謎の映画監督の物語 無の映画監督 作:dwwyakata@2024
撮影が終盤になってくる。
俳優が全員必要なシーンはあらかた取り終えているので、以降はどんどん俳優のスケジュールに余裕が出来てくる。
一番忙しい時期でも基本的に定時で仕事は終わって貰っているのだが。
今回も、それは同じだ。
高宮はカット、と言った後。
黙々とメモ帳に万年筆を走らせている石山を一瞥する。
本当に熱心にメモを取っているなと思う。
そして百日ほどの撮影の内、実に五十日に出て。その全てをメモし。五十回に分けて五分ずつインタビューを行う。
その姿勢は、契約書を作ったときに感じたもの。
記者としての誠実さを保つ。
何よりも、現状の記者の現実への怒り。
その二つから、出ているように思った。
記者を神格化して、ありもしない描写をした映画が賞を取るような時代だ。マスゴミは、まだまだこういう現場では大きな発言力と影響力を持っている。
だから、高宮は準備を幾つもしてきた。
この間も、石山に絡んできた馬鹿な新聞の記者を一瞬で潰してやったが。
あれは恐らくああ動くだろうと判断。
井伊に頼んで、さっさとやって貰ったことだ。
汚れ役は井伊が全部引き受けてくれる。
勿論尻尾なんか出さない。
井伊は現時点で、十六のSNSアカウントを使い分けているらしく。
それら全てで、別の行動をしているらしい。
その一つで、あの新聞記者を潰した。
井伊にとっては完全な余技。
ただ、新聞社側は更に戦慄した様子で。スタジオ周辺から、記者を引き上げさせたようだった。
他の新聞社も、高宮に下手に触ると火傷すると判断したのか。
最近は、配給会社にちょっかいを出す事を、避けるようになりはじめていた。
それでいい。
またフェーズが一つ進んだ事になる。
一方で、意識高い業界人にアプローチして、何とか高宮との取材を取り付けようとしている新聞社もあるようだが。
その手の業界人は、マスコミより自分の方が偉いと思っている。
この手の連中は、自分より下の存在を作る為に本当に血眼になるし。
自分の方が偉いと錯覚した瞬間、その認識を永久に変えない。
だから、マスコミもうまくネゴを進められず。
泥沼の様相のようだ。
まあはっきり言ってどうでも良い話である。
高宮からすれば、順調に映画を公開できれば、それでいいのだから。
さてさて、そろそろラストスパートだ。
明日からは、日野にも長期休暇が入り。二~三人の俳優が出るだけのシーンを撮っていく事になる。
これらのシーンはそれほど映画的にも重要ではないので。
まあ、ミスがあっても幾らでも取り返しが利くだろう。
それに問題があっても編集でどうにでも後から直せる。
だから別にかまわない。
撮影の合間の休憩時間が増える。
それを見て、余裕があるようならと。石山が動く。インタビューをしている。相手は照明監督だ。
本当に五分でインタビューを終える。
それを聞いているのか。照明監督も比較的軽めにインタビューを受けていたが。
質問内容はかなり鋭いと判断したのか。
すぐに真面目な顔になって、真剣に答えているようだった。
あの記者。石山のことだが。あの記者は、かなり厳しい契約の下で。高宮が直接やとったらしい。
その噂は。このスタジオのスタッフが皆知っている。
そして、それについては他の新聞社も既に掴んでいるようだ。
だから御用記事を書くだろうと、虎視眈々と狙っているようである。
まあそんなものを書かないから、高宮がスカウトしたのだが。
そんな程度の事も分からない人間が、新聞社様の記者をしている。
それが色々と末期的で。
哀れだなと感じる。
ともかく、淡々とやっていく。
昼休みにも、前倒しで石山はインタビューをしている。
俳優に対してのインタビューだ。
前にその俳優に対してもインタビューを何回かしていたが。
いずれもが非常に鋭い質問だったようで。五分の範囲内で受け答えをしっかりしているのは凄い。
口論になったり、相手の感情を大きく揺らして演技に影響が出ないように配慮しているのも偉い。
全てが。
現実の記者にはできない事ばかり。
