謎の映画監督の物語 無の映画監督   作:dwwyakata@2024

14 / 60
次々に作られるアルティメットコメディシリーズ!

その内容はいつも通り理解不可能な代物でした。

人によっては三分で寝るほど。

つまらなさと意味不明さに拍車が掛かっていきます。

しかもポリコレ対策も万全!


3、いざ映画が公開された後

アルティメットコメディシリーズ最新作。

 

放送目前!スペシャルインタビュー!

 

そう題された例の番組が放送された後、SNSでは早速反響があったようだった。

 

「さっぱり分からないけれど、高宮の映画ってそんなに高尚なテーマがあったの!?」

 

「ええと、ガチ勢これらの翻訳頼む」

 

「間違ったことはいってない。 結構マニアックな哲学者の理屈を一応通してはいるみたいだし。 ただ内容はまだ映画が放映されていないからなんとも言えないが」

 

「そうか。 高宮は少なくともバカじゃあないんだな……」

 

なんだかとんでも無い番組を期待していた視聴者共は肩すかしを食らったようだが。

 

はっきりいってこっちとしてはどうでもいい。

 

朝のコーヒーをSNSに上げると。

 

早速コメントがたくさんついたし拡散されたが。

 

日常行事なので、これもどうでもいいことだった。

 

安全運転で会社に。

 

一度後ろから煽られたが。

 

追い越し禁止の道路で、凄まじい勢いで追い越していったその車は、お巡りに捕まっていた。

 

ぎゃんぎゃん吠えているようだったが。まあどう見ても法定速度を四十㎞はオーバーしていたし。

 

一発免停だろうあれは。

 

二度と車に乗るんじゃねえ。

 

そうぼやきながら、会社に出た。

 

煽られても一切法定速度を崩さず安全運転をしたことについては、自分を褒めたい高宮である。

 

まあ、というわけで。

 

今日もダカダカと打鍵をして編集作業の締めに入る。

 

立方体のキグルミ達が、哲学的な話を延々と意味不明の空間で続けるこの映画だけれども。

 

まあ実際に俳優達にこういえ、といった思想についての命題は盛り込んでいる。

 

盛り込んではいるが。それが映画が面白いかどうかとは、全く話が別の問題である。

 

敢えてつまらなくする。

 

そのための小道具として使っているだけだ。

 

哲学をありがたがる人間もいるが。

 

そもそも宗教という劇物によって、ようやく秩序を作れるようになった人間とかいう欠陥生物が。

 

その先に進むためになれたかも知れない存在だったのが哲学であり。

 

それでいながら、結局言葉遊びの何の役にも立たない理屈になり果てたのが哲学でもある。

 

哲学の中に、社会を良い方向に変えたものが一つでもあるか。

 

結局の所、言葉遊びの域を全く超えていない。

 

宗教はいずれ人間が脱却しなければならないものではあるが。

 

二次元で残虐行為を繰り返すヒールが、見たら自分でもこれよりはマシだと即座に断言するレベルの蛮行を繰り返していた人間に秩序を与えたという歴史的に大きな意味は存在はしている。

 

勿論今はその存在意義も失われ。

 

カルトがそれに取って代わろうとしているが。

 

いずれにしても、哲学的命題なんて、盛り込んだところで何の役にも立たない。

 

それが高宮の冷酷な持論である。

 

ともかく。

 

番組の評判はそれなりだったようで。

 

編集作業を激しく行っている高宮の耳にも、ひそひそ会話が届く。

 

「あの番組見た……?」

 

「なんだかネットでの解説みないと、何言ってるか殆どわからなかった……」

 

「高宮さん、得体がしれないけど頭が良いんだね。 なんだかとにかく狂った人だと思ってた」

 

「いや、もう少し声抑えて? アカデミー賞とった監督で、うちに籍をおいてくれているんだよ!?」

 

全部聞こえてマースとか叫んだら、それはそれで面白そうだが止めておく。

 

いずれにしても、エンタキーをターンと叩くと。

 

それでびびったらしい社員達は、そそくさとその場を後にしていった。

 

よし、これでOK。

 

できた。

 

