりませんかね」芳醇な香りを放つ水面に塩を一振りし、一口。流石に良いものを使っている。工業用水で希釈した泥水のような、戦闘糧食のコーヒーとは比較にならない。

貴様の家(ハイゼンベルグ)私の家(プロイツェン)にそれ程の愛着を抱いていたとは初耳だ」対するアストリッドは、皮肉気に頬の肉を痙攣させた。

 夕空のような朱に染まった瞳がフリッツを射抜き、僅かな溜息と共に彼の本音を引きずり出す。

 

「──愛着と言うよりも、此処までくれば意地ですな」

「尚更質が悪いわ、馬鹿者」

 

 呆れた様に顔を顰める女将校に、フリッツは内心で苦笑を零した。

 朱の瞳の奥には、憂いの色が僅かに浮かんでいる。10年程前に脅迫染みてはいるが不器用な激励を送ってきた姉の様な存在は、その在り方を変えていないらしい。

 アストリッド・フォン・プロイツェン──ガイロスを裏切りネオゼネバスを興したギュンター・プロイツェンの傍流にして、ネオゼネバスへの合流を良しとせずガイロス皇帝への忠誠を誓った現在のガイロス=プロイツェンとも呼ぶべき伯爵家の現当主。

 主君やその重臣団からの白眼視に晒された彼女の一族は、裏切りの汚名をそそぐため前大戦を最前線で戦い抜き、その多くが命を落としてきた。

 当主たる祖父だけでなく、家督を継ぐべき彼女の父や叔父、兄や甥の命すら対価として得られたのは、僅かな所領の安堵と伯爵としての地位のみ。世間一般にとって彼らの献身は、大犯罪者に課された当然の奉仕作業としか評価されず、地に落ちた名誉は戦争の瓦礫に埋もれ、都合よく忘れ去られようとしている。

 戦争から20年以上を数える現在でも、プロイツェン伯爵家は中央政界への復帰を許されていない。

 

 ──我に最大の苦難を与えよ。我が汚名は実力によってのみ雪がれる

 

 当時の当主が発した言葉を都合よく解釈し続けるガイロス政界によって、一族は今も、最も危険な作戦地域への参加を求められている。

 ガイロスにとってプロイツェンの残滓は忌み子も同然であり、一族に求められているのは華々しい戦死による断絶のみだった。

 現当主のアストリッドが、こうした過酷な境遇を()()()()()能力に長けていたのは伯爵家にとって幸運だったと言える。優しかった祖父の血を吐くような宣誓を謁見の間の隅で眺めていた少女は、戦争を嗜む破壊者として西エウロペの一角に君臨するに至った。

 

「そうやって意地ばっか張っているから、ハイゼンベルグは貴様以外残っておらんのだ。残り少ないプロイツェンの貴重な家臣団を勝手に減らされては困る」

「戦働きで喰わせてもらっていた武門の端くれとして、意地も張れぬ奉公など願い下げですな」

「意地を張るなら後任を決めてから存分に張れと言っておるのだ」

 

 共和国やゼネバスの現地部隊から”絶滅伯”などと皮肉交じりに揶揄される程度には十二分な苛烈さを秘めた彼女ではあるが。伯爵家の我儘に付き合い、文字通り壊滅状態となった一族の生き残りに対して思うところを捨てきれないのも、アストリッドと言う女の美点の一つであった。

 

「気楽な帝国騎士はこれだから困る。ひい爺様の代に、無理やりにでも男爵あたりにしておくんだった」

「どうですかね。先々代や先代が張り切りすぎて、先の大戦で断絶している可能性の方が高そうですが」

 

「ヴェルナー爺さんも、エーリヒ少将も忠誠心の塊みたいな連中だったからな」記憶を呼び起こすように緋の眼が数瞬伏せられる。湯気を立てるコーヒーカップを傾け、寂寞を伴う苦い感情を、熱い液体で流し込んだ。

