謎の映画監督の物語 無の映画監督   作:dwwyakata@2024

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チャンバラはいいですよね。

自分も好きです。


1、剣劇

今回も高宮は自身でオーディションを行い、新人の劇団出身の俳優数名を選んだ。当然その際には、しっかり背後関係も洗った。

 

とにかくオーディションにもダニと蛆虫が紛れ込むようになってきている。

 

こうしないと、危なくて仕方が無いのである。

 

あらかたゴミを払った後。

 

残った数人。

 

いずれもが。どうして選ばれたのか分からないと言う顔はしていたが。

 

職場はホワイトだという評判と。

 

高宮に要求されることが無茶苦茶だという噂は聞いていたのだろう。

 

みんな青ざめていた。

 

また、今回は演技指導の一人に。剣術家を呼んである。

 

江戸時代の剣術を研究している人間で、それなりに実績を積んでいる人物である。

 

よくある時代考証、とかの人間がいるが。

 

まあその手の人物であると思えば良いだろう。

 

ともかくとして、演技指導を一人追加という点でも、今回の高宮映画は色々と奮発していると言える。

 

他の映画会社がどれだけ予算を掛けても真似できない独自の高宮ワールドは。

 

今回もこうして作られるわけだ。

 

勿論日野茜も出て貰う。

 

今回の時代劇では。この手の作品では出現がお約束の忍者は一切いないが。

 

その代わり、水売りに出て貰う。

 

これは風俗業ではない。

 

江戸の街では、水を売る事が商売となっていた。

 

これは水が原因で時々疫病が流行ったからで。

 

上流から持ち込んだ水が、いい商売になったのである。

 

他にもマニアックな職業を幾つも出す事を決めている。

 

一方でチャンバラもやるが。

 

これに関しては、劇団でチャンバラの経験がある俳優をきちんと選んだ。チャンバラといっても、派手なのは入れず。

 

江戸時代に起きていただろうやりとりをできる限り忠実に再現したモノ、とする。

 

この辺りは、高宮の拘りだ。

 

なお、既に老境に片足を突っ込んでいる剣術の演技指導役は、前衛的な映画を撮ると聞いていて。何をさせられるのか困り果てていたが。

 

話を聞いて、現実に近い剣劇の指導を頼むと言われると。

 

ぱっと顔が明るくなった。

 

まあ、チャンバラのシーンでしか呼ばないつもりだし。

 

こんな年老いたヒトに高宮映画の撮影シーンを見せたら、それこそ正気度が一瞬で底をつくかも知れないので。

 

そんな可哀想な事はしない。

 

顔合わせが終わった後。俳優達を集めて軽く話をしておく。

 

「聞いていると思うけれど、私は殆どNGは出さない。 しかも私の映画は、今かなりの人が見に来るようになっている」

 

それだけで緊張する俳優達。

 

まあそれはそうだろう。

 

ただし、人は見に来るけれども。

 

映画の内容は、誰も覚えていないのだけれども。

 

だって、九割は、開始三分でねむってしまう。

 

残りだって全部見ても、内容が全く頭に入らないのだから。

 

「だから大根演技をしたら一生の恥になると思って、一回一回のシーンで入魂の演技をしてほしい。 脚本については、既に渡したとおり。 内容について、各自で独自に解釈してかまわないので、その解釈通りに演技してね」

 

俳優達は緊張の後。

 

噂通りの爆弾を投げつけられて蒼白になる。

 

この顔は大変に愉悦を刺激されるが。

 

それはそれである。

 

いずれにしても、高宮は俳優を甘やかすつもりもない。

 

そして高宮映画に出た俳優は、他の映画やらドラマやらで活躍している者がかなり多いのも事実だ。

 

此処さえ乗り切れば。

 

そう顔に書いて、必死に正気を保とうとしている俳優も何名かいた。

 

じつに可愛くて結構な事である。

 

思わず触手でがんじがらめにして、深淵に引きずり込んでやりたくなるが。

 

それはそれで我慢する。

 

ともかくとして、幾つかの注意事項を告げた後、初日は解散とする。

 