あとは最終チェックだ。

 

通して何度も映画を見る。

 

自分で作った映画だ。それにしても、本当につまらなくできている。実につまらないので、最高である。

 

つまらなく作ったのだから。つまらなく出来ているなら、それは最高のものだと言える。当然の理屈だ。

 

そういえば。アカデミー賞を取ったという事で。

 

今後はカンヌとかの国際賞を取りに行こうという話もあるらしいが。

 

はっきりいって興味が無い。

 

国際映画だって、今は国内の映画と同じで。

 

意識高い系の業界人が乗っ取って。

 

面白いかは全く別で、映画を評価する風潮が広まっている。

 

そんなもんには興味はまったく無い。

 

娯楽というのは、面白いかどうかが重要なのである。

 

それを忘れ果てている時点で論外だと高宮は考えているし。

 

その考えは、恐らく多数の人間も同意するだろうとも思っている。

 

いずれにしても、何度も通しで見る。

 

勿論編集中に飽きるほど通しで見ているのはみているのだけれども。

 

それはそれ、これはこれ。

 

徹底的に通しで見て、頭の中に即座に場面を構築できる程のレベルにまで、内容を落とし込んでいく。

 

その結果。

 

自分の一部として、この映画が溶ける。

 

深淵の邪神が人間を取り込んでしもべにしてしまうがごとく、である。

 

いい感じに映画が溶け込んだ。

 

そう思ったので、高宮は満足した。

 

ただ、流石に二十七回通しで自分の敢えてつまらなくした映画を見るのはそれなりにつらかったが。

 

まあそれはもういい。

 

ともかく、映画が出来た事を重役に連絡して。

 

データの引き渡しを行った。

 

 

 

映画館による、高宮のアルティメットコメディシリーズ最新作、第十一作目の発表が始まった。

 

今回はアカデミー賞受賞の後と言う事もある。

 

流石にいつもよりも多かったようだが。

 

早速SNSは、阿鼻叫喚の舞台となっていた。

 

「つまらないとは聞いてたが、まさかこれほどとは思わなかったぞオイ……」

 

「最初の三分でもう周囲から寝息が聞こえてたぞ」

 

「どういうことだよ。 必死に耐えて最後までみたけど、なにひとつ内容が理解出来なかったぞ畜生! そもそもなんで立方体達が、好き勝手な言語で喋りまくって背景も意味不明なんだよ。 翻訳もカタコトだし、ストーリーはどこに放り投げてきたんだよ!」

 

「業界人はこれぞ新時代の映画とか絶賛してるらしいぜ。 こんな新時代、頼むからこないでほしいんだが……ポリコレ対策としても、いくら何でも流石に前衛的すぎるだろこれ……」

 

SNSはこんな調子である。

 

見ていてニヤニヤしてしまう。

 

全員、意図通りに踊ってくれているからである。

 

一方で、一つだけ。

 

とても面白い意見があった。

 

「これ、わざと面白くなく作ってる」

 

「わざと!?」

 

「理由は分からないけれど、ほとんど確実。 こんな前衛的な映画だけれど、シュールギャグにしようと思えば出来るし、場面ごとに面白くする工夫は幾らでもある。 それなのに、それを敢えて全部自分から潰している。 今までの高宮監督の映画は全て共通してそう。 それも意図的にやっている可能性が高い」

 

「へ、へえ……」

 

このアカウント面白いな。

 

ふむふむ。

 

オオノデラとでも読むのか。

 

ちょっと面白いので、別アカウントでフォローしておく。

 

後で全部発言内容をチェックしておくとしよう。

 

そのまま、コーヒーの写真をアップした後、本社に連絡をいれておく。

 

「次の撮影をもう開始しますので、スタジオなどの予約について準備をしておいてください」

 

「も、もう次を撮るのかい!?」

 

「はあ、いけませんか映画監督が映画を撮ったら」

 

「い、いや頼むよ。 今回も業界では大絶賛されているようだし、次の作品も期待出来るね」

 

若干声に恐怖を感じたが。

 

まあどうでもいい。

 

今日はそのまま横になって一日眠る事とする。

 