 再び揚げられた顔は、苛烈な女伯爵に戻っていた。

 

「だからこそ、忠誠心を単なる道具程度にしか考えていなそうな貴様が、此処まで付き合いが良いのが腑に落ちん」

「忠誠心はともかく、貴女にはそれなり以上の恩義があります」

 

 大げさに肩をすくめて見せる昔馴染みに、コーヒーの苦みとはまた別の感情が彼女の顔を歪ませた。

 

「やめろやめろ、貴様に貸した借りは……無いことも無いが、返さんでいい。返すな、可及的速やかに忘れろ」

「そこまで言われることあります?」

「ハイゼンベルグ相手に余計な貸し借りはするなと先祖からの厳命でな」

「悪魔の方がまだマシな扱いされてませんかね?」

「悪魔の方がまだマシだからだが?」

 

 彼女が酷く渋い顔をするのも道理だった。ハイゼンベルグの忠誠を超えた狂信ぶりに、プロイツェンの本家自身がドン引きするのは今に始まったことではない。

 事実、ギュンター・プロイツェンがネオゼネバスを裏切った直後、ハイゼンベルグの一族で構成された或る小隊は決別電と共にネオゼネバスの大部隊に突入し、それこそ自身が死ぬまで戦闘を継続し最後は自爆している。

 一時はガイロス宣伝省が、忠君烈士の鏡としてこの暴挙をプロパガンダに利用しようとしたが、前線部隊の指揮官から「先を越されて目の血走ったハイゼンベルグの人間を抑える身にもなれ」と悲鳴のような要請が届いて断念した話すら残っていた。

 ガイロスに残った家臣団の内、最強の戦闘能力を誇る一族の消滅はアストリッドにとって看過できるものではない。さりとて、この鎖を食い千切りかねない忠犬の取り扱いに彼女が頭を悩ませているのも事実だった。

 狂犬のフリをする忠犬ならばどうにでもなるが、目の前の青年士官からはその対極の匂いがする。こんな時、彼女は自身の勘を疑わない事にしている。

 

「ま、僕が悪魔かどうかはさておき、着任したからには給料分は戦いますとも。まずは何から手を付けましょうか」

 

「そのことだが──貴様に紹介したいヤツがいる」露骨な話題の転換に半目を向けはしたが、彼女にとっても渡りに船であることに変わりは無かった「ほら、小隊付きの通信士が未定だったろう?」

 

「新しい書類が入れ違いになってな──ああ、入れ」

 

 丁度良く響いたノックの音に、アストリッドは誰何を飛ばして入室を許可した。「失礼します」穏やかな清流のような声が控えめに響き、軽く硬質な足音が応接セットの近くで止まる。

 

「大隊長殿、新しいタブレットです」

「ん、ご苦労──紹介しよう、少尉。コイツが今日から貴様の直属の上官だ、官姓名を報告しろ」

「はっ!」

 

 どこか緊張した面持ちの妙齢の女性少尉が、教科書通りの挙手敬礼の姿勢を取った。やや野暮ったい印象を植え付ける黒縁眼鏡の奥から、鴨の羽色(青緑色)の視線が向けられる。

 

「本日付で第一装甲中隊、機動第二小隊。小隊付き戦術通信士官(オペレーター)を拝命しました、エイル・エンデ通信少尉です」

 

 その寒色の視線に僅かな引っ掛かりを感じながらも、フリッツは軽く答礼を返すのだった。

 

 ◇

 

 一通りの挨拶を終えたエイルは、フリッツの隣に腰を下ろし、ローテーブルに広げられた編成表を彼と共に覗き込んだ。

 大隊長の指が紙面を走り、樹形図を形作る兵科記号の上をなぞる。

 

「フリッツのストライク・ジェノザウラー、ツィーテンのジェノトルーパーMC、それにレブラプターD型(お気楽ラプトル)が2機。以上が、貴様が掌握する戦力だ。書類上の名前は機動第二小隊。クネルスドルフの装甲中隊の下に位置するが、基本的には私や擲弾兵中隊の指揮下で動いてもらう」

