好きって言えばいいわけじゃない   作:あぱ

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それを腐れ縁っていうのかも知れない

「……え、じゃあ来栖無理やりお前らに割り込んできてたのか?」

「まあ、そうなるのかな」

「何それおもしろ、頭おかしいんじゃねえの?」

 

 ケラケラ笑いながらそう言う光田。お前に言われるのは来栖さんも不服だろう、かなり。

 

「……さっきからすごいスマホ通知来てるけど」

「あ?ああ……気にしない気にしない」

 

 放課後、先日の小宮山さんと出かけた時のことを聞かせてくれと言われ渋々付き合ってやることにした。

 地面に置いた鞄の中のスマホが何度も振動しているのを伝えたが、一瞬悩んだ後面倒臭そうに気にするなと答える光田。

 

「……お前さあ、俺は刺されても悲しまないからな」

「まるで刺されるのが確定事項みたいに言うな。そして悲しんでくれよ」

「今度は何なんだよ、それ」

 

 変わらずメッセージを受信し続けているスマホを指差す。頭をポリポリとかいてため息をついた後、スマホを手に取って操作し始める光田。

 

「……中学の時に別れた奴がなんかすげえメッセージ飛ばしてくんのよ」

「何したんだよ」

「何もしてねえって。ただいつも通り飽きたら別れよつっただけで」

「………」

「あ、あの時はお互い納得してたんだぜ?」

 

 「あの時」ねぇ……

 人の関係にどうこう口を挟むつもりは別にないけど……なんで俺こんなやつとつるんでるんだろう。

 

「ほら見てみろよこれ」

「いやいいよ見せなくて、興味ないから」

「今何してる?とか、高校生活どう?とか」

「読み上げんな」

 

 こちらの拒否を気に求めず一方的にやり取りを読み上げてくる光田。

 

「なんか1週間経ったくらいから会いたい〜とか、あの時はごめん〜とか……な?」

「な?じゃねえよ、なんの同意を求めてるんだそれは」

「で、そんな感じのメッセージが1日に10件は来る」

「……10か」

 

 なんだろうな、その多いのか少ないのか微妙な感じ。多いことは多いんだろうが、その手の粘着質な相手の話にしてはイマイチパンチの弱い数字な気がする。

 ………あ。

 

「小宮山よりマシとか思っただろお前」

「……………………いや?」

「長かったな、間」

「そんなまさか」

 

 まあメッセージと面と向かって言ってくるかの差はある……あるか?

 むしろ面と向かって言ってくる方が随分度胸が求められるのでは?

 

「………」

「お前今小宮山のヤバさ再確認しただろ」

「そんなまさか」

 

 少なくともこのクズ男とかよりはマシだろう。こいつのことよく知らないけど多分こいつが一番やばい。

 

「なんて返信してんの?その相手に」

「え?既読スルー」

「……ブロックは?」

「しねえよ、面白いじゃん」

「………」

 

 既読するからずっとメッセージ送ってくるのでは……いやこいつそれを面白がってるんだわ、なんだこいつカスか?

 カスか。

 

「でも俺こいつに家知られてんだよなあ、家まで来られたらどうしよ、ははっ」

「こっわ……」

「ナイフとか持ってきたりしてな!」

「まあ確かにお前はいない方がいい人間かもしれないが…」

「おっと徹底的に悲しまないつもりだなお前」

 

 流石に刃傷沙汰になる前にさっさと決着をつけろとは思うが……しかし何をどうしたらそんなに節操なしに手を出せるのだろうか。それはそれで一つの才能なんだろうけど。

 

「……お前、今は誰かと付き合ってんの?」

「ん?いや今はフリー」

「へぇ……意外」

「なんか飽きたし、一旦休憩?」

「クズめ」

「照れるなあ」

「黙っててくんない?」

 

 こいつと話してるとどんどん心が荒んでいく気がする。

 

