謎の映画監督の物語 無の映画監督   作:dwwyakata@2024

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監督としての高宮は、まともな映画を作らないことを除くと、そこまで狂った人物ではありません。

きちんと俳優のことも考えて行動しています。

大きな目的は大きな目的として持っていますが。

それはそれとして、人としての良識も持ってはいるのです。


2、俳優の正気度を守ろう

撮影が終わって、高宮は家に戻る。

 

これでだいたい撮影は終わった。

 

後は自分での編集だが。

 

これについては、会社には全て自分でやる事を前から告げてある。

 

アカデミー賞を取ったことで、更に今後は無理を通せるだろう。

 

はっきりいって、現状における業界人に対する権威なんて、すこぶるどうでもいい代物だが。

 

利用できるのなら利用する。

 

それだけである。

 

結局の所、目が節穴の業界人と。今いる配給会社の重役は同じ穴の狢である。だから、利用できる。

 

そんな程度の代物だ。

 

とったことに誇りなんて感じないし。

 

むしろどれだけ目の穴が節穴なのかと、溜息が出る。

 

今の時点で、高宮は。

 

わざとつまらない映画を作っていると指摘してきた業界人にあったことがない。

 

其奴らはそこそこの学歴を持っている事が普通だったが。

 

其奴らの中に、知性を感じたことも一度もなかった。

 

勉強は出来る、という説もあるが。

 

実際には裏口入学が横行している事もあり。それすらも怪しいのでは無いかと高宮は疑っている。

 

そういえば自称「SF作家」とやらが、相対論は簡単とか言っておきながら。実際には学者から、お前の相対論理解は間違っていると指摘される事件もあったか。

 

今の時代、教養というのは全て眉に唾をつけて聞かなければならないのかも知れない。まあ、自分が反論できる材料を用意してからだが。

 

今後もアカデミー賞取得という実績は。

 

ささっと利用して、今後も利用を続ける。

 

それだけのことだ。

 

ダカダカキーボードを叩いて編集作業を進める。

 

大変シュールなシーンが続いていて、CGを担当した会社の人間も本当にこれでいいのかと、何度も困惑しながら連絡してきたくらいだ。

 

コレで問題ないと答えると。

 

死んだ目で、そうですかと答えるので。

 

高宮はちょっと気の毒になった。

 

ともかく、可哀想なCG担当についてはいい。

 

黙々と編集をしていると、直接重役が高宮の所に来た。こればっかりは、会社のサーバを使わないと無理なので仕方が無い。

 

手を止めて、話を聞く。

 

「高宮監督。 実は少し話したいことがあってね」

 

「はあ、伺いましょう」

 

「今回の君の映画に出た俳優達が、どうコメントをしていいのかと困惑した様子で相談してきてね」

 

意外と口調は丁寧だが。

 

それは此奴らが、現在脂が乗っている(業界人的に)高宮を手放したくないからである。

 

なお此奴は確か人事関係。

 

昔はこの手の奴らは、若手の俳優を食い散らかして、それを自慢しくさっていたような連中だったが。

 

現時点で、此奴にその噂は無い。

 

噂はないだけで、うまくやっているだけかも知れないが。

 

「雑誌に取材を受けたそうで、それで対応してくれるかね」

 

「分かりました。 話を聞きましょう。 セッティングをお願いします」

 

「分かった、そうしておくよ」

 

いなくなるのを確認すると、再びモニタにかぶりついて。データをキーボードを激しく打鍵しながら編集していく。

 

マクロなども利用しながら最高速度で打鍵していくので。

 

キーボードは消耗品だ。

 

常に新品を複数用意してあるのは。

 

映画一本作るのに、一つか二つは駄目にしてしまうからである。

 

かといって力そのものはそれほど掛かっていないようで。

 

いわゆるキーパンチャー病に掛かる気配はない。

 

そのまま激しく打鍵していく。

 

この作業の時は、連絡しても聞かないと話はしてある。

 

だから、さっきわざわざ重役が来たのだろう。

 

というか、この作業時の高宮は鬼気迫った様子らしく。

 

新人達が怪談にしているらしい。

 

まあ、元々が幽霊みたいな容姿の高宮だ。

 

髪を振り乱して激しく打鍵を続ける様子は、幽霊に見えても仕方が無いのかもしれない。

 

とはいっても定時内でしか作業はしていないので。

 

