謎の映画監督の物語 無の映画監督   作:dwwyakata@2024

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高宮は英語くらいぺらぺらです。

元々スペックは常人離れしているんですこの人は。

だからこそ、性格が最悪なのだともいえますね(にがわらい)


曇天
序、海外へ


流石にやらざるを得ないか。

 

世界的に権威がある、フランスの映画賞。

 

それで久々に日本人監督として賞を取った高宮は、壇上に上がると英語でスピーチを開始した。大賞ではなかった。そういう意味では目的の完全達成とはいかなかったが。

 

フランス語では無く、英語でである。

 

そして高宮が英語ぺらぺらである事を、驚いた人間も多いだろうなと思いながらも。

 

大賞に対する感謝を述べ。

 

短めのスピーチで壇上から降りた。

 

拍手が響く。

 

馬鹿馬鹿しい話だな。

 

敢えてつまらなく作った映画なのに、とうとう国際的な権威のある賞まで取ってしまった。

 

意識が高くなると、どうしてこう人間は客観性を見事に消失してしまうのか。

 

それがよく分からない。

 

いずれにしてもはっきりしているのは。

 

業界人というのはどこでも同じ。

 

自分を偉いと思い込むと。

 

どいつもこいつも徹底的に堕落する。

 

その事実だけだった。

 

ともかく立食パーティに出る。英語で話しかけられるが、それに対して丁寧に応じる。海外でも幽霊みたいな容姿だと思われた様子で。流石にぎょっとする者も多かったようだが。それでも話しかけては来る。英語が通じるというだけで、かなり話しかけてくる人間は増えるようだ。

 

なお、現地メディアは正直で。

 

幽霊が壇上に上がったとか書いて。

 

ブーイングを喰らっていた。

 

この辺り、どこの国もマスゴミは同じだ。

 

客観性を担保し。出来るだけ真実に迫った記事を書く。

 

それをやろうとする者は誰もいない。

 

勝手に真実を先に作り。

 

主観で歪曲しながら我田引水の文を書く。

 

それが記者というものの本質であって。

 

それは新聞というものが出来てから。

 

全く変わっていないものなのかも知れない。いずれにしても、海外メディアもゴミなのは変わらないようだった。

 

ホテルで、軽く日本と通信をしておく。

 

勿論、海外との通信料が危険な事は知っている。

 

通信料に関しての対策はしてきてある。

 

まあ最悪の場合でも、特に問題はないのだが。

 

今の高宮の個人資産は既に十億を超えている。

 

それだけ稼いでいると言う事だ。

 

まず連絡を入れたのは小野寺だ。

 

彼女には、会社の動向を見張って貰っている。

 

今、一番大事なタイミングだからだ。

 

「授賞式、フルタイムでテレビ放送されてましたよ。 もっとも殆どの人は動画サイトで見ているようですが」

 

「そ。 会社の様子は?」

 

「今の時点では右往左往ですね。 あっちこっちから祝辞が来て、それを捌いている状態です。 ヤクザとかからも祝辞が来ているので、弁護士が対応を協議しているようですね」

 

「それはよかった。 彼らに任せておいて」

 

ヤクザが花束を贈ってくると言う事は。

 

早い話が脅しだ。

 

今後コネを持つ事を強要し。

 

そしてつけ込んで金をむしり取る。

 

海外だと更に露骨で。

 

居場所を何時でも知っているぞ、という意味になる。

 

要するにいつでも殺せると脅している、ということだ。

 

重役などは青ざめるばかりで、何もできていないそうだ。

 

特に悲惨なのは専務で。

 

すっかり自信を喪失し、何もできずにぼんやりしているらしい。

 

小野寺には久々にテレワークでは無く会社に出て貰って様子を確認して貰っている。これは計画には、それだけ重要な転機だからだ。

 

続けて井伊に連絡する。

 

此方はもう少し専門的な話になる。

 

「弁護士達はどう話をしてる?」

 

