外付け歯車なカミサマとその影響   作:にゅい

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念のため「残酷な描写」タグを有効にしました。(前話描写より)


伯爵家の神童くん(2)

異例の神託により、主家の坊ちゃまの【札解きの儀】のやり直しが決まった時のこと。

屋敷は地獄のような雰囲気から一転、お祝いムードに変わった。

 

嫌なことがあったのだから【札下ろし】の相手には坊ちゃまが希望する相手を呼んでみせる。

当主様が大見えを切ったのに対し、坊ちゃまが指名したのは何故か私だった。

 

【札下ろし】、(よー)するに召喚したカードの慣らし運転。

【札解きの儀】の後で行う【札下ろし】となれば普通は人生最初の対戦。

 

他人(ひと)の対戦を見てルールを覚えたつもりでも実際に自分が、となると上手くいくことは少ないので、対戦相手には指導の上手い人間が良いとされる。

そして貴族家の次期当主候補であれば拍付け――対戦相手や審判、アドバイザーとして関わった人物の格により権威を示すこと――が意識される。

 

どう考えても一介のメイドに務まる役割ではないのに坊ちゃまの要求は通ってしまった。

……いや、当事者が子供だから友達同士で「最初の対戦しよう」って約束してたり、「初対戦の相手は自分だ!」って親が強硬に主張してたのが叶ったって話も普通にあるから、これもそういうケースって扱いなんだろうけど。

 

メイドを対戦相手にするならせめて立会人として師団長レベルの大物を呼ぼうという話になり、希望を確認したら、坊ちゃまはとても渋った。

これまで坊ちゃまは良くも悪くも聞き分けが良く、ワガママ扱いされるタイプの要求であれば一度ダメと言われた時点で引き下がっていたというのに、とても渋った。

 

人に見られながらはヤダ!ナニィだけで良い!」…と。

 

……さすがにコッチの要望は却下された。

初対戦の坊ちゃま(7歳児)とマトモに対戦する機会がないメイド()

後ろから手札を見てアドバイスできる人間なしとか、その日のうちに終わるか怪しいもの。

 

坊ちゃまの希望を却下する代わりに、当日は私も【札解きの儀】を行うことになった。

枚数が足りなかったら塩漬け状態の(子供の頃に召喚した)カードで穴埋めして【札下ろし】に移行する予定だ。

 

万全の状態で召喚できるのが保証(神託)されている坊ちゃまに対し、【札解きの儀】2回目である私は自分と相性のいいカード、デッキの方向性、それらが何も考慮されていない事故確定デッキになってもおかしくない。

当主様がそれに気付いてないはずもなく、坊ちゃまに大勝させて機嫌をとろうという意図が透けて見える。

 

と、特別手当……!?

坊ちゃまの対戦相手に選ばれて光栄です。不満なんて全くありませんとも。

 

 

坊ちゃまに続けて行った【札解きの儀】では無事に規定枚数が召喚された。

懸念していたとおりに統一感なく召喚されたカード達のスペックを確認している途中、一緒にカードを確認していた同僚達の様子が変わった。

小声で「あっ」とか「えっそういうこと?」とか言いながら私をチラチラ見てくるのは流石に無視できない。

 

【破裂する風船の盾】、【幻のナナツ山】、【綿の詰まったヌイグルミ軍団】、【複製された隠し倉庫のカギ】、【魔義手の傭兵:ギン】、【フルーツ詰め合わせ:PAPAYA】、【ドッペルスライム】……。

 

……ん?

 

もう一度同僚の視線を辿り、あまりにもあんまりなソレの意味に気付き、目の前が真っ白になったような錯覚を覚える。

 

この感情……これが怒り……?

 

 




Tips:【ナニィ】
子守りメイド。家人の中ではかなり小柄。
勤め先の伯爵子息がその言動から【妖精憑き】や【悪魔憑き】と疑われた際、該当者が特定条件を満たす相手にどんな行動をとるのかを確認するため、当主からちょっと特殊な恰好を命じられた。

……結果として非常に懐かれた彼女は実質専属扱いとなり、特殊な恰好を続けることになった。
坊ちゃまとのふれ合い中、しばしば死んだような目をしているのが同僚に目撃されているが、不思議とそれを咎められることはないらしい。
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