偽ドラゴンボールZ〜サイヤ要素多めな悟空の物語〜   作:モヤシ炒め

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第一話 始まりのドラゴンボール

 

深い緑に覆われたパオズ山。

その中腹にぽつんと一軒の小さな庵がある。

 

庵の主は孫悟空。尻尾の生えた快活な少年だ。

朝、悟空は庵のそばの開けた場所で、一心不乱に拳を振るっていた。その動きは荒々しくもどこか洗練された型を感じさせる。

 

亡き育ての親、孫悟飯から教わった武術の基礎だ。

 

「ふんっ!はっ!でりゃっ!」

 

鋭い呼気と共に繰り出される突きや蹴りは周囲の木々を揺らす。額に汗を浮かべ息を切らしながらも、その目には強い意志の光が宿る。

 

「ふーっ、腹減ったし飯にすっか!」

 

修行を終えた悟空は庵の中へ戻る。

壁際には小さな神棚がありそこには橙色に輝く不思議な球が一つ、大切に祀られていた…。

 

四つの赤い星が浮かぶその球は今は亡き悟飯の形見、四星球(スーシンチュウ)だ。

 

「じっちゃん!おはよう!今日も飯取ってくるからな!」

 

悟空は神棚に向かって手を合わせると、背中に愛用の如意棒を括り付け風のように山を駆け下りていく。自分の尻尾を疑似餌代わりに使って巨大な魚を釣り上げ、時には獰猛な獣と渡り合いながら食料を確保する。

 

そのサバイバル能力と身体能力は亡き悟飯との厳しい修行の日々で培われたものだった。

 

 

 

 

お昼が過ぎて。

悟空が仕留めた大きな魚を担いで山道を戻っていると、けたたましいエンジン音と共に奇妙な鉄の塊が猛スピードで迫ってきた。

 

「うわっ!?なんだありゃ!化け物か!?」

 

悟空は咄嗟に魚を放り投げ、身構える。

鉄の塊――ブルマの運転する車――は悟空の目の前で急停止した。

 

「きゃあっ!あっ、危ないじゃない!急に飛び出してきて!」

 

車から降りてきたのは悟空が見たこともないような奇妙な服装をした少女、ブルマだった。

 

「おめえこそなんだその鉄の箱は!オラの道、邪魔すんなよな!」

 

「車よ、くるま!あんた、こんな山奥に住んでるの?もしかして…」

 

ブルマは悟空の腰に揺れる尻尾を見て目を丸くする。そして、懐から奇妙な機械(ドラゴンレーダー)を取り出した。

 

「やっぱり!この近くに反応があると思ったのよ!ねえあんた、こういう綺麗な球、持ってない?」

 

ブルマはカプセルから出した見本のドラゴンボール(二星球)を悟空に見せる。

 

「『オラ』はそんなもん持ってねえぞ」

 

「嘘!レーダーはここを指してるもん!隠さないでよ!」

 

ブルマは強引に悟空の庵に入り込み、神棚の四星球を見つけ出す。

 

「あった!これよこれ!ねえお願い!それを私にちょうだい!」

 

「だめだだめだ!そりゃ、じっちゃんの形見だ!誰にもやらねえぞ!」

 

悟空はブルマの前に立ちはだかる。

ブルマはぐむむ…と唸り、銃を取り出して悟空を脅すが、悟空はまったく動じない。

 

「なんだそりゃ、そんなもん向けてオラと戦おうってのか?」

 

「わ、渡さないっていうなら、い、痛い目見るんだからね!」

 

ブルマは威嚇射撃のつもりで悟空のすぐ横に銃を撃った。

 

「あー!それが『じゅう』ってやつか!じっちゃんの巻物に書いてあった、弱ぇ奴が使う武器だな。ふぇ〜…初めて見たぞ!」

 

怖がらせるつもりで撃ったはずが、悟空は煙を上げる銃口を覗いたりチラホラ楽しそうに銃を見て回るのだった。

 

「こ、このっ!」

 

パンッ…と銃声が響いた。

ブルマは直ぐに血の気が引いた、脅すだけだったのに悟空を撃ち殺してしまったのだ…と、思ったら…。

 

「へへ、そんなもん、効かねえぞ」

 

放たれた銃弾は悟空の人差し指と親指の2つの指で掴まれていた。

 

「な…なによこいつ!?」

 

ブルマは悟空のただならぬ雰囲気に少し怯む。

悟空はかつて悟飯と死闘を繰り広げた日々を思い出していた。あの頃の自分はただ強さだけを求め、じっちゃんを困らせてばかりだった。

 

「なあ、おめぇ。そんなに球が欲しいんか?」

 

「………うん」

 

「…じっちゃんは言ってた。世界は広くて、オラの知らない楽しいことがいっぱいあるって。じっちゃんはもういねえけど、この球はじっちゃんの魂みてえなもんだ。だから、誰にも渡せねえ。悪ぃな」

 

悟空の言葉にブルマは何かを感じ取る。

この少年が、ただの山猿ではないことを。

 

「…そう、大切なおじいさんの形見なのね。ごめんなさい、無理に奪おうとして。でも、あんた…その球が何なのか本当に知らないの?」

 

「じっちゃんの球だろ」

 

「ん〜。しょうがないわね、教えてあげるわ」

 

ブルマは銃をしまうとドラゴンボールについて説明を始めた。七つ集めるとどんな願いでも一つだけ叶えてくれる神龍(シェンロン)が現れること。自分はそのドラゴンボールを集めて、素敵な彼氏を見つける旅をしていることを。

 

「どんな願いでも…?」

 

「そう!あんたも叶えたい願いの一つや二つ、あるでしょ」

 

悟空は一瞬、考えた。

もし、じっちゃんを生き返らせることができたら…?

だが、悟飯の最期の言葉が蘇る。

 

『わしとは、ま、またあの世で会える…この別れは…一時のものじゃ……』

 

「…いや、じっちゃんは、また会えるって言ってた。だから、そんなこと頼まねえ」

 

悟空はきっぱりと言った、だが。

 

「おめぇ、そいつを集めてんだろ?オラもじっちゃんが言ってた『世界』ってやつを見てみてぇし…よし、決めた!オラも一緒に行くぞ!この球はやらねえけど、他を探すのを手伝ってやる!」

 

「え?ほんと!?」

 

ブルマは驚き、そして喜んだ。

この少年がいれば危険な旅も心強い。

 

ドラゴンボールが全て集まり願いを叶えたら球は世界中に飛び散り、1年間は使えないなどの情報は悟空に伝えず…自分が願いを叶えた後はトンズラしようと企み、ニシシと悪い笑みを浮かべた。

 

「ただし、この球はずっとオラが持ってるからな!」

 

「わ、わかってるわよ!じゃあ、決まりね!」

 

こうして…。

孫悟飯の遺した形見の球と如意棒を手に少年・孫悟空はブルマと共にまだ見ぬ世界へと旅立つことになった。

 

それは悟飯が願ったように、悟空が自身の「何か」を見つけるための壮大な物語の始まりだった。

 

 

パオズ山を背に、二人の冒険が、今、始まる――。

 

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