『天空の明星』   作:みなつき

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『第十三話』

「想ー、朝ごはんできてるよー!」

「今いくー」

 

 階下から聞こえる廻の声に想はぞんざいに返事をする。

 制服に袖を通し終えて、部屋を出てからリビングに向かう。

 リビングのダイニングテーブルではトーストと目玉焼きやソーセージが載ったプレートが用意されていた。

 

「あまり起きるの遅いといつか咲希ちゃんに置いてかれちゃうよー」

「善処しまーす」

 

 廻と想は椅子に座って、手を合わせ「いただきます」と口にしてから各々食事を口に運ぶ。

 両親は共にいつも通り不在なのでこの家にいるのは廻と想だけだ。

 

「そう言えば雫たちが新しいアイドル活動するんだよ!」

 

 手早くトーストを食した廻がコーヒーを飲んだ後、そんなことを口にした。

 朝食時に話題を持ってくるのは基本的に廻のほうだ。

 そして今日は中々興味深い話題を持ってきたようだ、と想はコーヒーに口をつける。

 

「グループ名は『MORE MORE JUMP!』。ふふーん、実は私も少しは活動をお手伝いしたりする予定なんだ!」

「雫さんたちがねぇ……」

 

 最近想とは別に忙しくしており、宮女にも出入りしていた廻だったがその案件を手伝っていたのだろう。

 その話を聞いて、想はふと思った。

 

「姉さんがアイドルしたりはしないの?」

 

 こんなことを言うと身内贔屓の言葉に思えるだろう。

 だが、廻がスカウトをかけられたのは一回や二回ではない。雫と一緒にいることにより声をかけられる機会が多かったというのもあるが。

 そんな彼女が手伝い──つまるところ裏方に回るだけというのは少し首を傾げるもの。

 

「うーん、私はあまり向いてないかなって」

 

 何を、と想は口に出さなかったが表情には出ていたらしい。

 廻は苦笑しながら続ける。

 

「私は皆を笑顔にしたいってより、身近な人間が笑顔でいてくれたらいいってタイプの人間だからね。あんまりアイドル向いてないんだよー」

「なるほろ」

 

 アイドルは大衆のためにあるもの。

 そんな考えは古いのかもしれないが、望まれるアイドル像というのはやはり基本的にはそういったもので。

 廻の言うように皆より身近な人ではアイドルには向いてないのかもしれない。

 とはいえ、廻は初めて会ったばっかの人でも『身近な人間』にカウントできるコミュ力があるので想としては向いてないというほどでもないと思う。

 本人がやる気が無いのであれば無理に勧めるのもよくないので、想は心の中で切り上げた。

 そのタイミングでチャイム音が鳴る。

 

「あ、咲希ちゃんきたよー! ほら、私が出ておくから想は準備しておいでー」

「はいはい」

 

 

 

「うー、なんだか緊張してきたー」

 

 想の隣で歩く咲希は小さく身震いをしている。

 あの『セカイ』での出来事から既に数日経過しているが、この咲希との登校も相変わらず続いていた。

 

「なんで咲希が緊張してるのさ」

「だって、ほなちゃんが昔のことクラスの友達に話すの今日なんだよ!」

「だからなんで咲希が」

「見守る方も緊張するんだよ!」

 

 両の拳を握る咲希に想はやれやれと肩を竦める。

 過去の告白なんて見ている方も緊張すると言われればそうだが、今から緊張していては身が持たないだろうに。

 

 

 

『友達だからって、昔のこと全部話さなきゃいけないってわけじゃない』

 

 

 

 和解する前に穂波と話した時にはそんな風に言っていたし、その言葉を想も否定はしなかった。

 クラスメイトの友達に話すと穂波が言った時に、「大丈夫か?」と想は訊ねたが穂波は「皆がいるから」と。

 やっぱり穂波は強いな、と想が言ったら穂波は照れくさそうに笑っていた。

 そんなタイミングに立ち会えないというのは想としては歯がゆい気持ちもあるが、他の三人もいるし問題は無いだろう。

 打ち明ける穂波は怖いだろうが、案外言ってしまえば大したこと無かったりするものだと想としては楽観視。

 もしも何かあったら傍にいると言ったことは違えないと想は心の中で誓っているが、幼馴染三人がいれば自分はいらないのかもしれないとも思う。

 そう考えると、もしかしたら──

 

「もしかして、ソウも緊張してる?」

 

