謎の映画監督の物語 無の映画監督 作:dwwyakata@2024
案の定、高宮の十作め。ワニ映画の評判は散々だった。
クソ映画専門のレビューをしているブログや批評サイトは幾つか存在していて、小野寺も通っているのだが。
それらを見る限り、これほどつまらないワニ映画は初めて見るとか。魔郷に咲いた誰も近寄らないラフレシアだとか。
ともかくもの凄い勢いで罵倒されていた。
高宮の映画を全作レビューしている強者でもそれは同じ。
困惑しながら、歴代シリーズで面白い作品は一つとしてなかったが。これは歴代で最高値を更新するかも知れないとか書いていた。
勿論その最高値とは。
つまらなさポイントの事である。
100点評価で映画を批評しているサイトもあるのだが。
高宮の映画はのきなみ10点以下。
今回のワニ映画に至っては、3点という評価だった。
ただ。この批評サイト。
酷評については本当に容赦なく、凄まじい罵倒を浴びせていて極めて攻撃的な論調なのだが。
高宮の映画に対しては、攻撃的に批判すると言う事はしない。
むしろ見ている批評者がダメージを受けているようで。
「砂でも噛んでいるかのよう」「眠気を我慢するのに、思わず手を噛まなければならなかった」「見終わった後、襲ってくる眠気を必死に退治するためにコーヒーを飲んだ」とか、苦労の跡が伺え。
更には攻撃的な批判の文章はなく。
全編にわたって困惑が書き連ねられていた。
まあそうだろうな。
そう小野寺も思う。
親友が、意図的にこうしている、という指摘をしなければ。
小野寺だって、ずっと変な映画監督だなあとしか思っていなかっただろうし。
何より今だって、一切合切分からない事ばかり。
仮説しか立てられないのだから。
一次資料があるのに、仮説しかでないというのもまた変な話である。
歴史にしても考古学にしても。
一次資料というのは、それまでの定説をひっくり返すパワーがあるものなのである。
それなのに、高宮の映画は本当に、見ればみるほど見ている人間の精神を容赦なく抉り取っていく。
睡眠導入剤として有能なだけではなく。
さいころなんかよりもよっぽど効果的にSAN値を抉り取っていく。
実際小野寺もやられかけたので。
その、別の意味での怖さについては実感していた。
さて、一通りレビューを見た後は学校に行く。
ゲームでも、クソゲーマニアというのはそれなりにいるらしく。
やはりレビューサイトが存在している。
そういうレビューを書く人の中には。
今では稀少品になっているゲームハードをわざわざ購入し。何万もするようなクソゲーを平然と購入して。
それでレビューを書く猛者までいる。
クソ映画マニアも、その辺りは同じなのかも知れない。
事実小野寺だって。
今まで渡されている小遣いは、殆ど必需品以外は。クソ映画のDVDなどにつぎ込んでいるのだから。
学校に出ると、教室の空気が嘘みたいに良くなっていた。
あのクズ生徒の後、何人か生徒が消えた。
学校側は一切説明しなかったが。
どうやらパパ活やら、薬やらが原因であるらしい。
半数は少年院に。
半数は警察で聴取のため自宅待機だそうだ。
更に虐めについても警察で告発した人間がいるらしい。
虐められていた何人かは。すっきりした顔をしている。
まあ虐めの主犯は一人も残っていない。
それは気持ちも楽だろう。
虐めは、虐められる方が悪い。
そんな寝言をほざく輩がいるが。
虐める方が悪いに決まっている。
そんな事も分からない人間が、のうのうと社会に出張っている時点で。教育なんて上手く行っていないのである。
その程度の事は、小野寺でも分かる事だが。
どうやら「社会人」をやっている人間にも。この程度の事が分からない輩が多数いるらしい事は。
嘆かわしい事実だ。
まあこの学校の場合。
教師からしてそうだったのだから。根が深い問題とは言えるだろう。
新しく担任になったのは見るからに険しい顔をした老教師で、まだまだ現役という風情である。
とにかく授業は引き締まった。
今までは授業中に堂々と暴力を含めた虐めをしている生徒がいて。それをみてケラケラ笑っている奴もいた。
何しろその手の輩の脳内では虐められる方が悪いのだ。
そういう理屈が蔓延すると、人間はそうなる。
だが、今は授業中は静かだ。
それはそうだろう。
スクールカーストの上位を独占していたカスは消えて。
教師もスクールカーストなんか容認しない人間になった。
それは静かになる。
そして小野寺には、この方がとても空気が良く感じられた。