昼間っから出陣する生真面目な幽霊と言う事になってしまうが。

 

ダン、とエンターキーを押し。

 

幾つかの作業を同時に走らせる。

 

これでしばらくは待ちか。

 

トイレ休憩を入れつつ。

 

甘いものを口にする。

 

コーヒーばかり飲んでいるわけではない。

 

会社では炭酸飲料を飲むことも多く。

 

それで糖分を補給している。

 

会社での映画編集作業は相応に脳を酷使する。脳を酷使する仕事の人間なら、糖分が如何に重要かは周知だろう。

 

一方でエナドリの類は飲まないようにしている。

 

あれは命の前借りだ。

 

絶対に体を壊す。

 

だから、それらを口にするつもりは一切無かった。

 

トイレを済ませると、再び作業に戻りたいところだが。

 

処理がまだ終わっていない。

 

作業をどうするか少し悩んでいたが。

 

ほどなくして、作業が一つ終わり。

 

それで次の作業を出来るだけのリソースが開いた。

 

また、打鍵を開始する。

 

それを夕方まで続けた。

 

 

 

セッティングされた俳優達とのミーティングの話は、家に帰ってからメールで確認した。

 

テレビ会議で、出来るならすぐにでもやりたい、ということだった。

 

ふうんと頷くと。

 

そのままテレビ会議を受けて、ミーティングを実施する。

 

主演俳優達が、テレビ会議に揃っている。

 

高宮としてもあんまり面倒なのは避けたい。

 

というか、そもそも面倒な賞を取ったのが要因か。

 

会社だのスポンサーだのに強く出られるのはいいとしても。

 

こういうのは考え物だなと思ってしまった。

 

ましてや、である。

 

今回は俳優が全員露出していないのである。

 

そりゃあ、全員が正気度を失いかけているのも、仕方が無いのかも知れない。

 

「高宮監督、私はどうしても分からない事がありまして!」

 

抗議するように言うのは、最新作のヒロイン役の俳優だ。

 

とはいっても、最新作はそもそもとして、「ポリコレ対策」と銘打った作品にしている。

 

だから登場するのは全て立方体という状況で。

 

人間なんぞ一人も出てこない。

 

立方体のキグルミが、それぞれ好き勝手な言語で哲学的に喋る(全て翻訳はつく)という作品であり。

 

五分で寝ると言われる高宮の作品にて。

 

三分でねむらせる脅威の記録を作り出したい所である。

 

今回はつまらなさに自信がそれなりにあるのだけれども。

 

それでも俳優達にとっては、そんな事情は分からないだろうし。

 

ましてや立方体のキグルミで、どうやって演技をすれば良いのかという悩みはあるのだろう。

 

気持ちは分かる。

 

「そもそもこの映画は何なんですか! 最後まで演じてみて、何一つ分かりませんでしたっ!」

 

「はっきりいうね」

 

「全員の意見なんです! 高宮監督の作品が高い評価を受けているのは分かるんですが、演技を丸投げにされても本当に困るし、それに何より出来た映画についてこれからコメントを求められるんです! どうしたらいいのか、本当に分からなくて……」

 

泣きそうな顔のヒロイン役。

 

主演に至っては真っ青になっていた。

 

まあヒロインと言っても濡れ場なんてないし。

 

そもそも立方体どうしが会話をするだけの作品で、どう濡れ場が云々となるのかも分からないが。

 

それにだ。

 

俳優達はあまり立場がよくない。

 

声優に比べればまだ全然立場が良い方だが。

 

それでも、もしもスポンサーやらの機嫌を損ねると一瞬で干されるし。

 

今はちょっとした言動のミスで、あっと言う間に大炎上する。

 

というわけで、今回はインタビューを受けると言う事もあって、たまりかねて相談に来たのだろう。

 

まあ、ならばアドバイスをするか。

 

咳払いすると、順番に答えていく。

 

それぞれの役について。

 

役者の全員がメモを取ったり録音機能をオンにしたりしているのが分かった。

 

だが、説明を終えた後も。

 

全員が狐につままれたような顔をしていた。

 

「……」

 

「というわけだ。 理解出来たかな」

 

「いえ、まったく……」

 

「ともかく、私がこういったことをそのままインタビューでは答えるようにしてね。 なんなら今の説明について、そのまま記者に録音したのを聞かせてもいい」

 

