謎の映画監督の物語 無の映画監督 作:dwwyakata@2024
こ の 物 語 は フ ィ ク シ ョ ン で す。
ポリコレの大物活動家が逮捕されたことで。一気に連鎖して逮捕が続く事になった。
SNSでは暗黒時代だの何だのわめき立てる輩がいたが。
誰にも相手にされなかった。
まあそれはそうだろう。
フェミニストやらポリコレやらが、如何に文化を滅茶苦茶にしてきたか。その程度の事は、小学生でも知っている。
ヒスを起こして喚くだけの連中である。
相手にする価値も無い。
SNSに触れていれば、半年もすれば分かる事である。
そして人間が、まず変わる事がない生物である以上。
変わることを期待して。
おかしな思想にはまってしまった人間を諭しても無駄だという事は、大半のネットユーザーが理解している。
まあ多くは傷ついて理解するのだが。
それはそれ。
これはこれだ。
いずれにしても、どんどん文化を汚していた連中が消えていく。
それはとても良い事だった。
裏で膨大な金が動いていたことも発覚。
人権だの何だの口にしながら結局金か。
そう嘲笑する声が広まり。
結果としてポリコレもフェミニズムも、その「権威」は文字通り地の底に落ちた。
本来、自浄作用が働かなければならない事だったのだ。
それでも、誰もやらなかった。
高宮は映画の範囲内でやった。
それが連鎖した。
ただそれだけの事。
いずれにしても、崩壊の速度は凄まじく。
どんどん文化を蝕んでいた黒い影は、その影響力を落としていく。
これについては、掛け値無しに良い事だと思う。
いつの間にか窮屈極まりなくなっていた映画界隈は。
とても静かで。
過ごしやすい場所になっていた。
膨大な、実験的な作品があふれかえる。
それには外れの作品も多かったが。
それでも、なんというか。
それぞれが奔放な実験をやってみようという意図があった。
映画には歴史がある。
誰かがやった事が、大量にある。
だが、それでも誰もやらなかったことはある。
たくさんたくさんある。色々ある。
それらを、インディーズの監督達は果敢に挑戦し。試してみて。失敗しても苦笑いして。次の挑戦を行うのだった。
これでいい、と高宮は思う。
文化は娯楽だ。
そこに貴賤はない。
いつのまにか貴賤が生じ。
そして権威を気取る奴が出てくる。
だからおかしくなる。
高宮は、誰もが楽しめるのが文化だと思っている。誰かが独占した時点で、文化は腐敗が始まるとも。
実際問題、一部の人間だけが楽しんでいる文化が、発展性を残していた試しがあるだろうか。
既にそれは文化としては完全に停滞し。
死んでいるのと同じだ。
昔は一部の金持ちが、文化を囲うことがあった。
今はガチ勢とか自称する愚かな身の程知らず達が、攻撃的な言動で新規のファンを遠ざけ。文化を囲うことがある。
そうやって囲われてしまうと文化は悲惨だ。
新しいものを作ろうとしても。
独占していると勘違いし。更には自分を特権階級と思い込んでいるガチ勢だの老害だのから袋だたきにされる。
映画界隈で散々見て来た光景である。
今では一部のジャンルの小説やゲームでも見られる。
はっきりいって、度し難い不徳であり邪悪だ。
だから、焼き払った。
それだけだ。
高宮は、また新しい映画を公開し。
わっと客がきた。
映画業界は衰退していない。
そういう声も上がっているが。
高宮はノーコメントだ。
そのまま邪悪な人権屋が跋扈し。完全に年老いて客観性を失った権威がデカイ顔をして居座り続けたら。
いずれ手が施しようがないところまで、映画界隈は落ちていただろう。
高宮が焼き払った時点で、既にギリギリだったかも知れない。
いずれにしても、今回の映画も一兆円を稼ぐ事はほぼ確定のようだ。
別に稼ぐ額はどうでもいいが。
いずれにしても、高宮は今後も、面白い映画を作っていきたいと思うし。
意識高い系と迎合もしない。
ましてや、自分は巨匠だ等とは思わないし。
他の映画監督にも敬意を払う。
特に表現の仕方が違う相手には、嫌いであっても一定の敬意を払う。
そのつもりでいた。
人権屋が持ち込んだ概念は、それら全てを否定するものだった。
だから破壊しなければならなかった。
しかも、その概念は金儲けを基本として持ち込まれたものであり。カルトとも通じるものだった。
だから排除しなければならなかった。
高宮は、引退も考え始めているが。
まだ止めた方が良いだろうと、井伊には言われている。
