ハイパーダンガンロンパ〜希望の学園と宇宙一バカな侍〜 作:超高校級の小説家
侍の国――そう呼ばれていたのは今は昔。かつて侍たちが仰ぎ、夢を馳せた江戸の空には、突如舞い降り台頭した『天人』の船が飛び交い、街には天人たちがふんぞり返って歩く。侍は剣も地位も、そして誇りも失った…。
そんな江戸の街に、天人たちに対抗すべく創設された学園がある。
「私立 希望ヶ峰学園」
あらゆる分野の超一流高校生を集め、育て上げることを目的とした、政府公認の超特権的な学園だ。この学園を卒業すれば、人生において成功したも同然…とまで言われている。
国の将来を担う“希望”を育て上げる、まさに“希望の学園”と呼ぶにふさわしい場所だ。
新入生の募集などは行われておらず、学園側にスカウトされた生徒のみが入学を許可される。そんな超一流の学園の校門の前に、僕は立っていた。
僕の名前は志村新八。どうしようもないほど平均的な青年だ。江戸の街に生まれ、特別な力も、突出した才能もない、ただのアイドルオタク。それが僕だ。何か特技と言えるものがあるかと問われれば、真っ先に思い浮かぶのは「寺門通親衛隊」のリーダーとして、彼女を応援することくらい。それだけ。そんな僕が、この学校――いや、この“超特権的な”学園の門前に立っているなんて、信じられない。
「本当に僕みたいなのが、この学校でやっていけるのかな…」
この学園に選ばれる生徒たちは、どの分野でも一際目立つ存在――いわゆる"超高校級"の才能を持つ者ばかりだ。ネットの掲示板でも、希望ヶ峰学園に関する専用スレが立ち、彼らの話題で盛り上がっていた。事前準備のために、その掲示板を覗いてみた僕が目にしたのは、平均値から大きく飛び抜けた天才たちの名前だった。
"超高校級のアイドル"や"超高校級の……などなど"――どれも異次元の才能を持つ者ばかり。どこをどう見ても、僕のような普通の人間が紛れ込む余地はないように思えた。掲示板のスレッドを追うたびに、自分の存在がどれだけ場違いか、改めて思い知らされる。
問題なのは、そんな"超高校級"のメンバーの中にどうして僕が選ばれたのかということだ。いくら考えても答えは出ない。学園から送られてきた入学通知書を見たとき、その答えはすぐにわかった。
“超高校級のツッコミ”
その文字を見た瞬間、僕は思わず固まってしまった。ツッコミ…?これが僕の才能なのか?本当に、ただツッコむだけの僕が、そんな超一流の生徒たちと肩を並べる資格があるのか?
でも、もう校門に立っている以上、進まないわけにはいかない。通知書には「8時に玄関ホールに集合」と書かれている。まだ時間はあるけど、ひとまず学園の中に入るしかないか。
校門の向こう側には驚くほど広々とした敷地が広がっていた。ここが「希望の学園」――希望ヶ峰学園だ。
胸の奥がじわじわと熱くなってくる。この場所でなら、僕にも何かができるかもしれない。僕のような平凡な人間でも、ここでなら変わるかもしれない。いや、変わらなければならないんだ。だって、この学園に選ばれたんだから。
ツッコミなんて、ただの話芸にすぎないと思っていた。でも、この称号が与えられたからには、僕にはそれ以上の何かがあるのかもしれない。この学園が、それを見出してくれるかもしれない。未来が開かれる予感に、僕の胸は高鳴っていた。
学園の門をくぐると、息を呑むほどの壮大な光景が目に飛び込んできた。僕がこれまで見たどんな学校とも違う。まるで、夢の中にいるかのように、すべてが眩しく、希望に満ちていた。輝かしい未来への道がここから始まるんだと思うと、足取りが自然と軽くなる。この場所でなら、僕は本当に変われる。そんな期待感が胸に溢れ出していた。