昼食なども、以前はグループでガチガチに食事を取る風にしていたので。鬱陶しいから外で理由をつけて食べるようにしていた。
だが今はそれもない。
何しろスクールカーストの崩壊に伴って、女子の陰湿なグループも全て崩壊したからである。
ざまあみろという所だが。
いずれにしても、外で食べる事に変わりは無い。
なお、隙を他人に見せないため。
一切クソ映画関係のものは学校に持ち込まない。
小野寺は学校というものを一切合切信用していないし。
周囲の生徒に人間性なんてものがあるとは思っていなかった。
実際、虐めで殺人があった学校でも。
殺人をした連中は。
即座に次の生徒を殺す勢いで虐めを始めたという証言が残されている。
「普通の人間」なんてのはその程度の生物なのだ。
信用するもなにも。
美点なんぞ一つも無い。
食事を終えると、教室に戻る。
それにしても無機質な授業の心地よさよ。
何だか教室が息苦しいとかほざいている生徒がいたので、窓から外に放り出したくなったが我慢する。
あの教室が心地よかったというのなら。
それはもう、人間と呼ぶに値しない。
猿だ。
猿は放り出すに限る。
かなり過ごしやすくなった学校を出る。途中で、見た事がない男子生徒が声を掛けて来た。
ガタイがいいが。運動部だろうか。
なんだ鬱陶しいなと思うが。
髪が綺麗だのなんだの言い出したので、用件はと少し声に圧を込める。
はっきりいって関わるのが一番面倒なタイプだ。
うるさがっているのを気づいたのか。男子生徒は好きだの何だの抜かし出したので。興味が無いと言って断る。
話しているうちにわかった。
こいつ、確かいなくなったスクールカースト上位の一人の彼氏をしていた男だ。
元は運動部だと言う事でもてたのだろう。
それでスクールカースト上位の女とくっついたと。
だが、そいつらは金があるが倫理観皆無のおっさん達に金目当てに股を開いていた訳で。金のないガキなんぞどうでもよかった、というわけだ。
プライドは粉々。
それで、見栄えだけいい小野寺に声を掛けて来たという訳か。
死ね。
そう言ってやりたいが。
まあ崩れ落ちて真っ白になっているので、どうでもいい。
そのまんま灰になって地上から消え去れ。
そういう言葉しかでない。
せっかく気分が良かったのに、なんだか不愉快だ。
家まで急いで帰る。
ストーカーとかに変わられたら困るし。途中で何回か背後を確認して、つけられていないかもチェックしたが。
まあそういうこともなかった。
自宅につく。
相変わらず両親はブラック労働の真っ最中。
これで裕福かというとそうでもないのだから、色々と終わっている。
うちの国だけの話じゃない。
今は1%の人間が、99%の富を独占している状態だ。
そんな状況では、みんなこうなる。
海外の人間はみんな裕福な生活をしているとかいう話を、親友は笑い飛ばしていたっけ。
そんなのは上層の一部も一部。
他は家すらなかったり。
スラムで身を寄せ合っていたり。
そんな状況だと。
自宅で、黙々とクソ映画を見る。
カスに穴さえあればいいみたいな勢いで告白されたのが本当に不愉快だ。相手次第だったらそりゃあ小野寺だって嬉しい。
だが彼奴は、スクールカースト上位の女と運動部という地位を利用してつきあい。
それがいなくなったら、代替を探していたような輩である。
別の股が緩そうな女を捜せよ。
そういう言葉しかでてこなかった。
ちょうど今見ているクソ映画も、本来の目的であるスプラッタホラーよりも。学生の生々しい生活が描写されている不思議な代物で。
みていてふーんという言葉しかでない。
なお米国の映画なので。
だいぶ学生達の様子も違う。
向こうの学生の不良ってのは、確か銃器で武装しているケースが多いので、スクールカーストにさえ入っていないのだったか。
何しろ刺激すると危ないからだ。
それにスクールカーストそのものも日本のと同じかそれ以上に危険らしい。
それはそうだろう。
何度もおきる学校での銃乱射事件を見れば、それはよく分かる。
どれだけ社会が病んでいるか何て、わざわざいうまでもないだろう。
ましてや他の国は更に酷い。
それらの腐敗を書いている部分の生き生きとしている様子。
映画としての本来の目的である、スプラッタシーンのどうでもよさそうな様子。
ある意味クソ映画だが。
考えさせられるクソ映画だ。
いっそのこと、スプラッタシーンはなくしたほうが良いのではないのかと小野寺は思ってしまった。
その方がこの映画は良くなると想う。
