主を失った狼、透き通る世界に行き着く   作:けんどーさん

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こんにちはけんどーです。
お金がない…素寒貧だ…モウマヂムリ…バイトシヨウ

あ、以下に感謝を。
リンたん様!A.K様!評価9ありがとうございます!

白灰利独様!マグネット様!ダルダルタルタル様!誤字報告ありがとうございます!

お待たせしました…それでは本編どうぞ!


束の間の平和、そして……

〜アビドス、ホテルの一室〜

 

狼と先生は寝ていた。先生は机に突っ伏す形で、狼は手を組み、ふんぞり返ったような姿勢で。

昨日の真夜中までずっと話をしていたのだ。共に杯を交わしながら。その後そのまま寝落ちしたのである。

 

ピピピピ!ピピピピ!ピピピピ!

“……ファ!”「ぬおっ!」

 

狼と先生は「シッテムの箱」のアラームで飛び起きた。しっかりと充電していたおかげで充電はバッチリ100%だ。

先生は時間を確認し、狼は徳利と杯を片付けていた。

 

“狼、まだ結構時間あるから、朝風呂行こう。体が痛い”「…ああ、承知した」

 

〜先生、忍、入浴中〜

 

“ふい〜、さっぱりした”「……いい湯だった…」

先生はいつものスーツ、狼もいつもの渋柿色の服を着て、アビドスへ向かった。

 

〜アビドス対策委員室〜

“おはよう、みんな”「…おはようございます…」

狼はいかんせんこの言い方に慣れない。同じ日本語と言えども、500年経てば作法や文の構成は変わる。狼は今となってはもう古い言葉遣いを治すため現代語を使うようにした。そもそも自分はあまり喋らないのだが。

 

「おはよー、先生。狼」「先生!狼さん」おはようございます!今日は早いですね」

ホシノとノノミが挨拶する。

 

「…ホシノ殿…」「うへ、どうしたのかな?狼?」

狼がホシノに尋ねる。それは…

 

「……なぜノノミ殿の膝を枕のようにしているのだ…?」「あーこれのこと?これね、膝枕って言ってね、凄いんだよ?ノノミちゃんの膝は柔らかくて柔らかくて、私だけの特等席だもんねー」

 

「先生か狼さんもいかがです?」「ダメだよー。ここは私の場所なんだから、先生と狼はあっちの座り心地悪そうな椅子にでも座ってね」「…もとより膝を枕にする気はない…」”あはは…ぜひ座りたかったなあ…”「私の膝は先輩専用じゃないですよう…」

 

ノノミが先生にボソリと何かを囁く。

 

「今週、誰もいないときにしましょうね、先生」”ありがとう、ノノミ”

 

「よいしょっと、ふあぁ〜、みんな朝早くから元気だなぁ」

 

「のんびりできるのは久しぶりですから……今はみんなやりたいことをやってるんでしょうね」

ノノミが続けて喋る。

 

「んー、シロコちゃんはきっとトレーニングでしょうし、アヤネちゃんは多分勉強しに図書館でしょうか?」「…図書館とは?」”沢山の書物が置いてあるところだよ”「…なるほど…」

 

「ノノミちゃんは学校の掃除と教室の整理をしてくれたよねー。うへ〜、真面目だなぁ、みんな」「…ホシノ殿は何を…?」

 

「ん?私?私は当然、ここでダラダラしてただけだよ」「先輩も何か始めてみてはどうでしょうか?アルバイトとか、筋トレとか」

ノノミが提案する。

 

「無理無理ー、おじさんは年齢的に無理がきかない体になっちゃったもんでね〜」「歳はほぼ私と変わらないですよね…」「…俺は…死ぬ数刻前まで…元気に戦い回っていた老人を知っておる…それと比べれば…ホシノ殿は…まだまだ動けると思うぞ」

 

「うへ!?そ、そんな化け物みたいな人がいたの!?」「…ああ…」

狼はふと思い返す。葦名一心、かつて己の主とともに葦名を脱するのを影から支えたものであり、己が主を人に返すための最後の壁になった者である。

 

「うへ〜、とにかく先生と狼もきたし、他のみんなもそろそろじゃない?そんじゃ、私はこの辺でドロン」「…どこへ行かれるのだ?」

 

「うへ〜、今日おじさんはオフなんでね。適当にサボってるから何かあったら連絡ちょーだい。ノノミちゃん。そんじゃまたね」

ホシノは教室から出て行った。

 

「……ホシノ先輩、またお昼寝しに行くみたいですね」”さすがにちょっと寝過ぎじゃないかな?普段何時に寝てるんだ?”

