ポスカリ☆ポケットモンスター! 作:森茶民 解夏禾 フドロジェクト 山岸
ゴーグルにバチバチと雨粒が当たり、どんどんと前が見えなく成って行く。
失敗した。
ゴーグルを拭い、地上を矯めつ眇めつしながら思う。
少し、欲張ってしまったのだ。
今トゥちゃんは、激しい暴風に煽られ、体力を大きく消耗していっている。このままだとマズイ。
避難できる場所は無いかと、目を皿のようにして地上を見渡していると、屋根がキチンと残っている
「あった!左下に見付けた!!」
私が声を出したと同時に、トゥちゃんは左下へと急降下をして屋根のある建物へと近付き旋回。入れそうな場所に見当を付けると、すぐさまその近くに着陸した。
私は着陸の加速が弱まった辺りでその体から飛び降りて、トゥちゃんをボールに招き入れ、半開きになっている大きな扉に体を滑り込ませた。
建物の奥には木材や瓦礫が積み上がっていて、おそらく倉庫として使われていた建物なのだろう。壁には、大小着弾痕の様な穴は有るが比較的少なく、屋根も確りとした様子で何日かは耐えられそうだ。
こんな良物件、基地化されない筈が無いのだから、まだこの辺りは人の領域では無いと言う事。だからと言って、気を付けなければいけない事は変わらないのだけれど……
幸い、扉に入ってすぐのスペースには、トゥちゃんが翼を広げてもまだ余裕が有りそうなスペースが確保されていて、トゥちゃんは自らボールから出て来た。
いつからかは判らないけど、たぶん、全てのボールの開閉セーフティが機能しなく成っているみたいなのだ。始めは、捕獲を失敗した時みたいに壊れたんじゃないかって心配になったけど、何だかんだ便利だから、余り気にしない事にしている。
ボールから出て来たトゥちゃんは、出て来た瞬間“にほんばれ”を天井近くまで放ち、低く
それにより水飛沫が拡散し、降り注ぐ光によって、トゥちゃんの周りがキラキラと輝く。
その顔は、憮然としていながらも眼差しは私を真っ直ぐと射貫いていて、まるで、余り気落ちするなと言っているかの様だった。
「あはは。ありがとね!トゥちゃん。綺麗。とっても格好良いよ!」
鼻息を短く漏らしたトゥちゃんは、光が良く当たるよう翼を緩慢に広げながら座り込み、扉の方をチラリと指差す様に首を動かしてから目を瞑って、
「トゥちゃんは本当に泰然としてるなぁ」その仕草に甘えるかの様に、風雨が入り込んで来ている大扉を閉じた。
全身びしょ濡れ。“にほんばれ”はそう長くは続かない。しかし丁度良い事に、ここには乾燥していそうな木材が沢山あるから、“にほんばれ”の光が消える前に火は熾せそうだ。
一枚の木板を“マジカルリーフ”で細切れにしてもらい、鞄から自作した火起こし器を取り出してギコギコガリガリしていると、突然トゥちゃんが、小さく声を出してから力強く羽撃いた。慌ててトゥちゃんの背後へと移動しながら瓦礫の方を見てみると、体に火花を迸らせているボロボロの小さなラクライが、トゥちゃんの起こした風に吹き飛ばされないよう踏ん張っていた。
小柄と言うには小さ過ぎる体躯。おそらくまだ子供。
出て来た物陰に意識を集中させても、他にラクライやライボルトが居る様な気配は無い。ハッとして回りと見渡すと、雨宿りしている筈の鳥ポケモンが殆ど居ない。天井の梁の影に数匹程度。
──しまった。焦り過ぎた──
だからと言って行動は変わらなかっただろうけど、虚を突かれるというのは、戦闘に於いては良い事では無い。
でも、ラクライは見るからにボロボロ。こんな良い場所なのに他のラクライやライボルトが見当たらないとなると、十中八九はぐれた個体。おそらく群れは襲撃されていて、この個体はかなり幼そうだし、鳥瞰していた感じ周りに襲撃犯が居る感じも無かった。
なら、オレンの実とかを近くに転がして様子見かな?
間借りの条件にとオレンの実を2個ほど放り、私とトゥちゃんは先にパク付きながら座り込み、火を熾した。
強い雨音と風音は治まらずに夜も更けて、体を拭ったトゥちゃんと私は、濡れた布や服を板に掛けて乾かしながら、トゥちゃんに体を預けて
まぁ、特に邪険にする理由も無いから、段々と消えて行く
「楽しいね!トゥちゃん!」
私は“トゥちゃん”。この方の父である偉大なる“お父さん”様から、この方の守護を仰せつかったもの。
「今度はあっちの方から、こう、ぐるぅっと回って行かない?」
この方は、私にご飯を
私の最初の記憶は、空が暮れていた時、今よりも小さかった──しかし、私とだいたい同じ大きさだった──
恥ずかしいことに、その時の私はお腹がとても空いていて、ご飯の催促の為にただその顔を舐め回すばかりで、キャラキャラと笑ったこの方によって、大きく──本当に大きく、この方の姿を隠せるくらいに大きく──育つ事ができたのだ。
大きく成った私たちは、偉大なる“お父さん”様と、その手足であり先達であった緋紺の大翼“ボンバ”さんに、紫灰の大顎“ラプタ”さんや、複視の黒像“リブラ”さん達に倣い、あるいは憧れて、飛ぶ巧さや距離、機転を競う競技者の卵として、数多くの試練を通過して、共に高め合い、そして楽しんできた。
しかしある時、不思議な臭いを纏った
そこからは早かった。破落戸共の姿形はてんでバラバラなのに、全く息の合った動きで、海上の大雲が瞬く間に天上を覆うように雪崩込んで、“お父さん”様方は、私たちを逃がす為に戦った。流石の“お父さん”様方で、始めは無事に戻ってきていた。
でも、大きな「安全だ」と言う大きな場所に隠れ潜んでいれば、他の一緒に潜んでいた者達に私は狙われた。私の顎房のせいだ。“不思議な臭い”との戦闘は、毎日
だから、私たちは相談して、結局、分け与えはしなかった。当然だ、数が圧倒的に足りなかったし、すぐに生えてくる物でも無かったのだから。
そうやってノラリクラリと過ごしていたけれど、あの小さな空間では限界が有って、不幸が重なった。“お父さん”様方が、帰って来なく成ったのだ。仕方の無い事だった、薄々解っていた事だ。余りに連日連夜襲撃が絶え間無さ過ぎた。でも、やっぱり私たちはショックで、落ち込んでいた所を私たちは襲われた。「安全」と言われていたあの空間でであった。舐められていたのだ。私は薄々察していた。だから、私は即座にこの方を
でも、この方は相当のショックを負ってしまわれた様子で、だから、この優しい忘れ形見を守り通す事が私の至上命題、生きる意味。
願わくば、私の最初の記憶のような綺麗な形を、また私に魅せてくれたのならば、これ以上の事は無い。
だから、そこの青と黄色の小さな
君は、この方に何を為す?