好きって言えばいいわけじゃない   作:あぱ

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場を作ればいいってもんじゃない

「あっそうだ、せっかくだし皆んなで写真撮ろうぜ。ちゃんと格好まで凝ってやってきたんだから、思い出せるようにしとかないと損じゃね?」

「あっ確かに!光田くんナイスアイデアだね」

 

 光田の提案で、人気の少ない場所へ移動して写真を撮ることになった。

 

「自撮り棒あるやついる?」

「確かに持ってればよかったな、いざという時にお前を殴打できる」

「無いなら無いって言ってくれね?」

 

 来栖さんが常に光田への当たりがきつい。まあ光田が来栖さんを煽り散らかすのが悪いけれど……でも楽しんでるよなこいつ。いつか本当に殴られても知らないぞ。

 

「まあないなら内カメでやるか……そんじゃ撮るぞ〜。おい蓮木ィ!笑えェ!」

「えっ?」

 

 怒鳴られた。

 

「いや……でも来栖さんも顰めっ面だし…」

「顰めっ面だって表情の一つだろ!お前は真顔じゃん!!」

「わ、悪いかよ」

「悪いね!この世の諸悪は全てお前が原因なくらい悪い!」

 

 悪すぎる。

 

「分かった分かった……」

「………何お前口角痙攣させてんの?」

「作り笑いしなさすぎてやり方が分からん……」

「は??」

「ふふっ、かわいい……」

「穂花、見境はあった方がいい」

 

 クソッ、人付き合いなさすぎるし家族に写真撮られる時も無駄にスカしてポケットに手を突っ込んで無表情で撮られてたから本当に口角の上げ方が分からない。

 なんでこんなにピクピクするんだ。

 

「……まあそれでいいや、撮るぞ〜」

 

 撮られた、口角ピクピクなってんの撮られた。

 

「う〜し………半数がろくな顔してないんだけど?」

「それも一つの思い出だね!」

「お、おう……そう、だな?」

 

 グループに送られてきた写真を見てみる。

 うわなんだこれひっど、誰だこの笑顔を知らないモンスター。俺だよ。

 

「はぁ……蓮木くんのぎこちない笑顔好き……」

「穂花やめてそれ……」

「好きなものを好きと言って何が悪いの!?」

「悪くないけど私の気分が悪い」

 

 俺も自分の変な顔を撮られて辛い。

 帰ったら……帰ったら笑顔の練習しよう。

 

「……ちょっと暑くなってきたかも?」

「まあ真夏だしね……浴衣暑いし」

「なら飲み物買ってくる。何がいい?」

「お茶」

「お茶」

 

 面白くねーの、と光田がぼやく。

 

「あっ、じゃあ俺もお茶———」

「お前も一緒に来るんだよッ」

「えあっちょっ、引っ張るなっ、こけるッッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冷水に浮かんだ冷えたペットボトルを売っているところを探して、四人分のお茶を買って二人の待っている場所へと戻る。

 

「で、どうなんだよ」

「どうって?」

「いつもと違う格好した女子を見て、何か感じたりとか……ないの?」

「え?別に……可愛いなとは思うけど」

「かーっ!そんなだからモテねぇんだよおま………いや、モテてるか」

 

 モテ……てはないと思うけど?

 

「うーん……髪は結ってるし、浴衣も似合ってるけど……それ以上も以下でもなくない?」

「かーっ!もっとこう、胸のトキメキとか……ないの!?」

「とき、めき………?」

「なんだこいつ……」

 

 そんなに変なこと言ってるか?俺。いや、変なんだろうけど……

 

「あのなあ……俺に言わせればあの二人、当たりだぜ?」

「そういう下劣な話するんだったら全然帰ってくれていいぞ」

「けっ、いい子ちゃんぶりやがって……」

 

 そういう下心持って相手に接することは失礼だと思う。まあ、俺がそういうの理解できないだけなんだろうけど。

 

「どっちにしろ普通の女子より可愛いって言ってんの。俺でも最初浴衣姿見た時はこう、イイネ…!!って思ったんだし」

「なんかキモいな」

「言ってろ」

 

