すしざんまい。
昨今のミーム汚染のせいか誰かが両手を広げたポーズを取っているとその単語が思い浮かぶ。
閑話休題。
まだ上手く状況を飲み込めずにいる四人を想は俯瞰気味に眺めていた。
先にミクと話してある程度状況を把握しているから想には幾分か余裕がある。
「この『セカイ』は、君達の想いでできた場所なんだ」
想にも話した『セカイ』の概要。
それにしても想いで世界が構築されているだなんて。
「想いでできた場所……?」
懐疑的な口調で穂波が呟く。
口に出していないだけで他の三人も要領を得ない、懐疑心を隠していないと言った風情だ。
しょうがないよなぁ、と想は思う。なんだったら想自身未だに『セカイ』についてはふわふわした理解である。
「そう、想いはあらゆるものを形にできるんだ。だからこんな『セカイ』にもなるし、歌にもなる」
所謂この机と椅子が雑然と置かれた教室の姿はこの中の誰か──もしかしたら全員の想いの形と。
ミクは微笑を浮かべて話を続ける。
「例えば、五人に見覚えがあるものもあるんじゃないかな」
「何言ってるのかさっぱり分からないんだけど。からかってるならいい加減に──」
痺れを切らした志歩が苛立った様子を隠そうとせずミクに詰め寄ろうとした。
瞬間、志歩が動きを止める。
「……え? もしかしてこれ、私のベース? 今、背負ってるのに……どうして?」
壁に立てかけてあったベースに志歩が近寄って手に取る。
確かに志歩は今ベースが収納できるケースを背負っており、その中身が目の前に置かれていたら驚くのもやむなし。
「あ、私のギターも……? 家に置いてあるはずなのに、なんで……」
どうやら一歌も身近にあるものを見つけたらしく、ギターを手に取って眺めていた。
ふむ、と想も手近に何かあるのかと探してみる。
見つけたのは一冊の本。
「あ、キーボードとドラムもある! ソウは何か見つけた?」
「これがあった。ウチで使ってたギターの教本と楽譜」
見つけた本を手に取って咲希のほうへ掲げる。
その教本は使い古して既にふちが擦り切れていた。
懐かしい、とページを捲ってみると初心者用の曲の楽譜が目に付く。
なるほど想いでできてるか、と想は一人得心がいった。
「なんだか、今からバンドの練習始めるところみたいだね」
ギターにベース、キーボードとドラムがあれば咲希が言うようにバンドは連想しやすいものだろう。
特に昔バンドをやっていたメンバーと一緒ともなれば。
「……バンドかぁ。ふふ、またみんなでやってみたいな」
「いいよ。演奏したいなら、五人で好きに使って」
咲希の昔を懐かしんだ呟きにミクは鷹揚に返した。
「え?」
「言ったでしょ? 一歌。バンドやってみないか、って」
「ここで演奏していいの? じゃあやってみたい! やろうよみんな!」
ミクの許諾を得たことで、咲希はバンド演奏への意欲を示し主に志歩と穂波に向かって呼び掛ける。
しかし、
「え、わ、わたしはちょっと……この後友達と帰る約束してるし……」
「私もバイトあるから。大体、皆知っててすぐ合わせられる曲なんて無いでしょ」
演奏に対して消極的な姿勢を示す二人。
ここに来た時の態度からして乗ってくるとは思ってはいなかったが。
それでも咲希は諦めない。
「でも、昔みんなで演奏した曲ならきっと弾けるよ!」
昔演奏したとは言っても小学生の時だ。
今でも弾けるという根拠は無い。
「…………」
「……あの曲は……たしかに、覚えてるけど……」
揺らいだ、と想は感じた。
ほんの微かな揺らめき。それでも二人とも咲希の誘いにどこか心惹かれている。
「じゃあ、あの曲やってみない? みんな分かるし、そんなに難しくないし!」
「確かミクの曲だっけそれ」
「うん、ミクちゃんのやつ!」
思い出に残っているその曲はバーチャルシンガーである初音ミクによって歌われていたモノ。