新しい映画界隈は、灰の中から芽が出始めている状態だ。
此処で、事態を牽引した高宮が抜けるのは。
色々と致命的だというのである。
まあ、それなら仕方が無いだろう。
北条は、副監督として学んでくれただろうか。
これからも、他にも出来そうな人材がいたら。副監督として誘うつもりだ。
高宮に教えられることがあるかはよく分からない。
だけれども。
もしも相手が望むなら。
受けるつもりだし。
もしも何か高宮から学べるものがあるのなら。
学んでいってほしいとも思う。
それくらいのことだ。
何も学ぶものがないのであれば。その時はその時。
高宮は自分を巨匠だなどとはおもっていない。だから、それもいいだろうと考えている。
いずれにしても、映画の撮影が終わって少し疲れた。
一週間ほど、休憩することにする。
配給会社は、すっかり小野寺が回しているので。
もう小野寺に社長になって貰おうかと考えている。
意思疎通の達人である小野寺だが。
本来だったら、とっくにブラック企業ですり減らされて、潰されてしまっていただろう。
だが、高宮と偶然出会えた。
今後も、その類い希なギフテッドを最大限まで生かして欲しい。
だから、社長が適任なら。
それはそれでいいだろう。
何、今の社長にも充分な退職金はくれてやる。
それで充分の筈だ。
温泉に出向く。
たまに足を運んでいる温泉だ。
マスゴミもまだ此処は嗅ぎつけていない。
静かな温泉だし、予約を入れないと入れない場所ではあるのだけれども。
効能は抜群。
ただあまり評判はきかないので。
単に高宮の体質と、相性がいいだけかもしれない。
地熱で体を温める施設もある。
それでゆっくり休む。
しばらくねむって、とにかく疲れを取っていると。
スマホに連絡が入っていた。
小野寺からだ。
なんだか映画賞を作るので。
それの審査員をやってくれないかとかいう話が入っているらしい。
高宮個人での人材発掘はするが。
残念ながら、映画賞の審査などするつもりはない。
それについて伝えると。
そういうと思っていたと言われた。
まあそうだろうな。
小野寺は、良く高宮の事を理解している。恐ろしいくらいに、である。多分両親なんかよりもずっと。
これくらい人の事が見えていると。確かに恋愛恋愛言っている周囲の人間が、馬鹿馬鹿しくなっただろうし。
スクールカーストなんか猿山にしか見えなかっただろうなと思う。
とりあえず、断りは小野寺から入れて貰う。
休暇中すまない、と小野寺は言ってくれたので。
それだけでも嬉しかった。
さて、また休暇を続行だ。
何もかもを焼き尽くす事は終わった。
後は出来る範囲で。
腐りきった野を焼いた後。芽吹くものをどうにかしていきたい。
それはあくまで、自分の手で出来る範囲で。
利権や何やらには関与しない。
そんなものが出張ってくるから、文化は腐敗する。
故に、前例は作っておかなければならなかった。
今度は外からSPだ。
連絡がスマホに来る。
気がつくと、数時間ほどねむっていたようだった。
「失礼します。 外に不審者がいます」
「ライフルで狙撃とかしようとしているとか?」
「いえ、恐らくは何処かのマスコミの記者でしょうね。 取り押さえておきますか?」
「そいつに全員掛かりにならないようにね。 こっちの守りがおろそかになると困るし」
SPもプロだが。
その辺は、一応注意喚起しておく。
ほどなく、やはり記者だったらしいのが捕まり。
そのまま、連れて行かれたようだ。
まあ世にも恐ろしいおしおきをされるのだろう。
はっきりいってどうでもいいが。
そのまま、再び休む。
ずっと戦い続けてきたのだ。
表には見えない形で。
高宮はずっと遊んでいる。
そう揶揄している奴がいた。
何の努力もせずに、金だけ稼いでいる。
そういう揶揄もある。
だが、そういう連中は。高宮が半生を賭けて念入りに計画を立てていたことなど、知る筈もない。
だから、はっきりいって、鼻で笑う気にもならない。
平均的な人間は、主観でしかものを判断出来ない。
多くの場合は、それは自分が見下した相手に向けられる。
見下している相手がやったことは、全て無駄な努力。
見下している相手がいったことは、全て嘘。
そう考えるのが、平均的な人間。
だから、高宮を揶揄している輩は。
高宮を見下している人間だ。
そして人間は変わらない。
一度相手を見下すと、絶対に相手への評価は改めない。
そういう生物だ。