ああだこうだと説教をするつもりはない。

 

要点だけを告げて、それでおしまいだ。

 

定時よりもだいぶ早いけれど、それも気にする必要もない。

 

さっそく日野が俳優達に捕まって質問攻めにされていたが。まあそれは日野がどうにかすることだ。

 

高宮はさっと帰る。

 

スタジオを後にすると、そろそろ10万キロを走る軽を駆って、家に。

 

車通勤の唯一の欠点はガソリン代が相応に掛かってしまう事だが。

 

まあそれはそれでかまわないだろう。

 

別に今はそれで困るほど、資産に困窮していないのだから。

 

自宅に戻った後、井伊に幾つかCG関係の注文をしておく。

 

今回はチャンバラが出てくるが、チャンバラのシーンにはCGを使わない。正確には、チャンバラをやっている役者には、である。

 

背景とかにはどんどんCGで加工を入れる。

 

また、チャンバラの内容そのものも、客が瞠目するような代物にはしない。

 

実際の剣でのやりとりというのは、大変淡白なものだ。

 

十年以上の研鑽が、一瞬で散る。

 

才能がどれだけの努力をもいとも簡単に凌駕する。

 

なにもかもが全て一度で終わる。

 

そういう厳しい世界である。

 

ましてや鎧兜を着けていたのが当然の戦国時代だったら兎も角。着物が普通だった江戸時代ならなおさらである。

 

江戸時代以降の剣術と。

 

それ以前の戦闘術。いわゆる古武術では。

 

そういう意味で、何もかもが違ってきているのだ。

 

「黒田さんの技量はほんもの。 今回も映画をつまらなくするために使うのは、なんだか可哀想」

 

「大丈夫。 最後にはその技量を生かしてあげる」

 

「はあ。 まあいいけど。 それよりも、早速弁護士達が仕事をしている。 いるだけで既に迷惑電話が来なくなった」

 

「ああ、それは晴から聞いてる」

 

小野寺はそういうのは逐一連絡してきている。

 

しばらく弁護士が詐欺電話に出るようになってから。もうその手の連中の間で、高宮の映画会社では手強いのが来たという話が伝わったのだろう。

 

とはいってもだ。

 

この手のダニと蛆虫は、どのような手口で攻めてくるか分からない。

 

人間は法を破るときに、一番頭を使う生物だ。

 

普段は異性と酒のことしか考えていないような連中が、詐欺の時だけ急に頭が良くなるのも。

 

その辺りが理由である。

 

「囲い込むのに金は掛かるけれど、確かに効果はある。 ただし今後もしっかり稼いで欲しい」

 

「まあ何とかしてみる」

 

「頼む」

 

井伊は現実的だな。

 

そう思いながら、通話を切る。

 

実際、高宮映画はどこまで行っても現時点ではクソ映画だ。

 

まだまだブームに乗って集客は出来ているが。

 

油断して急に炎上したりしたら、いきなり客が来なくなる可能性も高い。

 

今の時代はそういう時代だ。

 

油断など、して良いはずもない。

 

黙々と、幾つか作業を済ませた後。

 

軽く出来合いを食べて、風呂に入って寝る事にする。

 

頭をフルパワーで使っているからだろうか。

 

むしろ、最近は眠りの質があまり良くない状態が続いていた。

 

夢の内容も少しずつ鮮明になってきている。

 

混沌そのものの夢が多い。

 

それでいて、朝起きると不快感だけが残っている。

 

苛立ちを発散する方法もない。

 

理解のある彼くんなんて生物はこの世にいないし。

 

ストレスをぶつけるために、サンドバッグでも買おうかと検討し始めているほどである。

 

勿論高宮のパンチなんて、サンドバッグを揺らすことすら出来ないだろうが。

 

スタジオに出向く。

 

幾つか途中で国道を通るので、多少時間は前後する。渋滞するときは、文字通りぴたりとも動かなくなるからだ。

 

ただ都心のスタジオではないので、充分に予定時刻に着く。

 

今日も一番にスタジオに出ると。

 

セットのチェックをしていく。

 