 少し前まで人の表情以外ろくに認識してなかった人でなしにそんなのを求めないでもらいたい。

 

「二人っきりにならずに、俺と来栖誘ってるあたりがお前のヘタレ加減をよく表してると思うぜ」

「暑苦しいんだよ離れろ。お前今日いつもに輪をかけて鬱陶しいな?」

「いっつも鬱陶しいって思ってんの??」

 

 まあ……うん。

 

「とにかく俺が言いたいのは!夏祭りなんて絶好の機会を逃す手はないって話!まさかお前普通に皆んなで楽しんで終わろうってハッピーなこと思ってんじゃないだろうな?」

「え?」

「論外!お前もう論外!!」

 

 頑張って思い出作りしようとするだけでなんでそんなこと言われなきゃなんねえの?そろそろ来栖さんの分まで俺がお前のことぶん殴っていいか?

 

「お前の考えてることなんて手に取るように分かるぜ?」

「そんなに仲良くないだろ」

「チクチク言葉やめて。………大方、小宮山に楽しんで欲しいからとかそういう魂胆だろ?」

 

 当たってるけども。

 

「そこで俺や来栖に頼るのがお前のダメなところなんだよ」

「文句なしのダメ人間に言われてもな」

「俺一人でも喜ばせてやるってくらいの度胸がないと…」

「人に偉そうに指図ばっかする奴に言われてもな」

「さっきから言葉のナイフが刺さってるんだけど」

「刺してんだよ」

 

 あまりにも楽しそうに捲し立てられたので反撃せずにはいられなかった。

 

「んだけどさあ!言いたいことは分かるだろお!?」

「まあ……」

「な?今でも楽しんでるだろうけどさ……お前はあいつに、ずっと妥協させてるってこと忘れんなよ?」

「………」

 

 妥協……させてるのか?

 ………

 

「だからさあ、なんとかして小宮山と二人っきりになって……」

「……その場合、お前来栖さんと二人きりになるけどいいの?」

「スーッ……まあ、なんとかなるんじゃね?」

 

 怯えるくらいなら煽らなきゃいいのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何持ってんの?」

「チョコバナナ、食べる?」

「いらないけど……」

 

 飲み物を買うのに時間をかけたせいか、二人に移動されてチョコバナナを食べられていた。

 

「あーずっるぅ!野郎をパシリに使って自分たちは楽しく屋台漁りかよ〜」

「チッうっせぇな……」

「ストレートすぎない?」

「欲しけりゃそこで買ってこいよ」

「ああいいよ買ってくるよ待ってろよお前この野郎」

 

 なんかプロレスしてる。エスカレートして本気の喧嘩になったりしないならまあ好きになってください……

 

「このあとどうするの?」

「え?」

「確か花火があるんだったよね?場所とか……」

「あー」

 

 小宮山さんに言われて迷う。別に花火なんてどこからでも見えるけれど……というか花火ってうるさいだけだと思っている自分がいる。

 

「やっぱり花火と言ったらアレだよね!」

「アレ?」

「花火の音と一緒に『好き』とか言っちゃうやつ!聞こえてないよねってドキドキしながらやるの!やりたいなぁ〜!」

「……穂花の場合、もう散々言ってるんだからそんなのしても仕方なくない?」

「………」

「………」

「………」

 

 固まったと思ったら頭を両手で抱え始めた。

 

「そうじゃん!もう数え切れないほど言ってきたんだから希少性なんてこれっぽっちもないじゃん!!」

「好きの安売りしすぎたねぇ」

「ちょっと!私の蓮木くんへの恋はプライスレスなんだけど!?」

「やかまし」

 

 ああ、うん。

 これその好きな相手の目の前で言ってるんだもんな、本当になんなんだろうこの状況は。

 

「好きに代わるここぞって時の言葉を考えないと……あっあっ、愛して、る……うぅ!?むりむりむり言えない言えない」

「基準が分かんないよ穂花」

「別に、言葉変えなくたって気持ちは伝わってるから……」

「しゅき……」

「ペッ!」

「うわぁなんだお前急に唾吐きやがって!?」

 