「暴力団が動きを隠さなくなってきてる。 配給会社と何が何でも関係を持って、金をむしりとりたいらしい。 今警察と連絡をして、マル暴が動いてる」

 

「そっか。 それで上手く行きそう?」

 

「こうなることは分かっていたので、事前に幾つか手を打っておいた。 だから警察はノータイムで動いた」

 

流石である。

 

褒めるが、井伊は喜ばなかった。

 

「私の仕事、私の居場所。 守るために最善を尽くすだけ」

 

「ありがとう。 そのまま頼むよ」

 

「ん」

 

通信を切る。

 

さて。此処からだ。

 

受賞関連のアレコレを全て終わらせて。

 

帰国する。

 

そうなれば、業界人共が面会を求めてくるはずだ。それらを捌くまでは、ちょっと色々と動けない。

 

多忙になってしまうが。

 

まあこればかりは我慢しなければならないだろう。

 

コレを乗り切れば、最終計画に駒を進められる。

 

ついに海外での大権威賞を取った。

 

これによって。

 

そんなものには何の価値も無いと、照明するための下地がついに整ったのである。

 

帰路の飛行機に向かう。

 

空港でテロが起きる事もなかったが。

 

しかしながら、空港の周辺などではデモが目だった。

 

どうやら欧州も、色々と情勢が怪しくなってきているらしい。

 

知ってはいたが。

 

実際に見てみると、ろくでもない事がよく分かった。

 

本当にもう、欧州は何でも凄いと考えている人間達の滑稽さよ。

 

実際に来てみて、その駄目さ加減が良く分かる。

 

欧州が駄目なのではない。

 

現在の文明が駄目なのだ。

 

世界中どこに行ってもこれは同じだろう。

 

よく日本叩きをしている人がいるが。

 

それならいい国を挙げれば良い。

 

その国の人間から、袋だたきを喰らう事になるだろう。

 

実際に現地を見てみて、高宮はそれを実感できていた。

 

空港に到着。

 

幽霊みたいな異様な出で立ちが原因か、二回職質を受けたが。顔を見せると、ある程度理解はしてくれたようだ。

 

それにペラッペラで英語で応じたので。

 

それもあったのかも知れない。

 

いずれにしても帰りの飛行機には予定通り乗る。

 

空港は見かけだけは綺麗だった。

 

しかし、システムは雑然としていたし。

 

何よりも、明らかに悪いのが何人も入り込んでいた。

 

一目でその辺は分かる。

 

だから、此処も治安が良いわけではないし。

 

うっかりうたた寝なんかしたら、それこそ身ぐるみ剥がされるだろうなと、覚悟はしていた。

 

飛行機に乗ってからも、これは安心は出来ない。

 

それは当然の事だと思う。

 

国内便だと寝ていても余程の事がない限り大丈夫だが。

 

そもそもこれでは、空港の職員そのものが安心できないだろう。

 

そのまま飛行機に乗り。

 

無言で帰路を行く。

 

途中、スマホを触る訳にもいかないので。

 

窓際の席だったのを良い事に。

 

そのまま、窓の外をぼんやり見ているしかなかった。

 

二度、飛行機を乗り継いで。

 

日本に到着。

 

運良くと言うべきか。

 

何とか飛行機で荷物を盗られることはなかった。

 

それだけで可とするべきだろう。

 

まあ賞は取った。

 

これで充分だ。

 

次の映画で大賞を取ればいい。

 

今回、海外に高宮映画は。正確には、海外の意識高い連中にも高宮映画は、良さそうに見えると言う事。

 

そして海外SNSの様子を確認して。

 

海外SNSでも、高宮映画は「見る睡眠導入剤」「凄まじい虚無」と表現されている事が確認でき。

 

評論家と一般ファンの間で。

 

完全に認識が乖離していることが、良く理解出来た。

 

はっきり言って、どこの国でも人間なんて同じだ。

 

良く文化が違うとかそういう話があるが。

 