平均的な人間という奴は。

 

自分より下と見なす人間を血眼になって探すものだ。

 

そして自分より一度下と見なしたら、二度とその相手を人間だとは認識しない。そういう生物である。

 

実にくだらないが。

 

一方で俳優達は、そういう風に見られないためにも。

 

今後言動に気を遣う必要がある。

 

プロ意識とかそういうものではない。

 

そもそもそうしないと、命が危ないのである。

 

芸能界は魔窟だ。

 

アイドルなどでトラブルを起こすといつの間にか業界から消えているケースが珍しくもないが。

 

アレは本当にこの世から消されているケースがある。

 

昔から芸能界と犯罪組織の癒着は有名だし。

 

そういうのを利用して、業界に邪魔な人間は殺してしまう。それが、芸能界関係者のやり口だ。

 

最初からそういう場所なのだこの芸能界というパンデモニウムは。

 

だから俳優達も必死なのである。

 

そしてのし上がった頃には、精魂尽き果てて老害になってしまう。

 

なんとも、厄介な場所という他ない。

 

「こういう説明を受けて演技しました、ということだけ話せばいい。 相手が理解出来ていなくても、業界人に絶大な支持を受けている私の説明だ。 それで充分だと思うけれどね」

 

「ああ、なるほど……」

 

「少なくとも君達にヘイトが向くことはないよ。 更に言えば、一般視聴者はみんな同情してくれるだろうさ」

 

高宮の言葉に。

 

何ともいえない表情を、その場の全員が浮かべた。

 

泣きそうになっている奴もいる。

 

まあ、SAN値をゴリゴリ持って行かれているのだから、仕方が無いのだろう。

 

笑い出したら色々危ないが。

 

今の時点でそこまで恐怖を感じている者はいないようだった。

 

まあそれはそれでいい。

 

「というわけなので、以上。 インタビューには今の通り対応してね」

 

「……あの、高宮監督」

 

「なに?」

 

「その、高宮監督は、一体何をどこまで計算して映画を作っているんですか?」

 

んなもん全部に決まっている。

 

脚本をこっそり自分で書いている事からもわかるように。

 

敢えてつまらない映画をつくり。

 

意識が高い系の連中が大喜びするようにもしている。

 

スタッフにも負担が掛からないようにしているし。

 

これ以上映画監督としてできる事はない所までやっているつもりだが。

 

何が不満だというのか。

 

「そ、その、怒らないでください。 でも、なんというか、高宮監督はその……業界での絶賛と裏腹に、一般ではその……」

 

「クソ映画の監督として有名だねえ」

 

「わ、分かっていらっしゃるんですか」

 

「当たり前だろ。 今時マスコミの言う事真に受けたりSNS覗かない奴なんて、どっか拗らせたジジババくらいだよ」

 

困惑した様子の俳優達に、ずばりと言う。

 

まあ言ったところで別になんでもない。

 

そもそもテレビ局ですら、映像を今は動画投稿サイトに頼っている有様なのである。

 

それでいながらネットを馬鹿にする発言をしているのだから、はっきりいって脳が腐っているとしかいえない。

 

今時ネットを利用していない人間なんていないし。

 

いると自負していても、自分では気づいていないだけで実際には利用している。

 

そういうものだ。

 

「その、一般層の評判を、取ろうとは思わないんですか?」

 

「そんなのは知った事じゃない」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「別に謝らなくてもいい。 ただ、私は私なりに考えて行動してる。 ああ、今のやりとりは公開したら許さないよ。 あくまで雑談の範囲内の話だ。 もしも漏れたら、今いる全員に連帯責任取って貰うからね」

 

ぞっとした様子で硬直する俳優達。

 

まあ今のは喋りすぎたかな、とも思う。

 

だが、今の時点でアカデミー賞監督である高宮である。

 

駆け出しの俳優達にとって。

 

怒らせる事は、それこそライオンを逃げ場がない状況で挑発する兎に等しい。

 

文字通り秒で業界から干されることになる。

 

彼ら彼女らにとっては死活問題なのだ。

 

「他に何か質問は?」

 

「い、いえ、ありません……」

 

「なら、それで解散」

 

「……」

 

ぐうの音もでないのか。

 

皆、通信を切った。

 

さてはて、面倒な話である。

 

いずれにしても、これで何とかなったか。

 

重役にはメールを入れておく。

 