そのまま、セットを丁寧に調べて行き。問題がないかを確認。

 

自分の撮影で使うセット以外も、しっかり調べて行く。

 

また、弁当屋などの注文についても軽く目を通しておく。

 

こういうのを監督がやるのも不思議な話だが。

 

低予算映画である。

 

監督がやって、予算を圧縮する意味もあるし。

 

井伊ほどではないにしても、IQには相応の自信もある。

 

はっきりいって、下手なマネージャーなんか雇うより、自分でやってしまう方が早いのが実情だった。

 

朝の確認作業終了。

 

伸びをして、俳優達が来るのを待つ。

 

最初に来たのはやはり日野茜だ。

 

あの事務所を抜けた後は、すっかりフリーランスとなったが。

 

一方で事務所でのトラブルはそれなりに噂になったのだろう。

 

日野の元上司は今は既に実刑判決が出て、刑務所にいるが。

 

まあそんなのはどうでもいい。

 

日野は今は、俳優としてはCMを中心に出ている様子で。

 

ドラマなどの出演に、声は掛かっていないようだ。

 

映画俳優としてやっているという認識も、世間的にはあるのだろう。

 

そして映画の俳優を掛け持ちするのは、現場的に色々と厳しいものがある。

 

ハイペースで映画を撮り続ける高宮に囲われているというならなおさらだ。

 

だから、CMで日野を知って。

 

高宮映画の常連だという事を後から知る人間もいるそうである。

 

まあそれはそれ。

 

日野の存在感は少しずつ大きくなってきているし。

 

フリーランスから、高宮が作る事務所に移った頃には。

 

相応に足下も固めているだろう。

 

日野はもう知っているので、高宮の確認作業とかに口出しをしてくる事は無い。

 

スタジオの隅の方で、ストレッチとかをして体を温めている。

 

三々五々、スタッフが来始める。

 

中には馴染みのスタッフもいるが。

 

高宮とあまり話をする事はない。

 

小野寺は会社の方を任せているから、ここには来ないが。

 

小野寺を呼んでいたら、或いは数日で此処のスタッフ全員とコネを造るかも知れない。

 

それもまた、面白そうだ。

 

弁護士が来た事で、配給会社の方は隙が減った。

 

今度、小野寺を呼んでちょっと様子を見るか。

 

そう思いながら、人が揃った所で、撮影を開始する。

 

今回も、人数がいるうちに組み体操のシーンを全て撮ってしまう。

 

高宮映画名物、組み体操。

 

今回も炸裂である。

 

俳優達は困惑するばかりだが。死んだ目で、日野がどんどん先導してやっていく。この目が死んでいる様子が。

 

実に見ていて愉悦をそそるが。

 

マスクで口元を隠しているし。

 

目はサングラスで見えないので。

 

俳優達には伝わっていない。

 

それでいいのである。

 

組み体操といっても、今回も危険なシーンは一切撮らない。

 

また、危険なシーンになりかねない場所は、全て徹底的に準備をして、事故にも備えている。

 

俳優なんて使い捨て。

 

スタントなんてどうなろうと知った事ではない。

 

そう考えている監督もいるようだが。

 

高宮は、そういうのと一緒になるつもりは無い。

 

俳優は仕事として演技をしているだけ。

 

監督は仕事として俳優に演技をして貰っているだけ。

 

それ以上でも以下でもないから。

 

相手より偉いわけでもなんでもない。

 

それらを理解出来ていない人間が、ブラック企業で上司になる。

 

そういう連中と同じにならないためにも。

 

高宮は、常に自分を律する事を忘れないようにしなければならなかった。

 

撮影が一段落して、昼になる。

 

前に気に入った個人経営の弁当屋に今回も頼んでいる。

 

スタジオに弁当を届けるのは初めてだと、前に言っていたっけ。いずれにしても美味しいので、この時だけは俳優達もみんな生き返ったようになっている。

 

良い事である。

 

普段はもっと苦しんでいるという事の証左でもあるが。

 

定時で上がらせてあげているのだから、文句を言わせはしない。

 

昼休憩もきっちり取り。

 