「もしかして…本当に僕、ここで変われるかもしれない」
この場所なら、僕にも何かできるかもしれない。自分がただの平凡な青年だと思い込んでいた日々が、ここで変わるかもしれないという期待感が、僕を前に進めさせた。玄関ホールへと続く道を進む僕の胸には、希望が溢れていた。
玄関ホールに到着しても、誰もいなかった。壁にかかる時計を見上げると、まだ7時10分。集合時間まで50分もある。
「早く来すぎたな…緊張しすぎだよ、僕…」
なんとなくホッとしながらも、周囲を見渡しても人気がない。不安が膨らんでいく中、少し学園内を歩き回ってみようかと思った。
「僕も、もうこの学園の生徒なんだから…少しくらいなら…いいよね?」
自分に言い聞かせるように、玄関ホールを出ようとしたその瞬間、世界が突然揺れ始めた。
「な、なんだ…?」
目の前の視界が、ぐにゃりと歪んだ。周囲の景色が溶け始め、まるで夢の中に迷い込んだかのように世界が崩れていく。
重力がなくなったかのように、足元がふわりと浮く感覚。目を閉じても消えない違和感に、冷たい汗が流れ落ちる。これが現実なのか?それとも――何かの悪ふざけなのか?
「おいおい、これって…なんかのドッキリぃぃ?」
僕は戸惑いながら、必死に自分を保とうとする。頭の中が混乱して、目の前の世界がぐるぐると回り続けた。まるで、足元が消え去っていくように感じた瞬間、視界が完全に真っ暗に――。
「ここは…?」
気がつくと、僕は見覚えのない教室で目を覚ました。机に突っ伏して寝ていたらしい。頭がぼーっとして、身体が重い。起き上がって周りを見渡すと、窓には分厚い鉄板が打ち付けられていて、外の景色が見えない。
「な、なんで…こんなところに?」
胸がざわざわして、心臓が高鳴り始める。時計を見ると、時刻は8時を過ぎていた。僕が玄関ホールにいた時、確か7時10分だったはずなのに…いつの間にこんなに時間が経ってる?
机の上に置かれたパンフレットを手に取り、何気なく読んでみると、手書きで「入学あんない」と書かれていた。
『新しい学期が始まりました。これからはこの学園がオマエラの新しい世界です』
「これ、何かの冗談か…?」
困惑する僕は、状況を整理しようと考える。玄関ホールで立ちくらみした僕を誰かがこの教室に運んでくれたのか?でも、窓に打ち付けられた鉄板や、この教室の異様な雰囲気はとても普通じゃない。これ、本当に希望ヶ峰学園なのか?
「とりあえず…玄関ホールに戻ろう。だれかいるかもしれない」
そう自分に言い聞かせて、重い足を動かし始めた。
廊下に出ると、薄暗い照明が所々点滅していて、不気味な静寂が広がっていた。どこかで風が吹く音が響き、妙な寒気が背中を這い上がる。
「…気味が悪いな…」
廊下の先には無数の扉が並んでいて、どこに行けばいいのかもわからない。大きな学校だというのは知っていたが、こんなに広いとは思わなかった。暗くて静かな廊下を、一人きりで歩くのは…正直、怖い。
誰ともすれ違わず、誰の声も聞こえない。ただ、不気味な静けさが僕を包み込んでいた。少しでも早く玄関ホールに戻りたくて、足が速くなる。だけど、どこを歩いても同じ景色が続くような気がして、焦りが募る。
「くそ…こんなとこで迷うなんて…僕、迷子かよ…」
額に汗が滲んで、手のひらがじっとりと冷たくなる。もしかして、このまま永遠に彷徨い続けるんじゃないか――そんな不安が頭をよぎる。
でも、諦めずに廊下を歩き続けると、やっと目の前に玄関ホールの扉が見えてきた。重々しい扉を押し開けて中に入ると、そこには――。