謎の映画監督の物語 無の映画監督   作:dwwyakata@2024

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相変わらず無の映画監督高宮は絶好調です。

イミフな映画をどんどん量産して、映画館をとても居心地が良いベッドにしていきます。

意識の高い評論家以外にも客がいます。殆どは睡眠向上のために通うマニアです。


2、襲い来る更なる恐怖

高宮葵、十作品目公開。

 

その言葉がSNSを駆け巡ったが。

 

本人はいつものようにコーヒーの写真をアップしており。

 

一切合切ぶれていない。

 

その様子を見て、カルト映画の愛好家は安心し。

 

今回もどんなヤバイクソ映画が来るのかと、わくわくしている強者もいるようだった。

 

ともかく体調を崩しかけてから二週間。

 

小野寺はしばらく高宮の事を忘れていたが。

 

その記事によって、思い出してしまった。

 

家に帰ってからで良かった。

 

今日も一人の家だ。

 

誰もいないので、醜態を誰かに観られる事も無い。

 

ただ一人で悶絶していられた。

 

やがて友人からメールが来る。

 

「大丈夫か?」

 

「あんまり大丈夫じゃない」

 

「じゃあ、軽く話をしてやろう。 多分高宮監督は、誰かを怖がらせる意図で作品を作っていない」

 

「!?」

 

顔を上げる。内容を見ると、更に続きがあった。

 

「最初はわざとクソ映画を作ることによって、真意を悟った人間を恐怖のどん底に落とす高度な技かと思ったんだがな。 今まで公開されている九作品を全て見てみた感じでは、恐らく違うな」

 

「だとすると、何が目的なんだろう」

 

「幾つか思い当たるが、ひょっとしたら……自分の周囲にいるハエみたいな業界人に対して、色々思い当たる所があるのかも知れない」

 

「……」

 

業界人、か。

 

ハエみたいと親友はドスレートな言葉を使ったが、実際問題小野寺もあまりいいイメージは無い。

 

特に映画関係の賞は、関係者受けする作品が評価される傾向がある。

 

その辺りは、お堅い小説のプロ向けの賞なども同じなのだろうが。

 

そうなってしまうと、後は衰退するだけだ。

 

純文学などはその傾向が既に強い。

 

未だにクズ人間のカス人生を緻密に書くことにこだわる純文学は。既に娯楽ではなくなりつつある。

 

本来は奔放に想像力を働かせて書く、娯楽だった筈なのに。

 

「とりあえず、晴は少しばかり高宮監督について考えすぎていると思う。 気楽に考えて見た方がいいと思うぞ」

 

「うん、そうしてみる」

 

「……」

 

軽く話をして、やりとりを終える。

 

親友に対しての信頼は篤い。

 

クソみたいなスクールカーストを構築する事だけで頭がいっぱいの周囲の人間に対する反発からだろうか。

 

この、スクールカーストなんか一切関係なく。

 

ハイスペックで我道をいく親友は、小野寺の希望でもあった。

 

いずれにしても、親友の言葉で随分と気が楽になった。

 

あまり肩肘張るなという事かも知れない。

 

まあ、そもそも映画だってそういうものだ。

 

肩肘張って業界人が喜ぶようなものを作っても意味があるのだろうか。

 

実際には、見に来る人を楽しませるものが映画だろう。

 

業界人が映画に対してトンチキな了簡を述べ。

 

それが賞などにつながる現状は。

 

一部のファンなどが攻撃的な言動を繰り返して排斥を繰り返し。

 

新規参入者を追い出して悦に入っている、一部のジャンルの趣味に近いものがあるのかも知れない。

 

いずれにしても、それに対して腹に一物あるのだとしたら。

 

高宮監督がやっていることは、面白い事なのかも知れなかった。

 

連日のコーヒーの投稿も。

 

自分は世間の評価も業界人の評価も何処吹く風、という意図なのかも知れない。

 

勿論何の意図もないのかも知れない。

 

もっと気楽に考えて良い。

 

そう思えば、楽で良かった。

 

そうだ。

 

クソ映画を楽しむようになったのだって、面白いと感じたからだ。

 

他人には一切勧めない。

 

そもそも、である。

 

自分が好きな事は、他人が好きなこととは違うし。

 

好きを他人に強制することは、最低最悪の行為だ。

 

何かが好き、というのは全ての人に違う答えがあるのだし。

 

何よりも誰もがそれぞれ違った嗜好を持っている。

 

