話は少し遡る。
高校受験を間近に控え、そろそろ将来について考えなければいけない時期にそれは起きた。
いつも通り自分の部屋で勉強もせずにゲームをしていた時だった。
「これよー!!」
(ん?姉ちゃんの声か?)
姉は日常的によく通る声で喋るため、さして大きい声を出してもいつも気にはならなかった。
しかし、この時は妙に変な予感がしたのを覚えている。
声に反応したのか佑芽が姉ちゃんの部屋へ向かっていく音がした。俺もそれに連れられる様に部屋を出ると、
「お姉ちゃんどうしたの?何がこれなの?」
丁度佑芽が姉ちゃんに問いかけていた。
妹の不思議そうな顔と相まっていつものドヤ顔を決め込んでいる姉は堂々と宣言したのだ。
「私、アイドルになるわ!」
自分の予感はまるで嘲笑うかの様に的中したのだった。
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「お姉ちゃんアイドルになるの⁉︎すっごーい!!」
「ふふん!そうでしょ〜?ってそれより大枯!お姉ちゃんに向かって馬鹿とは何よ馬鹿とは!!」
「いや、ごめん。確かに馬鹿は良くなかったよ」
「あら?分かればいいのよ!」
「阿呆なの?」
「何ですってーー!」
「大ちゃん悪口は駄目だよっ?メッ!」
「佑芽、これは悪口じゃなくて事実を言ってるんだよ。家族でも時には真剣に向き合って厳しく言わないといけない時があるんだ。今はその時、姉ちゃんはとち狂ってるんだ」
「そっ、そうだったのかぁ…!」
「な•ん•で•す•っ•てーーーー!」
あ、やべっ
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ヒートアップしてピョンピョン飛び跳ね始めた姉をようやく鎮めてから説明を求めることにした。
「それでアイドルってどういうこと?」
「これを見なさい!」
そう言うと姉は何か突き出してきた、これは雑誌?
「ん〜何々…?【これで貴方もモテモテ!男性を射抜くテクニック】って書いてあるけど?」
「姉ちゃんあんまりこういうの鵜呑みにしない方がいいよ。」
「えっ、そうなの??…って、違うわよ!そっちじゃなくてこっち!!」
姉は雑誌をひったくると逆のページを指し示した。
「んん〜?【今『765プロ』で話題沸騰中、注目アイドル特集!】って書いてあるけど??」
「そう!そしてここを読みなさい!」
「えっ〜と【集えアイドルの卵達よ!アイドル養成校『初星学園』】か…」
読み上げて顔を上げると、何故かドヤ顔を晒す姉がいた。
「ここまでくれば後は分かるな?」とでも言いたげだ。
要はつまり、
「モテるためにアイドルになりたいってことか…」
「えええーーっ!!お姉ちゃん、モテるためにアイドルになりたいの⁉︎」
「いやいや佑芽よ、これは誰もが考える痛い妄想として代表的なものだぞ?姉ちゃんはそういうお年頃だから仕方ないんだ」
「そっ、そうだったのかぁ…!」
「〜〜っ!!そんなわけないでしょっ!お馬鹿達っ!」
姉は憤ると雑誌をバンバン叩きながら説明を始めた。
「え〜っと?」
「つまり?」
「この『765プロ』のアイドル達を見ていたら〜?」
「アイドルに興味を惹かれたから、この『初星学園』に通いたいってこと?」
「ふふん!そういうことよ!」
あらかた説明し終えて俺達が理解すると、
姉はまたもやドヤ顔に戻った。
だから何でそんな自信満々なんだ。
「でも、アイドルになるって大変なんじゃ…?」
「問題ないわ!」
「入学試験もハードル高そうだけど…?」
「問題ないわ!」
「大勢の前で歌ったり踊ったりするんだよ?」
「問題ないわ!」
「パンチラしても?」
「問題ないわ!って何言ってるのスケベ!」
「大ちゃんのエッチーーー!!」
駄目だったか。
しかし…、いつもながらやはりすごい自信だ。
姉はどんな時でもやると豪語したら実際に成し遂げてきた。
例に違えず、今回も有言実行になりそうだが、
それにしても今度はアイドルか…
「まったくもう、いくら私が可愛いからって実の姉にそんなこと言うなんて〜。シスコンも大概にしなさ〜い?」
考え事をしていたら姉がくねくねし出した。
全然聞いてなかった。とにかく、
「確かに姉ちゃんは可憐だし、」
「!」
「運動神経もいいし、」
「えへへっ!」
「人を惹きつける魅力がある。」
「ふへっへへへ!も〜、お姉ちゃんのことどれだけ好きなのよ〜」
「でも、チョロすぎるのが玉に瑕。」
「…ちょっと!誰がチョロいですって!」
あ、つい言っちゃった。
というか佑芽がさっきから黙っていると思ったら件の雑誌を読んでいた。姉のご乱心中に何落ち着いてんだ。
でも、妹がこんな集中して読んでいるのは珍しい…。
不思議に思っていると急にすくっと立ち上がった。
えっ、まさかっ
「お姉ちゃん!私もアイドルやる!」
パードゥン?