石山は、二次元の世界から来たのでは無いかと思ってしまう。
定時が来たので、撮影終了。
皆には三々五々上がって貰う。
そして、家に着いた後、スマホを確認。
久々に、社長からメールが来ていた。
小野寺を介せと言ってあるのだけれどなあ。
そうぼやきながら、内容を確認。どうやら小野寺も含めて、テレビ会議をしたいらしい。
まあいいだろう。
さっとテレビ会議に応じる。
久々だなこれも。
最近は井伊と小野寺が両輪として社内での高宮の活動を回してくれるし。
更にはCG作成は黒田が殆ど全部やってくれることもあって。
編集の手間もかなり減っている。
だから、殆どテレビ会議なんか必要なかったのだが。まあやりたいというのならやるだけだ。
「実は高宮君、〇〇新聞から苦情が来てね。 この間記者を一人、懲戒解雇に追い込んだだろう」
「ああ、そうですね。 スタジオに取材許可も出してないのに押しかけてきた挙げ句、うちの社員に絡んできた上恫喝までした礼儀も社会常識もわきまえていない輩でしたからね」
「……その、なんだ。 他の監督に対しても、かなり新聞社が怖がっている様子でね、もう少しフレンドリーに」
「今の時代、新聞というのがどう扱われているかおわかりで?」
ずばりと斬り込む。
小野寺は笑顔のままだ。
社長は青ざめ。専務も黙り込む中。高宮は咳払いした。
「社長、今の時代新聞はもはやパブリックエネミーです。 コネだけはありますけれど、それだけの存在です。 我が社は新聞なんてものからは、そうそうに縁を切るべきかと思います」
「き、君、流石にそれは……」
「幸い、面白い条件で面白い記者を得ています。 以降、うちの記事は彼女に書いて貰えばよいでしょう」
「石山君のブログ記事は私も読んだよ」
冷や汗を拭いながら、社長は言う。
そうか、この芸がない二代目のボンボンにしては立派だ。
この社長は無能だが、悪党ではない。
それだけは良い事だと思う。
映画が好きである。
それも良い事なのだが。会社経営者としては、それはあまり関係がないことでもある。
専務が会社を回していなければ、この弱小配給社はとっくに潰れていただろうし。
高宮という売れっ子が出てこなければ。
とっくの昔に興行的にも忘れられた存在になっていただろう。
だからだろうか。
大新聞様に声を掛けられて、舞い上がってしまうのか。
まさに格好のエジキでは無いか。
「石山君のブログ記事は、なんというか確かに大手新聞の記事よりよほど優れていると思ったよ」
「社長!?」
「いや、専務も同じように言っていただろう」
思わず咎める専務に、社長は冷や汗を拭いながら言う。
慌てて周囲を見る専務。
まあ、大手新聞に声を掛けられているスパイがいてもおかしくはない。
正しい反応ではあるだろう。
「だけれども、石山君には実績がない。 だ、大丈夫なのかね高宮君」
「問題ありませんよ。 というか、既に告知はしてくれていますよね」
「ああ、驚くほど反響が来ている」
三日ほど前。
会社のSNSの公式アカウントで、独自の記事を書くと発表した。
記者は石山である。
次の高宮の映画。
アニマルパニックものの、タコ映画を発表した後。独占取材記事として、大々的に出す予定だ。
勿論新聞社などの嫌がらせもあるだろうから。
ネットを中心に、記事をアップし。無料公開する予定である。
これについても反発があるようだ。
新聞の価値を無為にするのか、と。
とはいっても、今ではいわゆるクオリティーペーパーを自称してふんぞり返っているような新聞社でも、ネット記事を使うのは当たり前である。
何を今更、と言う感じだ。
そして、ネット記事で済ませるという事に対して。
反発しているのは、明らかすぎる程である。
「それに契約内容もみた。 あれなら御用記事にはならないだろう。 だが、新聞社も混乱しているようでね。 石山君について、散々色々な方面から聞かれたよ。 何者なのか、とね」
「まあ本職だと答えておけば良いでしょう」
「それが誰か分からないから彼らは混乱しているんだ」
「勝手に混乱させておけばよろしい」
冷徹な高宮の言い分に。専務ももう言葉が無い様子だ。