ただ、米国の映画界も腐敗は酷いと聞いている。
海外資本が入り込んだり、内部にはやはり意識高い系の業界人が巣くっていたり。
枕営業も当然あったらしい。
まあそういう世界だ。
スポンサーがこういう映画を作れといって。
作りたくない映画を作る監督だっているのだろう。
なんだかこの映画は悲しいな。
そうちょっとだけ、思ってしまった。
なおスプラッタシーンは本当にあくびが出てくる程、クソ映画好きの小野寺でもつまらなかったので、閉口。
あの高宮の映画も、最近は見ていて眠くなってきている程なのだが。
まだ鍛え方が足りないかも知れない。
これを。「映画の駄目さ」を目的で映画を見ている人達も、これには苦笑いだろうなあと思う。
まあそれはいいか。
とにかく映画は終わったので、次。
メールの着信音。
この時間と言うことか、恐らくは親友か。
見てみると、その通りだった。
「高宮監督がいた芸大の見学チケットがとれた」
「!」
「面白そうだから見に行くつもりだ。 いくか?」
「いくいく!」
すぐに返事を書く。
そして、スケジュールを組み込んだ。
はっきりいって、スクールカーストが崩壊した今。
つきあいで何処かに遊びに行くという事で、スケジュールが潰れる可能性は一切なくなった。
何の気がねもなく行く事が出来る。
警察の方も最近は学校に来なくなった。
叩いたら出まくっていた埃が、一段落したからだろう。
そういえば学校側は殆ど何も言わなかったが。
結局色々な新聞の隅っこの方にちょこっとだけ記載されている情報などを集めると。
主犯格の、スクールカーストのボスだった女生徒は実刑がほぼ確実。
教師も同じく。
他のも執行猶予はまずつかないそうで。
更には恐らく虐め被害者への賠償金は一千万はほぼ確定だろうということだった。
近年の最高裁では、虐めによる殺人で。賠償金四百万という、信じがたい判決をした外道裁判官が実在したのだが。
これを「弁護士が仕事をして有利な判決を引きだした」とか抜かして、弁護士を絶賛している連中がいて。
それが「知識人」を気取っていると聞いて小野寺も絶句した。
今回はそんなケースにはならないだろう事は幸いだ。
こんな裁判官と弁護士では。
まあ元々石器時代と変わらない平均的な人間のモラルが。
落ちるところまで落ちるのは、まあ仕方が無いのかも知れない。
ともかく、安心できると判断したので。
ばんばんスケジュールを組み込んでいく。
珍しく鼻歌がでる。
楽しいものは楽しいと感じる。
流石に小野寺を唸らせる程駄目なクソ映画は、近年高宮のものくらいしか見た事がないが。
それはそれで。
今回はその高宮の映画の原典かもしれない場所を見に行く事が出来るのだ。
だから純粋に楽しもう。
近年碌な事がおきていなかった小野寺の周辺だし。
今後も両親はどっちかが壊れてしまってもおかしくない。
ブラック労働は簡単に人を壊すし。
人が壊れた結果、どんどん社会から人材はいなくなってきている。
そのぶん残った人間への負担は増える一方。
小野寺もいずれ、そんな社会に出ることになる。
修羅場とか、かっこういい言葉を吐いている社会人がいたので呆れた記憶がある。
こんな状況は修羅場ですらない。
ただの破滅に向けて転がり落ちているだけ。
そんなものへ出ていく若者を、止めるのが大人だろうに。
スケジュールは決まったので、おもわずよっしゃと声が出た。
残念ながら小野寺は、芸大に行けるほど芸術的センスとかの色々が欠けている。親にも今の時点では普通の大学に行けと言われている。
一応金は出してくれるらしい。
それだけでも。
小野寺は幸せなのかも知れなかった。
当日が来たので、うきうきしながら小野寺は親友と合流した。
まだ朝早いが。
どっちも相当に早く朝は動く。
これは学校のクラスメイトと遭遇するのを避ける為である。
その気になれば農家のような時間に起きて行動する事が出来るのだが。
親友曰く、この習性はのちのち使えるかも知れない、ということだった。
通勤ラッシュで場合によっては片道二時間半、とかいう世界があるという事なので。
それを考えると、確かにこの時間におきて動けるのは楽なのだろう。
リモートによる仕事だって、今はまだまだ普及しているとは言い難い。
確かに親友がいうように。
この朝早くからしっかり動ける習性は、有利かも知れなかった。
久しぶりに直接会った親友は、気むずかしそうな小柄な女の子だ。
同年代とは思えない。
華やかな外見をしているらしい小野寺とは対照的で。気むずかしそうな子供にしか見えないが。
