自分が意識を取り戻したとき、周囲には何もなかった。
肉体を失っている現状を『意識を取り戻した』と表現していいのか、等は考えないことにする。
現在地は『某画像編集ソフトの背景色:透過みたいな印象を受ける空間』のようで、自分を中心としてそれなりの広さがあるのが認識できる。
死後、神様と面会するタイプの創作物のテンプレにある『どこまでも続く真っ白な空間』だとか『何も見えない真っ黒な空間』だとかの亜種っぽい。
残念ながら神様との面会とか、チート能力の受け取りの類は省略されているらしい。
現状を把握するために必要な知識や、『お仕事』とやらのために必要な知識なんかが植え付けられている。
その知識を植え付けるため、元々持っていた知識のうち、『お仕事』で邪魔になりそうな部分が優先して削除されている。
……と植え付けられた記憶にあった。ひどい。
記憶を遡ると『あっ死ぬ』とか思ったのが最期。
そこに至る経緯なんかはサッパリで、名前や性別を始めとした個人情報も曖昧だ。
この謎空間、目視せずに空間全体が認識できるのだが、その範囲に出入口的なものがない。
気は進まないが、植え付けられた知識を元に行動するしかなさそう。
他に出来ることがほとんどないし、現状より悪くなると思えないし。
……ならないよね?
まずは詳細な現状把握といきたいのだが、……例の知識、多い。
元の知識が液体状だったのかってぐらい順番も何もなくバラバラである。
元が自分の知識じゃないからか、使いこなせる気がしない。
知りたいことが知識の中にあれば、それを周辺にある知識ごと重機で掬って渡されるイメージ。
せめてバケツにしてほしい。
無関係な知識が大半を占めるソレをぼんやりと流し見して必要な知識を探す。
時計も何もないので体感になるが、数日経過しているのに眠気も空腹感もない。
この状況で発狂していないのは人間じゃなくなったからか、それとも元からの適正か。
自分は元人間で、今は創造を司る神様の眷属神(下級)らしい。
元凶と思われる上司は複数の世界……世界群とやらにおいて神として活動しており、この謎空間はその世界群における神界の一区画。
お優しい上司様が新しく部下(強制)になった自分のために用意してくれた、個人領域
神様に人の心を期待するほうが間違ってるかもしれないが、是非その優しさを他の部分にも適用してほしい。
『時間がかかるのは、寿命のない身で少しでも暇が潰せるようにという心配りです。』
みたいな情報は要らないんですよ。
Tips:【主人公】
口調は安定しないし、どんな一人称を使っていたのかも思い出せない。
人格形成に影響していたような記憶もそれなりに消えているため情緒不安定。
残った記憶は偏っているので、前世が男だった可能性が高い程度は察している。
操作キャラを後ろから眺めるゲームはアバターを可愛い女の子にしていたようだ。