だが、それで別にかまわない。
そもそも、何をあんな連中にあわせる必要があるのか。金の為ならどんな記事でもかいていい。
真実は幾らでも都合良くねつ造していい。
その結果何百人死のうが知った事では無い。そんな風に考える連中と、同意できる事など何一つ無い。
だから新聞など使わない。
それだけのことである。
「この話はおしまいです。 もしも嫌がらせをしてくるようなら、此方で対応いたしますので」
「……」
「大手の映画会社に、そろそろうちも追いつきつつあります。 逆に言うと、大手がヒット作を出せていないだけですけれどもね」
「分かった、好きにしてくれ」
若干投げ槍に社長はそういい。
テレビ会議は終わった。
すぐにテレビ会議を行う。井伊と小野寺と、だ。
「さて、現状の動きはどうなってる?」
「今の時点ではSNSなどではうちに対する追い風が大きい。 向かい風はほぼないとみて良い。 ただ一部老人が、新聞側の人間と思われるアカウントにあわせて何か文句を言っている様子」
「ああ、まだ新聞の言う事真に受けるのがいるのか……」
「まあそれはしょうがないかと」
小野寺が苦笑い。
若い子でも、新聞を読んで知性派を気取る人間は減ってきているのが現状だ。
昔はファッション雑誌などに群がった子も、今はそんなものを見向きもしなくなってきている。
それはそうだろう。
自分達を馬鹿にしていることが丸わかりの連中に対して、良い気分なんて抱きようがないのだし。
何よりも今はただで、もっと鮮度が高い情報が手に入るのだから。
「もしも眼に余る動きがあったら対応よろしく」
「分かった。 徹底的に叩く」
「おっと、良いんですか?」
「いい。 風向きが来ているうちに、流れを決めておく」
大人の喧嘩という奴か。
なりふり構わずと言うのをやってくるのなら、対応をさせて貰うだけである。
まあ、はっきり言って新聞なんて今は斜陽産業だ。
思ったほどの力は、もう彼らもないことは自覚している。
大手新聞が、既に幾つか「中小企業」にまで転落している時代である。
まあ、それだけ新聞なんて誰も読まなくなった、と言う事だ。
「それで記者さんはどうですか?」
「まあまあだと思う。 御用記者にするつもりはないし、うちの子飼いだけど好きかってやってくれていいとは太鼓判を押してある。 ただ、プライベートに対する詮索はNGとも釘は刺してあるから、大丈夫だろうね」
「いや、寝返りを心配しているんですが」
「そう思うなら、会ってくるといいよ。 セッティングはしてあげる」
小野寺は頷くと、セッティングを頼んで来た。
高宮としても望むところだ。
テレビ会議はそれで終える。
伸びをして、あくびをした。
さて、そろそろ撮影は終わり。
実はまだ、前作の放映は続いている。かなりのロングランである。時代はクソ映画とまで言われている状況だ。
高宮の見る睡眠導入剤映画が、何故か映画館を救っている。
映画館としても、話題性に乗じ、放映せざるを得ない。
中には何度も高宮の映画を見に来ている強者もいるそうだ。
はっきりいって正気の沙汰では無いと思うが。
まあ、中々の強者であり。
そして正気度はとっくに残っていないのかもしれなかった。
石山に連絡。
そのまま、セッティングについて話をする。
高宮の子飼いである小野寺には、前から興味があったようだ。
すぐに応じてくれた。
ただ、撮影後に話はしてもらう。
丁度良い。
小野寺の目から、石山の記事を見てもらおう。余程まずい表現でもない限り、悪口でも何でもOKという事にしてある。
まあ小野寺は相当な意思疎通上手だ。
しくる事は無いだろう。
さて、此処から更にフェーズを上げていく。
今後、映画界における高宮の存在感を更に大きくしていく。
既に配給会社は、高宮がいないとどうにもならない状態になっている。役員よりも高宮の発言権は大きい。
もはや会社は私物。だからこれについては良いと判断してかまわない。
後は同志を更に増やしたいと思っていたが。
黒田や石山は同志たり得るだろうか。
たり得るとは思う。