「戦闘群運用のためでしょうか?」

「ああ、そうとも」

 

 陸軍士官学校(クロンヴァルド)を出たばかりの新品少尉らしい硬さと勤勉さに、アストリッドが軽く頷いた。

 

「大隊全力で出撃し、大型ゾイドを中隊単位で集中運用する様な祭りでもない限り、中隊長は指揮を取らん。わざわざ中隊長本部分隊を付けるなら話は別だがな。基本的には、装甲擲弾兵中隊に貴様らのような機動小隊を付けて増強中隊規模の中隊戦闘群(カンプグルッペ)として使うことが多い」

 

 かつて歩兵に広く配備されていたアタックゾイドが、携帯式対ゾイド火器の普及により絶滅したZAC2130年代。戦場に現われた歩兵とゾイドの空白地帯(ミッシングリンク)の再編は陸軍にとって可及的速やかに片付けるべき問題だった。

 解決策は思いのほか早く見つかる。と言うよりも、アタックゾイドとニッチを取り合っていたゾイドが覇権を握っただけに過ぎなかった。

 すなわち帝国であればモルガに代表される、装甲歩兵輸送ゾイド。個人携行式対ゾイド武器システム(Man-Portable Anti-Zoids systems)──MANPAZ(マンパッズ)を担いだ歩兵を機甲兵力に追従させる足として、以前からの実績を持つ彼らが選ばれるのは道理だった。

 そんな中で近年急速に注目を浴び始めたのが、騎兵(ゾイド)、歩兵、砲兵を組み合わせた諸兵科連合(コンバインド・アームズ)だった。

 騎兵が操るゾイドは強大な戦闘能力を保持している。しかし、総じて巨大な機動兵器であることには変わりなく、また陣地の保持・構築、占領を単独では行えない。

 歩兵は一部では究極の汎用兵科と呼ばれる程に柔軟性が高く、また適切な運用を行えば大型ゾイドすら駆逐する。しかし、生身の体はゾイドや砲兵に対して余りにも脆く、正面戦闘での突破力は限定的だ。

 砲兵はこの世に存在するありとあらゆる障害を爆砕する戦場の女神ではある事に変わりはないが、自衛能力は酷く限定されている。

 諸兵科連合とは、これらを単一の指揮系統の下で運用することで欠点を補い合い、あらゆる状況に対処する強靭な部隊を作り上げる思想だ。

 酷く単純に言うなれば、ジャンケンでグー・チョキ・パーを一度に全部出すに等しい。一つの手しか出せない場合(=単一兵科の部隊)と比較し、どちらに分があるかは一目瞭然だった。たとえそれが、兵站や指揮権の複雑化を招く恐れを大いに孕んでいても。

 かつての大戦でもゾイド、歩兵、砲兵を組み合わせた作戦自体は無数に存在したが、それらはあくまでも現地部隊間の連携に留まっており、部隊編成の時点で明確に諸兵科連合を意識していたとは言い難い。急速な技術発展を背景とする、戦術による優位性ではなく新兵器の投入にこそ重点が置かれてきた、惑星Zi特有の軍事史の弊害とも言えた。閑話休題。

 西エウロペ戦役において、ガイロスは緒戦からカンプグルッペと大雑把に呼称する大小様々な諸兵科連合部隊を活用している。実際に、ある中隊戦闘群が共和国のディバイソンとカノンフォートで編成された従来型の突撃砲中隊を一方的に撃破するなど、実績も上々だった。

 とはいえ、これはガイロス軍に先見の明があったということではない。

 そもそも、未だに完全復活とは言えない国力では、他の二国の様に大型ゾイドを多数運用することは不可能だった。

 また本国から遠い西エウロペでは大型兵器に対する兵站上の問題もある。ネオゼネバスより租借した半島は、あくまでもガイロス系住民の保護が目的であり、大型ゾイドの重整備が可能なドックや根幹部品を製造する工廠等の建造は認められていない。

