宮益坂女子学園の屋上には五人の少女たちがいた。
『MORE MORE JUMP!』として新たにユニットを結成した四人とそれに加えてもう一人。
栗空廻。
栗空想の姉である人物で、本来は神山高校に通っており宮女には在籍していない。
モモジャンの活動を手伝うために、手続きを取って放課後にこうやって宮女に出入りしていた。
何故彼女らを手伝っているのかと問われれば単純に『友達』だったから。
そんなシンプルな理由で、数奇な出来事を体験しながら手伝っているのは想の姉としてふさわしい人物だろう。
ただし今モモジャンは一つの壁にぶつかっていた。
アイドルとして活動をする上で事務所に所属することは基本。
だけど彼女らは様々な理由で事務所側から所属を断られてばかりだった。
現状闇雲に色々な事務所を当たっているがこの壁を崩すのは難しい状況である。
そんな折、
「ねぇ、廻ちゃん。ちょっとお茶に付き合ってもらえないかしら?」
のんびりとした口調で廻を誘うのは日野森雫。
日野森志歩の姉だが、志歩とは真逆を行くような性格。
「もちろん大丈夫だよー!」
雫の誘いに廻は二つ返事でオーケーする。
そんな話できゃっきゃしている様子を桃井愛莉は遠目で見ていた。
「それで、できればなんだけれど想くんも誘ってほしいの」
「うん、いいよー」
これまた二つ返事で廻はスマホを操作し始めた。
メッセージを打ち終えるやすぐさま廻のスマホが振動する。
「想も大丈夫だって!」
「ああ、良かったわ」
「ところで、なんで想を呼ぶの?」
その単純な疑問はまず最初に出るべきでは? と桐谷遥が首を傾げていた。
雫と愛莉は以前から廻との付き合いがあったが、他二人はまだ廻との付き合いは浅い。
ゆえに廻の独特なテンポには置いていかれることがままある。
「実は最近しぃちゃんはどうしてるのかなぁって聞いてみたくって」
「なるほどねー。想なら志歩ちゃんの近況知ってるだろうしね」
わいわいと話し合いを進める中、雫がくるりと振り返った。
「良かったら、皆もどうかしら?」
雫が浮かべる笑顔は彼女のファンが見たら卒倒しそうなほど眩しい。
本来の雫の目的は先程廻に話した通りだが、行き詰っている現状の息抜きも兼ねてだろう。
「わ、私も行っていいの!?」
誘われて動揺しているのは花里みのり。
根っからのアイドルオタクの彼女が『MORE MORE JUMP!』を生んだ立役者だとは誰も思わないだろう。
廻を除いた三人が元からアイドルとして活動していたのと違い、みのりはアイドルを目指していた卵だ。
だけど、そのみのりのエネルギーが他の三人が再びアイドル活動をしようと思い至った切っ掛け。
閑話休題。
「ええ、もちろんよ」
「あ、想の事気にしてたりする? 私の弟でいい子だから何も気にしなくていいよー!」
雫と廻はみのりの気後れを全く意に介さず快い返事を返してくれる。
ただ、みのり以外の二人からの反応は芳しくない。
「残念だけど、私はちょっとやることあるからパスね。想くんにはよろしく伝えておいて」
「私も難しいかな。栗空想くんの名前は天馬さんと星乃さんから聞いたことあるから気になるけれど」
愛莉は廻経由で元から想と知り合いで、遥はクラスメイトの咲希と一歌から話に聞いたことがあるらしい。
「では、不肖花里みのり! 雫ちゃんと廻ちゃんにお供いたします!」
「愛莉ちゃんと遥ちゃんが来れないのは残念だけれど、みのりちゃんよろしくね」
「じゃあみのりの事も想に伝えておくねー!」
みのりも加えてまさに姦しいといった体の三人を愛莉はジト目で眺める。
「どうかしたの?」
「いや、ちょっと想くんが心配かなって」
「ああ、男の子が一人だもんね。私は名前と少しだけしか話に聞いたこと無いけど、どんな子?」
「しっかりしたいい子よ。会ってみれば分かるだろうけど廻の弟ってのに納得しかないわ」