それが人間というものであろうに。

 

それなのに、正しい表現がどうのこうのと口にし出す時点で、何もかもが狂っていると言える。

 

海の向こうではポリコレだのがそういう事を言い出して、却って自由が失われるという事態がおきているし。

 

うちの国でも、それは徐々に波及しつつあるように思える。

 

実際には正しくもなんともないのに。

 

言葉尻だけ見ると正しく思えるのがタチが悪い。

 

がん細胞のように業界を蝕むこの思想は。

 

はっきり言って、今後大きな影を落とすだろう。

 

そして小野寺も。

 

危うく娯楽というものから、足を踏み外しかねない所だった。

 

怖くて見られていなかった高宮の映画を見てみる。

 

相も変わらず。

 

見る睡眠導入剤と言われるレベルのつまらなさだ。

 

だけれども、意図的につまらなくしているのだとしたら。

 

別にそれが他者を怖がらせるのではなく。

 

何かの意図があるとしても。

 

仮にそれが悪意だったとしても。

 

別に小野寺ら、一般視聴者を怖がらせているのではないのなら。

 

何ら怖れる事などない。

 

ただ見ていればいい。

 

そう思うと。

 

他のクソ映画と同じように、楽しむ事が出来る。

 

そう小野寺は思った。

 

随分気が楽になったからか。見ていて、以前のような恐怖は一切感じなかった。それで良いのだと思う。

 

そのまま、他の有名なクソ映画を見ていく。

 

どれもこれも酷い映画ばかりだが。

 

それが好きなのだから別にかまわないし。

 

好きである事を他人にどうこう言われる筋合いは無い。

 

小野寺は知っている。

 

深海魚が好き、といった人間が。

 

周囲から気持ちが悪い趣味だと言われ、暴力を振るう排斥が正当化され。

 

学校をやめていった事がある。

 

学校をやめた頃には、その人間の一挙一足が全て気持ち悪いものとされ。

 

悪口を言う事は「正しい」とされていた。

 

周囲のそのおぞましい様子を見て。

 

人間の掲げる正義と。

 

正義と言う名の棍棒が。

 

どれだけ醜悪なものかを、小野寺は学習させられたのである。

 

そしてそれを正当化するスクールカーストや、企業体質などに対しても大きな疑問を持つ事になった。

 

現在の人間は石器時代と脳みそがまったく変わっていない。

 

これはファーブルの言葉だったか。

 

違ったか。

 

いずれにしても、その言葉は全くの真実だ。

 

どれだけの偉人が苦労して、明文法と不文律で必死にゴミみたいな人間共を矯正しようとしても。

 

差別が大好きで。

 

正当化された暴力が大好きな人間共は。

 

一瞬で堕落する。

 

人格含めた他人の全てを否定する事は、九割以上の人間にとっては代え難い快楽なのである。

 

そんな人間を少しでもマシにしようと頑張って来た人間達は、変人だの異常者だのと言われて来たし。

 

逆に上っ面良い事ばかりを述べて、背後でドス黒い邪悪な行為ばかりをしていた連中は、聖人と祀り上げられてきた。

 

そんな生物だ人間は。

 

親友に前説明されたことだが。

 

今小野寺もそう思うし。

 

何よりも、自分自身もそう落ちかけた所が恐ろしかった。

 

落ちるのなら。

 

そんな連中とは別の場所に落ちたい。

 

そう思って、その日はひたすら。

 

娯楽として。

 

自分が好きなクソ映画を見続けた。

 

流石に高宮の映画をずっと見続けるのは精神に負担が色々大きいので。単に笑って見られる軽いクソ映画を主体に。高宮の映画も混ぜてみていく。

 

見ているだけで強烈に眠いのは、高宮の映画はエドウッドのと同じだ。

 

だが、そこに映画を面白くしようという情熱は無く。

 

自分のパッションをぶつけようという意図がないのなら。

 

やはり別物なのだと。小野寺は感じるし。

 

親友の言う事も正しいと思う。

 

その日はぐっすり眠れた。

 

小野寺は親友ほど頭が良くないし、かなり単純だ。

 

だから、精神構造もそれに比例して、単純なのかも知れなかった。

 

 

 

学校は本当につまらんが。

 

一つだけ、その日は良い事があった。

 

スクールカーストの頂点に位置していた女子生徒が。いわゆる援助交際。今はパパ活だとか言われる奴をやっていた事が判明していたのである。

 