 現在でも、紛争のエスカレーションを恐れた(もしくはもっと単純にそのようなものを作るカネが無い)政府により、それらの現地工廠の建設は遅々として進まず、ガイロスは大破した大型ゾイドを一々本国へ輸送する有様となっている。

 結局のところ、当時は実績の少なかった諸兵科連合にガイロスがいち早く手を付けた動機は、そのような要因が大部分を占めていたのだった。

 

「指揮権は装甲擲弾兵中隊の中隊長だが、私の手が空いている時は大隊司令部が戦闘群を直率する場合もある」

「承知しました」

 

 ウルフカットに整えられた艷やかな深蒼色の頭が、納得したようにコクリと頷く。小隊付きの戦術通信士として、他部隊との接触は小隊長並みに多い。何処か不安げな色を浮かべた視線が、擲弾兵中隊の指揮官の名前をサッとなぞる。

 

「装甲中隊には他にジェノトルーパー系で完全充足された機動第一小隊、逆にレブラプターDのみで編成された機動偵察第三小隊が所属する。非常に喜ばしい事に、定数割れは起こしていない」

 

「ま、欲を言えばニ小隊もトルーパーで完全充足させたいが、何分手狭でな」ショーケースの中の楽器を眺めるようにアストリッドが一つボヤく。

 

「主力となるのが、第605擲弾兵大隊だ。装備は主に兵員輸送型のモルガGCZ。1個小隊5機で、40名の完全武装の擲弾兵を輸送できる。1個中隊は装甲擲弾兵3個小隊に、モルガAAを備える武器小隊1個と本部分隊からなる。ざっとモルガ20機、180名前後。大隊は中隊3個に各種支援部隊で665名。分かっていると思うが、基本的に連中の壊滅は我が大隊の屋台骨が折れる事を意味する」

「そうなる前に、我々が敵を圧し折らねばならないというわけですか」

「理解しているようで結構。ほかにもモルガキャノリーの砲兵中隊やら、ヘルディガンナーの対ゾイド小隊やらがいるが、まあ後は資料を見ろ、そこまで面倒を見られるのも面白くは無いだろう」

 

 パタンと閉じられた分厚いファイルを受け取ると「では、本題だ」とアストリッドが真新しいタブレットをテーブルの上に置いた。

 タブレットには山岳地帯の隘路の上空写真が映し出されている。

 

「先日、後方の補給拠点から第223前哨拠点に向けて前進した輜重段列が襲撃を受け壊滅した。見ての通り、223拠点は共和国側の大陸中央へ向けた補給路を北東方向から脅かす位置にあるアナベルグ山脈に、無理やり設置した楔だ。連中としても出来るならば可及的速やかに潰したいが、拠点の位置までは捕まえられていない。そこで補給品を運ぶ段列に目を付けた」

「戦闘が発生したところを見るに──後をつけようとして失敗した、というところですか」

 

 フリッツの予想に、アストリッドが相槌を返す。

 

「拠点が未だに無事なあたりそう考えるのが妥当だろう。我が方の拠点に配備されているのは、ヘルディガンナー根幹の1個中隊。山岳地帯に陣地を構築したとはいえ多少まともな戦力をぶつければひとたまりもないし、敵はその戦力を捻出できないほど落ちぶれてはいない」

 

 アストリッドの指が滑り、空撮写真の上に撃破された輜重段列の画像が表示される。谷底の隘路の脇を固めるように、各国の補給線のワークホース(或いは、ワークセンティピード)として運用されているGZB-006(コネクテス)の残骸が擱座していた。引きちぎられた体節がそこかしこで燻り、よくよく見れば、黒く焼け焦げた小さな破片も散見される。それが何かを理解したエイルが、小さく息を飲んだ。

 