 咲希が少し心配したような顔をして想を窺っていた。

 ちょっと考えすぎていたらしいと想は苦笑する。

 

「かもしれないな」

 

 

 

─────

 

 

 

 咲希を宮女にまで送ってからは自転車で神山高校まで。

 時間は問題なく、いつも通り少し余裕があるくらい。

 下駄箱で靴を変えていたタイミングで、

 

「想ではないか! 今日も咲希を送っていったのだろう?」

 

 大きな声が想を呼び掛けた。

 想は眉をひそめながら、その大声の持ち主に挨拶する。

 

「いつも通り妹さんは無事に送り届けましたよーっと」

 

 大声の持ち主──司は満足そうに頷いた。

 

「うむ、ご苦労! ああ、いつも咲希に付き合わせて悪いな」

「別に、俺自身もやりたいことやってるだけっていつも言ってるでしょ」

 

 司とは何度か似たようなやり取りをしていた。

 そのたびに想は大体、自分がやりたいことと言っている。

 しかし、

 

「俺が想を労うのも俺の勝手だ。だから、いつもありがとう」

「急に真面目になるのこしょぐったい」

 

 変人扱いされることも多い司だが、こういった妹思いの部分とかは真面目だったりする。

 こういう風に真面目になられると普段とのギャップを感じるが、司自身はいつも真剣だ。

 周りが司というキャラクター性を掴み切れてないのかもしれない、と想は考えたが普段の行いはやはり変人そのもの。

 この司と合わせられるようなのは──

 

「やぁ、二人とも。朝から元気そうだね、周りからも随分注目されてるよ」

 

 軽薄そうな笑みで司と想に近づいてきたのは類。

 これくらいキャラクター強いのじゃないとなぁ、と想は俯瞰。

 

「む、類か。注目されるのは当然だろう! 何故なら俺は未来のスターだからな」

「ふふ、流石は司くんだ。常にポジティブシンキングを忘れない精神は見習うべきかもしれないね」

「俺を巻き込まないでくれません?」

 

 変人ワンツーに挟まれて、想としては若干居心地が悪い。

 とはいえ、司と類のやり取りは仲のいい友人そのもので少し前に不穏な空気を感じていた想としては安堵するものでもある。

 類はちゃんと居場所を手に入れられたんだ、と想は感慨に耽る。

 

「おや、想くん。自分だけ逃げられると思っていないかい? 君の変人入りもそろそろ近いはずだよ」

「やめない? そろそろ学校で二人と話すのやめるの検討するレベルだよ?」

「ぬっ、なんだその変人というのは!?」

「司が原因じゃい!」

 

 司に噛みつく想を見て、類は楽しそうに笑みを浮かべる。

 

「想くんは例え変人と呼ばれても、関わり方を変えないだろうに」

 

 

 

 朝に変人二人に囲まれたりしたが、それ以外は特に変わったことはなく授業もつつがなく進む。

 時間はあっという間に昼休み。

 自分の机でお弁当を広げる生徒、クラスを出て食堂や購買に向かう生徒。

 想は今日お弁当を持参していないためどうするかと思案していたところ、

 

「冬弥、昼いくぞ。ん、想もいるのか、一緒にどうだ?」

 

 クラスの入り口で冬弥を誘っていた彰人に一緒にと言われたのでご相伴にあずかることにした。

 今回は食堂で、各々好きなメニューを注文して席に座る。

 

「『Vivid BAD SQUAD』だっけ。まさか彰人が杏とチーム組むとは思わなかった」

 

 カレーを口に運びながら想は彰人と冬弥が最近組んだチームの話を持ち出す。

 

「まぁ色々あったんだよ色々」

「白石と小豆沢なら、俺たちもいい刺激になってお互いを高めあえる。そう感じたんだ」

 

 彰人と冬弥の言葉に想はふーん、と適当に相槌を打つ。

 話を聞くに、元からある程度関りがあった杏ではなく小豆沢という子がカンフル剤になったのか。

 

「その、小豆沢って子には会ってみたいかなぁ」

 

 杏の相棒でありチームを結び付けた立役者、想としても興味が湧く人物だ。

 

「いいんじゃねぇの。その内機会作ってみるか。アイツもお前みたいなのはいい刺激になるだろ」

「あら、もしかして俺って経験値かな」

「確かに想の歌なら小豆沢にとってもいい経験になるだろう」

 

 少しふざけた想の返しに冬弥は真剣に頷いていた。

 相も変わらず洒落が通用しないなぁ、と想は半目。

 