だから高宮もそんな連中にはなんの興味も持たない。
せいぜい人を見下しながら、己の主観だけの狭い世界でのたれ死んで行ってくれ。そうとだけしか感じなかったし。
高宮の手が届く範囲内は何もかもを焼け野原にする事に成功した今は。
負け犬の遠吠えを聞いているだけにしか思えず。
むしろ失笑が浮かぶだけだった。
数日、体を温泉で休めると。
仕事に戻る。
次の映画だ。
生きている間に、出来るだけ映画を作っておきたい。
後発で、自分以上に稼ぐ監督が出てくるかも知れないが。
その時はその時。
むしろ祝福したい。
あくまで高宮は、自分が作りたい映画を。自分の資産から捻出して、作っていくだけである。
それはどうあっても低予算映画の域を出ないが。
それでも工夫次第で幾らでもやりようがあることを、高宮は世に示した。
それだけで充分だ。
高宮が作った俳優事務所は、大部屋俳優として不遇を受けていた人も最近は採用し始めている。
主に面接では無く引き抜きが主体になりはじめていて。
政治力がなかったり。
資金力がなかったりで、冷遇されているのに実力はある俳優を抜擢する事に終始していた。
そして高宮が、今では小野寺が事実上回している配給会社の映画監督に回す。
彼らも出自がしっかりしていて安心して使えると言う事で、安心して俳優達を映画に出しているようだった。
事務所の俳優は既に百人を超えている。
これからは、色々な俳優を使って。
様々な映画に挑戦していくことが出来るだろう。
とても良い事だと、高宮は思う。
事務所に出向く。
事務所を普段運営しているのは、誠実なことだけが取り柄の人物だ。
とにかく不正をしないので、小野寺が抜擢した。
経営手腕は凡庸だが。
とにかく不正をしないので、それでいいと思う。
そのまま、彼に案内して貰い。
次の映画で必要な役のリストを見せる。
まあ一人は日野で確定なのだが。
リストを見せると、事務所の支配人はしばらく考えた後、必要な人員を連れてくる。
顔合わせをして、軽く話をし。
役について出来そうか確認。
本人の意思を尊重する。
そして、同意がとれたら、映画に出て貰う。
俳優はOK。
次はスタジオだ。
スタジオを既に幾つか手持ちの資産で買収した高宮だが。
それでも、まだまだ映画によってはセットが足りないと感じている。
勿論普段は別の監督にも使えるようにしているけれども。
こういう事を始めると。
金は幾らでもいるんだなと、少し寂しくなる。
次回撮る映画は、ある戦国大名の物語だ。
近年有名になってきた戦国大名で。
戦国時代最弱とも言われる人物である。
とにかく、勝てた試しが殆ど無い戦国大名であり。
それでいながら領民には何故か慕われ。
何度も何度も城を奪われながらも。
文字通り不死鳥のように再起した。
その生き様から、近年は色々な意味で有名になりはじめており。
有名になる前から、この戦国大名を映画にしたいと思って脚本を温めていた高宮は。
今回、ついに映画の主役に抜擢する事としたのだった。
まあ、そういう不思議な大名だし。
俳優達が二の足を踏んだのも仕方が無いとはいえる。
城はCGでいいだろう。
今の時代、殆どの時代劇で、城を移すときに姫路城を使っているように。
実物と違おうがどうだろうが、殆どの人間は気にしないのである。
スタジオに入る。
SPもついてくるので、多少窮屈だが。
相応に資産があるので。
自衛はしなければならなかった。
移動中に、何度か尾行があったが。
SPによると公安だそうだ。
高宮は保有資産が尋常では無いこともあるし。
警察ともコネが幾つかある。
まあ日本の警察は、上層部を除けば有能だ。
だから、その程度の事はすぐに掴めると言う事だろう。
公安が見張っているというのは、何かで逮捕してやろうという意図があるのではなく。
お前の事を見ているぞ、というわけで。
牽制をしているらしい。
まあどうでもいいけど。
そのまま、スタジオを幾つか見て回った頃には。
その日の仕事時間は終わっていた。
帰宅する。
次の映画の撮影を開始できるのは、恐らくだがもう一週間以上先になるだろうが。
それでも、高宮の驚異的な稼ぎをたたき出す映画の撮影としては、初動はかなり早いほうである。
特にスポンサーがいないという事が大きい。
挨拶回りだの利害の調整だのが必要ないので。
その辺は気にする必要もない。
更にスタジオ関係も、もう高宮がオーナーである。