「見ての通り、中隊を一月は維持出来る輜重段列が根こそぎ持っていかれた。生存者は確認されていない」

「護衛はどの程度いたので?」

「直掩のヘルディガンナーとレブラプターMRが1個小隊ずつ、打撃戦力としてセイバータイガーの分隊が1つだ。及第点ではあるが──」

 

「全滅した」興味深そうに眉を上げたフリッツに「ご覧の通り」とアストリッドが手を広げた。

 

「コソコソつけてきたガイサックを見つけたは良いが、直後にメガロマックス混じりの砲撃が飛んできたらしい。コネクテスの9機、ガンナーの小隊とレブラプター1機が瞬時に爆散。残ったコネクテス3機とレブラプター2機が撤退に移り、セイバータイガーが援護に回ったが。崖の上から元気なブレードライガー1個小隊が殴りかかってきてゲームセットだ」

 

 タブレットに映るノイズの走るヘッドカメラの映像には、レブラプターMR(近距離戦用のデスサイズではなく、88mmレーザーライフル1門を搭載したタイプ)の射撃を回避し、ストライクレーザークローを輝かせる黒いブレードライガーの姿があった。突き込まれる光芒を紙一重でかわしたライガーが、指呼の距離で前足の爪を振りかぶったところで映像が終わる。

 

「敵戦力は?」

「ざっと試算してみたが、恐らくディバイソン1個小隊とカノンフォート2個小隊からなる突撃砲中隊に、機動打撃用のブレードライガー1個小隊、斥候のガイサック小隊といったところか。贅沢なオールゾイドドクトリンの増強中隊──実に共和国らしい、火力さえ叩き込めば後はどうとでもなると思ってる脳筋編成だ」

「味方は?」

「先程言った手前ではあるが、こちらはちょっとした騒動の後でな、今動かせるのは貴様らの二小隊だけだ。〈フェアトラーク〉が言うには襲撃機(シンカー)を2機程度なら動かせるが……まあ、後悔したくなければ当てにはするな」

「作戦は?」

「貴様に単機で補給線を本陣側から辿ってもらう。ツィーテンは他と共に貴様のカバーと索敵だ。適当に吊り上げて潰せ」

 

「あからさまですな」フリッツが愉しげに問いかけると、それ以上に愉しげなアストリッドが指を鳴らす「だからこそ、罠として機能する」

 

「特に、貴様のSジェノは目新しい」赤い瞳が、篝火のような光を放っていた。

 

「連中としては、罠だと承知の上で仕掛ける他無い。新型が潰せれば良し、手に入れられれば尚良し、多少手こずっても戦闘能力を暴けば及第点だ。もっとも、私が貴様に求めるのは──」

「連中に、赤点を取らせてやること」

 

「結構」酷く満足気に、女伯爵が頷いた。

 

「──作戦開始時刻は翌1900時、部隊の展開には〈フェアトラーク〉のイメイゴを使う。何か質問は?」

「ありません」

「ならば良し、かかれ」

 

 先ずフリッツが、一瞬遅れてエイルが立ち上がり敬礼する。アストリッドもラフな答礼を返し、内ポケットから取り出したタバコに火を付けた。

 重苦しく甘い紫煙が立ち昇る。

 

「さて貴様が望んだ戦争だ。せいぜい愉しめ、フリッツ」

「吉報をお待ち下さい、我が主」

 

 不敵、と呼ぶには少々物騒な笑顔を交わしたフリッツが歩き出し、エイルが続く。

 後ろに響いた執務室の扉の音が耳に残る中、エイルは自身の前を行く頭一つ分は背の高い青年士官の背中を見つつ、何かを整理するように1つ瞬きをした。

 

 ──え? 正気???? 

 

 

 

 

 




惑星Ziの戦闘教義とか部隊編成とかプロイツェンの前史とかありとあらゆる部分に大嘘が含まれています。あくまでも惑星Ziの火葬戦記としてお楽しみください(イマサラタウン)

次回はようやくドンパチやり始めます

なお納得のいく戦闘描写はまだ思いついていない模様(戦犯)
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