ただ、と愛莉が付け加える。
「想くんが心配なのは彼が男の子一人ってことじゃないわ。私や雫と会っても物怖じしない子だもの」
「じゃあ、何が……?」
「あの三人ボケしかいないでしょ」
言われて遥は賑やかな三人を見る。
天然ボケな雫に、完全にボケ気質なみのり、ムード―メーカーな性格だが属性としてはボケの廻。
「……たしかに」
「想くんはまぁその場の空気に合わせるタイプだから。あの三人に混じったらボケ倒しで話が進行しないのを見かねて大変でしょうね」
「なんか、大変そう」
遥はまだ会ったこともない男の子に同情を禁じえなかった。
─────
「は、はじめまして! 花里みのりです」
「どうも、はじめまして栗空想です」
廻に呼ばれたお茶の誘い。
もとはと言えば廻が雫に誘われて、そこから想も一緒にどうかという話になったとのこと。
雫が想を呼び出したい理由なんてのは想像に容易く、大体志歩の事だろうと見当がついていた。
そして、モモジャンの他のメンバーも誘ったところ想の目の前にいる少女、花里みのりも同伴することになったらしい。
適度に他の客の話し声が聞こえる程度の喫茶店で、店内ではジャズミュージックが流れている。
席は想と廻が姉弟で隣同士。廻の向かいに雫、想の向かいにみのりという妥当な配置。
「あ、みのりー。想ってば人の事名字で呼ぶの苦手だから、良ければ名前で呼ばせてあげてー」
「何故バラした、何故バラした」
さらりと打ち明ける廻に思わず同じ言葉を繰り返してしまった。
わざわざ人の癖をバラさなくてもいいだろうに。
「あ、そうなんだ。別に私は構わないよ! でも、なんで?」
あっさりと了承するみのり。緊張しているのとは別で人見知りはしない性質っぽい。
「まぁ、幼馴染とかの近しい子と遊んでるのがいっつもだったんで相手の事名前で呼ぶのが普通だと小さい頃は思ってたの。その癖が抜けてない感じ」
「幼馴染って、志歩ちゃんのことだよね」
「志歩のことご存知でしたか……」
「うん、クラスメイトなんだ!」
「なるほど。あ、みのりもこっちの事好きに呼んでいいから」
それで志歩のことを名前呼びにできるくらいには親しいのは結構なコミュ強者だなと想はみのりを観察。
一瞬じっと睨む形になってみのりが思わずビクリとする。
「えっと、私のこと見ても何もないよ!」
「あーごめん。志歩のクラスメイトってことだからつい」
「あんまり見られると恥ずかしいよー。なんだか想くんにもオーラ見えてるしー」
「みのり、そのオーラは隣にいる二人から漏れてるものだと思うよ」
残念ながら想自身オーラみたいなものは自覚したこと無いし、他人からも見られたことはない。
隣にいる廻と雫は笑顔でこちらの会話を聞いてるだけなのになんかオーラみたいなものが流れ出ている気がする。
「ふふ、みのりちゃんも想くんとすぐに仲良くなってよかったわー」
「うんうん。仲良きことは美しきかな、だね!」
想とみのりを眺めながら談笑し、カップを傾ける。
その姿だけで雫と廻は絵になった。
「ほら、見てごらんみのり。アレが『本物』ってやつだよ」
「うっ、眩しすぎて直視できない―」
咄嗟に目を手で庇うポーズをするみのり。
ノリがいい、というか素でこの調子なんだなぁと想はなんとなくみのりの性格を納得。
「ところで、雫さん。俺に何かご用ですか?」
みのりと漫才みたいなやり取りをしているのは楽しかったが、ここで想は自分が呼ばれた理由を雫に訊ねる。
「そうね。想くんにはしぃちゃんが最近どうしてるのかを訊きたかったの」
「やっぱり志歩のことですか」
「ごめんなさいね。迷惑だったかしら?」
「いえ、そんなことはないですよ。ただ志歩には俺から話聞いたってことは内緒にしてください」
雫と志歩の姉妹仲は悪いわけではない。