「なんにせよ、『あの夜』に近づくにはまだまだ全然足りねぇからな、俺たちもアイツらも」

「ああ、少しでも近づくためには研鑽を重ねるしかない」

 

 真剣に夢を語る二人。

 その様子を見て、想はしみじみとした。

 

「見てる方向が一緒、目的を同じとした仲間ってのはいいものだねぇ」

 

 咲希に言わせるならまさに青春といった感じだろうか。

 

「想にも、咲希さん──バンド仲間がいるんだろう?」

 

 その冬弥の言葉に想は目をぱちくりとさせる。

 ああ、確かに傍から見ればそう見えるのか。

 

「──うん、それは確かに」

 

 ひとまず想は鷹揚に頷いてみせる。

 

「……なんだ、不仲でも起こしたのか?」

「なんで?」

「言い方、気付いてねぇのか? 含みあんぞ」

 

 彰人は机に片肘突きながら胡乱そうな目で想を見ていた。

 確かに、含みはあったのかもしれない。

 

「むしろ、その不仲を解消したばっか。こっからだよこっから」

「ま、お前がそう言うなら俺から言う事はねぇけど」

「もし何かあったら言ってくれ、相談くらいには乗れるだろう」

 

 荒っぽいながら心配をしてくれた彰人に真剣そのものの冬弥に想は少し苦笑してしまう。

 本当にこの二人が心配するようなことはない。

 ただ、

 

「何かあったら、その時頼らせてもらうよ」

 

 

 

 授業が終わったところで少し時間を持て余した。

 適当に屋上で時間を潰すか、と想が足を向かわせたところ。

 

「なんかいつぞやとは逆な気持ち」

 

 屋上には瑞希が佇んでおり、扉を開けた想にひらひらと手を振っている。

 

「やぁやぁ、ようこそ。今日はちゃんと授業受けたんだ、真面目だねぇ」

「この前は不良って言われた気がするけど」

 

 苦笑しながら想は屋上へ入っていき、適当なところに背を預ける。

 

「なんかいいことでもあった? 前より機嫌良さそうじゃん」

 

 想の顔を窺うように見ながら瑞希は楽しそうに笑みを浮かべていた。

 こういうところ、類と友人って気がするとなんとなく感じる。

 

「そりゃ、長年ってわけじゃないが目先の悩みが解決したもんで」

「あんな痕になりそうなくらい皺を刻んでいたのにね」

「そんなしかめってなかったでしょ」

 

 思わず想は額付近に手をやってしまう。

 その様子を見て瑞希はからからと笑っていた。

 

「でも良かったね。悩みが解決したのはいいことだよー」

「なに、逆にそっちは何かあったの?」

 

 想の言葉を聞いて瑞希は少し困ったような顔をする。

 

「なんて言うかねー。三歩進んだけど二歩下がる、みたいな。短期案件解決したのに長期案件に引っかかった、みたいな」

 

 よく分からない例えをして瑞希は肩を竦めた。

 

「ボクも想みたいにスッキリしたいよー」

「ご愁傷様、としか言えないな。聞くに、人に話して解決するって問題じゃなさそうだし」

「まったくだよ。でも、しょうがないかなって」

 

 瑞希はどこか視線を遠くに投げつつ、少し真剣な表情を作る。

 

「ボクたち、同じ気持ちを持った仲間みたいだからね」

「そりゃまた」

 

 少し想は意外に思う。

 こんな風に気楽に話しているが瑞希の事情は少々複雑で、それこそ中学の頃は限られた交友関係しかなかった。

 そんな瑞希が仲間を想う言葉を口にするとは。

 人間万事塞翁が馬、かな。

 

「同じ、気持ちか……」

「想?」

 

 ポツリと漏らした想の呟きに瑞希は首を傾げる。

 そのタイミングで想のスマホにメッセージが届いた。

 瑞希に断りを入れてスマホを開く。

 メッセージの主は咲希。

 学校が終わった旨と、今日は皆で集まれるから『セカイ』に集合しようと書かれていた。

 少しの間メッセージを眺め、

 

「呼び出しくらったんで、今日はここらへんで。とりあえずお互い苦労するな」

「いってらっしゃーい。ホントお互い苦労するねー」

 

 ひらひらと手を振りながら瑞希は想を見送る。

 想が屋上を出た後、瑞希が零した呟きは想は知る由もない。

 

「長期案件引っかけたのは想も変わらないみたいだ」

 