流石に今日くらいは休んでもいいだろう。

 

さて、脚本は、次はどれにするかなあ。

 

これにするか。

 

引っ張り出して来たのは、暇を見て書きためている脚本の一つである。

 

ちなみに次の作品はパニックホラーの予定だ。

 

勿論ホラーのほの字もないが。

 

定番のパニックホラーは色々あるけれども。

 

アニマルホラーはもうやったことがある。

 

病気は今の世情的にまずい。

 

というわけで、次のパニックホラーは得体が知れない何かに襲われていくという内容にしようと思っている。

 

勿論それも料理次第では大変に面白いものにはなるのだけれども。

 

それはそれ。

 

いかにつまらなくするのかが、高宮の腕の見せ所だ。

 

「これにすっかな……」

 

とりあえず、脚本は出しておく。

 

後は俳優か。

 

オーディションを開いてきちんと俳優を呼ぶ。

 

以前はアイドルだの芸能人だのお笑い芸人だのを出せとかスポンサーからそういう圧力があったらしいが。

 

今はもう高宮はアカデミー賞監督。

 

以降は、そういった圧力もはねのけられるだろう。

 

勿論つまらない映画に出すわけだから。

 

相応に覚悟が決まった俳優を出す事になる。

 

いずれにしても今日は休みである。

 

会社の方でも、高宮が凄まじい勢いで編集作業をしていたことは把握しているだろうし。文句を言ってくることはあるまい。

 

あくびをしながら、横になってSNSを見る。

 

俳優達のSNSアカウントも見てみるが。

 

案の定阿鼻叫喚だった。

 

「高宮監督の映画で円錐形をやっていましたね!」

 

いきなりドストレートな質問がとんでいる。

 

そう、この俳優はずっと円錐形のキグルミで演技を続けていた。

 

エンドロールに名前が流れなければ、誰がやっていたかさえもわからなかっただろう。

 

実はスタントを雇って安く済ませようとか、そういう意見もあったのだが。

 

キグルミの中から本人の声を出して欲しいという高宮の希望もあって。

 

全員にはキグルミに入って貰った。

 

そしてこの俳優には、スワヒリ語で喋って貰った。

 

他にも俳優達には国際色豊かな言語を使わせた。

 

なお、今回は演技指導を珍しく呼んだが。

 

演技そのものには干渉せず。

 

それぞれの言語のスペシャリストに、きっちり指導して貰う形で話を締めた。この点だけは妥協しなかった。

 

まあそれでも撮影現場自体はホトケの高宮のスタイルは崩さなかったし。

 

各言語の演技指導は。

 

それぞれが困惑したり、死んだ目で撮影風景を見つめていたが。

 

「もうスワヒリ語ぺらぺらですか!?」

 

なお、それぞれが何語を喋っていたかもエンドロールには記載した。

 

というわけで、寝ずに我慢して最後まで見て、しかもエンドロールまで耐えた猛者達がいるということだ。

 

頑張ったね。

 

そう褒めてあげたい所だが。

 

はっきりいって、敢えてつまらなくしているので。

 

寝ていてくれた方が良かったと想う。

 

俳優は困惑していたが、こう言うときにSNSの住人は。通常世界の住人がそうであるように。

 

相手が弱いと判断したら際限なくつけあがる。

 

ともかく途中で俳優の所属事務所からストップが掛かったらしい。

 

フレンド以外はコメント不可能の状態になり。

 

或いは鍵アカウントにもなったようだった。

 

いずれにしても、手慣れていないなあとみながら思う。

 

相変わらず高宮のアカウントはコーヒーを朝に乗せるだけ。

 

それ以外の事は一切しないので、botとか時計とか言われるばかり。

 

今回の謎作品に関して興味を持った人はそれなりにいるようで。

 

アカデミー賞効果もあるのだろう。

 

相応の人数が、映画館に出向いているようだ。

 

高宮の計算外だが。

 

つまらない映画なのに、人が来てしまった、と言う事だ。

 

しかもたくさんいるカルト映画ファンですら匙を投げる作品を作ったつもりだったのだけれども。

 

