Balance of the Gods 作:フリー123456789
目が覚めた彼方は、辺りを見渡した。
天井と壁が無く、ただ白一色の何もない空間。
何もアクションが起こらないことにバグを疑っていた彼方であったが、突如脳内に声が響いた。
「ようこそ。”Balance of the Gods”の世界へ。私は、新規参入プレイヤーの案内を担当する管理者AIです。これからキャラクタークリエイトを行ってもらいます」
管理者AIの声が終わると同時に2m程の姿見が現れた。
突然の出来事に驚く彼方。
鏡には、10人中10人が振り向きそうな整った容姿をしている青年が映っている。
そう、彼方である。
彼方は、この整った顔立ちのせいで大変な目に遭ったことが多い。両親のことが大好きな彼方にとっては、唯一恨みたくなる事でもある。
ここは仮想空間。故に自分の容姿を簡単に変えることができる。しかし、BoGはVRMMOであるため容姿を大げさに変えることはプレイングに大きく影響を与える。
悩んだ結果、リアルと同じように前髪を上唇まで長くすることにした。
その独特な髪型が原因で友人ができなかったとも知らずに。
髪色も現実と同じように黒にしようと考えた時、ふと疑問に思ったことを管理者AIに聞く。
「すみません。BoGの住民の髪色は何色が基本ですか? 黒にしようと思ってたんですけど、なんだか目立ちそうだから変えようと思って……」
「BoGの住民のほとんどは金、茶です。そのため黒髪=プレイヤーと考えてもらえれば大丈夫です。それくらい黒髪は珍しいです。髪色の変化ぐらいでしたらプレイに影響は無いので問題無いです」
「でしたら金髪にしてもらえますか?」
「かしこまりました」
彼方は次の項目を見る。種族を選択するようだ。人類種と魔種の2つが選択可能。人類種は4種類。人間、エルフ、ドワーフそして亜人である。獣人や竜人といった人間の容姿から少しずれた種族は亜人に分類されるらしい。2つ目の魔種だが、これは魔族と魔物が分類されている。魔族は紫色の肌に特徴的な角が2本耳の上についている。
魔物に関しては、どうやらこのゲームに登場する魔物のほとんどを選択できるようだ。
おなじみのスライムから始まり、果てはドラゴンまで様々であるが、どうやら魔物の場合、ランダムに決まるそうで、望む種類でなかった場合、辛いことになるだろう。
種族を決めた彼方であったが、肝心な物を忘れていた。
名前である。
ゲームにおいて名前を適当に付けてしまうと後々後悔することが多い。特に、ストーリーがあるゲームになると、感動的な場面でギャグに走った名前が呼ばれると興ざめもいい所だろう。
どのような名前を付けるべきか悩む彼方。
彼方は、ゲームには自分の名前を付けないタイプである。
何故なら彼方は、自分のことでは無いと分かっているいるのに、人が亡くなったり犯罪を侵したりすると落ち込む癖がある。
ゲームであれば、主人公が不幸な目に遭うのは心が苦しくなる。
何故かは分からない。
生まれ持った祝福なのだろう。
そのためゲームをする際、別の名前を付けてこれは自分では無いと思うようにしている。
それに今回はVRMMOで実際に自分のキャラで自分が動かすことになる。いくら仮想空間とはいえ、今までのゲームとは比べものにならない。
そのため彼方にとっては、名前を決めることは一種の別人格を作るような行為でもあった。
慎重に名前について考える彼方。その時、昔読んだ物語が頭をよぎる。
(あの絵本は面白かったなぁ。特に主人公が大好きだった。人懐っこくて、陽気で、おちゃらけていて。でもやるときはやる。そんなかっこいい主人公のようになりたい。だから……)
「種族は人間でお願いします。後、名前ですけど”ジャック”でお願いします」
「かしこまりました。ジャック様、短い間ですがよろしくお願いいたします。早速ですが、次の説明へと移りたいと思います。よろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
「かしこまりました。続いてステータスについて説明をさせていただきます。ステータスですが、全てマスクデータとなっております。そのため自分や相手のHPやMPを数値で把握することができません。ただ、HPやMPは0に近付くにつれ、疲労感を感じることができますので、そこで判断してください。
BoGの現地人やプレイヤーは立ち振る舞いを見てある程度の力量を判断することができます。強者特有の存在感と呼ばれる物です。例外はありますが、危険な気配を感じたときは逃げることをお勧めします」
ステータスを数値で把握する方法は無い。現実世界では当たり前だが、ゲームは違う。自分のステータス、相手のステータスを把握して勝率を予測したり、次の行動を決めたりする。
つまり、ステータスはゲームにおいて重要な要素である。そこを敢えて不透明にすることで、仮想空間でよりリアルを追求することができるのだろう。
賛否が分かれそうなシステムだと思う彼方―――ジャックは、疑問に思ったことを言う。
「分かりました。スキルとかも見えない感じですか?」