虐めに主導的に関わっていた下衆であり。

 

それに教師も荷担していたというクソみたいな教室であり。

 

しかも自分が悪い事をしていると言う自覚すらないという、救いようが無いカスだったのだが。

 

いずれにしても、「誰でもやっている」という理由で。

 

パパ活とかいう言い方でソフトにされた行為が全てばれたのだった。

 

ばれた理由は。そのパパ活だとかをやっていた相手が、薬物の所持で逮捕されて。その連絡先にクズ生徒が混じっていたから。

 

警察が調査した結果、特殊関係人(要するに逮捕された奴は妻帯者だった。 浮気相手をこう称する)が複数浮上し。

 

その一人が未成年だったクズ生徒だった、ということだ。

 

すぐに指導が入ったが。

 

狂気じみた顔で、クズ生徒はわめき散らした。

 

誰だってやっている事だ。

 

金がほしいんだから、やって良いんだ。

 

そうわめき散らす生徒だったが。そのパパ活している相手とホテルで一緒に薬をやっていた事がばれた。

 

以降は、少年院行き確定だった。

 

まあそれはそうだろう。

 

「気持ちが良くなる薬」だの言われて、精力剤かなにかと思って飲んでいたとか証言していたが。

 

そんなもん、猿でもヤバイ薬だって分かる。

 

それが分からないようなのがスクールカーストの上位を占めていて。

 

挙げ句虐めで人間を死の寸前まで追い込んだ挙げ句。

 

他には何人も転校させ。

 

更には教師までそれに荷担していたと。

 

あまりにも不愉快すぎて口にしたくもない輩だし。

 

滅びてせいせいした。

 

以降の人生は、スクールカーストの上位にいたという負の成功体験が足を引っ張り続けるだろうし。

 

下手をすると少年院から出てくると。

 

今人権屋の格好のカモとされているフェミニストになっているかも知れない。

 

まあそれはそれで良いのだろう。

 

あのカスには、相応しい末路だと思う。

 

それにしても、誰でもやっているんだから良いだろうとわめき散らしている様子はこっそり撮影したのだが。

 

これはかなり面白そうである。

 

SNS等には、パパ活とやらを肯定的に語る阿呆が相当数いるようだが。

 

今度目だけ加工してアップしてやろうかなと思う。

 

いずれにしてもとても気分が良かった。

 

スクールカーストは案の定崩壊。

 

教師も、意図的に虐めに荷担していた事がばれてどっかの別の学校に飛ばされそうになったが。

 

警官を学校の外で捕まえて、何をしていたか小野寺が全て話し。

 

今まで貯めていた証拠も渡しておいた。

 

そうしたら。別の学校に飛ばされるという話が。いつのまにかぴたりとやんで。

 

教師はどこかにいなくなっていた。

 

まあいい気味である。

 

そのまま何処かでのたれ死んでほしいものだが。

 

流石にそこまでうまくはいかないか。

 

大変気分良く帰宅した。

 

他の生徒達は全員が青ざめていたが。

 

あの様子だと、スクールカーストに参加していた。特に上位の方だった連中は、恐らく何人かパパ活とやらをやっていたのだろう。

 

薬をやっていたのもいるかも知れない。

 

そんな連中がどうなろうと知った事では無いし。

 

むしろ潰されろ。

 

そう思う。

 

学校の生徒がいなくなった辺りで、後はるんるん気分を隠さずに帰宅する。

 

嗚呼本当にせいせいした。

 

あんなのが社会の上層に蔓延っている時点で、今の時代が終末の時代と言われるのも当然に思えるし。

 

それを改善しようとも思わず。

 

個人が変わらなければならないとかぬかすような輩が跋扈している時点で、色々とこの世界は終わっている。

 

小野寺はそんな世界で、隙間を抜けるようにして生きてきたが。

 

今回は、とても気持ちが良かった。

 

もしもアレが維持されるべきだと口にする奴がいるのだったら。

 

それは地獄の最深部に落ちて、永久に苦しむべきだと思う。

 

いずれにしても。

 

「普通の人間」に対する興味は薄れるばかりだった。

 

自宅に帰ると、宅配が来ていた。

 

映画のDVD。

 

勿論、高宮の十作品目だ。

 

はっきりいってジャンルはどうでもいい。

 

どうせアルティメットコメディと称する睡眠導入剤である事には変わりがないのだから。

 

ともかく内容を見てみると。

 

今度はワニ映画らしかった。

 