それでも人が来るという事である。

 

中々に業が深い話ではあった。

 

今までは出演俳優関係が荒らされる事はなかったのになあと思いながら、SNSでの推移を見ているが。

 

やがて会社からメールが入った。

 

テレビ会議に出てほしいと言うことだった。

 

まあ何が原因かは分かっている。

 

すぐにテレビ会議に出る。

 

やはり役者を提供した事務所のお偉いさんも出て来ていた。

 

「高宮くん、SNSの方は見ているかね」

 

「はあ、まあ」

 

「君の意見を聞きたい」

 

「私の意見よりも、専門家に意見を聞くべきでしょう。 そもそも私の映画が放映後にいつもこんな風になるのは周知の事実でしょうに。 自衛が少しばかり足りないのではありませんか?」

 

痛烈な意見を言うと。

 

皆押し黙る。

 

まあそれはそうだろう。正論というのは正しいから正論なのである。それを言う事をモラハラとかいうそうだが。

 

正論を聞けない人間のモラルが腐っていて人間が小さいというだけの事であって。

 

それ以上でも以下でもないだろうと高宮は思う。

 

いずれにしても、もう一言付け加える。

 

「この手の炎上は犯罪に関わっているわけでもありませんので、面白がっている連中が飽きれば鎮火します。 しばらく俳優さん達はSNSの利用を控えるのが一番でしょうね」

 

「やはりそうか……」

 

「私はそのままが一番相手の毒気を抜くので、そのままでいきます。 まあそもそも私になんで意見を求めるのかって話でしてね」

 

高宮の映画が、見る睡眠導入剤と言われるレベルでつまらない事は普通に知られているのである。

 

だから、高宮の映画がつまらなくて炎上しているのでは無い。

 

今回はアカデミー賞を高宮がとった事により。

 

普段も映画の後にはわらわら湧いてくる愉快犯と、それに便乗する連中がいつもより五月蠅いだけである。

 

この辺りの習性は、人間はハエと大して変わらない事をよく示していると言える。

 

もう少しまともな。

 

例えば自称しているような「知的生命体」だったら。

 

こんなばかげた事なんて、とてもできないのだろうから。

 

さて、意見を聞く事にする。

 

もう言う事は言ったからである。

 

俳優の所属事務所のお偉いさんは、冷や汗をずっとハンカチで拭っていた。

 

それはそうだろう。

 

高宮も、ある程度仕事を頼む事務所については調べるようにしている。タチが悪い事務所になると犯罪組織とかとつながっていたりするケースがある。

 

こういう犯罪組織とつながっているような事務所は、当然詐欺まがいの事も普通にやらかすし。

 

以前この手の連中が、アニメの製作委員会方式を利用して、金と女を得るためだけにクソアニメを作ると言う事をやらかしていた。

 

クソアニメの筈で作らせたアニメがとんでもない名作だったこともあり、何もかもが台無しになってしまったのだが。

 

映画業界だけではなく、まあ犯罪組織と関わっているような連中がいる会社とは、触らないのが一番だと言う事である。

 

それは知っているので、事前に調べて。

 

背後関係も調べてある。

 

この会社はクリーンだが。

 

そもそも芸能界と犯罪組織の癒着は古い。

 

男一匹なんて言葉があった時代から、俳優にはヤクザまがいのやヤクザそのものが混じっていたりもしたのだ。

 

そういうのが映画に紛れ込むと、流石にトラブルが起きたときに面倒ではすまなくなる。

 

実際ドラマなどでは、その手のが犯罪を起こすと。後で随分と苦労して編集したりすることになったりもするのだ。

 

というわけで、今後もしっかり精査はするつもりだ。

 

犯罪者は高宮の映画に必要ない。

 

犯罪組織関係者も同じく。

 

それだけの話である。

 

「とりあえず、これから俳優達に指導して、すぐにコメントなどはやめさせます」

 

「裏アカウントを作っている人もいるでしょうし、そういうのは簡単にばれますので、気をつけてください」

 

「はあ、分かりました。 言い聞かせておきます」

 

「それでは終わりで良いですか?」

 