「私が歌ってた曲? へえ、聴いてみたいな」
「ほら、ミクちゃんも聴いてみたいって言ってくれてるよ!」
まさか後年になって本人からリクエストを受けることになるとは。
何の因果かと想は少し苦笑する。
「いっちゃんは? やってみない?」
急かすように、期待するように咲希は一歌に呼びかける。
「……私は」
一歌が逡巡したように、周りを見渡す。
そして、
「やってみたい。皆とあの曲演奏できたら……いいな」
遠慮がちに、でもその芯は折れない。
そんな風に一歌は咲希の誘いに乗った。
「ほら! いっちゃんはやるって! だからしほちゃんとほなちゃんも、やろうよー!」
一歌が乗ってきたことにより、勢いづいて志歩と穂波を誘う咲希。
「私は帰る。それで、どうやって帰ればいいわけ? ミクは知ってるの?」
ここで頑として頷かないのが志歩だよなぁ、と想は昔の志歩を思い浮かべていた。
そんな考えが読まれたのか志歩が想を小さく睨む。
何も言ってないのに、とぼやきつつ想は萎んだ。
「うん、でも──そうだね。皆の演奏を最後まで聞かせてくれたら、帰り方を教えるってのはどう?」
挑戦的にミクはそう言ってのける。
「……何それ」
「ふふ、聴いてみたいんだよね、君達の演奏」
微笑を浮かべるミクの姿はどこかの悪役か何かだ。
流石に帰る方法を教えてもらえないことにはここに閉じ込められたも同然。
「……はぁ。本当に、一曲だけだからね」
渋々と志歩は頷くしかない。
とは言え、想の中では帰り方については察しがついていた。
教えてあげる義理もないからなぁ、と内心舌を出しておく。さっき睨まれたゆえ。
「……久しぶりだから、上手く叩けないかもしれないけど……」
こうなっては穂波も一緒に演奏せざる得ない。
「やったー! ありがとうみんな!」
なんやかんやでこうなるのだ昔から。
咲希が何かを提案して、各々形でそれを承諾する。途中で渋ったりすることはあれど。
今回みたいなイレギュラーな事態においてもそれは変わらない。
本当に、どこか懐かしいと想は昔と今の皆の姿を重ねる。
「それじゃあ聞かせてよ、皆の音」
一通り各々の楽器を手に取ったところで、
「じゃあみんなで演奏しよう! ──って、ソウの楽器は?」
一人だけ楽器を手にしていない人物がいた。
想は手持無沙汰と言った風情で手を振る。
「楽器が見つからないんでパス。その曲、四人で弾けたでしょ」
「えー、もうー!」
咲希から抗議受けるが、無いものは無いのだからしょうがない。
想いでできた世界と言われてるくらいだし、実際他の四人の楽器はあったので想の楽器もあるにはあるだろう。
ただ、見つからないというのは今は必要ではないということ。
ちらりと想はミクの方に視線を向けると、ミクは手を振り問題ないといった素振りで返す。
「……えーと、どうやって始めるんだっけ?」
咲希が想に関しては諦めて、演奏を始めようとして出だしで躓いた。
「はぁ……穂波、カウントとって」
呆れたように志歩が溜息を吐きながらドラムである穂波に指示を飛ばす。
ベースを背負っていたことから志歩が未だに音楽を続けていることが伺える。
ならば彼女が指示を出すのが的確だろう。
「う、うん。それじゃあ……ワン、ツー、スリー、フォー」
若干覚束ないながらも穂波がカウントを取り──それを合図に演奏が始まる。
教室の中を流れる音をミクと一緒に想は観客気分で聞く。
昔も想が聞き手に回って四人の演奏を聞くことは割とあった。
女子四人に混ざって演奏するのが気恥ずかしかったというのもあったし何より四人の演奏する姿を見ているのが好きだった。
懐かしい気持ちになりながら四人の演奏を聞いていると、
「ストップ」
「え?」
途中で志歩が演奏を止め、それに一歌が驚いた様子を見せる。
「一歌、咲希、テンポが遅い。もっと穂波の音聴いて」
淡々とダメだしをする志歩。その指摘に容赦はない。
