Balance of the Gods 作:フリー123456789
キャラクタークリエイトを終えたジャックは帝国に転移した。
辺り一面何もない草原。
ジャックは街中に転移すると思っていたため、今の状況に困惑する。
初めての土地であるため、町に辿り着けないのでは? と頭によぎる。
途方に暮れていたジャックであったが、ふといつの間にか所持していた道具袋を見つける。
ガサゴソと中を慎重に漁る。
中から出てきたのは、まるで宝の在処を示したように古ぼけた地図と銀色の硬貨と思われる物3枚と硬貨についての説明書が入っていた。
地図を詳しく見るとどうやら現在地、近くの町までの道のりを矢印のアイコンで示していた。ジャックが動くと連動して矢印も動く。
こんな高性能な地図を初っ端から所持して大丈夫か気になったが、地図の裏を見るとどうやら1時間程度で消滅してしまうそうだ。
次に硬貨の説明書を読む。
この世界では4種類の硬貨が統一されて使われている。銅貨、銀貨、金貨、白金貨だ。地域によって価値が変わるが、だいたい銅貨10枚と銀貨1枚が同じ価値である。同様に銀貨10枚と金貨1枚が同じ価値。
しかし、最後の白金貨は金貨1000枚と同じ価値だ。市場には出回ることは無く、受勲する際に証として送られることがほとんどである。
大陸統一の硬貨がある所がゲームならではでよかったと思うジャック。
一通り説明を読み終えたジャックであったが致命的な物が無いことに気付く。
武器である。
ここは草原。見晴らしのいい場所であるため、魔物の接近には気付きやすいが、逆に見つかりやすいということでもある。
ジャックは急いで街へ向かう。
数分走ると数mほどの壁に覆われた町へとたどり着いた。
その壁へと向かって作られる列。
どうやら検問をしているようだ。
最後尾に並ぶジャック。
辺りを見渡すと馬車を所持している人や武器を持っている人などがいる。恐らく商人や冒険者なのだろう。
周りを観察して時間を潰していると、ようやく次の番になった。
強面の門番がジャックに話しかける。
「次。お前、なぜ顔を隠している?」
「え、えっとその……」
「おい、顔と身分証を見せろ」
「そ、その身分証は持ってないです。それと顔ですけど…、これでいいですか?」
そういってジャックはカーテンのような前髪を上げて門番に見せる。
ゴクッ。
あまりの美しさに目を奪われると同時に顔が青ざめる。
整った容姿であったため、もしかすると貴族の子息だと考えたからである。
先程の態度とは一変して慌てた態度を取る門番。
今のジャックでは気付くことができないが、ジャックの整った容姿は魅了の効果が付与されている。仮に前髪を常に上げていれば町中が混乱するだろう。
そんなことを知るよしもないジャックは、不思議な目を門番へやる。
「あ、あの身分証なんですけど…」
「申し訳ございません! 先程は失礼な態度を取ってしまいました! 私には家族がいます! どうか私一人の命だけで済ましてください!」
「え、えっと! その! ち、違います! 別に高貴な出とかじゃないですから! やめてください!」
そう問答するジャックと門番。
何とか勘違いを訂正することができたジャックは、ホッっと息をつく。
「わ、わりぃ。勘違いしてしまって。えぇと、身分証が無いんだって? ならどこかのギルドで登録しないとな。オススメは冒険者ギルドだが、お前、戦闘はできるか?」
「そうですね。まだ戦ったことが無いのでわかりませんが、多分大丈夫です。あ、武器屋ってありますか? まだボク武器を持っていなくて……」
「武器屋ならギルド街の近くにあるぞ。それと身分証を持ってないならこの”鑑定水晶”に手をかざしてくれ。使用料に3銅貨掛かるからよろしくな」
「あ、あの、銀貨しか手持ちが無くて。大丈夫ですか?」
「問題無い。ほら受け取れ」
お釣りの銅貨7枚を受け取り、鑑定水晶と呼ばれた透明の玉に手をかざす。
ボワァン。
温かい光とぼんやりとした音が鳴った後、何も反応しなくなった。
失敗した、いや失敗なんてあるのか、と混乱の渦中にあったが、門番の声によって現実に引き戻される。
「鑑定終わったぞ。どうやら問題無いないな。称号には”来訪者”ってあるだけだ。それにしても”来訪者”か。最近、この称号持ちが多く現れたって聞くけど本当だっとはなぁ」
「あ、あの入ってもいいですか?」
「あ、すまん。いいぞ」
BoGの住民とのファーストコンタクトが予想外の形で始まったが、最終的に町に入ることができたので良しとすることにしたジャック。
門をくぐるとそこには、レンガでできた建物がそこかしこにあり、出店を行っている者も居る。
食べ物屋、武器屋、防具屋、道具屋……
様々な種類の店が並んでいる。
屋根の無い商店街のような通り道を進むと中央に広場があり、そこを囲むように建物がある。冒険者ギルド、商人ギルド、魔術師ギルド、神殿。
身分証はどのギルドでも可能とのことだったので、予定通り冒険者ギルドに向かうジャック。
ギイッ…
酒場のような大きな木の両扉を開ける。