高宮が圧をかけると。

 

もう反論できる者はいないようだった。

 

テレビ会議終了。

 

すぐに連絡が行ったらしく、鍵アカウントになったりしばらく更新停止しますとの書き込みがあったりで。

 

俳優達は全員自衛に移ったようだった。

 

まあそれで正解である。

 

あくびをしながら、以降の様子を眺める。

 

本当に俳優の事務所何だったら、自衛処置やら教育やらしておけってのに。

 

そうぼやきながら様子を見ていると。

 

やはり噛んでいた何人かのαユーザーがやる気を無くすと同時に。

 

その取り巻きも、すぐに静かになっていった。

 

勿論まだまだしばらくは荒れるだろうが。

 

数日の我慢である。

 

いずれにしても犯罪絡みではないのだ。

 

むしろ、すぐに俳優に絡んでいたアカウントに対する批判意見が出始めた。

 

「〇〇さん、クソ映画に出ただけだってのに、お前らちょっといい加減にしろよ」

 

「ちょっとやりすぎだよなあ。 過去の書き込み見る限り、問題行動も起こしていないし、ファンに対しても真摯な人じゃん。 しかもまだまだ若いのに」

 

「これは騒いでいた連中が全面的に悪いな」

 

「どうせ他人を貶すことしか能がないんだから、そう言ってやるなよ」

 

こうなってくると、此奴ら同士での争いが始まる。

 

はっきりいってどっちもどっちだし。

 

いずれにしても干渉する気は無い。

 

勝手にやってくれ、という所だ。

 

ただこういうやりとりの末に逆恨みをするような輩も出てくるので。

 

それはSNSというものの。

 

いや、掲示板やパソコン通信時代からの。

 

インターネットの恥部と言うべきものなのかも知れなかった。

 

さて、今日は寝るか。

 

いずれにしても、高宮はこんな連中と関わるつもりは無い。

 

高宮の所にも攻撃的なコメントやらなにやらが出ていたが。自称プロの筈の俳優事務所のお偉いさんにもきちんとアドバイスはしたし。

 

それで会社の方でも方針は決めたようだし。

 

できる事は全てやっている。

 

可視化されていないだけだ。

 

インターネットでは人間の業が可視化されやすい傾向が極めて強いものなのだけれども。

 

今回の件は、可視化されなかった。

 

それだけだ。

 

世の中には、まだまだ見えないものがいくらでもある。

 

人間が言葉とか言うええかげんなコミュニケーションツールを卒業して。

 

もっと凄いもの。

 

例えば意識を直接交換するとか、そういうシステムを開発でもしない限り。

 

恐らくこの手の問題は、ずっと残り続けるだろう。

 

それについては高宮は疑っていない。

 

そして、それを題材にして映画を作るつもりは無い。

 

高宮は人間に一切期待はしていないし。

 

説教なんてするだけ無駄だと思っている。

 

ただ、それだけだ。

 

 

 

翌朝。

 

そろそろ動くかと思って、朝の内に準備を色々済ませる。

 

動くというのは、当然次の映画の撮影について、である。

 

ハイペースで映画を撮り続ける高宮だが。

 

一応これでも、配給会社と色々と打ち合わせはしないといけない。

 

だから、最初の数日は会社に出向いて、色々と書類仕事をしなければならないのである。大変に面倒な話だが。

 

リモートで電子書類でいいだろうに。

 

この辺りは改革がいるなと思っているが。

 

流石に会社の経営には口を出せないし、出すつもりも無い。

 

ただ高宮が例えばカンヌとかで受賞したら、その時にはぼそりと口にして。会社側が旧態依然の体制を改めるかも知れないが。

 

それはまだ先の話。

 

現時点ではアカデミー賞をとったはとったが。

 

別に会社に対して売り揚げ面では其処まで貢献はしていないし。

 

何よりも税金で映画を作っていて、基本的に赤字である事に変わりは無いのだから。

 

コーヒーの写真をSNSにアップする。

 

予想はしていたが、既に俳優などに対する中傷はすっかり止んでおり。

 

高宮への攻撃的なコメントなども一切ストップしていた。

 