ワニ映画は、パイは小さいものの。実の所サメ映画以上の魔窟として知られているらしい。

 

サメはまだまだ海にたくさんいるものの、それほど身近な存在ではないので。

 

まあある程度は、人間と距離がある存在だ。

 

だからファンタジー的な題材として、好き勝手に扱える。

 

たまにサメに殺される人間はいるものの。

 

いわゆるホホジロザメに食い殺される人間なんか。蜂に刺されて死ぬ人間よりずっと少ない。

 

これに対してワニは。映画の本場である米国でも普通に見かける猛獣である。

 

米国にも何種類かが存在しているし。

 

何しろ待ち伏せ型の生物なので、獲物を選ばず襲いかかってくる。

 

パワーも凄まじく、知能も低くはない。

 

更にあの見た目で、かなり俊敏に動き回る。

 

そして体が大きい。

 

一番小型なコビトカイマンという品種でも、一メートルくらいはある。

 

一番小型な品種ですらそれで。今地球にいる最大種のイリエワニになると、六メートルを遙かに超え。

 

古代に生きていた最大種になると、十五メートルと恐竜並みのものが存在しているのだとか。

 

そういう事もあって、ワニ映画はファンタジーの産物にするのは中々難しい所があり。

 

それが理由で、余計に色々とこじれるらしい。

 

さっそく高宮のワニ映画を見てみると。

 

なんと実物のワニを使って、色々と撮影をしている。

 

映画の内容は、ワニに対して哲学的な話をしながら。

 

その話をしている最中から片っ端からエサ役の役者がばくばく貪り喰われ。

 

となりで人が食われているにもかかわらず、平然と役者がワニに対して哲学的な話を繰り返し。

 

次はエサになると言う。

 

シュール極まりない代物だった。

 

ちょっと工夫すればシュールなギャグ作品に出来そうなものなのだが。

 

高宮はやはり、意図的にこれを面白くしないようにしているのだろう。

 

また、スプラッタシーンに関しても。

 

工夫すればある程度面白く出来るだろうに。

 

それにも興味はないようだった。

 

肩肘から力が抜けたからだろう。

 

確かに細かく見ていると、此処をこうすれば面白くなりそう、という場所を。どこもかしこも意図的につまらなくしているのが見て分かってくるようになってきた。場所によってはCGなどを使って、意図的につまらなくしている様子だ。

 

それだけじゃあない。

 

ワニに本気で恐怖している俳優のシーンもたまにある。

 

実物のワニ。

 

ざっと見た感じでは五メートルはありそうなおおものだが。

 

勿論役者に危険は生じないようにしているだろうが、それでも間近で撮影している事を考えれば。

 

まあ確かに恐怖が顔に浮かぶのも納得は出来る。

 

その恐怖の表情を、上手に効果的に使えないようにしている。

 

恐怖は観客にリンクする。

 

ホラー映画でも、上手な演出だとこの恐怖の表情を効果的に使ったりするものなのだけれども。

 

この高宮のワニ映画では。

 

恐怖する俳優の演技を。

 

全部潰す方向で、CG等を丁寧に使っているのが分かった。

 

なるほどなるほど。

 

これは色々面白いなあ。

 

そう思った。

 

意図的にこのつまらなさを作り出していると知ったときには恐怖さえ感じたものだけれども。

 

撮影中、ゴリゴリSAN値を削られただろう俳優には悪いが。

 

これは恐らく、高宮が全て意図したとおりなのだと思うと。

 

ちょっと面白くなってくるのが実情だ。

 

一通り見終わる。

 

全員エサ役が食い尽くされた後、あっさりハンターがワニを退治して映画は終わった。そのあっさり退治がもう本当に素っ気なくて。ラストですらも徹底的に容赦なくつまらなくしている。

 

チャンスがあれば映画館に見に行くのだが。

 

今回は中間テストとかと重なって見に行けなかったのだ。

 

そういえば、あの後中間テストをもう一回やった。

 

実は不正が見つかったらしい。

 

あのクソ教師が警察で何か吐いたのかも知れない。

 

どうせお気に入りの生徒のテストの点数を嵩まししていたとか、そういうろくでもない事だろう。

 

そのお気に入りの内容も、あまり考えたくない。

 

いずれにしてもあのゴミカスどもは綺麗さっぱり学校からいなくなったので、それでいい。

 

酒を飲める年代だったら。

 

今頃乾杯、としているところだ。

 