それは単純に、その地域の治安とかの問題であって。

 

政治が上手く行っているとか。

 

もしくはそもそも政治とかの概念がないのだとか。

 

そういう話なのだとよく分かる。

 

恐ろしい事に。

 

これだけ政治家は無能揃いなのに、日本の政治は上手く行っている方なのだろう。

 

だから比較して安全だし。

 

比較して人は死なない。

 

ただそれはあくまで比較しての話だ。

 

不幸になる奴は幾らでもいるし。

 

邪悪の権化はなんぼでも闊歩している。

 

とりあえず、日本最大の空港に到着すると。

 

スマホの電源を入れて。

 

同志の皆に連絡を入れておいた。

 

メールで連絡を入れると。

 

後はそのまま、返事もまたずに自宅に帰る。

 

流石に今回ばかりは自家用車で来るわけにもいかなかったので、帰りは電車を使う事になる。

 

電車の混雑は一時期に比べるとかなり緩和されているが。

 

それでも業病の感染爆発があったばかりだというのに。

 

随分と混んでいるように見えた。

 

馬鹿馬鹿しい話だなと思う。

 

のど元過ぎれば熱さを忘れるとか言うが。

 

忘れるのが早すぎるのだ。

 

鶏は一時期バカの代名詞みたいに扱われていたが。

 

鶏に失礼だなと、この電車の有様をみて思う。

 

人間の方が余程問題まみれだ。

 

高宮は呆れながら。

 

不審者全開の姿の自分が、何も周囲から言われず。無言で帰宅できたことを、ぼんやり思うのだった。

 

自宅に着いてから、後はメールを確認。

 

お疲れ様とか、そういうメールしか来ていない。

 

要するに重要事は起きていない、ということだ。

 

そのままシャワーを浴びる。

 

そういえば、高級ホテルなのに泥みたいな水がでて、海外ではびっくりさせられたっけ。苦笑しながら湯船に浸かって。

 

落ちそうになるのを我慢して。

 

そして、何とかベッドに直行した。

 

 

 

夢を見た。

 

随分とはっきりした夢だ。

 

深淵から這い出た触手の怪物となった高宮。

 

文字通りの這い寄る混沌だ。

 

そう噂している奴もいたなあ。

 

そう思いながら、逃げ惑う人間共を片っ端から喰らっていく。

 

ばりばりと凄い音がするけれど。

 

ここまで巨大な邪神に喰われると、恐怖も痛みも一瞬なんだろうなと思うと、ちょっと面白かった。

 

そのまま大量殺戮を続けながら東京に進撃。

 

反撃に出て来た米軍も自衛隊もまとめて蹴散らすと、何故か避難もしないで電車出勤しているサラリーマンどもをまとめて食い荒らす。

 

電車に迫ってやっと逃げようとし出す様子を見て。

 

随分とのんきなことだなと苦笑するが。

 

そういえば海外の映画でも。

 

似たような描写があったのだったか。

 

そのままバリバリと人を食い荒らし。

 

東京が無人の野になった辺りで。

 

天に向かって。いや月に向かって吠えて。

 

そして目が覚めた。

 

あまり内容は覚えていない。

 

強烈な明晰夢だったような気がするのだけれども。どうしてか、内容はさっぱり覚えていなかった。

 

まあいい。

 

今日は念のために休みを取っているし。病院にいかなければならない。

 

海外にいったのだ。

 

帰宅したなら、一応感染の可能性がある病気の検査は、全てやっておくべきだろう。

 

そのまま病院に朝一に出向く。

 

老人がかなり来ていたが。

 

それはそれで。

 

そのまま精密検査をきっちりうけ。

 

狂犬病から何から、病気は貰っていないことを確認。

 

一日は潰れてしまったが。

 

それでも自分の安全は確保できたので、可とすることにした。

 

自宅でテレビ会議をする。

 

ちゃんと、皆集まる。

 