ただ志歩が思春期真っただ中で、何かと目立つ雫と一緒にいるのは居心地が悪いとのこと。
それでつい邪険に扱ってしまうあたり、志歩もまだまだ若いなぁなんて想は思ったりする。
「大丈夫よ、想くんに話を聞いたなんて言ったら私もしぃちゃんに怒られちゃうわ」
「でしょうねぇ」
何故そんなことをわざわざ聞いたのかと怒る志歩の姿は想像に容易い。
なお、想に対しては雫の倍以上の厳しい態度で当たるだろうことも。
「まぁ、今はバンド活動に当たって志歩が中心となって皆を指導している感じですね。遠慮なくバシバシ扱いてくるので厳しいですよ」
「わー、志歩ちゃんスパルタ―」
「志歩ちゃんってすごいテキパキしてる感じだもんね」
想の口から出たバンド内での志歩の立ち位置に廻とみのりも思い思いに自分の知ってる志歩像と重ねている様子。
「とはいえメンバーも志歩が厳しいことは承知の上ですし、なんやかんやで皆と一緒にいられるのが嬉しいのかどこか甘い部分も見え隠れしたりって感じですね」
「うふふ、しぃちゃん楽しそうにしてるのね。それなら良かったわ。想くんから相談受けた時は私も心配していたし……」
雫には以前志歩を呼び出すのに協力してもらっている。
その経緯を考えれば、今志歩がどうしているかを雫が気にしているのは当然だろう。雫は志歩に昔からべったりなので余計にだが。
妹を想う姉の心を考えれば、志歩の現状を伝えるのはいっそ想の義務と言ってもいい。
これがバレたら情報漏洩としてたっぷり絞られることを覚悟しなければならないけど。
「えっと、志歩ちゃん前に何かあったの……? 前はちょっとピリピリしていたのと関係があったり?」
「あー……」
今いる面子で志歩の事情を知らないのはみのりだけだ。
そうなれば、今のやり取りを気にしてしまうのは仕方ないこと。志歩のクラスメイトとしてはなおさら。
「志歩とやってるバンドのメンバーは皆幼馴染なんだけど、ちょっと前まで色々あって皆距離が開いててね」
「あ、ごめんなさい! あまり聞いちゃいけないことだったよね……」
「いや、いいよ。話しても大丈夫な部分話してるから。それに今は雫さんに話した通り、皆で仲良くやってるから気にしないで」
頭を下げるみのりを想は手で制する。
「それに志歩の友達なら多少は融通利かせてあげないと」
「わー……」
軽く手を振りながら話す想を見て、みのりはどこか感心して少し惚けた様子だ。
「みのり、想の顔に何かついてる?」
「ううん、そうじゃなくて。志歩ちゃんに聞いていた通りだなぁって」
廻の言葉にみのりは慌てて両手を振る。
「なんだかんだで優しい人なんだって」
「……その前に志歩はなんて悪態ついてた?」
「えっと、他人の事丸め込むの上手くってどうにもうさんくさいこと言いがちって……」
ジト目で訊ねる想にみのりは視線を逸らしながら答えた。
すぐに口を割ったあたり、隠し事や嘘はあまり得意ではない様子。
「しかし、志歩がわざわざ俺のことをそんな風に言ってたなんて……何か裏があるのか」
「あら、そんなことないわよ」
ふむ、と考え込む素振りをした想に雫が優しく微笑む。
「しぃちゃんは想くんのこと大好きだもの」
「すみません、誤解を招く言い方はやめてもらえません?」
雫の言葉を想は思わず大仰に手で制する。
言い方が完全に誤解を生むのだから勘弁してほしい。
「うふふ、そうね。でもしぃちゃんにとって想くんは大切な存在だってのは確かだと思うわ」
「──っ」
トドメをさされた気分。
誰もが見とれるような美しい顔で、君は妹にとって大切な存在だなんて言葉。
酷い殺し文句だと思う。
「お、想ってば照れてるー。珍しいー」
「ホント、今は勘弁してくれません? 姉さん相手でも怒るよ」
「大丈夫だよ、想くん! さっきの雫ちゃんは私もノックアウトされそうだったから! むしろされてた!」
