「ふぁーめいめっ!!」
視界に映るなり猛スピードで突っ込んできた女の子がいつも通り、ちからいっぱい!という感じで抱きしめてきた。
痛みはないものの反射的にうめき声が出る。
胴体を両手で締め付けられる感触、
中身が入ってたら大惨事だったかもしれないと思いつつ、残った左手でその頭を撫でる。
「マオちゃん今日も元気だねぇ。壊れちゃうから離してほしいなぁ。」
この女の子、マオちゃん(仮称)と会うのは二日ぶり。
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私が初めてマオちゃん()と遭遇したときはコミュニケーションをとる間もなくバラバラにされてしまい、身体の再利用もできなかったためとても悲しい思いをした。
二回目からは壊されても精神的なショックが少ないよう、損傷が激しい身体で接近・接触を試みるようにした。
何度もチャレンジし、損傷具合が低い身体で接近すると過剰なぐらいに追撃されるのに気付いた。
駄目元で原形が残ったパーツを寄せ集めて、各パーツが"私"の胞子でくっついてるのも隠さないまま特攻したら成功。解せぬ。
それまでと違ってきょとんって感じで攻撃して来なかった。
ちなみに今の私は『あちこちからカビが生えているものの外傷は少ない綺麗?なゾンビ』って外見である。
問答無用で攻撃されなくなったものの、うまく意思疎通ならず。
当初活動していた地域とはバカみたいに広い川を挟んでいるので別言語なのかもしれない。
あちこち指差して『石』とか『草』とか言ったあと、自分を指差して『ファンガス』と言ったら無事に意図が伝わったらしく女の子も長文で名乗り返してくれた。
……何度か聞き直してもどの部分が名前か分からなかったので当てずっぽうで声が大きくなった部分と判断して「マオ」と呼ぶことにした。
嬉しそうにしてたので多分合ってる。
この子、見た目は人間の女の子にしか見えないし、会話するだけの知性もあるのに気配が人間っぽくない。
今のツギハギボディで接触するまでの妙な攻撃性の高さは野生動物というよりも魔王とかその眷属に近いものを感じる。
後ほど色々試したところ、人間っぽさが一定ラインを超えた身体で近づくと理性を失ったように襲ってくるらしい。
近く(直線距離基準)に人間が集まるだけで察知してしまう魔王と違い、人間判定の大部分が視覚依存と思われる。
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マオちゃんは私と同じでイレギュラーな魔王なのかも知れない。
見た目からかけ離れた怪力持ちなので全力で抱きつかれると人間なら命に関わる。
……現に今の私は腕がもげた上に背中のほうからミシミシピキピキと危なそうな音を出している。
チラリとこちらを見上げてきたマオちゃんと目が合ったので、背中をポンポンと軽く叩いたら解放してくれた。
修復を手伝うつもりらしく慣れたように腕を拾ってきてくれたので怒るに怒れない。
初めてのときは腕がもげたらギャン泣きで、修復中も申し訳なさそうにオロオロしていたのが今では終始ニッコニコである。
守りたい、この笑顔。
Tips:【ファンガス】
ツギハギボディの名前として前世の記憶持ちな視点主ちゃんが10秒で考えた名前。
素材の大半が毒キノコ関連の名前だったのが由来。(当人はファンガス=毒キノコぐらいの認識)
視点主ちゃんは魔法少女の遺体に寄生して魔法少女を名乗っている【菌類の魔王】。
群体なのを利用してボディの複数操作やネット掲示板モドキを実現したヤベー奴。