 

「うーん、まぁいいんじゃないでしょうか。会議はアヤネちゃんがしっかり進めてくれますから」

 

「あはは……それにしてもホシノ先輩、以前に比べてだいぶ変わりました」「…ノノミ殿、変わった、とは…」「え?ああ、今はいつも寝ぼけたように感じますけど、初めて出会った頃は常に何かに追われているようでした。何に追われてたか、というと…ありとあらゆること、でしょうか?」

 

「…そうか…」”ホシノも大変だったんだね”

ノノミが続ける。

 

「これは…聞いた話ですけど、以前とある先輩がいたそうで…」「…それは…一体?」

 

「アビドス最後の生徒会長だったらしいんですが、とても頼りない人で、その人がここを去ってから全てをホシノ先輩が引き受けることになったらしいんです」

 

「ホシノ先輩は当時1年生だったとか…詳しくは私も知りませんが…」「…そう、だったのか…」”この学校を…たった一人で…”

 

「でも今は私たちや先生と狼さんもいますし、他の学園の生徒たちとも交流できますし、以前だったら関わること自体嫌っていたんですけど…かなり丸くなりましたね」「…そうだったのか…」

 

「うんうん!きっと先生と狼さんのおかげですね!」「…そうか…」”それなら、先生冥利に尽きる。かな”

狼はふと外を見る。そこには…小鳥遊ホシノがいた。

 

名残惜しそうに…しかしどこか決意したような表情で、アビドスに背を向ける。

 

何かあったのだろうか。狼が声を上げようとする。

 

「…なあ…あそこに「そう言えば狼さんはなんで刀を使うんです?」…ぬう…」

狼は話そうとしたところをちょうどノノミとタイミングが被ってしまい、結局話せなかった。

 

 

 

 

 

 

その後、義手の装備はなんなのか、あのカラスの羽はなにか、あとから来た対策委員会のメンバーからにも質問責めにあったのであった。

 

 

 

その後、腹が減ったので自分一人で先に柴関ラーメンに行くことにし、質問責めから逃れた。

 

〜?????〜

 

「……これはこれは、お待ちしておりましたよ。暁のホル……いや、ホシノさんでしたね、これは失礼」

どこかのビルのオフィスにて、ホシノは全身黒ずくめの人外と対峙していた。

 

「いやいや、キヴォトスにはまだ馴染めていなくて。こちらへどうぞ。ホシノさん」

 

「……黒服の人、今度は何のようなのさ?」

 

「……ふふ、状況が変わりましてね。今回は再度、アビドス最高の神秘をお持ちのホシノさんにご提案と、警告を」

 

「提案?警告?ふざけるな!!それはもう……!!」

 

「まあまあ、落ち着いてください」

黒服が宥めるように言う。

 

「あの義手の男ですが、もしあれが我々の知る者であれば、あれはこのキヴォトスに厄災をもたらすものになります」

 

「……何が言いたい。」

ホシノが詰め寄る。

 

「…野には骸は山となり、竜泉川は、あけの川、鬼は…クックック、これ以上はやめておきましょう。しかし妙ですね。深く考えると、あの男は刀を2本しか持っていない…もしや、別の…」

 

「…クックック、まぁそれは置いておきましょう。ホシノさん」

 

「……早く終わらせてよ。こっちはそんなに暇じゃないの」「……お気に入りの映画のセリフがありましてね。今回はそれを引用してみましょう」

 

黒服がホシノに向き直る。

 

「あなたに、決して拒めないであろう提案をひとつ。いや、ふたつ。興味深い提案だと思いますのでどうかご清聴ください」

 

「ククッ、クックックッ……」「……お前、やっぱり大嫌いだ」

 

 

 

〜柴関ラーメン〜

 

