狼は目覚める
「…む?ここは……」
狼が目覚めた場所は…
「……………は?」
目の前には大きな雪山が見え、後ろを見ると見覚えのある甲冑と襖が見える
「ここは…天守閣か…?」
その時、階段を登る音が聞こえ、楔丸を抜こうとし…
「…刀が…ない…不死斬りも…」
そして急いで隠れようとした時、襖の奥から出てきた者を見て狼は固まる
「…………御子様?」
そこにいたのはかつての主、九郎であった
「…何故…」
狼が九郎へ向かおうとした時、目の前に何かがあらわれる
「!?……義父上!?」
そこにいたのはかつての義父、梟であった
「……まさか」
狼が周りを見ると太陽は沈みかけの夕日であり、周りには紫色の服装の男が多数いる
「……これは…俺が御子様にお宿り石と馨し水蓮を手に入れた時…ご報告へ向かった時の…」
そして、九郎が喋り始める
「…お主のことは良く覚えているぞ、死んだと聞いていたが、一体何を企んでいる?梟よ」
「企むなど、滅相も…さあ、我とともに参りましょうぞ」
梟が姿勢を変える
「この梟は、御子様のその尊い御血を、お守りしたいだけにございます」
梟は跪き手を差し伸べ、九郎へ喋る
「…お主も、竜胤に魅入られたか…話す事は無い、去るがよい」
九郎が階下へ向かい
「…あい済みませんが懐かしきこの眺めを、もうしばし堪能したく」
梟が立ち上がる
「満足しましたら、帰りまする」
その時、狼の目にありえない光景が映る
「…!?あれは…俺…だと!?」
目の前に狼がもう一人あらわれる。そして義父へと近づく
「…義父上、生きておいでだったとは…」「謀ごとよ」
目の前で聞き覚えがある会話を聞きながら狼は思案する
「…この様子…俺のことは見えていない…?月隠でもない…夢…?)」
「お前こそ、あの夜死んだと思うておったがな」「御子様のお力にて、死人より帰りました」
「それよ」「は…?」
梟が狼に向き直る
「儂はあの御子の力を…竜胤を手中にしようと思う」「…ですが…」
「わかっておる、第一の掟により、父が命じる。主人を捨てよ!今より、あの御子はお前の主ではない」
「御子様を…捨てる?」「そうじゃ、狼よ…父の言葉に従い、御子を捨てよ」
狼は考える。これは…もしや…
「…御意」「父の言葉に従い、御子を捨てる…それで良いのだな?」「…まて、辞めろ」
狼の言葉も虚しく、目の前にいる狼は喋る
「はい、掟は絶対…主を…御子を捨てまする…」
…言ってしまった、これは…もしや…
目の前にいる狼が梟に跪く
「それでこそ、我が息子よ」
梟が狼の肩に手を乗せる
「これで…我が覇道も…ふむ」
梟が刀を抜こうと手にかける
狼も何者かが来るのを感じ、そちらを見る
「…これはこれは…物騒な客人じゃ」
そこには、刀を手にかけ、どことなく暗い雰囲気をだしているエマであった
それを見た梟が手裏剣をこっそり手に持ちながら喋る
「だが、道玄殿のご息女と争うては、今は亡きあの御方に、申し訳が…」
「たたぬ!」
そう言いながら、手裏剣を投げる
「エマ殿!」しかし…
シャキン!と音を立ててエマが手裏剣を居合で斬る
「ほお!…なかなかどうして…」
梟と狼が立ち上がる
「狼よ、其方に任す。見事、打ち破ってみせよ」「御意」
狼が刀を構え、梟はその場を去る
その場には狼とエマ、そして今の状況を困惑しながら見る狼がいた
「(何が…俺は…掟にさからい義父に刀を向けたはず…)」
その時、エマが喋る
「私はかつて、修羅を見ました」
「貴方の中にも、同じものがいる、それを、斬らねばなりません」「(なんと!?修羅…一心殿が言っていた…)」
エマが刀を構える
「…参る」
エマが高速で狼に接近し、切り付ける
それを、ガキィ!と弾く
そしてエマが連撃を仕掛け、それを狼が全て弾き斬る
不意にエマがヒュン!と斬りながら掛け、狼と距離を取る
その斬撃をモロに受けた狼は倒れかけ、踏みとどまる
そしてエマが鞘を取り出し、納刀する
「(あの構え…もしや、…)」
そしてエマが大きく踏み込む、居合を放つ
それは、とても綺麗な十字を描いていた
狼はそれを横へ飛び、避ける
そしてその隙を逃すまいとエマが下段を仕掛ける
「(まずい…それは、ダメだ!)」
ダン!と狼がエマを踏みつける
「ウグッ!?」「…はっ」
狼が突きを仕掛ける
それをエマが弾い、お互い斬り合う
不意に、エマが大きく距離をとり、刀を大きく右側で構える
「はぁっ!」
エマが鞘を用いた4連撃を仕掛ける
ガキぃ!ガキがキィ!ギャリィン!と最後の一撃を狼は弾けず防ぐと、姿勢が崩されかける
狼が慌ててエマに視線を向けると、エマは既に居合の準備を終えていた
ズバッ!ズバッ!「うおぉ……」
ドサっと狼が倒れる
「(しかし…)」
ブワっ!とピンクの光が漏れ、エマが後ろへ下がる
狼が瓢箪を飲む、そして好機と言わんばかりにエマが突きを仕掛ける
「(エマ殿、それは…!)」
ザン!と狼が刀を踏みつける
そして狼が切り付ける。しかしエマは刀を納刀し、手を回し構える
「せいっ!」「ぬおっ!?」
狼の手をエマが掴み、背負い投げ、地面に叩きつける
狼はその後転がってエマと距離をとり、エマは狼に切り掛かるが、狼は難なく弾く
「(…あの様子、エマ殿は…もう限界が…)」
そしてエマが居合を放つが、それも弾かれてしまう
「まだ……です…」「(エマ殿…)」
エマが呟く
「修羅を…野放しには……できぬ」
その時、エマが突きを放つ
ザン!と狼が刀を踏みつけ、エマが体幹を崩す
そこに、狼が忍殺を仕掛ける
「(やめろおおおおおぉぉぉぉl!!)」
狼の叫び虚しく、狼はエマの喉へ刀を突き刺さす
ザシュ!と刀が突き刺さり、ブシャァ!と血が噴き出る
「…しゅ……ら…」
ドサっ、とエマが倒れる
「(なんて…ことを…)」
その時、狼の意識が落ちる
「(うぐっ…エマ…殿…)」
〜狼の自室〜
「ぬおおぉぉぉお!」
狼がベットから飛び起きる
「……なぜ…俺はこんなに汗を…」
狼は何も覚えていなかった
悪夢