だが、確かに見極める必要はある。太鼓持ちなど必要ない。必要なのは、プロフェッショナルなのだ。
石山は小野寺という子とミーティングをする事になった。何回か顔はあわせているのだが。信じられないほど若い子だ。
高卒でここに来て、そして既に月収四十万貰っているという驚愕の話を聞かされたけれども。
話してみて分かる。
恐ろしい程話しやすいのだ。
意思疎通という奴が、とんでもなくスムーズなのである。
此処まで話していて困らない相手には、久々に出会った。
少なくとも社会人になってから、こんなに意思が通じる相手とは出会った事がないと断言できる。
勿論小野寺と話すのは初めてではないのだが。
以前はほんの顔合わせしかしていなかったから。今回は実質上本格的に顔をあわせる初めての機会である。
それにしても、これは。
色々考えさせられてしまう。
コミュニケーション云々がどうこうというのが騒がれ始めて久しいが。ビジネス書に書いてあるカスみたいな約束事が増えれば増えるほど、意思疎通は大変になっていく。古い時代の作法よりも、もはや難しい代物になっているだろう。恐らくだが、カスみたいなビジネス書を量産しているマナー講師同士で話をさせたら、恐らく互いのマナー違反を指摘して意味不明な事になるはずだ。
腐れマナーは害にしかならない。そんなものは邪魔なだけだと誰もが気づいているけれども。今の時代は会社の上層部がそれを盲信しているケースが多くて。どうにもならない状況も多い。
そんな中。普通に話していて、とても話せる相手と出会ったのは久しぶりだ。
というか、すんなり心の奥を掴まれるような気がして。むしろ高宮監督よりも脅威度が高いと感じた。
高宮監督は基礎スペックが恐ろしく高い事は、接してみて理解出来た。
だが、この小野寺という子は意思疎通に特化している。ビジネス書に書いてあるような「コミュニケーション能力」などというエセではない。豊臣秀吉がもっていたような才能だ。
記事を見せて欲しいと言われる。
撮影が終わった後、一生懸命まとめている最中だが。まあ何を書いても良いと言われたので見せる。
阿諛追従をするつもりはない。
御用記者になるつもりもない。
客観的に、高宮映画の現場と。どうして不可思議な映画が売れているのかの分析を行っている記事だ。
まだ推敲の途中なのだが。見せてみて、小野寺はしばらく考え込む。
やがて、幾つか指摘をしてきた。
「すごくデータに基づいた理論的な記事ですね。 こんな風な記事が社会人をしている記者から出てくるのは驚きました」
「そう言っていただけると有り難い。 今の新聞記事は太鼓持ちの阿呆が書く提灯でしかありませんので……」
「元新聞記者がそれを言いますか」
「私が異端だったのは事実です」
高校の新聞部の頃から、異端だった。
それについて、説明はする。
小野寺は全て見透かしてきている。
恐らくこの子は。
高宮監督の口であり、目でもあると判断して良いだろう。
頭脳はあの井伊という小柄な子だ。
アレは桁外れの怪物だ。
この間も訴訟関連で見事な動きを見せて、高宮監督のネガキャンをした映画監督を一瞬で社会から葬り去った。
その鮮やかすぎる動きについては、石山も知っている。
正直、敵に回すのは絶対に避けたいと思っていた。
だが、もう一人怪物がいた。
ここにだ。
この小野寺という子、多分だがその気になれば歓楽街とかでテッペンを容易にとる事が出来るだろう。
ルックスはそこそこだが。
とにかく意思疎通能力があまりにも高い。
恐らく簡単に上客をつくってのし上がることが出来る筈だ。
だが、その能力を上手に生かして此方に来た。
それはそれで。
数奇な運命なのだと思う。
「いずれにしてもこの記事は問題ないと判断します。 このまま進めてください。 ただ、最終稿もきちんとみせてください」
「おお、思った以上にフリーハンドですね」
「高宮監督のやり方が私にも伝染していますので」
「ああ、なるほど……」
高宮監督の撮影現場での行動はあまりにもフリーダムだ。それははっきりと、何人かの映画監督の撮影を見て理解出来た。