「ご、ごめん……」
「……こうなるから嫌だったのに」
一歌は志歩の指摘に委縮してしまい、その様子を見て志歩は大きくため息を吐いた。
「で、でも、今のすごくなかった? 上手くないけど、最初は音がぴったりあってたし……!」
必死にとりなそうとする咲希を志歩は睨みつける。
「私は、中途半端な演奏ならしたくないの。──ねぇ、想?」
傍観に回って、どこかで仲裁したほうがいいかなぁなどと暢気なことを考えていた想に志歩は呼び掛けた。
不意打ちで呼ばれ、驚いたがなるべくそれを顔に出さないように努力する。
「さっきの演奏、どうだった?」
本当に容赦ないと思う。
わざわざ想に感想を求めるあたり。
「少なくとも及第点は出せないかな。全体的に音が纏まってないし、咲希なんかは気持ちだけ逸ってる」
「ソウー……」
遠慮会釈ない想の論評に咲希は半目になっている。
ここでお世辞を言わないって分かってて志歩は想に感想を聞いたのだ。
久しぶりに会ったというのに性分が見透かされていて想としては複雑な気持ち。
「まぁでも捨てたもんでもなかったよ。なぁ、志歩」
「…………」
付けたされた想の言葉に対して志歩はそっぽを向いて関心を示さない。
正確には関心が無いように見せている。でなければわざわざ顔を逸らしたりはしない。
「ひ、ひとまずもう一回頭からやってみよう、ね?」
穂波がこの場をとりなそうともう一度演奏することを提案する。
そこに、
「じゃあせっかくだし、私も一緒に演奏していい?」
今まで口を挟まなかったミクが名乗りを上げた。
「え? ミクも?」
「うん。ダメかな?」
まさかの介入に一歌は驚き、戸惑っている。
一歌としては憧れのミクと一緒に演奏できるのかという戸惑いも含まれるだろう。
「ダメなんてそんな……。むしろ……いいの?」
「みんなが演奏してるのを見たら、やりたくなったんだ。一緒に弾かせてよ」
にっこりと微笑むミクに一歌は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「……はぁ。好きにして。さっさと終わらせたいから」
一方の志歩は呆れ気味にミクの参加を認める。
想としてはもう一度傍観の姿勢。ミクが入る事で何が変わる、か。
「じゃあ、もう一度いくね。──ワン、ツー、スリー、フォー」
再び穂波がカウントを取って演奏が始まる。
空気が変わったと感じた。
ミクが他の四人の演奏と合わせながらも引っ張っていく。
四人で弾いていた時はいまいち纏まりが悪かった曲が、ミクの先導によってどこか不思議な纏まりを得ていく。
全体的な演奏のレベルとしてはやはり高くはない。
それでもミクが入ったことで空気は一変した。
上手いなぁ、とミクの演奏を聞きながら想は思った。
それと同時に、演奏されている曲に思いを馳せる。
ミクの曲を演奏してみようと集まって、必死に練習した始まりの曲。
ぎこちないながらも幼馴染四人はこの曲を演奏できている。
志歩と穂波もこの曲のことを覚えているというコト。
それはつまり──
「一緒に弾かせてくれてありがとう。五人の大切な曲だってこと、伝わってきたよ」
想が思いを馳せている間に演奏は終わった。
「俺は演奏してないですけどねー」
「聞いていた想の顔を見れば分かるよ」
きっちり想も含まれた五人という言葉になんとなく突っかかってみるが、あっさりいなされる。
一体自分はどんな顔をしていたのやら、と想は自身の顔を軽く触りながら苦笑した。
「……もういいでしょ。早く帰り方教えてよ」
役目は終わったと言わんばかりに志歩は帰り方をミクに訊ねる。
「……待って!」
「まだ何かあるの?」
呼び止めた咲希に志歩は鬱陶しそうな表情を向ける。
その表情はどこまで本意なのか。
「しほちゃん、ほなちゃん、いっちゃん……ソウも! ──みんなでバンドやってみない!?」
思いも寄らない提案。