 

 

──────

 

 

 

「第三回! バンド作戦会議!」

 

 『セカイ』で五人が集まったところで咲希が切り出した。

 

「作戦会議? というか、一回も二回も知らないんだけど」

「ようやく五人で集まれたからね! 一回目はソウと二回目はいっちゃんも加えたけど具体的な話はしてません!」

「咲希が駄々こねてた以外有用な話はなかったでーす」

 

 苦笑しながらの想の言葉に咲希はじとーっと睨みつける。

 実際、作戦会議ーと言ってはいたが駄弁っていただけなのでしょうがない。

 

「と、いうことで、まずは……バンド名ってどうする!? まだ決めてなかったよね」

 

 ちらっと咲希は一歌のほうを見る。

 見られている一歌は若干困惑気味。

 

「咲希……なんで私のほう、見てるの?」

「なんとなく、いっちゃんこういうの得意かなーと思って!」

「この投げっぱなしの発案者である」

 

 作戦会議を始めて、バンド名を決めたいまではいいがここまで投げっぱなしだといっそ清々しい。

 

「もしかして一歌ちゃん、もう何か考えてるの?」

 

 小首を傾げる穂波に一歌は慌てたように両手を振った。

 

「えっいや、何も考えてないけど……でもせっかくだし、私達にあった名前つけたいよね」

 

 一応の方針を出すだけ投げっぱなしの発案者より大分マシだろう。

 その言葉を聞いて、志歩は顎に手を当てる。

 

「それなら……星の名前とかは? 昔見た、しし座流星群とかさ」

「あ、いいね! しほちゃんってばロマンチスト」

「いちいちそういう言いかた……」

「浪漫主義」

「それ言い方変えただけ」

 

 混ぜっ返す想の言葉に律儀にツッコミを入れる志歩。

 それを後目に咲希がうーんと思案顔。

 

「しし座流星群かぁ……英語でなんていうのかな?」

 

 しし座流星群をなぞってバンド名にするなら手っ取り早いのが外国語に変換すること。

 

「ちょっと調べてみるね。えーと……英語なら『Leonids』みたいだよ。フランス語なら『Les Leonides』だって」

 

 穂波は手早くスマホで調べた結果を伝える。

 

「レオニード……なんかきれいな響きだね」

「二―ドって入ってるの、いいね! みーんなが必要、って感じがして!」

「じゃあ、つづりは……こんな感じ?」

 

 一歌が黒板にサラサラっとつづりを書く。

 そして、訳されたつづりは、

 

「『Leoneed』……うん! いいと思う!」

 

 しし座流星群にかけたその名前は響きもよく、含まれた意味も綺麗なもの。

 

「あ! じゃあここにシャッと入れて……『Leo/need』! どう!?」

 

 咲希が黒板に書かれた『Leoneed』の文字に斜線を入れて『Leo/need』にする。

 

「……このスラッシュ、何?」

「ふふん! 流れ星だよ!」

「まぁ洒落てはいるんじゃない。字面も良くなった気がするし」

 

 流石にダガーがついていたら想も反対していただろうが、斜線を入れる程度なら字面を整って悪くない。

 

「流れ星……。ふふっ、流れ星がずっと見られるなんて、素敵だね」

「……ま、そう見ようと思えば見えないこともないかな」

「じゃあ決まりだね」

 

 一番難色を示しそうな志歩も別段反対の意思は無いようで、バンド名は『Leo/need』に決定と相成った。

 

「そういえばさ、歌詞、書いてきたんだ。前に咲希が作ってくれたメロディーに」

 

 まだ志歩とも穂波とも和解する前、『セカイ』で披露した咲希のメロディー。

 一歌はこっそりとそれに歌詞をつけていたらしい。

 

「歌詞? ふたりとも、曲作ってたの? やるじゃん」

「ふたりで曲作ってるなんてすごいね! 歌詞、見てもいい?」

 

 感心したような志歩と目を輝かせている穂波。

 

「あっ、ちょっと、あとで……! 目の前で見られるのは、恥ずかしいから……!」

「一歌、そういう恥は早々に捨てるに限るよ」

「想……っ!」

 

 揶揄った想の言葉に一歌は取り出していたノートを抱きかかえながら噛みつく。

 

「……でも、みんなでこの曲、演奏できたらいいな」

 

 その一歌の言葉にはとても大切な想いを抱いて歌詞を書いたのだと全員が分かった、

 

