現代に転生したダンジョン被害者モブ女子ら 作:アルビノベアー
なんで今まで忘れていたんだろう。
私はデカくて歯がたくさん生えててツヤツヤした外殻を持つ気持ち悪い蟲に足の方から喰われて死んだのだった。
そのはず、なのに今はこうして日本の一般的民家で目覚めを迎えている。親の私を起こす声、枕元ではお気に入りの曲がアラームとして鳴っている。
つまり、私は転生したということなのだろう。ああ、思い出したら…。
「うぷっ」
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学校は休んだ。
母は普段大人しい私が何かに怯えているようなのを心配そうにしていたが、私は風邪だと偽って仕事に送った。
しばらく震えていたら、落ち着いてきた。考えを変えたからだ。現代日本に生きる私には危険はない。だから、あんな痛みに怯える必要もないし、この記憶が私の重度の思い込みである可能性もある、そう考える。考えを変えるのは得意だ。
落ち着いて前世の記憶について考えると、不思議なことに思い至った。私の通う学校の生徒の中に、前世で見たことのある顔がいくつか思い当たるのだ。
たとえば一番の友人だったリアは私のクラスメイトだし、あの忌々しい後輩も、今世でも部活の後輩としてたびたび顔を合わせている。
リア、もとい莉愛ちゃんとはスマホで連絡が取れる。彼女が前世の記憶があるように振る舞っていたことはなかったが、私と同じように今日思い出した可能性もある。そう思ってスマホを取り出した時だった。
ピンポーン。
宅配便か何かかと思って見に行くと、そこには莉愛ちゃんの姿が。
「もしかして…」
でも、なぜ私の家の場所がわかったのだろう。今世でも仲は悪くないけど、そこまで親しくもなかった。
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「リアは、今世でも相変わらず真面目ね」
「そういうヨミは、相変わらず表情が死んでるわね。ほぐす?」
余計なお世話だ。
話を聞くと、やはり今朝にかけて、前世の記憶が思い出されたらしい。リアは私の部屋に上がり込んできて、わずかに残った臭いに顔を顰める。
「私の方が、先に死んだのよね」
そう確認すると、リアはその気が強くて真っ当な生き方しかできなさそうな顔を辛そうに歪めた。
「なんでヨミが、あんな死に方しないといけなかったのよ!どう考えても魔法使いには護衛が必要じゃない!それなのに、何かおかしいのはわかってたはずなのに、赤の他人を助けるためにひとりで先の部屋に向かった、そうよね?」
彼女は私がなぜ死んでしまったのか確認したいのだろう。
「そう。先の部屋には見たことのない怪物がいた」
そう答えると、彼女は腹立たしげに私の肩を掴む。
「あなた、自分の価値がわかってないの?あなたは希少属性使いだったのよ!」
それに、残された私のことも考えてよね。彼女がそう言ったように聞こえた。
今、私は一度死んだのに説教されている。不思議な状況だ。
というか、こんな性格だっただろうか。
前世でのリアは、もっと私から距離を置いていた気がする。というか、私のことを怖がっていたと、そう解釈していたのだが。
「あの日、わたしが着いていけば良かったわ。朝会ったときは普通だった。いつも通りだったわ。それが、あんなに皮膚をずたずたに引き裂かれて、ぐちゃぐちゃで、ばらばらに…」
「…私の死体の様子なんて聞きたくない」
「あ、そ、そうよね。ごめんなさい、わたし…」
ということは。
「ていうか、見たの?」
リアは青ざめた顔で躊躇いがちに頷いた。
彼女は私の服の中どころか皮の中まで見たらしい。そういう事になる。
まったく、恥ずかしいことだ。
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発展した社会のお菓子を食べて、気を落ち着かせたところで、私は聞くべき質問をする。
「…リアは、どうやって死んだの」
冒険者という仕事で稼がなければならなかった以上、最終的に待っているのは、悲惨な死。よっぽど幸運じゃなければ、そう。
「わたしは、そう、モンスターハウスに閉じ込められたのよ」
それはまた、まともな死に方ではない。深くは聞かないでおこう。リアが言いたくないと思っているのなら、言わなくていい。
「…そう」
彼女は自分を抱きしめて震えている。死んだ記憶が昨日のことのように思い出されるのだろう。
前世では距離を取られていたので、手が触れあうこともなかったのに、今は彼女がそれを必要としているように感じた。それは、私がこの二十一世紀を生きてきた、その上で形成された価値観のせいだろう。