謎の映画監督の物語 無の映画監督 作:dwwyakata@2024
石山芳野は、うんざりした。全てに幻滅した。
会社のデスクに退職届を置いてきた。
上司はしらけた目で石山を見た。
それだけで、受理した。
後は、職安で失業保険を貰って。
それで全てだ。
会社を出ると、反吐を吐きたくなったが。我慢する。
この会社は違うかも知れない。
そう思っていたのだが。
違った。
マスゴミはマスゴミ。
所詮は、ゴミだった。
石山は元々、新聞部員だった。中学時代には、大まじめに真実を追究して、人々の目に正しく伝えるのが仕事だと思っていた。
だが、既に高校時代には、新聞部がおかしい事に気づき始めた。
記事というのは、主観で書くものだ。
真実なんてのはどうでもいい。
むしろ真実は我々が決める。
そう、新聞部の部長は傲岸不遜に言い放った。
唖然とする石山の前で、部長はどのマスコミもそうだと言い放ち。それがマスコミのあり方だともほざいたのだった。
呆れ果てた石山は。それでも新聞部内で記事を書いたが。
ことごとく駄目出しされた。
お前の記事ははっきりいってカスだ。
そう何度も言われたっけ。
どれだけ真実に客観的に迫った記事であっても、そういう風に駄目出しをされていく内に。
石山はだんだん頭に来て、完全に幽霊部員になった。
教師に呼ばれて、何故部活に出無いのかと聞かれ。
そして話をしたけれども。
教師もそもそもマスコミに対して興味が無いようで。石山の主張はまるで受け入れられなかった。
周囲がそう言っているのだからそうしなさい。
部長がそう言っているのだから言う事を聞きなさい。
それだけを言われて、うんざりしたので。
以降はネットで、記事を書くようになった。
裏取りをする。
客観的になるように、出来るだけ多方面から情報を集める。
情報は一次資料が好ましい。
主観は可能な限り入れるな。
そう言い聞かせながら、石山は記事を書くようになった。
記事の内容は、どれもこれもそれほどだいそれた内容ではないもの。
世間にありふれている食べ物や、あるいは服などにについて。
それらの記事を書いていく内に。石山のブログは自然と人気が出始めていた。
学校では散々ぶちぶち言われたが。
むしろ、マスゴミに対して相当に怒りを感じているらしい世間の人々は、ネットでの石山は受け入れてくれた。
嬉しかった。
そして、まだ石山は。
この時点でどこかで、マスゴミでは無い報道があると信じていたのかも知れない。
高校が終わって、大学に入って。
それからマスコミ各社を精査した。
クオリティペーパーを自称する新聞社は、今はあらかたカスだ。
そんなことは、小学生でも分かっている。
かといって週刊誌はネット記事と同レベルである。
あからさまに石山のかく記事よりも酷いのをかく会社もあった。
だから、それらを自分で弾きながら。
マイナーながらも、そこそこ良い記事を書く会社を見つけた。
しかしだ。
苦労しながらその会社に入ってみて。
見た現実は。
部活と同じだった。
その会社は、単に記者がいないだけで。記事に関しての考え方は、殆ど大手と同じだったのである。
主観で記事を書いて良い。
客観なんて必要ない。
スポンサー様の喜ぶものをかけ。
なぜならそれがマスコミだからだ。サラリーマンなんだから、他の事は一切必要ない。そう、真顔で上司は言い切った。
流石に抗議した石山だが。
それらは一笑に伏せられた。
やがてストレスで胃を壊した石山は血を吐いた。
それを知っても。
単に世間を舐めているだけとか。
気合いが足りていないだとか。
そういう事を言われるばかりだった。
ここに客観性はなく。真実を人々に伝えようとする気概も無い。主観で記事を書き、己の書いた記事を真実だと信じ込む。
そんな蛆のような最低レベルの記者しかいない。
それを石山は悟った。
勿論分かっている。
今は、そんな連中が、むしろスタンダードだと言う事は。
いわゆる「オタク」と呼ばれる人々が迫害されるきっかけになった記事を書いた奴がいる。その記事は既にねつ造だと言う事が発覚している。
それによって、社会的に殺され。
実際に自殺にまで追い込まれた人は百人や二百人ではきかない。
大量虐殺をしたのと同じだ。
それなのに、一切責任を取るという事をしないのが今の報道だ。ねつ造で記事を書き、裏取りもしないでかってに真実を作った挙げ句、何百人も、いやもっと多く人を殺しても何とも思わない。
そんなのは人非人だとしか言えない。
だがそれが受け入れられている。
少なくともマスコミでは。
石山には、それが許せなかった。
会社を出た後は、どうしようか迷った。
映画館に足を運んだのは、偶然だった。
そこから、石山の人生はまた大きく狂い始める事になる。だが狂気は、石山にはむしろ相性が良かったのかも知れない。
(続)
また一人、深淵に魅入られたものが現れました。
現在のマスメディアというものに、完全に見切りをつけたそのものは。
高宮監督の魔手にがっつり握られてしまうのです。