 チョコバナナを両手に1本ずつ持った光田が来栖さんの吐いた唾に被弾しそうになる。それに「当たればよかったのに」とついでと言わんばかりに毒を吐く来栖さん。

 

「あっこれお前のじゃねーから、どっちも俺が食う用だから。欲しがったってやらねーから」

「別に欲しいなんて一言も言ってないけど…?」

 

 なんでそんなに食い意地張ってんだこいつ。

 

「てかお前唾吐いてんじゃねーよ」

「唾液より汚い奴にかかっても大差ないし」

「言い過ぎだろ」

 

 明らかに唾を吐いた要因は俺にあるんだけど……来栖さん、割と本心から光田を嫌ってそうな感じする。

 

「はーっ、クレーンゲームもろくにできないやつに言われてもなんもねーわー」

「あ?なんだお前死にたいのか」

「死にたくはないけど?」

「もうくるっちゃん!やるなら半殺しまでだよ?」

「止めてくんない??」

 

 止めてくんない?って、煽ってんのお前じゃん。相手がどんな奴か知ってて煽ってるんだから誰も止めないよ。悼みはするかも。

 

「よーし分かった決着つけてやるよ、金魚掬いしようぜ」

「私に命のやり取りを挑むと…?」

「金魚掬いを命のやり取りっていう奴お前以外にいねえよ」

「いい機会だ、上下関係ってものを教えてやる」

「やり方を教えられる立場にならないといいねぇ〜」

「今、殺すか」

 

 ………え?

 

「えっちょ、二人とも………」

「……行っちゃったね。仲良いなあ」

「最後に物騒な言葉聞こえたけど…?」

 

 四人で楽しもうって思ったのに、なんか二人で勝手に決着付けに行ったんだけど……しかも金魚掬いで。

 

「……あ」

 

 あいつ去り際にこっちに向けてサムズアップしていきやがった、謀ったなお前、余計なことばっかり考えやがって。そのまま来栖さんに始末されてしまえ。

 

「何がしたいんだあいつ……」

「そ、その……はっ蓮木くんっ」

「ん?」

「ふっ、二人っきりだね!!!??」

「そ、そうですね?」

「………」

「………」

 

 だ、だから何?

 

「ごめん何も思いつかない」

「あ、そう………」

 

 変な切り出され方したせいで気まずくなった、もう全部光田が悪い。

 

「どうする?あいつら追いかける?」

「……ううん、二人っきりにしてあげよ」

 

 小宮山さんは光田に死ねというのか。

 

「蓮木くんはまだよく分からないと思うけど、あれでくるっちゃん結構楽しんでると思うよ?本当に怒ってたらとっくに手が出てると思うもん」

「……そう?」

 

 過去に何度か命の危険を感じたけども……

 

「私たちも行こ?多分あれ二人ともヒートアップして終わらないよ」

「まあ……それもそうか」

 

 来栖さんあれで負けず嫌いというか意地っ張りというか……そういうところあるし、光田も煽ったら止まらないし。

 

「いや〜それにしても驚いたよ、蓮木くんから誘ってくれるなんてさ」

「あぁ……まあ、いつも連れ回してもらってるしね」

「え?…いつも私から誘ってくれてるから今回は…ってこと?」

「まあ……」

 

 理由が子供っぽいかなと少し恥ずかしくなる。隣を見てみると、また小宮山さんが俺の方を凝視して恍惚とした表情をしていたので冷静になる。

 こういうところなんだよなあと、歩みを進めながら周りを眺める。

 

「優しすぎる…!」

「そんなんじゃないよ。……ただ釣り合ってないなあって……思っただけだよ」

「……釣り合ってないなんて、そんな」

 

 変えてもらってるのに、何も返せていない。こんなのは対等じゃないし……俺にとって都合が良すぎるだけ。

 俺に都合が良いだけで終わってほしくない、もっと………もっと、送って、返して、そんな関係でありたい。

 

「蓮木くん、私は———」

「…………」

「蓮木くん?」

 

 姿が見えた。

 あの時と同じ顔が、同じ場所で。

 

 

「………咲希」

 

 

 その横顔が見えた途端、思考と足が止まった。

 

 

 

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