からかい口調の廻に謎のフォローを入れてくれるみのり。
とはいえ、二人の言葉で想も大分平静を取り戻せた。
「話、変えましょうか。志歩の事もある程度伝えられましたし」
「いいけど、何話す?」
「こっちのこと話したんだから、そっちのこと聞きたい。答えられる範囲でいいから」
小首を傾げる廻に想はモモジャンの近況を訊ねる。
アイドル活動に向けて動いていることくらいは想も知っているが、それが今どんな感じかは興味があった。
「実はその──行き詰ってます! ちょうどいい機会だから想にも何かないか訊きたかったんだよねー」
「まぁいい知恵を出せるならそれに越したことは無いけど……とりあえずどんな感じ?」
廻が話してくれた内容は『MORE MORE JUMP!』として活動していく上で事務所に所属しようとしているがそれが暗礁に乗り上げているということだった。
主に四人全員を受け入れるのは事務所としては難しいとのこと。
理由は素人であるみのりだったり、逆に活動歴のあるアイドルを下手に受け入れにくかったり、それが噂となって広まっていたり。
なんともまぁ、
「八方塞がり?」
「だよねー! 私もそんな感じに思ってたから困ってるよー」
バタンと廻は机の上にうつ伏せになる。
「まぁみのりが受け入れにくいってのはともかく、引き抜きとか揉め事の種だからねぇ事務所側が警戒するのもやむなし」
「想くん、私の事はフォローしなくても……」
「ん、ああ、フォローっていうかただの私見」
想の言葉の前半をフォローと受け取ったのかみのりはちょっと気まずそうにしていた。
だが、別にフォローするつもりで言ったわけではない。
「素人だからって門前払いは判断が早すぎるんじゃないかなって思うだけ。最初は皆素人でしょ」
「想くん……っ」
「まぁ四人一緒でってのが難しいっていう事務所の言い分も分からないでもないけどね。みのりだけの話じゃなくて、うまくやらないとどこかで誰かが浮きそう」
「すごい上げて落としてくる!?」
ズバズバ言う想の言葉にみのりは大仰なリアクションを返してくれる。
「想ってばこんな感じで誰に対しても容赦ないからね、みのりは気にしないでいいよ」
「ふふ、想くんは昔から物怖じしなかったものね」
一方で想の言い方に慣れてる廻と雫に関しては笑顔でさらっと流していた。
しかし雫の言いようだとまるで想が年上でも遠慮なく喧嘩を売るように聞こえる。
主に司とかを相手にしていることを考えるとあまり否定はできない。
「とはいえ、こう俺から出せる意見なんて殆どない状態では……」
先ほど言ったように割と八方塞がりな状況だ。
事務所に所属するのが難しいハードルがいくつも設置されていては素人の想から起死回生の策なんて出るはずもなく。
「いっそ、事務所に所属しないでフリーで活動していくってのは?」
とりあえず出てくる案はこの程度。
「……それは、難しいわね。フリーとなると事務所に請け負ってもらっていた仕事を全部私達でやらないといけなくなるわ」
雫にしては珍しく厳しい表情で、ちょっと現実的じゃないかもと結ぶ。
「まぁ素人意見じゃこんなもんですよねぇ……」
「ううん、考えてくれただけで十分よ」
微笑みかけて想を労ってくれる雫。
だが、十分な案を出せなかったのは想なりに不満ではあった。
とはいえ無いものは無い。想で思いつく案は専門外なのもあって多くない。
「ただ、先に何かしら実績作りだけしておくってのは無しですか?」
「実績作り?」
想の言葉に首を捻ったのはみのりで、あまりピンときてはいないらしい。
「うん、まぁフリーランスでの活動を続けるってのは難しくっても何かしら自分達のことを先に色んな人達に知ってもらうってのはアリじゃないのかなって」
「それはアリ、かもだけど。どうやって?」
「例えばコレ」
首を傾げる廻に想はスマホを操作して、皆に見えるように置く。