「実は最近バイト探しててさあ」

「あ?パチンコ?金は貸さないが」

「いやそれは流石にしねえよ……お前俺をなんだと思ってんの」

「カス」

「照れるなあ」

「黙れ」

 

 まあ流石にパチンコは発想が飛躍しすぎだったか……お小遣いが欲しいとかでバイトをやりたがる高校生はもちろんいるだろうし。

 

「なんかいいバイト知らねぇ?」

「受け子」

「アウトだよ」

 

 バイトか……

 親が二人とも休職して、その貯金で今は妹と二人で暮らしてる感じだけれど、向こうがどのくらい長引くかわからない。

 俺も最低限働いて生活費を稼ぐ……なんてことをしないといけなくなるのだろうか。別に時間はいくらでもあるけども。

 

「まあ金欠だかなんだか知らないけど、お前はそんな暇があるなら勉強したほうがいいと思うぞ」

「はっはっはっは、やめて」 

「追試頑張れよ」

「やめて」

「へへっ、いい気味」

「性格悪いぞお前」

「そりゃどうも」

 

 俺はただ現実突きつけてるだけなんだけどな。

 あと2週間もすれば夏休みに入る。別に毎日特に何もせずだらだらするのも全くやぶさかではないのだけど………不思議と誰かしらに振り回される予感がする。

 

「蓮木くんさあ、俺の勉強手伝う気とか……ない?」

「時給は?」

「金とんのかよ。………さ、300円……」

「………」

「なんだよ金ないって言ってんだろ……」

「いや……」

 

 金払ってでも勉強教えてもらいたいくらい切羽詰まってるのかと、ちょっと可愛そうだと思ってしまった。

 

「…別に俺じゃなくても他の友達にでも頼めばいいだろうに」

「アホの友達は大体アホなんだよ」

「ひでえ言い方。………まあ、分からないところあるなら聞いてくれれば、分かる範囲で教えるけど」

「マジ?全部わからないから全部教えて」

「話にならん」

 

 高校一年の一学期でそれならもっと焦った方がいい。まあ補習なってる時点でそりゃダメか……

 

「……時間、ある時にな」

「…それ、追試の後にならない?」

「二学期から頑張ろうな」

「へい……」

 

 まあ本人に勉強する気が一切ないだけで、テスト前に一夜漬けするだけでも赤点回避までならなんとかなる……なるか?人によるか。

 

「俺もそんなに頭いいわけじゃないんだけどなぁ…」

「あ?小宮山から蓮木くん凄く頭いいんだよっ!って言われたけど」

「真似すんな似てないしキモい」

「照れ———」

「黙れ」

 

 ……高校に入ってからはそんなに本腰入れて勉強してないし、小宮山さんと一緒に勉強していた時も……いやろくに勉強できてなかったけど。

 それでも、そこまで言われるほどのことをした覚えないが……まあ小宮山さんだし過大評価されててもおかしないか……

 

「……ってかお前、小宮山さんと話すの?」

「蓮木くんって人が気になるらしくってぇ、そいつについてよく聞かれるんだよねぇ」

「追試頑張れよ」

「ごめんって行くなって」

 

 ええい服を引っ張るな。

 

「小宮山と俺が仲良く話してるからって妬くなって!」

「どの前歯から折られたい?」

「こっわお前」

「いちいち煽ってくんなよ」

 

 服を掴んでいる手を無理やり引き剥がす。

 

「んだよただの冗談じゃん」

「人をイラつかせる冗談はちゃんと覚悟して言えよな」

「なんの覚悟」

「縁を切られる覚悟」

「ごめんって」

 

 ため息をついて壁にもたれかかる。

 まあ、人付き合いに関しては自分も偉そうにものを言える立場ではないのは確かなわけだけど。

 