この辺りも、幾らでも融通が利く。
ただしそれで暴君になってしまってはいけないから。
他の監督も使えるように、きちんと配慮しなければならないが。
「高宮監督、よろしいですか」
不意に、メールがスマホに届く。
北条からだった。
「次の映画を撮影することになりました。 以前は副監督として勉強させていただいて、感謝しています」
「いやいや、別に。 何か得るものがあったのならいいのだけれども」
「色々勉強になりました」
北条は誠実にどう勉強になったのか、話をしてくる。
まずスケジュールの組み方。
徹底的にスケジュールは調整してあるので、多少のつぶしがきく。そのつぶしがきくやり方も、勉強になったという。
俳優を怒鳴ったりせず、丁寧に接して演技についても指導は論理的に行う。場合によっては意思疎通のプロを使ってそれを行う。
セットなどについて。
あらゆる工夫をすることによって、予算を圧迫する。
また、CGについても的確な場所で使う事によって、無駄な予算の消費を抑える。
他にも脚本の作り方や。
色々な小道具の使い方など。
勉強になる事はたくさんあったそうだ。
そう言われると照れるが。
最後に、ただひとつと言われた。
「高宮監督の心は良く分かりませんでした。 作品で表現したい事とかは分かったのですけれども……」
「心ね……」
「聞かせていただきたいです。 高宮監督にとって、映画とはなんなんですか?」
「好きなもの。 この世で一番」
そうなのか、と北条は納得出来ない様子だった。
だが、それは若いからだろうと思って、笑って流す。
そもそも、好きは人によって違う。
それを言い出したら、きりが無い。
好きの解釈について話し始めたら、絶対に喧嘩になるし、無駄な争いになる。
事実今でも、人権屋どもが動いているでは無いか。
自分の主観で好き嫌いを判断し。それを正しい間違っているに直結させるバカ共を煽り。
自分の手下として活用している。
高宮は、好きを他人と共有するつもりは一切無い。
今までもそうだったし。
これからもそうだ。
孤独な生き方だ。
だから、他人にそれを勧めるつもりもないし。
理解も求める気は無かった。
「有難うございました。 それでは、失礼します」
「頑張ってね、新作の撮影」
「はい」
北条とメールのやりとりを終える。
そして、思った。
さて、北条はどこまでいけるだろうか。
ルックスがいいから、それを利用すれば馬鹿なマスコミはすぐに食いつくだろうが。マスコミがまともな情報発信を出来る能力などは、とっくの昔になくなっている。まあ本当は最初からなかったのかも知れないが。
ただあのルックスは、上手に生かせばそれだけ映画の知名度アップにつなげられるだろうけれども。
その代わり、変な虫も寄ってきそうだ。
どこまで、自覚的に容姿を利用するかで。
今後の北条の映画監督としての人生は変わってきそうだけれども。
それについては北条の人生。
高宮が関与できることではないし。
関与してもいけない事は、当然理解していた。
さて、明日からのスケジュールを再確認だ。
映画だけじゃあない。
高宮は、常に先の先。百手ほど先まで読んで常に動いている。
そうしているからこそ、成し遂げられた。
これを他人に真似しろというつもりもない。
そもそも高宮は。
本来だったら、映画撮影にだけ集中していれば良かったのだろう。
あのサムライ映画の巨匠がいた時代だったらどうだったのだろうか。
女性監督と言うだけで厳しかったかも知れない。
映画がもっとも自由で。
もっとも好きに作れた時代はいつだったのだろう。
考えて見ると。
どうもあまり、そんな都合がいい時代は見当たらなかった。
それはそれで悲しい話だな。
そう高宮は思う。
そして強いていうならば。
今がそうなのだろう。
頬を叩くと、気合いを入れ直す。
時代は変わった。
腐りきった権威は全て焼き払われた。
そして新しい時代が映画界隈に来ようとしている。
それを牽引した以上。
高宮にも責任はしっかりある。その責任を放棄するわけにはいかないのである。
これから少し忙しくなるが。
それでも体を壊すような無茶はしないように動くつもりだ。
そうしなければ、自分が作り出した沃野が緑に満ちるのを見る前に、倒れてしまうことだろう。
そうならないためにも。
高宮は。まず自分の体に気を遣い。
同志達にも気を遣い。
その上で。
慎重に慎重を重ねながら。
動かなければならなかった。