汗と酒と血の匂いが混ざった独特の匂いに気圧されるジャック。
辺りを見渡すと背丈ほどの杖を持っている人、同じぐらいの大きさの斧を背負っている人、剣を腰に下げている人など様々であった。
あのケモ耳は獣人族だろう。うさ耳から兎由来の獣人であることが推測できる。獣人は由来の動物の能力を持っている。あの兎人族であれば、跳躍力が高いのかもしれない。
そんなことを考え、何とか気を保ちながら受付だと思われる場所へと向かう。
「あの、冒険者登録をしたいのですが……」
「かしこまりました。冒険者登録には、お名前と戦闘スタイルをこちらの用紙に記載後、血を一滴採取いたします。代筆は必要ですか?」
「いえ、大丈夫です。……これでお願いします」
「かしこまりました。それではこちらのプレートに血を一滴たらしてください」
そういってプレートと細い針を手渡される。
右手の人差し指を軽く刺す。
鋭い痛みの後に血がプクッと流れる。
プレートに垂らす。
ボワァン。
鑑定の水晶のように淡い光を放ったとプレートにはジャックの名前と”F”というアルファベット、そして”0”が浮かび上がった。
不思議そうにプレートを見つめるジャックに受付が話掛ける。
「これにて冒険者登録は終了です。こちらのプレートhは冒険者カードと呼ばれるもので、現在の冒険者ランクと魔物討伐数と現在受けている依頼が分かります。再発行には金貨1枚かかりますのでご注意ください。
最後になりますが、冒険者ギルドの概要について説明をお聞きしますか?」
「(再発行費高ッ! なくさないようにしないと…)お願いします」
「かしこまりました。冒険者には6つのランクがあります。下からF、E、D、C、B、Aです。初めて登録された方は誰であろうとFランクスタートとなります。区分的には、Eランクまでがビギナー。Dで一人前。Cランクでベテラン、Bランクで上位層、Aランクはトップ層となっています。最後のAランクですが国に1人居るか居ないかという存在です。1人で軍隊を相手取ることができると言われており、ゴルドワ帝国では帝国騎士団団長がAランク級だと言われております」
冒険者ランクについての説明を受けるジャック。
現在のランクはFであるためギルドからの信頼は低いだろうがランクを上げて行くごとに信頼を得ることができ、報酬が高い依頼も受けることができるようになるだろう。
「続いて依頼について説明します。基本的に依頼は隣の掲示板にある依頼をこちらの受付へお持ちいただき条件に合えば受理する流れでございます。最も多い依頼は討伐依頼で、他にも護衛依頼や採取依頼などがあります。また、受付で受理する依頼以外ににも常置依頼もございます。以上が簡単な冒険者ギルドの説明でしたが、何か不明な点などございましたでしょうか?」
「冒険者ギルドって他国にもあったりするんですか?」
「はい、勿論ございます。どこの国にも属さない冒険者ギルドが治める都市国家が本部であり、そこに各国から冒険者ギルドの設立の依頼を受けた際にギルドを設立するという形となっています。
商人ギルド、魔術ギルドも同じ仕組みでございます。そのため、よほどの小国ではない限りギルドはあります」
「あ、あと気になったのですが。自分の今のスキルだったりレベルだったりを確認できたりしますか? 数値は見えないけどそういうのは分かるって聞いたので…」
「今の強さを知りたいということですか? それなら冒険者ギルドが定期的に行っている戦闘訓練に参加すれば教官と模擬戦を行うことができますが」
「あ、いえ、そういうことではなくてですね……」
話が通じないことに困惑するジャック。レベルという概念がBoGの住人には無いため仕方の無いことだ。
しかし、このことについてジャックは知る由もない。何故ならBoGの住人と出会ったのがつい先ほどだったからだ。
そんな風に立ち往生していたジャック。
突然後ろから声をかけられる。
「お前、もしかして新しく来た”来訪者”か?」
「は、はいぃ…そうです…」
突然の展開に声が上擦る。
ジャックは人見知り体質なため、予期していない会話には対応することが難しい。
自信の無い返事になったのも当然と言える。
「昌介コベット様、討伐依頼お疲れ様でした。ところで”来訪者”とは……」
「ああ、こいつは俺と同じ地元出身のようでな。こいつに色々と冒険者としてのことを教えてやろうと思って」
「良かったですね、ジャック様。現役の方に教えてもらうほど良い経験はありませんから。こちらの昌介コベット様は登録後、わずか1ヶ月程度でCランクになった期待の新人です。色々と学ぶことができますよ」
今のジャックの財産では買えないことが分かるローブと背丈程の長さをした杖を持つ人間の男―――昌介コベット。
昌介コベットが話しかけたと思えば受付と2人で話しだし、最終的に指導してもらうことになったジャック。
あまりの展開の速さにジャックの脳はショートしてしまい「は、はい、よ、よろしく、お願いします…」と適当に返事をすることしかできなかった。