「……ようやく…か」

狼は、柴関ラーメンに来ていた。簡単な話である。すべてはあのおいしいラーメンのためだ。

ここまで来るのにとても苦労した。なんとなくで土地勘は掴めてきたが、それでもまだ難しいものである。

 

ガラガラ、とドアを開ける。

 

「おう!いらっしゃい!確かシャーレの先生の連れだったよな!よく来てくれたな!」「…ああ、ここのラーメンは。とても美味かった。ぜひまた食べたい」「おう!まかせな!」

 

狼は席につき、メニューを広げる。今日はどれにしようか。

 

味噌ラーメン、これは食べた。柴関ラーメン、これも以前食べた。豚骨ラーメン、美味そうだが、いまいちこれ!とならない。

 

はて、どうしたものか。そう悩んでいると…

 

メニューの中からとても興味深いものを見つけた。

 

「…注文を…お願いしたい」「あいよ!ご注文は?」「塩ラーメンとやらを、頼む」「承知!まかせな!」

 

大将がラーメンの湯切りをしている。その様子を、やはり犬が2足で立って喋り、料理をするのは奇妙なものだ。

 

……最初出会ったとき、手裏剣を放とうとしようとしてしまったことは、胸にしまっておこう。

そんなことを考えていると……。

「へい!お待ち!塩ラーメン一丁!」「…ああ、かたじけない」

 

塩ラーメン。

柴関ラーメンで狼が注文したラーメン。その場で食べる必要がある。

食べると、しばらくの間、狼が早く動けるようになる。

 

前回の味噌は、油でとても重かった。しかしこの塩ラーメンなら、きっと胃もたれせずに食べれるであろう。

 

ズズズーッ

狼は麺をすする。やはり、うまい。この料理を考えた人に宝鯉の鱗を上げたいほどだ。一心不乱に麺をすする。

 

「おう!にいちゃん、良い食いっぷりだね!ほら、サービスだ!」

狼は目の前に置かれた白い何かで包まれた物をみた。

 

「…店主殿、これは一体…」「おう!餃子のサービスさ!金はいらねえよ」

餃子。

柴関ラーメンで注文できる食べ物のひとつ。

これは店主が善意でサービスしてくれたものだ。

ラーメンと食べると、一緒に食べたラーメンの効果が強まる。

そのまま食べれば、一時の間、体幹の最大量が増える。

 

餃子を恐る恐る口に運ぶ。パク。

 

 

……うまい!狼はあっと言うまに餃子を食べ終わり、替え玉を頼もうとすると…

 

「友達なんかじゃないわよぉーーーーーーー!!」

 

と、大きな声と机をダン!と叩く音が聞こえる。

 

狼が音のした方を向くと、そこには……

 

(…あやつら、あの時の…鬼か)

 

そこにはアルと便利屋のメンバーがいた。

 

「分かった!!何が引っかかっていたのがわかったわ!このお店よ!この店!」「!?」「どゆこと!?」

 

「私たちは、仕事しにこの辺にきてるの!ハードボイルドに、アウトローっぽく!なのに何なのよこの店!お腹いっぱい食べられるし!あったかくて、親切で!話しかけてくれて、和気あいあいで、ほんわかしたこの雰囲気!ここにいると、みんな仲良しになっちゃう気がするのよ!」

 

「それに何か問題でもある?」「だめでしょ!めちゃくちゃでぐだぐだよ!私が一人前の悪党になるには、こんな店はいらないのよ!必要なのは、冷静さと無慈悲さと非情さ!こんなほっこり感じゃない!」

 

「いや…考えすぎなんじゃ…」「…それって…こんなお店はぶっ壊してしまうってことですよね?アル様?」「……へ?」「…」

 

話が嫌な方に飛んで行ってるのを察した狼は、義手に手裏剣を仕込む。

 

「よかった。ついにアル様のお力になれます」「…起爆装置?なんでそれを…」「ハルカ、ちょっと待っ…」「!!!」

 

狼がシュバ!と手裏剣をなげ、ハルカの手に持ってる起爆装置を落とす。

 

「キ、キャア!?」「!?なに?何があったの!?」「伏せて!なにか飛んで…って、手裏剣?」 

 

「……やはり、鬼は鬼、か……」

狼が楔丸を抜き、構える。

 