「いえ、スキルに関しては自身で取った物を把握することができます。また、”鑑定”を使った場合、相手が所持しているスキルも知ることも可能です。ステータスは見えず、スキルは見えるということです。次の説明はスキルについてでございますが、話を続けてもよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
「かしこまりました。BoGには多様なスキルが存在します。1つのスキルには5つの要素があり、スキルのレベルを開放していくごとに扱うことができるようになります。注意して欲しい点は、ロックを解除するためには2スキルポイントが必要なこと、次のスキルレベルを越えてロックを解除することは不可能なことです。分かりやすくするとこのボードのようになります」
そういうと管理者AIはジャックの目の前にボードを出現させた。
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スキルに関する事例
【剣士】(5/10)
・瞬歩(2/2)
・斬撃(2/2)←ここまで習得済み
・二重斬撃(1/2)←未習得
・三重斬撃(0/2)←二重斬撃を習得しなければならない
・四重斬撃(0/2)←三重斬撃を習得しなければならない
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このボードによると<斬撃>まで習得済みであるため使うことが可能。二重斬撃以上に関しては、習得していないため利用不可となっている。
目で見た方が分かりやすいと思ったジャック。
こちらが確認したことを把握したのか、管理者AIがジャックに話をかける。
「説明を続けます。先程述べた通りスキルレベルを上げるためにはSPが必要であり、これはご自身のレベルUPに付き1SPが付与されます。レベル上限は100ですので、最大で50個の技能や効果を取得することができます。スキルは削除すれば使用した分のSPを還元することはできます。しかし、削除したスキルは二度と取得することはできませんので慎重に決めてください」
キャラのレベル上限は100。
これはゲーム的には常識ではある。
そしてスキル保持数の上限は最大で50個。
スキルを削除すればSPが還元され新たに振り分けることが可能。
だが、一度削除したスキルは二度と取得することはできない。
管理者AIの話をまとめると大体こんな感じである。
これはスキル選びに幅が広がりそうだと思うジャック。
早速どんなスキルを取るか考えていたが、それを否定するかのように管理者AIが告げる。
「新規参入者の方には既に1つスキルが付与されております。そのため次にスキルをアンロックするにはレベルを4まで上げるか、スキルを削除してSPを還元する場合のみでございます」
「そ、そうなんですか…。ちなみにどんなスキルなんですか?」
「ビギナーズスキルです。内容はこちらのボードを参照ください」
そういって再びジャックの目の前にスキルボードを見せる。
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【ビギナーズ】(2/10)
・基礎武術(2/2)
・索敵 (0/2)
・逃避 (0/2)
・回避 (0/2)
・応急手当(0/2)
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基礎武術がアンロックされている。
つまり基本武術である剣術、槍術、斧術、弓術、格闘術の基礎を既に習得済みということだ。
ジャックは、名前からの推測となるが初心者にふさわしいスキルであると思うと同時に、これなら削除する必要は無い、むしろこれを基準に他のスキルを取ろうとも考えた。
ここでジャックのスキル構想が決まった。
あれこれ考えるジャックに管理者AIは告げる。
「確認は済みましたでしょうか? 削除なさる場合は今可能ですが、いかがなさいますか?」
「このままで大丈夫です。このスキルを育てていこうと思います」
「ありがとうございます。是非、最後まで育ててください。必ず役に立ちますので。それでは、最後にリスポーン地点を設定していただきます。ジャック様は人類種ですので、人類圏の3大国であるセイス神聖国、ゴルドワ帝国、ムーイド王国の3つです」
ジャックは人間であるため人類圏の3大国に転移可能であると告げる管理者AI。
セイス神聖国は最も古い歴史を持つ宗教国。かつての勇者には”来訪者”という称号があり、プレイヤーにも同じ称号があるため、優遇されやすい。
ゴルドワ帝国は、ムーイド王国と同等の歴史を持つ国である。実力主義な国柄であるため、貧富の差が激しい。
ムーイド王国は、良い立地に恵まれたことで、周辺国を圧倒して大国へ。しかし、周辺に敵国が無いと分かると腐敗が蔓延し、現在ではギリギリ大国に分類される状況である。
一通り説明を聞いたジャックは転移する国を決める。
「決めました。ゴルドワ帝国でお願いします」
「かしこまりました。BoGの世界をお楽しみください」