謎の映画監督の物語 無の映画監督   作:dwwyakata@2024

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アルティメットコメディシリーズ。

勿論無の映画監督が、分かっていてつけているシリーズタイトルです。

最大級の皮肉ですハイ。


4、クソ映画は映画館を蹂躙する

またアルティメットコメディシリーズの新作が出た。

 

そして「業界人」が大絶賛している。

 

映画マニアの小野寺晴は、無言で映画館に通っていた。

 

周囲からは陽キャの権化とか言われ。女子の陰湿なコミュニティでもさらっとカーストに組み込まれるのをかわし。

 

話しやすいけれどなんだかつかみ所がないと言われて来た小野寺は。

 

クソ映画の視聴を何よりの趣味にしていた。

 

エドウッドの作品はコンプしているし。

 

他にも近年は、クソ映画監督として有名な人物の作品は色々とコンプしている。

 

一人だけいる親友(他は人間関係を円滑にしていると見せかけるためだけの知人である)には趣味を明かしているが。

 

それ以外に話すつもりはない。

 

信頼出来ない相手に趣味を明かすというのが致命的な事である事は。

 

幼い頃から小野寺は、陰湿なコミュニティ内部での出来事を見て、良く知っていた。

 

それがどんな趣味であっても。

 

カースト上位の人間が気持ち悪いと一言でも口にすれば、以降は虐めの基点になるのである。

 

ヴァイオリンとかピアノとかでもそうだ。

 

気持ち悪いで無くても偉そうだ、とかでもいい。

 

いずれにしても相手の機嫌を損ねれば、一瞬で虐めの基点になる。

 

どんな趣味でもそれは変わらない。

 

そんな人間と、腹を割って話す気はない。

 

だから、つかみ所がない人間を小野寺は演じ続けているし。

 

それでいながら陽キャの権化と言われる程に、交友関係は広かった。

 

近年は高宮監督の映画は必ず映画館で見るようにしていたが。

 

既にエドウッドの転生とか言われている(だいぶ小野寺に言わせると違うが)高宮の映画のヤバさは知られていて。

 

映画館では、周囲から寝息が聞こえる。

 

しかもガッラガラ。

 

これでは映画館としても、頭を抱える他無いだろう。

 

そして映画の内容だ。

 

なんと江戸時代なのに、髷を結っている人物や日本髪に頭を固めている女性達が、民主主義について哲学的な会話をかわしている。

 

時々意味不明な演出が入るため。

 

これははっきりいって、役者達は正気度をゴリゴリ削られただろうなと、見ていて同情した。

 

それに小野寺は何となく分かるのである。

 

本当に駄目な映画監督は、自分が作った映画を素晴らしいと思い込んでいる節があるし。現場のスタッフもそう思い込んでいる事が多い。

 

この映画を撮った高宮葵は。

 

恐らくこれを、意図的に撮っている。

 

というのも、クソ映画特有のガバガバ脚本と言うには、やたらと細かい所が丁寧なのだ。

 

また、チープなCGも使っているが。

 

それが不愉快にならない程度に、配慮をしながら利用されている。

 

この辺りも、見ていてそれははっきり理解出来る。

 

無言で映画を見終える。

 

耐えられなくなって途中で映画館を出て行ったのが半数。

 

開始数分で寝落ちして、以降は終了までぐっすりだったのが残り半数。

 

ずっとおきて見ていたのは、小野寺だけだった。

 

スタッフロールを見るが、芸能人だのアイドルだのは一切出ていない。

 

正解だと小野寺は思う。

 

何が客寄せだかしらないが。

 

演技指導もまともに受けていない上。

 

自分を役者より上だとか思い込んで、偉そうに振る舞っている芸能人なんか、使わない方が映画のためにはいい。

 

まれにそこそこ演技が出来るものもいるが。

 

それはあくまで例外だ。

 

そこだけは、高宮監督の映画はいいと思う。

 

それ以外は、小野寺の予想では。

 

全て意図的にカス映画にしていると思う。

 

これは、まだ高校生でありながら。

 

クソ映画のマニアという、業が深い趣味に足を突っ込んでしまった小野寺が出した結論である。

 

既に千本近いクソ映画を小学生時代から意図的に見て来た小野寺は。

 

その殆どが、監督が自分で傑作だと思い込んで作ったか。或いはどうでもいい仕事と思い込んで作った事を知っている。

 

特に漫画の実写化映画などは後者が多い。

 

この高宮の気が狂った作品の数々は。

 

明らかに前者でも後者でも無いと、小野寺は結論していた。

 

映画館が明るくなって。

 

熟睡していた客の何人かはおきて。そのまま帰り始める。

 

小野寺はそこそこのロングヘアにしている黒髪を書き上げると、幾つかメモを取ってから、映画館を後にする。

 

小遣いはいつごろからか。

 

学校で必要とされるような必須品を買う以外は。殆どクソ映画のDVDやらBlu-rayやらを買う資金へと変わっていた。

 

これについては、一人の親友以外には話していない。

 

今後も、親友が増える機会は恐らくないだろう。

 

知人が増える事はあっても。

 

自宅に向かう電車に揺られながら、小野寺は思考を巡らせる。

 

陽キャのフリをしているのは、情報を集めるのに都合が良いから。

 

余所では素の顔なんて一切出さない。

 

小野寺にとってスクールカーストを構成してキャッキャと喜んでいる周囲の人間は猿にしか見えない。

 

これは傲慢でもなんでもなく。

 

人間の利点を捨てた愚かしい行動を取っているから、だ。

 

特にガチガチにスクールカーストでの上位下位にこだわる女子生徒は、特に酷いと思っているので。

 

周囲に絶対に隙は見せなかった。

 

無言で幾つかのメモを取っていると。

 

ふと思いついた事がある。

 

家に帰ってからまとめるとしよう。

 

そう思うと、後はスマホを弄ってSNSで時事問題を仕入れながら。

 

小野寺は同時並行で、文章を脳内で組み立てていた。

 

 

 

(続)

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