と言うわけでもなく想としてはなんとなく咲希がそんなことを言い出すだろうと予想はしていた。
ここまでやっておいてはい解散など咲希の性格からしてありえない。
「……バンド?」
「本気?」
穂波と志歩が訝しげに咲希の方を見た。
そんな二人の視線に物おじしないで咲希は言葉を続ける。
「だって、さっきのすごく楽しかったもん! しほちゃんは楽しくなかった?」
咲希は真剣だ。
いや彼女はいつだって真剣なのだ。
「私はあんなの……」
志歩はその咲希から目を逸らす。
「ミクちゃんは、大切な曲だってわかったって言ってくれたでしょ? だから、ふたりも本当は弾いてて楽しかったんじゃないかなって思って……!」
必死の思いで咲希は志歩と穂波に呼びかける。
だが、
「……私はいい。やらない」
「志歩……」
にべもなく志歩に断られ、
「ごめんね、わたしも……」
「ほなちゃん……」
それに追従する形で穂波を咲希の誘いを断る。
簡単に頷くとは思ってはいなかったが、想が考えているより志歩と穂波は何かを抱えている。
「ねぇ志歩、穂波」
その段階で想はようやく口を挟み二人の名前を呼んだ。
二人だけでなく一歌と咲希からも想は視線を集め、それでも小さく笑う。
「それで、楽しくなかったの?」
先ほど咲希が言った言葉の繰り返し。
「──っ」
「…………」
志歩は目を逸らし、穂波は目を伏せる。
明確な拒絶の意思。表面だけをなぞればだが。
「……いい加減、もう帰らせて」
想から視線を逸らしたままミクに向かい、志歩は帰り方を問う。
「そうだね。一緒に弾かせてもらえたし、今日はおしまいにしようか」
ミクのほうはあっさりと志歩の言葉に応じた。
今は引き留める段でもないし、ミクの役割でも無いのだろう。
「みんなここに来る時、曲を再生したでしょ? 『Untitled』って曲」
ミクの言葉を聞きつつ、想はやっぱりかと一人得心。
「『Untitled』はこのセカイと君達の現実を繋ぐ入り口。だから再生すればここに来られて、止めれば戻れるよ」
「あの曲が……?」
『Untitled』がキーになっているだろうとは想としては予想通り。
冷静に振り返れば、トリガーとなる行動はその曲を再生したこと以外なかったのだから。
いきなり異常事態に放り込まれたので、そんな単純なことも見落としがちではある。
「あの音のしない変な曲が、入り口? ……ま、帰れるなら何でもいいけど」
志歩はスマホを取り出し、操作をはじめ、
「……じゃあね」
「わたしも……帰るね」
同じようにスマホを操作していた穂波も帰ろうとしていた。
「志歩、穂波」
スマホの操作が終わる前に想は二人へ呼びかける。
さっきの言葉から一瞬警戒した様子を見せる二人に向かって、
「またな」
想はただそれだけを言った。
直後に二人の姿は消えており、既にこの『セカイ』からいなくなったのだろう。
せめて最後の表情くらい見ておきたかったかな、と内心ひとりごち。
「やっぱり、みんなで一緒にいるのは、無理なのかな……?」
「……」
咲希の呟きに一歌も俯いて黙ってしまう。
何を言うべきか想が逡巡していたところ。
「諦めるの?」
ミクがシンプルかつ直球な問いを投げかける。
言葉だけ抜き出せばまるで煽りにも聞こえかねない。
「え?」
「あのふたりとも一緒にいたいんじゃないの?」
しっかりと意思を確かめるように、ミクは言葉を重ねる。
「……うん、そうだね。諦めちゃったら、バラバラのままだもんね!」
ミクの言葉に奮起するように咲希は拳を握る。
想としては役目を取られたような気持ちで内心苦笑。
「まだどうすればいいのかわからないけど……でも絶対に諦めないんだから!」
「調子でてきたな。ま、俺は元から諦めてないけどね」
「あ、ソウってばずるいんだー」
意気込みに対する想の軽口に咲希は笑う。
やっぱり咲希には笑っていてほしい。