後は、俳優達が言われた通りにインタビューに答えればいい。

 

ただ、SNS等では荒れるだろうなと思ったが。

 

全員相当追い詰められているようだったし。

 

これで多少は楽になるだろう。

 

それにしても、スケジュールに影響が出なくて良かった、というのが素直な所である。

 

勿論かなり余裕を持って編集作業をしているとはいえ。

 

映画が完成するまでには、それなりにまだまだ大変な作業をこなさなければならないのだから。

 

 

 

俳優達がインタビューを受ける番組のDVDが送られてきた。

 

そもそも、である。

 

高宮が殆ど報道番組を観ないことは、公言していることであり。

 

それが自分に関係する番組でも同じであることは、配給会社では知られている事でもある。

 

フリーランスの映画監督というのもいるが。

 

流石にアカデミー賞をとった監督に、会社を抜けられると困る。

 

会社にとってはそれだけ損失が大きいからである。

 

一応経済活動に噛んでいる以上。

 

その程度の事は、映画の配給会社だろうが何だろうが、理解はしてい……理解してもらわないと困る。

 

今回は幸い、理解しているようだったので。

 

何よりだった。

 

近年は動画配信サイトを利用した新しいタイプの芸人が一気に知名度と社会的な影響力を伸ばしているが。

 

それらはまだ未熟な会社が運営していることもあり。

 

金の卵を潰してしまう事が珍しくもない。

 

それを見ていると、まあ業界関係者なんてのはそんな程度のスペックしかないのだということがよく分かる。

 

というわけで、今回は理解しているという事が分かったので。

 

それで可とする。

 

「一応高宮監督も目を通しておいてください。 今の時代、どんなトラブルが起きるか分かりませんので……」

 

そう、DVDを送られた後。

 

メールが来た。

 

まあ面倒くさいけれども、俳優達を色々な意味で守るためだ。

 

取材を受けた番組を見てみる。

 

ろくでもない番組であるのはまあ分かりきっているのだけれども。

 

とりあえず順番に見てみることとした。

 

まず最初に、アナウンサーとやらのそれなりに年を取った人が。なにやら高宮の映画を解説している。

 

「ホトケの高宮」と呼ばれているとか言い出したので、まあそうだけれどさとぼやきたくなったが。

 

まあそれは良いとする。

 

問題は此処からだ。

 

テレビで高宮をどう報道しようが、はっきりいってどうでもいい。

 

そもそも高宮自身が取材をまともに受けてくれないから、こうやって俳優にターゲットを切り替えたのだろうし。

 

それもまたどうでもいい。

 

連中の姑息なやり方は昔からで。

 

視聴率を稼げれば、人を社会的に物理的に殺してもいいと考えているのもずっと昔からだ。

 

そんな連中の作る番組なんて興味はゼロなのだが。

 

仕方が無いのでみる。

 

退屈だなと思いながら、横になってスポーツドリンクを口にする。

 

やがて俳優達を紹介して。

 

次の映画で主演などをした俳優数人が呼ばれていた。

 

高宮の監督した映画出演を俳優デビューとした者は何人かいて。全員が全員ではないが、それなりに出世している者もいる。

 

かといって、高宮の映画にまた出たいと思う者もいないようで。

 

そういえば二度同じ俳優を使ったことは無かったか。

 

アイドルだの芸能人だのは使わない。

 

デジタルアイドルだったら、多少は使ってもいいと思うのだが。

 

「主演俳優の……」

 

俳優達が名乗り始める。

 

ずらっと並べてそれぞれに質問をしていくスタイルのようだ。

 

高宮に対する印象とかを聞いているので。まあそれについてはどうでもいい。

 

ホトケの高宮という言葉通り、現場は滅茶苦茶ホワイトでしたと俳優達は答えているが。

 

既に目が死んでいる。

 

何だか相当神経をやられたんだな。

 

他人事のように同情しながら、高宮はそのまんまくだらんインタビューの続きをみていくことにする。

 

「世間一般での評価とあまり変わらない、ということですね。 コーヒーはのんでいらっしゃいましたか?」

 

「いや、高宮監督は現場ではいつもスポーツドリンクだけ口にしていました。 コーヒーは朝に一杯だけのようです」

 

「そうなんですね」

 

「はい。 お昼の時とかもそれは同じで……」

 

高宮の悪口を言っている様子は無い。

 