とりあえず映画を見て、ああつまらなかったと楽しんだので。

 

早速親友に連絡を入れる。

 

SNSのメッセージでやりとりをするが。

 

案の定、もう親友も見ていた。

 

幾つかのシーンで、流石に鋭い指摘を入れてくる。幾つかの指摘は、歴戦のクソ映画マニアである小野寺も気づいていなかった部分で。

 

その辺りは唸らされた。

 

流石である。

 

「それにしてもワニが一番可哀想だったな。 ワニですら空気を察しているのか、退屈そうにしていた」

 

「そんなの分かったの?」

 

「ハエですら気分次第で羽根を振るわせたりする。 ワニだって退屈くらいは感じる」

 

「へえ……」

 

そんなものなのか。

 

ちょっと面白かったので、聞き入ってしまった。

 

他にも幾つかのシーンについて話をするが。

 

どうも面白くなったり怖くなったりするシーンは、意図的に全て潰しているのが確定だと親友は言い切った。

 

まあそうだろうなと小野寺も思うので。

 

話は素直に全て聞いておく。

 

「少し高宮監督の経歴について細かく調べて見た」

 

「うん、何か分かったの」

 

「芸大時代に、ある映画監督が講師として招かれているな」

 

「!」

 

その映画監督について、名前を聞いて。

 

最近クソ映画の常連監督になっている人物だと思い出した。

 

昔はそれなりに切れ味のある良い映画を撮る人物だったのだが。

 

今ではすっかり意識高い業界人に洗脳され。

 

クソ映画ばかり撮るようになってしまっている。

 

皆を楽しませようとか。

 

皆を唸らせたいとか。

 

自分のパッションを映像にしたいとか、そういう情熱は既に消え果てているようで。

 

SNSでもすっかり腫れ物扱い。

 

アカウントを見ると、ひたすら同僚や事件、政治家などに対する悪態をつき続けていて。これは頭が壊れかけているなと、一目で分かってしまうほどに酷い。

 

クリエイターは堕落する。

 

それは知っている。

 

業界人におだてられたり洗脳された結果、嘘みたいに作る映画がつまらなくなった監督は何人もいる。

 

のし上がったのはいいが。

 

人間には器があると、親友はいう。

 

その器にあわない場所に行くと、人間は簡単に壊れてしまうのだと。

 

そのパターンだったのだろうと。

 

「授業の内容も調べて見たが、とにかく芸大にいる生徒達の作品に対してひたすら駄目出しをして、攻撃的に貶すだけのものだったようだな。 評判も最悪で、二三回呼ばれただけで後は門前払いを喰らったようだ」

 

「それはまた、酷い話だね」

 

「ひょっとしたらだ。 その頃には、もうクソ映画を作るようになった監督や、そういう監督にしたててしまう業界そのものに。 高宮監督は、何か思うところがあったのかも知れないな」

 

なるほど。

 

他にも芸大時代の情報を調べてみたが。

 

殆ど消されてしまっていて、なにも出てくるものがないという。

 

それは残念な話である。

 

高宮の芸大時代か。

 

今も相当な変人のようだから、さぞや凄かっただろうなと思う。

 

まあ高宮はまだ二十代の筈で。

 

そういう意味では、まだまだ充分に尖っているといえる年頃なのだろう。

 

それはそれで、面白いかも知れない。

 

「此方ではもう少し調べて見る。 晴はどうする?」

 

「面白そうだから、クソ映画を見つつ高宮監督についてネットで色々と調べて見ようと思ってる」

 

「分かった。 もう少し精度が高い情報を仕入れられればいいんだけれどな。 晴、いっそエキストラで高宮監督の映画に出てみるか?」

 

「それがあの人、エキストラ殆ど募集してないんだよね。 調べて見たけど、初期の二作品だけエキストラをごく少数だけ出して、今はそれもないの」

 

そうかと親友はいうと。

 

一旦通話は切った。

 

さて、学校は楽しくなったし。

 

クソ映画を見ていてごはんも進む。

 

好きなものを好きと言って何が悪い。自分から見て気持ち悪い、なんてのは主観に過ぎない。

 

主観を全てに優先している時点で、人間なんてのはカスだ。

 

それについては、クソ映画という業が深い趣味を持っている小野寺はいやというほど思い知っている。

 

だからといって。この趣味を止めるつもりは無い。

 

好きなものを好きというのが悪だというのなら。

 

小野寺は悪で充分だ。

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