ポンと咲希の頭の上に想は手を置き、
「挫けてないでしょ?」
「当然!」
強く言葉にしながらも咲希は照れくさそうに笑ってくれる。
「うん。二人ともいい調子。バンドがしたくなったら、また来てよ」
想と咲希のやり取りを微笑ましそうに見守りながらミクは腕を組みながら頷いている。
「……ねぇ、ミク?」
「何?」
浮かない顔をしていた一歌が不意にミクへ問いかけた。
「どうしてミクはここにいるの」
『セカイ』と呼ばれる摩訶不思議な場所。
そこにいる電脳の歌姫『初音ミク』。
一歌の疑問はもっともだ。
「──歌はね、人の想いでできてるの」
「え、歌?」
ミクの言葉に一歌は戸惑っている。
何故の答えではなく、歌について切り出して来たらそれも当然か。
「うん。『セカイ』が想いでできてるように、歌も想いでできてる。だから一歌達が本当の想いをちゃんと見つけられたらその想いも歌になるんだ」
どこか哲学的なような話をミクは続ける。
一歌と咲希はミクの言葉に疑問符を浮かべ、想はへぇーと曖昧な相槌を打つ。
「私がここにいるのはみんなが自分達の歌を──『本当の想い』を見つけられるように、手伝うためなんだよ」
そこまで聞いて想は一歌達と合流する前にミクからの話を思い出す。
『本当の想い』が歌に結び付いてるなんてどこか洒落ているなんて考えながら。
ああ、でも──。
「本当の想いを……見つけられるように……」
要領を得ないまでもミクの言葉を反芻する一歌。
咲希のほうも首を捻っている。
「見つけられるといいね。一歌達の、本当の想い」
ちらりと想の方に視線を投げた後、ミクはそう口にした。
──────
「しっかし、ビックリしたよねー。あんな場所があるなんて」
「まず普通じゃできない不思議体験だったな」
『セカイ』から戻った後、想はすぐさま咲希の迎えに行った。
校門付近で待っていた咲希と合流し、今は帰り道を歩きながら雑談している。
話題はもっぱら『セカイ』について。
「しほちゃんとほなちゃんと会って、ミクちゃんと会って……」
咲希の声のトーンが少し落ちる。
「しほちゃんとほなちゃんと仲直りできるよね……」
『セカイ』では意気込んでいたものの咲希の不安は拭えていない。
弱音を吐く咲希の額を想は軽く小突く。
「できるかどうか、じゃなくて仲直りする、だろ?」
「……うん!」
正直に言えばまだ仲直りできるかなんてものは分からない。
未だに二人が抱える事情は分かってもいない。
でもそこで臆してはいられない。ならば言葉だけでも強く。
「ねぇ、ソウ。なんか楽しそう?」
「ん?」
「ちょっと笑ってる」
咲希に指摘されて、想は自分がどんな顔をしているか気づかされる。
なるほど笑っているか、と。
「んーまぁ、意外と自分が欲張りだったんだなって自覚できたからかな」
「えー、どういうこと?」
咲希が入院していたころはずっと咲希の事ばっかり考えていた。
もしかしたらずっとこんな感じなのかとも思っていたところ幼馴染達に再会し、それは違うのだと気づかされた。
咲希だけじゃない、一歌も志歩も穂波も──皆と一緒にいることを想の本心は望んでいる。
その事に気づいたらどこか愉快な気持ちになった。
こんなに強欲だったのだと。
「これから志歩とも穂波とも仲直りして、五人でまた一緒に何かできるって考えたら楽しくなるだろ?」
同意を求めるように言うと、咲希は大きく頷く。
「──うん! すっごい楽しみ!」
そのための道のりはもしかしたらすごい険しいのかもしれない。
だけど、だからこそ挑戦し甲斐があるというもの。
だって、本当の想いなんてとっくに決まっていてそのためだったら立ち止まってはいられない。
──五人一緒にいたい。
そんな至極単純な想いを抱いて。
想くん割とピンポイントで刺してくるタイプ。
『Leo/need』の四人と比べると若干大人になる、はず。