高宮監督の同僚にあたる他の映画監督は、何十年か前から来たような職人気質の者が多かった。
これは恐らくだが。
好き勝手にやらせるという、配給会社の方針が大きいのだろう。
だからこそ、かなり厳しい現場も存在していたし。
沈黙したままメモを取り続けつつ、石山はこれは厳しいなと何度も思ったものである。
だが。他の配給会社の映画監督だって、それは同じだろうと思う。
流石に此処まで職人気質の者はあまり多く無いだろうが。
それでも、相応に厳しい筈だ。
高宮監督がフリーハンド過ぎるのだ。
それに対して、役者は必死にならざるを得ない。
逆に言うと。
それで駄目でも、高宮監督は敢えてクソ映画を撮っている節があるので。
全く気にする必要がないのだろう。
それでいて、意外にもポテンシャルをフルに引き出すことに成功しているのかも知れない。
小野寺という第二の怪物を見て、それを石山は悟らされていた。
軽く話す。
小野寺は化粧とかすれば相当に綺麗になりそうなのに、その気はさっぱりなさそうである。
むしろ、自分の強みを生かして。
高宮監督のナンバーツーとして、井伊とともに双璧を務めている事を面白がっているようだし。
それによって自分が既に社会の一線級にいることに。
感謝もしているようだった。
普通の会社だったら、こんな風には行かない。
高卒の小野寺なんて、それこそ今頃激安給金でブラック労働をさせられて。使い潰されているだろう。
「なるほど、高宮監督に目をつけられたのは、そんな事があったからなんですね」
「ああ、此処は記事にしないようにお願いします」
「……分かりました。 プライベート関係については一切記事にしないようにと言う契約ですので、それは守ります」
「正直な話をすると、私はまだ貴方の事を信用しきっていません。 今後の行動で、貴方を見極めさせて貰います。 記者なら記事で語ってください。 待っています」
ぺこりと互いに一礼すると。
小野寺とのミーティングを終える。
記者なら記事で語れ、か。
まったくだ。
今の時代は、スポンサー様にケツを差し出す事が記者の仕事になっている。だからカスみたいな提灯記事しか出来ない。
そういうものなのだ。これについては、本邦だけでは無い。どこの国でも、もはや同じだろう。
だが、だからこそ。
理解のあるスポンサーという驚くべき存在がバックにつき。
プライベート関係を漁らないようにと言う縛りはあるにしても、フリーハンドで記事を書いて良いと言われたからには。
それに相応しい行動で返さなければならない。
小野寺も、恐らくだが。
同じように全権を任されて。
それで忠誠心を持ったのだ。
それは忠誠心だって生じるだろう。
お給金も貰え。
更には信頼も貰っている。
忠誠心ってのは、勝手に生じるものではない。
上に立つ者。この場合は高宮監督だが。上に立つ者が、相応の行動をすることで、生じるものだ。
そんな程度の事も理解出来ず。
一方的に忠誠心だけを求め。その忠誠心を貪り尽くして使い捨てる経営者が増えたから、人材はいなくなった。
人材がいないとか喚いている阿呆は、自分で自分の首を絞めたことを理解出来ていないし。
業界そのものを破滅させていることも理解出来ていない。
こんな最果ての時代なのに。
それでも、忠誠心を部下に生じさせる上司が出現したというのは。
石山にとっては驚きだった。
さて、記事を仕上げるか。
自宅に戻ると、記事に入魂する。
石山の記事については、恐らくだが相当な注目が集まっているはずだ。
大手マスコミも、石山の正体については必死に探っているようだけれども。そもそも人相を周囲に示すような事はしていない。
どうせ素人だろと嘲弄する声もあったが。
負け犬の遠吠えにしかなっていないのが実情だった。
そもそもプロがしっかりしていたら。
プロに記事を書くのが任されていたのだから。
数日間、日程はとってある。
これから激やせする事を覚悟の上で、全気力を集中して記事に取りかかる。
石山の未来を変える、文字通り一筆入魂の勢いで作る記事だ。
だから、それによって。
命を削っても、惜しくは無いと思っていた。