私達のような専業探索者にとって、探索者を辞めるということは収入がなくなるのと同義である。
次の仕事を探すのは当然として、収入が安定するまでは出来るだけ支出を減らさないといけない。
そんなワケで今日は貸し倉庫を解約するために、預けた荷物を家に運んでいる。
荷物を詰め込んだリュックを背負い、同じく色々詰め込んだバッグを4つ、肩掛け部分を先々代の愛剣【モールスパイン】に通した状態で肩に担いで移動。
この剣は魔鉄鉱脈に居た鉄喰いモグラの骨をベースにしており、結構な量の魔鉄を含んでいる。
作成を引き受けてくれた職人さんが翌週には素材買取広告を出すぐらいには高性能だ。
職人さんによるとグレートソードという大剣の一種らしい。
……長すぎて取り回しが困難になり、また背が伸びたら使えるかもと倉庫送りになっていた。
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【維持】スキルのお陰か大剣を丸一日振り回すぐらいは余裕なので、このぐらいなら余裕で運べると思ってたけど結構な視線が突き刺さるので失敗だったかもしれない。
「ちょっと! ダメだよこれ、ホンモノでしょ!?」
それが自分に向けての言葉だと、気付いたときにはもう遅かった。
ダンジョン街、ビジネス街、住宅街、三つの区画の境となる緩やかな長階段。
階段を降りるための最初の一歩が空振った。
持っていたものを何かに上から引っ張られ、足を踏み外すという状況に思わず手を放してしまい、持ち手側から剣をすり抜けたバッグと共に階段を転がり落ちた。
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ちょっと目が回ってる気がする。
頭をブンブン横に振ってから周囲を確認。
人の数は多くも少なくもなく……みんな揃って硬直している。
リュックしたまま転がったからか両腕もどっか行ってるし、見た目は結構な惨状っぽい?
この状況で体質隠してやりすごすのは無理だよね。
一番近くの人が自分の足元と私を交互に見て挙動不審に……腕がそっちに転がってたらしい。
「すみません、それとってくれませんかー。」
指差すつもりで顎をグイグイっと動かしておく。
伝わる?伝わる?うん、それそれ。
ありがとう。ありがとう。
おにーさん、察しがいいね。
腕の付け根を動かしてふりふりとアピールしておこう。
もげても血とかほぼ出ないからそんなにグロくないとはいえ、断面をまじまじと見られるのはちょっと恥ずかしい。
「スキルでくっつけちゃうんで、そのまま袖に……そっちじゃない? ア、ハイ左手デスネ。」
堂々とスキルって宣言しておく。
このご時世、変な効果のスキル持ちって意外と多いからそんなに話題にならないはず。
ぐーぱーぐーぱー
「ホントすみません。助かりました……。」
他の人達も再起動して色々拾い集めてくれた。
ぺこぺこ。どうもどうも。
「――っと! ――しは――いて――」
あ、救急車と精密検査はノーサンキューです。
元気アピールをして解散の流れにもっていこう。
あからさまに無視してるから皆さん気付いてくれたらしい。
心配そうにしてるけど強く引き留めたりされないで済みそう。
浮遊感。
後ろから抱き上げられた。
「先輩が!治療!得意だから!!行くよ!!!」
はなして。
Tips:【モールスパイン】
鉄喰いモグラの背骨を加工した大剣。
素材となった個体の食性により魔鉄が主成分となっている。
長さ約140cm、重さ約10kg
Tips:【鉄喰いモグラ】
一部の生物学者が「骨格がモグラではない」と改名を要求しているが未だ実現せず。