午後の撮影を開始。

 

組み体操は、これから数日の間に全て撮ってしまうつもりだが。

 

逆に言うと、それだけ組み体操のシーンがあると言う事でもある。

 

狂っているが。

 

これは意図的に狂ったものを撮っているのだから。

 

気にする必要は一切無い。

 

定時の少し前で、撮影を切り上げる。

 

組み体操を散々やらされた俳優達は、みんな疲れきっていて。とにかく目が死んでいた。

 

体力とは別の意味でハードな消耗を強いられる職場だと言う事は聞かされていたのだろうけれども。

 

ここまでだとは思わなかったのだろう。

 

良い事だ。

 

ここを耐え抜けば、後の人生はぐっと楽になるし。

 

此処で正気度を失う訓練をしておけば。

 

あとでどんな無茶ぶりの演技指導を喰らっても、耐える事は出来るだろう。

 

だからこれでいいのである。

 

ましてや体を壊すような仕事は一切高宮はさせていないのだから。これ以上ああだこうだと言う事も無い。

 

皆が帰っていった後。

 

日野が、ふらふらと此方に来た。

 

「高宮監督……」

 

「どしたの?」

 

「みんな泣きそうです……」

 

「今のうちに泣いておきなさい」

 

身も蓋も無いが、俳優として大成するには、狂気に触れる事が必須だと思う。

 

高宮の持論だが。

 

これは案外間違っていないと思う。

 

濃厚な狂気に触れておけ。それで人間の深淵を一度見ておけ。

 

フラフラと帰っていく日野。

 

あの様子だと、事務所を抜けたときに受けた精神ダメージがまだ回復しきっていないか、

 

まあそれはそれでかまわない。

 

回復したときには。

 

きっと逞しく成長している筈なのだから。

 

 

 

数日かけて組み体操の撮影を終える。

 

これで、組み体操は終わりだ。

 

そして此処からは、哲学的な台詞を話すシーンを散々入れて行く事になる。

 

これは敢えてやっていることであり。

 

映画を退屈にする工夫である。

 

哲学的には間違っていない。

 

それなりに芸大時代に哲学については学んだ。

 

結果として分かったのは。

 

哲学というのは現状、単なる言葉遊びになってしまっていて。何の社会的な意味ももたらしていないと言う事だ。

 

勿論今後哲学は、偉大な学問に昇華する可能性もある。

 

だけれども、少なくとも人の精神的な規範になる事は出来ていないし。

 

誰かの精神的な平穏を作る事も出来ていない。

 

深淵を覗くとき、深淵もまた此方を覗いているといった人物は。

 

自分が深淵に引きずり込まれてしまった。

 

そういうものだ。

 

というわけで、哲学的な台詞を散々役者に喋らせるが。

 

棒読みにならないように俳優達は必死にやっているが。

 

それだけである。

 

はいカット。

 

そう告げると、全員がぐったりした様子で休憩に入る。

 

そのまま次のシーンに入って貰うが。

 

まだまだ。

 

もっと苦しんで貰おう。

 

深淵に人を引きずり込むこの快感よ。

 

そしてこうして苦労した映画をどんどんつまらなくする編集時の楽しさよ。

 

更には敢えてつまらなくした映画を、凄い凄いと褒めている業界人どもの滑稽さよ。

 

いずれもが、高宮には最高の娯楽だし。

 

最後にそれら全部をひっくり返す事が、今から楽しみで仕方が無かった。

 

幾つかのシーンを撮影した後。

 

午後から剣術の指導役に来て貰う。

 

かなり気合いを入れて指導役は来てくれたので。真剣ではないにしても、模造刀を握る俳優も空気が変わったことを悟ったらしい。

 

良い事だ。

 

指導役には、珍しく理論的に説明をする。

 

「通り抜け様に斬り捨てるシーンを撮影します。 こういう風にすれ違うので、どう動くべきか俳優に指導してください」

 

「おお、分かりました。 こちらで全部指導していいんですな」

 

「お願いします」

 

うきうきの様子の指導役。

 

こんな風に全権を放り投げられるとは思っていなかったのだろう。

 