「あ、義手の人…って、あれ!?いつからいたの!?」「…恐らく、お主らが来る前だ…」「…ありがとう。爆発を止めてくれて」

 

「…今この身はただの人間だ…それで爆発を起こされたら…きっと死ぬだろう…ゆえに、止めたまで。そして…」

狼が机を指差す。

 

「……まだ、腹一杯ではないのでな…」「ああ…そう言う…」「…おにーさん、なんで刀構えてるのかなあ…」

 

「…この店を爆破させよ、と命じたのは…そこの鬼だろう…」「鬼?」「…私の事?いや……多分、社長のこと?ツノ生えてるし。どちらかと言うと、鬼より悪魔だけど…」

 

「ちょ、ちょっと待ってちょうだい」

アルがフリーズから再起動した。

 

「今回は完全に私のミスよ。こんなお店いらないとか、私が言わなければ、きっとこんなことにはならなかった。大将、義手のお兄さん。ごめんなさい。そんな気はなかったの」「おう…嬢ちゃん、爆破してねえから構わねえけどよ、流石に肝が冷えたぜ…」

 

「……わ、私のせいで……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」「いや、ハルカのせいじゃないわ、私が爆破するように言ったようなものだし、私が悪いわ、気にしないで」「…あ、アル様ぁ…」

 

さて、これにて一件落着である。狼は楔丸を納刀した。

 

「…大将、替え玉を…」「おう!少し待ってな!」

 

程なくして、便利屋のメンバーがラーメンを食べ終わり、狼が替え玉を食べ切る直前…

 

「大将、美味しかったわ。そしてごめんなさい。今回は私の不手際よ」「なあに、店はこうして無事なんだ。なんなら爆破してもよかったんだが、それは店じまいのときがいいかな」「…ありがとう。お礼に、もし何か困り事があったら言ってちょうだい。便利屋68が解決しましょう!」

 

「ありがとうね、大将!美味かった!」「ご馳走様。美味しかった」「ご迷惑をお掛けしてごめんなさい…し、失礼します!」

 

便利屋が店を去る。ちょうどその時、狼はラーメンを食べ終わり、いざ会計をしようとしたその時…

 

 

ドゴゴゴゴーン!!と何かが爆発する音、そしてヒューーーーーン何かが飛んでくる音がし…

 

 

ドッカーーーーーーーン!と爆発した。それに、ハルカが店の周りに仕掛けた爆弾が連鎖爆発し…

 

ズガガガガガーン!と大きな、店を簡単に壊す爆発を巻き起こし…

 

 

「ぬぅ!」「な、なんだ、何が起こって…うわあ!」

 

 

 

 

 

 

狼と大将はともに爆発に巻き込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜アビドス対策委員会会議室〜

 

「前方、半径10キロメートル内にて、爆発を検知!近いです!」「10キロメートルってことは…市街地?まさか襲撃!?」

 

「衝撃波の波形からして…恐らく、爆弾の連鎖反応と…これは?もう少し確認してみます!」

アヤネが解析する。

 

「…爆破地点、市街地です!場所は…し、柴関ラーメン!?柴関ラーメンが跡形もなく消えてしまいました!」「はあああ!?どう言うこと!?なんであそこが…」「戦略拠点でもなければ、重要な交通網でもない…なんで…」「あ、あの〜」

ノノミが喋る。

 

「先ほど、狼さんが柴関ラーメンに行くって…」「!?ま、まさか、狼を狙って!?」「憶測は後でいい。まずは行こう」「そうですね!行ってみましょう!」「ホシノ先輩に連絡しておきます!出動を!」”みんな!行くよ!狼が気がかりだ”「うう…大将、狼…大丈夫よね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜???〜

 

 

 

 

「…なんか、爆発が想定より大きくなりました…店も巻き込んでしまったみたいですが…」「構わない。規則違反者を捕まえるためだ。行くぞ」

 

「…なぜでしょう…嫌な予感が…」




ここまで読んでくれてありがとございます!
ここまで5734文字、いやあ楽しかった!
評価、感想、ぜひお願いします。

次回、お楽しみに。

生徒に御霊降ろしを伝授する?

  • 狂うから無し
  • キヴォトス人は神秘のおかげで大丈夫
  • 同じように形代のような代償を払う
  • 名も無き者の首無しが現れる
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