まあそれならそれでいい。

 

あくびをしながら、そのまま続きをみていく。

 

本当にくだらん。

 

この質問をしているのは、確かニュースキャスターだったかから転向した人間だったはずだが。

 

昔ニュースキャスターといえば、花形も花形。

 

ルックスだのなんだのを散々求められた存在であったが。

 

近年では価値が暴落する一方で。

 

最近ではパワハラによって放送事故を起こしてしまった者もいるなど。

 

テレビ業界が終わりつつある事を如実に示している存在となっているようだ。

 

実際問題、今俳優達に質問しているこいつについても、まるで人間的な魅力とか、そういうのは感じない。

 

はっきりいってどうでもいい。

 

それが見た時点での本音である。

 

もうそろそろいいかなと思って、リモコンの停止ボタンに手を伸ばしかけたが。

 

ようやく本題が始まった。

 

「それで今回の映画のテーマなどを、高宮監督から伺っていますか? いつもとても哲学的な作品が話題になる方なので、それぞれ伺いたいのですが」

 

「!」

 

俳優達が青ざめる。

 

さて、ちゃんと指示通りに出来たかな。

 

もしも余計な事を言ったら干す。

 

そう高宮が断言したことを、忘れてはいない筈だ。

 

唇まで真っ青にしながら、まずは主演から、指示した通りに答え始める。

 

ともかく、煙に巻く解答を用意してある。

 

リモコンで番組を一時停止すると。

 

ポテチを持ってきて、袋を開く。ついでなので、麦茶も用意しておくとしよう。

 

るんるん気分で再生を押す。

 

さぞや気を揉んでいるだろう配給会社側。

 

ついでに俳優達。

 

SAN値が尽き果てないように、此方でも一応配慮はしてあげなければならないけれども。

 

それでも見ていて、少し楽しいのは事実だった。

 

ポテチを口にしながら、リモコンの再生ボタンを押す。

 

さてさて、どうなる。

 

俳優達は、それこそ泣きそうな顔で、高宮が言った通りに答え始める。疑問を呈された場合は、こういう風に答えろとも言っている。

 

その通りに出来るかな。

 

文字通り牛乳を買いに行く子供を見守る気分だが。

 

それはそれ、これはこれだ。

 

俳優達はみんな今後の仕事に関わっている。

 

だから、全員が必死の様子だった。

 

完全に青ざめている様子を見て、流石に質問している奴も顔を強ばらせている様子である。

 

業界でも高宮の変人ぶりは知っているのだろう。

 

一方で、俳優達がいう哲学的な言葉を、こいつらが独自で考えたとも思えなかったのかも知れない。

 

そこだけは、正解だ。

 

なんども練習したのだろう。

 

一字一句、全員が間違いなく言えたのを聞いて。

 

高宮は拍手していた。

 

ポテチでちょっと手が脂っぽくなっているが、それははっきり言ってどうでもいい。続きを見る。

 

この茶番も、そろそろ終わりだ。

 

「なるほど、今回もとても哲学的な命題と、それにそったテーマがあるんですね」

 

「はい、そういう風に指示されて演技をしました」

 

「わかりました。 それでは最後に……」

 

なんだか良さそうな映像と音楽が流れて、それでインタビューした奴が変なポエムみたいなのを流して番組が終わる。

 

はあ良かった。

 

拷問が終わった。

 

とりあえず、会社にはメールを送っておく。

 

恐らくは、俳優達は今頃胃が大変な事になっているだろうから、早めに送ってあげた方が良いだろう。

 

「そうか、問題はないか……良かった」

 

「というわけで、そのまんま俳優としての仕事を続けるように言ってあげてください」

 

「分かった、此方から連絡をしておくよ」

 

「頼みます」

 

メールでのやりとりを終えると。

 

高宮はあくびを一つ。

 

さて、明日に備えるか。

 

ポテチの袋を閉じて、洗濯ばさみで固定。冷蔵庫に入れる。

 

麦茶もしまって。

 

後は後処理を済ませたら、寝るだけだ。

 

それにしても今回、俳優達には気の毒なことをしたなと、少しばかり高宮も思ってしまったが。

 

まあこの業界は一度メギドの火で浄化しなければならないのだ。

 

その程度の犠牲は仕方が無いだろう。

 

そう、ベッドに向かいながら、高宮は思うのだった。

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