今までの研究成果を見せるべきだ。

 

そう思ったのだろう。

 

俳優達に、どう刀を抜くか。

 

どう斬られた方が倒れるか。

 

丁寧に全部自分で動いて見せて実演してみせる。

 

流石だ。

 

この人は実績があることを確認してから呼んだのだが、本当に出来る。

 

江戸時代にいても、普通に違和感なく混じったかも知れない。それくらい、決まっているのである。

 

今時和服で出勤してきた事からも、気合いの入り方は尋常では無いが。

 

剣を抜くときの気迫は確かに凄まじく。

 

今に蘇った剣豪そのものだった。

 

これはいい。

 

そう思って、指導を続けて貰う。

 

俳優も当然本職だ。これほどのプロに指導を受けたのは初めてだったのだろう。全員が、指導の様子にかなり熱を込めて見入っている。

 

何度か練習したいと日野に言われたので、許可する。

 

これほどのプロの指導を受ける機会。

 

俳優としては、見過ごせないと思ったのだろう。

 

まあ気持ちは分かる。

 

だから好きにさせる。

 

「こういう風に抜くんですか?」

 

「いや、もう少し低い体勢で、こう……」

 

「こうですか?」

 

「もう少し、初速を上げる事を意識して……」

 

指導は丁寧だ。

 

教える側も楽しいのだろう。

 

江戸時代のリアル剣術なんか研究していても、それはただの変人だ。誰もが見栄えがいいものを知りたがる。

 

二刀流とか、である。

 

二刀流は確かに格好がいいが。そもそも江戸時代にもっとも実際に刀を使ったのはヤクザ者だろう。

 

そういう連中が一切二刀流を使ったという記録はない。

 

それに強いなら、誰もが二刀で戦う。

 

二刀流で強い剣客もいたかもしれないが。

 

それはその剣客が素で強かったのであって、二刀流が強かったかというと別の話だろうと高宮は思う。

 

だからこそ、此処に本職の研究家を。

 

ずっと周囲に内心馬鹿にされつつも、研究を続けた人を呼んだことには意味があるのだが。

 

それを他人にいうつもりはない。

 

いずれにしても、今日は定時までこれをやらせるかな。

 

そう思っていたが。

 

流石に本職だ。

 

覚えが中々に早い。

 

「そうそう、それでかまわない。 それで……」

 

二時前ほどには、全員がだいたい満足出来る状況にまで仕上がったようだ。

 

勿論剣の速度とか、そういうのはどうしようもない。あくまで演劇だ。それっぽく見せるためのものだ。本当に強いかは別にどうでもいい。

 

現在でも居合いなどを実際に習得して、剣術などに知識を深める俳優もいるにはいるのだが。

 

それが栄えるか。

 

江戸時代の武士が実戦で使っていたかは別の問題。

 

リアルな動きを出来るかどうか、と言う点で及第点にいったのだ。

 

更にそれを、本職の研究家が満足するレベルで皆出来るようになった。

 

これでいい。

 

まあCGで台無しにするのだが。

 

それはそれである。

 

満足げな指導役には下がって貰い、幾つかのシーンを撮影する。そのまま、順番に撮っていく。

 

中々に迫力のある剣劇、とはいかない。

 

一瞬で斬り捨てられて、終わるシーンの方が多い。

 

プロレスなどでも、実際に効く技と、見栄えが派手な技は違う。

 

時代劇でのやりとりも同じだ。

 

一瞬で勝負がつく過酷な世界を、そのまんま表現する。それでいい。

 

「はいカット。 素晴らしい」

 

通り抜け様に一瞬で斬り伏せるシーンを撮り終えて、そんな風に口から称賛が出た。

 

驚いて日野が此方を見る。

 

高宮が、そんな風に褒めるのは初めてだと思ったのだろうか。

 

事実初めてだ。

 

今回の指導役は、実は井伊が探し。小野寺が交渉して連れてきたのだが。大正解だったと思う。

 

今後チャンバラが必要なシーンには必ず呼ぼう。

 

そう高宮は、決めていた。

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