スマホに表示されているのは動画サイトで、動画は一人の女性がゲームの実況をしているものだった。
「これはゲームの実況をしているものだけど動画サイトで活動して、多方面に活躍を広げてる人ってのは昨今多いよね。こういう手段で先に実績作っていけばもう少し道は開けるかなぁって」
「確かにっ。私も動画サイトで活躍しているアイドルもいっぱい見てたりしたし……っ」
「そうね、やってみなければ分からないけれどこういった形なら少しは私達のことを知ってもらえるかしら」
みのりと雫の食いつきは思っていたより良くて、想としても名誉挽回の気分。
「いいアイディアだよ、想。さっすが私の弟!」
「俺も姉さんの弟として鼻が高くなるよ」
いえーいと想と廻はハイタッチ。店の中なので控えめに。
みのりなんかは何故か目を輝かせ、
「これが姉弟愛…っ」
などと呟いている。
雫に関してはあらあらうふふと言った笑みを浮かべている。
「でも、これなら皆一緒にやれるね雫ちゃん!」
「ええ、そうね」
本当に嬉しそうな姿を見せるみのり。
ただ、その姿が想から見ると少し眩しく見えた。
アイドルとしての輝きではないのかもしれないけれど、それでも想からしたらいっとう眩しいものに。
廻はそんな想を見て、少しだけ怪訝な顔をしていた。
─────
それから今後のアイドル活動の相談は程々にして、四人でお茶を楽しむとあっという間に時間は過ぎて解散の頃合いに。
「はっ、これは今日の分も明日は頑張って動かないと……っ」
「ふふ、頑張りましょうね」
微妙にズレた会話をしているみのりと雫を見送って、想と廻は帰路につく。
談笑したりもせず姉弟でのんびり歩いていると、
「ねぇ、想ってば最近元気ないよね」
と、廻がストレートに訊いてきた。
そのストレートが鳩尾あたりに刺さったのを感じながら想は歩を止める。
「なんでそう思ったの?」
「んー、なんとなく? 確信があったりしたわけじゃないけど」
姉の鋭さに想はつい顔を俯かせてしまう。
「多分、『Leo/need』の皆でバンド始めたくらいからだよね」
確信が無いなどと言っておきながら、時期まで言い当てるのは苦笑するしかない。
「まぁちょっとした悩み事だよ。思春期によくあるやつ」
「誤魔化してる──ってわけじゃなく、そのままの意味なんだねぇ」
他人が聞けば誤魔化してると捉えられる想の言葉を廻はそのままの意味で受け取った。
これで誤魔化してる、はぐらかしてるなんて誤認してくれれば気が楽だったのに。
「あまりそういうのは変につつかない方がいいと思うんだけど」
後ろで手を組みながら振り返った廻の姿はとても絵になった。
「私は別にうまくやろうとしなくてもいいと思うよ」
いっそみっともないくらいがちょうどいいかも、と付け足して。
その言葉は想の心にすっと重しとして落ちてくる。
多分この重しは必要なものなんだと感じながら、想はゆっくり顔をあげた。
「老婆心ながら姉からの言葉でした。へへ、慣れないことするもんじゃないね」
「そんな風に言われると賢しくやろうとしてる俺が馬鹿みたい」
本当に馬鹿みたいだと思う。
想が抱えてる悩みは他人に打ち明けたら馬鹿馬鹿しいと一蹴されそうなもの。
でもそんな悩みでも想の心を重くするのは十分で。
だからこそ“今後”の事を考えると大事なモノなのだと思う。
「馬鹿でもいいと思うよ、それが想らしいなら」
「ホント敵わないよ、姉さんには」
少しだけ吐き捨てるような口調になりながら想は再び廻と並んで歩き始めた。
『MORE MORE JUMP!』回になりますが、愛莉ちゃんと遥ちゃんはお休みです。
これで一通りのユニットはやりましたね。え、ニーゴ? 無理ですよ。
姉弟の掘り下げなんかもありつつ、緩やかに進んでいた物語も終盤に向かっていきます。後もうしばしお付き合いください。