そろそろ日野も会議に加えたい所だが。

 

まあそれはそれでいいだろう。

 

小野寺が、まずは発言した。

 

「授賞式、みました。 なんというか、凄く退屈そうだなと思いました」

 

「ああ、分かるか流石に」

 

「ええ、それだけが取り柄ですから」

 

意思疎通の達人である小野寺は、「コミュニケーション」がーとか抜かしているような自称「社会常識がある」人間なんかとは桁外れの理解力と伝達力の持ち主である。これは才能に依存するもので、努力してどうにかなるものでもない。

 

小野寺には今後も頼りになるだろう。

 

「やはり海外も同じ状況だ。 意識が高い人間というのは、芸術を簡単に楽しいものから金づるに変えるし。 面白いものを歪んで認識する」

 

「それが確認できたと」

 

「ああ。 次は大賞もこの様子なら取れる。 海外向けに調整をするだけだ」

 

「ふふ、頼もしい」

 

小野寺の笑顔はそれなりに素敵だ。

 

相応にもてたというが。

 

他人の気持ちが嫌になる程よく分かるから、男とつきあうのなんてうんざりだったのだろう。

 

勿論スクールカースト内での地位確認に必死な同世代の女子なんて、関わるのも馬鹿馬鹿しかっただろう事は容易に想像がつく。

 

出来すぎるのも大変だなと。

 

高宮は他人事のように思っていた。

 

うちはそういう異能持ちばかりなのに。

 

「井伊はどう思った?」

 

「どうもなにも、腐臭がぷんぷん」

 

「まあ、そうだろうね」

 

「はっきりいって、もう権威は既に地に落ちている」

 

同感だ。

 

海外の賞というとありがたがる人間が多いが。

 

例えば有名なファッションショーなどでも、近年は実用に適する以前の奇怪極まりないものを着たり。

 

変な組み体操みたいなのをして練り歩いている様子が有名になっている。

 

化け物行列、という揶揄がされているほどで。

 

文化が先鋭化しすぎると。

 

ああなるという良い見本なのだろう。

 

映画の業界人が、日本の状況と大して変わらない事は今回の賞で確認できた。これで充分である。

 

ただ。海外にもコネが出来た以上。

 

最終フェーズへの移行をするのは、最後の最後にしたいところである。

 

いっきに全世界まとめてひっくり返したいところだ。

 

腐った権威を。

 

文字通り深淵に引きずり込んでやる。

 

全世界の映画ファンの正気度もろともにだ。

 

邪悪な計画かも知れないが。

 

これで色々と世界は変わる。

 

それでいいのである。

 

先鋭化し。

 

腐りきったものは、改革が必要になってくる。

 

娯楽でいいのに。

 

それを変に勘違いした意識高い者達がねじ曲げ。金のなる木に仕立て上げようとした結果。

 

人権屋やらの詐欺師がどんどん寄ってくるようになった。

 

改革はしなければならないだろう。

 

石山が咳払い。

 

「七カ国の新聞で今回の受賞について報道していました。 まあ今までも日本人監督の受賞はあったんですが、それでもあまり海外では話題になりませんでしたので」

 

「ふうん」

 

「すべて日本語訳しておきました。 送っておくので、目を通しておいてください」

 

「新聞なんてどうでもいいけどね」

 

それは分かっていると、石山はいう。

 

まあそうだろう。そういう事を、石山は先読みしていたはずだ。

 

「今、SNSなどでの意見をまとめています。 一週間くらいはかかりますので、ちょっとまってくださいね」

 

「よろしく」

 

後は軽く色々と話した後、解散とする。

 

さて、明日はさっそくスタジオの下見だ。

 

次にとる映画は刑事物である。

 

まあ、実際には刑事物と称するナニカなのだけれども。それはそれとして、刑事物としておく。

 

疲れは取れきっていないが、まあいいだろう。

 

まだまだ計画の執行には遠い。このまま、頑張らなければならなかった。

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