「俺ほんとはお前らのことこっそり見に行きたいなとか思ってたんだよな。この前のやつ」

「え?」

「まあ成績悪くて親に怒られて外出すんなって言われてたけど。来栖が来てたって聞いていかなくて良かったって思った」

「あぁ…」

「俺あいつ苦手だ、怖い」

 

 なんでわざわざこっそり着いてこようとしていたのかはわざわざ聞かないしどうせ面白がってだろうけど、どうやら来栖さんのことが苦手らしい。

 うん、まあ、分かるけども。

 

「ちゃんと話したわけじゃねえけどさ、目つき鋭いんだよな。俺の噂知ってて警戒してるんだろうけど、ろくに話したこともないのに敵意がすげーのよ」

「まあ……来栖さんだしなぁ」

 

 俺はちょっとは話せるようになった……と思いたい。

 

「まあ自分がロクでもないやつって自覚はあるけどさ、やっぱりああも敵意向けられると少し……結構堪える」

「いい気味だな」

「その点お前といると気が楽だわ。口では悪く言ってくるけど本心から俺のこと見下してるわけじゃないって分かるし」

「いや、見下してるけど」

「………」

「………見下してるけど」

「二回も言わんでいい」

 

 ろくでもない俺だが目の前のこいつよりはマシだと思うと少しは気が楽になる。別にそのために絡んでるわけじゃないけども。

 実際に見下しているわけではない、ちょっとバカにしているだけで。

 

「そんなに好き勝手言って!流石の俺も傷つくぞ!」

「お前が今まで傷つけてきた女の子の方が?」

「傷ついてるに決まってるだろ言わせんな誇らしい」

「誇るな恥を知れ」

「へへっ」

 

 見下しているというより軽蔑しているかもしれない。いや軽蔑は実際してるけど。なんなんだこいつほんとに。

 

「……俺が言うのもなんだけどさあ、なんでお前俺と縁切らねえの?」

「切っていいの?」

「駄目」

 

 そんなことを正面から聞かれるとは思っておらず、顎を上に向けて天井を見ながら少し考える。

 

「まあそもそもお前の方から凄い絡んでくるからこっちから縁を切るも何もないんだけども」

「……確かに」

「別に俺はお前から直接何か迷惑被ったわけじゃないし、一方的に縁切るとかそこまでのことするほど嫌ってもない」

 

 まあこいつにとっては縁を切る、切られるというのが当たり前のことなのかもしれないが、普通はそこまでなるってことは相当なことだし。

 

「そっちは面白がってだったろうけど、あんな時の俺に話しかけてきたのお前くらいだし」

「まあどんなカス野郎なんだろうなって見に行ったけど」

 

 腹立つ。

 

「……得意じゃないんだよ、人付き合い。だからできる限り出会いは大切にしたい。相手がどれだけ怖かろうが、どれだけクズだろうが………俺にとっちゃ貴重な関わりだから」

「………要するに俺ぼっちだから仲良くしたいですってコト?」

「まあ互いに1人くらい縁切れたって大差ないだろうけどなぁ?」

「ごめんって」

 

 本気でイラッときた。やっぱり縁切っといた方が自分のためかもしれない。

 

「…お前、いい奴だな」

「選り好みできるほど器用じゃないってだけだよ」

 

 自分を知れば知るほど、自分のズレたところを知れば知るほど。

 自分に対する失望が強くなっていく。そんな俺なんかお構いなしに関わってくるのは確かに煩わしさはあるけれど。

 

 関わってくれて嬉しいって気持ちの方が大きい。

 

「いや……そうか、出会い………そうか」

「……なんだよ」

 

 立ち上がったかと思えば背中をパンと叩いてくる光田。

 

「ラーメンでも行こうぜ、いいとこ知ってるんだよ」

「………次煽ったらほんとに帰るからな」

「分かってるって」

 

 馴れ馴れしく掴んでくる肩を引き剥がしながら、会計の時にお金ないから奢ってくれと言われる未来を予感するのだった。

 

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