「じゃあ、『Leo/need』の練習一発目、その曲でやろうよ」

「さんせいーい!」

「もう年貢の納め時らしいよ、一歌さん」

「もう!?」

 

 

 

 『Leo/need』としての最初の練習。

 まずは基本的な事を志歩から指導されて、曲を弾いていく。

 

「きゅうけーい!」

「少し早い気がするけど、ま、いいか」

 

 大きく伸びをした咲希に、志歩は苦笑しながら休憩の許可を出す。

 

「やっぱりまだまだちゃんと弾くのは難しいね」

「私も勘を取り戻すので精一杯……あれ、想くん休まないの?」

 

 疲れを感じながら一歌と顔を見合わせていた穂波が視線を想のほうに向ける。

 いまだに想はギターを弄っていた。

 

「ん……ちょっとね。せっかくだし、個人的に一曲弾いとこうかなーって」

 

 バンドとして弾くのではなく、想個人で弾きたいと思っていた曲がある。

 

「おー、もしかして弾き語り?」

「イエス、弾き語り」

 

 咲希の言葉に想は頷く。

 

「私、想の弾き語り結構好きだから嬉しいな」

「しほちゃんとほなちゃんが来る前にちょくちょく聞かせてくれてたんだよー!」

「へぇ、じゃあお手並み拝見」

「私も楽しみだな、想くんの弾き語り」

 

 四人は思い思いに好きに言っている。

 

「まったく、プレッシャーかけないでもらえません?」

 

 小さく溜息をつきながらも期待されているならば応えなければ、と想は気を引き締める。

 

「それで何弾くの?」

 

 首を傾げる咲希。

 何を弾くか、それは初心者が練習するような単純で短い曲。

 それこそ以前『セカイ』で見つけた、擦り切れた教本に載っている──

 

 

 

「『きらきら星』」

 

 

 

 その簡単な曲は今の自分達を表すのにうってつけだった。

 

 

 

─────

 

 

 

 『セカイ』の屋上に影二つ。

 ミクとルカは屋上まで響いてくる歌を聞きながら、星空を見上げていた。

 

「想いを見つけられてよかった」

「そうね。とてもいい歌だったわ。それに、ミクもとても嬉しそう」

「わ……私は五人の歌を一緒に歌いたかっただけだよ」

 

 照れ隠しが下手なミクを見てルカは微笑む。

 

「……でも、次はどんな歌が一歌達から生まれるんだろう。楽しみだな」

 

 『セカイ』の想いの持ち主達。

 その五人が次に紡ぎだす歌をミクはとても楽しみにしていた。

 

「あ……。見て、ミク。空が……」

「あ──」

 

 空に一筋の光。

 

「綺麗な流れ星──」

 

 一瞬で消えたその光を見て、ルカとミクは笑いあう。

 

「また新たな『想い』が生まれたのかも」

 

 

 

 『セカイ』のどこか。

 空を見上げる一つの白い影。

 微動だにせず、空を見上げているその影は空に一瞬光が走ったのを見て「あ」と小さく声を漏らす。

 そして、

 

「空……きれい……」




これにてメインストーリー編『ここから、「もう一度」と言って』終了と相成ります。ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

さて、冗長な後書きを書く前に一つ。チラシ裏は見なくていいけど、これからどうするかについて気になる方に。

続きます。もうちょっとだけ続くんじゃよ、というやつです。





では、改まって後書き。
メインストーリー編は無事に終わらせることができました。
また見直したら改稿とかしていたりするかもしれませんが、その時はその時で。

「ここが気になる」とか、「意味深描写何?」とかは続きを待ってもらえたら。

とりあえず『きらきら星』エンドは予定通りで、そのためにちらほら弾き語り描写を挟んでいました。

そして、次のイベントストーリーまで書くのも予定通りです。
『Leo/need』の話をするにおいて、『雨上がりの一番星』までは必須だと考えていたので。
逆にそこから先の話は未定になりますがこの辺りについては次の話を書き終えてから。



未来の話はひとまず置いておいて、次回から『雨上がりの一番星』編改め『翳る曇り空に、一番星を』始まります。



そう言えば、『Leo/need』の担当回やるって言ってたけど咲希ちゃん無くない? と思った人もいるかもしれません。はい、『雨上がりの一番星』やると決めていたからですね。

では、とりあえず一週間ほどお休みをいただいて、その後の水曜日か日曜日に改まって更新となります。

またひとときお付き合い願えたら幸いです。
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