謎の映画監督の物語 無の映画監督   作:dwwyakata@2024

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4、おぞましいまでの虚無

高宮の映画。

 

本格水軍映画が公開され、発表される。

 

客はたくさんくる。

 

映画館にはたくさんの客が来たが。

 

なんと中には、枕まで持参している強者もいた。

 

既にマスコミが何を言おうが、高宮映画の評判は決まっている。

 

見る睡眠導入剤。

 

不快にならないクソ映画。

 

快眠が確約される二時間。

 

以上である。

 

水軍なんて、一部の歴史マニア以外はどーでもいいのである。結論から言うと、これがフランスの映画賞狙いでなければ、それこそ水軍もCGで撮影してしまっても良かっただろうと高宮は思っている。

 

客は水軍の緻密な設定なんて求めていない。

 

一部の自称マニアは求めているかも知れないが。

 

そんなものを満たしたところで。

 

映画は面白くなどならない。

 

そういう事だ。

 

それを、高宮が虚無の極限映画を撮る事で、示す。

 

ほら自称ガチ勢。喜べよ。

 

お前達が望んだ、最新の説に基づいた水軍の映画だぞ。

 

そうやって公開してやる。

 

勿論、それにガチ勢が喜ぶ事は無い。

 

開始三分で夢の世界に強制連行だからである。

 

以降は映画が終わるまで、映画館はみんなすやすやの世界であり。

 

夢魔が存在して、様子を見に来たら。逆に何があったらこうなるかと、人間共の様子を見て困惑してしまうだろう。

 

一部、必死に起きて映画を見る奴がいても関係無い。

 

まあクソ映画マニアやクソ映画ブロガーとかだろうが。

 

そういう強者でさえ。

 

見ていて全くなんにも頭にも入らないし理解出来ない。

 

それがこの恐るべき映画の実態だ。

 

それをありがたがるのが現在の業界人である事もしっかり理解している。

 

高宮の愉悦が籠もった虚無。

 

見る深淵の邪神。

 

それが、この水軍映画なのである。

 

今回も興行的には大成功だ。

 

まあそもそも、睡眠障害が国民病になり。

 

それに対して、未だに偏見がまかり通っている状況である。

 

睡眠障害を少しでもマシにしようと、高宮映画のDVDを買う人間も激増しているという話で。

 

増産が追いつかないそうである。

 

海外でも概ね評価は同じで。

 

英訳したものが(英訳するのは本当に大変だっただろうなと苦労をしのぶ)既に発売されているそうだが。

 

散々罵声を浴びせているブロガーも。

 

映画の内容については一切語れないという不思議な代物で。

 

むしろ凄くよく眠れたとか。

 

下手な睡眠導入剤よりもよっぽど効くとか。

 

好評の方が多い有様である。

 

邦画としての興行収益は、早速この年のトップを記録。

 

以降も、ずっと海外の大物映画と渡り合い続けた。

 

最近は客が来るという事で、どこの映画館も高宮映画を何かしら流しているし。それを見て眠りに来る客もいるので。

 

誰もが分かっている。

 

これは虚無であり。

 

評判は間違っていないと。

 

今の時代。評判なんて全く宛てにならない。

 

SNSは当然として。

 

大新聞が書く情報ですら一切合切宛てにならないのが真実なのだ。

 

だからこそ、口コミで拡がり。

 

本当によく眠れる代物だという事が判明した高宮映画は。

 

それだけで、大きな価値があると認められたし。

 

こうして、リピーターも多い。

 

勿論内容なんて、誰ももはや気にもしていないし。

 

興味すらも持っていない。

 

また新しい睡眠導入剤が来た。

 

それくらいにしか思っていないのである。

 

それでいい。

 

高宮も、そう思われるようにして、映画を作っている。

 

国内では、大驀進を続け。

 

海外版の映画も早めに公開された。

 

噂は既に海外にも伝播していて。

 

良くこういう映画では嘲笑とか酷評とかのレビューを上げて調子に乗るブロガーとかが出てくるものだが。

 

そういう連中さえ困惑していた。

 

全く何が何だか分からないので、批判のしようがないし。

 

そもそも開始三分で寝てしまうし。

 

起きていても内容が全く頭に入らないから。

 

批判どころではないのである。

 

ポリコレだのなんだのに搦めて叩こうとしていた連中もいたようだが。

 

案の定其奴らも、実際に映画を見に行ってみたら開始三分で撃沈され。

 

以降は何もできずに、呆然と映画館から帰るだけだった。

 

ふふふ。

 

まさに計算通りだ。

 

そして、これがフランスの映画賞をとったら。

 

最後の計画へと移行する。

 

全てが終わる。

 

この腐りきった業界も。

 

自称ガチ勢が支配する業界のあらゆる利権も。

 

何もかもがひっくり返る。

 

長年かけて築かれてきた権威なんてものは、とうに腐敗しきって崩れ落ちている。

 

だから、高宮がその根元を掘り崩し。

 

盛大にゴミの山を倒壊させてやるだけだ。

 

後少し。

 

笑うな、堪えるんだ。

 

そう思いながらも。

 

高宮は、連日の大盛況を見て。

 

ほくそ笑む自分を抑えるのに、苦労し続けていた。

 

 

 

(続)




虚飾の城

砂上の楼閣

そこに高宮が、ついにスコップを入れる時が来ました。
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