更には、予想されていた空中戦も、一部のバカがやりあっているだけで。大半は飽きてもう静かになっていた。

 

今回は別に犯罪絡みというわけでもないので。

 

まあ沈静化も早かった、と言う訳だ。

 

それに騒いでいた連中がただのアホだった、と言う事もあるのだろう。

 

まあ高宮にとってはどうでも良いことである。

 

そのまま車に乗って出勤。

 

この軽も壊れないので、しばらく乗り続けることになりそうだ。

 

黙々と車で会社に移動。

 

途中で、またマナーが悪い車がいるので。其処はねずみ取りの名所だぞと声を掛けてやりたかったが無視。

 

蛇行運転までしていたが。

 

やがて案の定捕まっていた。

 

まああれだけ危険運転をしていれば、それはそうだろう。

 

ざまあみろである。

 

ねずみ取りという謎の文化は大嫌いだが。

 

それでもこればかりはざまあみろという言葉が素直に出てくる。

 

近年はろくでもない法改正ばかりが行われている印象があるが。

 

少なくとも飲酒運転の厳罰化だけは良い法改正だったと思うし。

 

今後は、そういう方向でこの国の政府も点数を稼いで欲しいものだなあと高宮は思う。

 

まあ高宮はどちらかというと、税金を食い荒らしている方なので。

 

偉そうなことはあまり言ってはならないのかもしれないが。

 

会社に着く。

 

もう事前に連絡は入れてあるので、すぐに書類の作成に入る。

 

てか、基礎書類のフォーマットはあるので、それらを印刷しては。ハンコを押したり色々書いたりして、提出するだけだ。

 

最初の映画の時は、随分受理まで時間がかかったっけ。

 

今はアカデミー賞監督がいるということで、配給会社にもそれなりに仕事が来るようになったらしい。

 

高宮だけがこの会社にいる監督ではないし。

 

何よりもアカデミー賞作家は、もう年寄りになっているのが一人だけであり。当然ろくな映画を撮れなくなっている状況なので。

 

配給会社としては嬉しかったのだろう。

 

そもそも特撮とかでもそれほど名前が知られていない配給会社だ。

 

どんな形であっても。

 

名前が知られた監督がいるというのは、それだけ+になるのである。それが悪名であってもだ。

 

書類を出して、自分でチェックを入れておく。

 

自分用にチェックシートを作ってあるのだ。

 

何しろそれなりの数の書類を出さなければならない、と言う事もある。

 

チェックシートくらいつくって自衛しておかないと、無駄な手間が増えてしまうのである。

 

またこう言う書類は、受け取る側の性格が悪いと、難癖を散々つけられて何を書いても突っ返される事もある。

 

そういう意味では。

 

高宮がいるこの会社は。

 

そこまで性格が悪い上司がいないと言う意味で、ある程度は過ごしやすい場所なのかも知れなかった。

 

そのまま書類を提出後。

 

会社で幾つか事務作業をしておく。

 

フォーマットの整備とか、やれることはある。

 

作業をしている内に、書類申請が通った。

 

面倒くさいけれども、やっておかなければならないのである。

 

チェックシートに、申請が通った書類についてチェックを入れていくが。

 

やはりこういうのは手間が掛かる。

 

結局、全ての書類の申請が通ったのは、夕方だった。

 

まあ定時前ギリギリだったし、可としよう。

 

高宮としても、この時間に帰れるのだとしたら、充分な成果だ。

 

自宅へ車で戻る。

 

何しろ法定速度をきっちりまもっているので、ねずみ取りにも引っ掛かる事はまったくない。

 

無言で家まで到着すると。

 

今日は無駄な時間を過ごしたな、とぼやく。

 

後は、オーディションとかをして。

 

次の映画を撮るための準備を幾つかこなさなければならないが。

 

それはそれだ。

 

明日は少なくとも家で寝ていられるだろう。

 

それでいいと思うし。

 

個人的にはもう少し長期の休みを申請しても良いのだが。

 

高宮にはやるべき事がある。

 

そのためには。

 

どんどん敢えてつまらない映画を、量産していかなければならなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。