実際にはスペックから何から、親友の方が上だ。
外では名前は呼ぶなと言われている。
典型的なDQNネームなので。その内名前を変えることを検討しているらしい。
何でも元手として十万ほど用意し、そこから株取引で現在500万程度まで増やしているらしく。
高校を卒業したら家を出て、改名もするそうだ。
そのまま、軽く話しながら芸大に向かう。
流石にこの時間はまだまだオープンキャンパスはしていないが
時間つぶしに喫茶店とかに入るのは、最寄り駅についてから。
これは電車でどんなトラブルが起きるか知れたものではないからだ。
一時期ほど電車に飛び込む人は多くは無いとはいえ。
今でも時々どうにもならなくなって、電車に飛び込む人は出てくるのが実情なのである。
この国の電車のダイヤは世界的に見て最も優秀だが。
それも、電車の運転手の過酷な労働に支えられている。
それらを考えると、色々複雑だし。
更に業病を避ける事も考えると。
早朝の電車にさっさと乗って。
最寄り駅に行っておくのが正解、というのも事実だった。
途中で親友と幾つか話す。
親友は外でもかなり硬いしゃべり方をする。
「高宮監督の映画だがな。 全部を何度か通して見たが、やはり結論は今のところ変わらないな。 わざとやっていると判断していいと思う」
「問題は理由だね」
「そうなる。 芸大の方では、卒業生の制作物なども見る事が出来るという話だから、参考にさせてもらおう」
「うん」
電車に揺られてそのまま移動。
芸大の側についた頃には、既に電車はかなりサラリーマンに満ちていた。
ただ、芸大の駅ではあまり降りる人もいなかったので。
周囲に声を掛けながら、どうにか降りるしかなかった。
幸い入り口付近の人が降りてくれたので。
そのまんま次の駅に、という事態は避けられたが。
これを連日繰り返していたら。
それは病むだろう。
その結論は、確かに簡単に出す事が出来た。
消毒駅を出してきた親友。
有り難く使わせて貰う。
業病が流行る一方で、代わりに今まで猛威を振るっていたインフルエンザが絶滅しつつあるという。
手洗いうがいの徹底に加え。
マスクをみんなつけるようにしたからである。
一方で、更に新しい邪悪な病気が流行り始めているという噂もある。
気を付けなければならないだろう。
近くの喫茶店に入る。
面接の類をしているらしいおっさんたちがいたが。
今時圧迫面接をしているらしい。
さっと隙を見て店を出る。
見ていて気分が悪いし。
あんながなり声を聞いて、気分が良いとはとても言えないからである。
別の店に入ると、幸い雰囲気がいい店で。
そこで安心して、やっと腰を落ち着けることが出来た。
「予定通りの時間だな。 きちんと予定通りに進むと気分が良い」
「まあ学生の生活は、規則正しくが基本だよね」
「勉強とかで徹夜とかはしないのか」
「いや、私は自分に出来る範囲でやっていこうと思ってるし」
親友曰く、小野寺は欲がとにかく薄いのだそうだ。
まあそれは、確かかもしれない。
欲が薄いというのは良い事だと思う。
欲望が強いと、どうせ碌な事にならない。
今の時代、強欲である事を褒め称える傾向があるが。
ハングリーさと強欲である事は必ずしも一致しないし。
ましてや性欲が強い人間は何でも強い、というようなトンチキな理論は、広めたフロイトとかいうおじさんを助走付きでぶん殴りたい気分である。
このトンチキ理論で勘違いした奴がどれだけいることか。
色んな作品を観てきて、執拗に繰り返されるベッドシーンを見て、うんざりしていた小野寺だ。
誰も彼もが好きだと思うなよとぼやきたい。
そして今度はポリコレである。
多様性を歌いながら、むしろ自由を殺してしまっている謎の思想。
人権屋が主導して、文化を積極的に破壊しにいっている邪悪の権化。
それらも、金が欲しいという欲望から来ているものだ。
何が欲望は最高なのか。
はっきりいって反吐が出る、というのが小野寺の本音である。
「それはそれとして、どんな風に見て回る?」
「スケジュールは作ってきた」
「おお、流石だね」
「晴もこの辺りはスムーズに出来るように経験を積んでおいた方が良いぞ。 どうせクズみたいな同級生にあわせて、適当してたんだろう」
それについては返す言葉も無い。
決定的な孤立を避ける為に、時々股が緩い同級生とつるむ事はあったのだが。
様子を見ながら、最低限だった。
合コンとやらに連れて行かれたこともある。
相手が高校生だと分かっているだろうに。
平然と持ち帰ろうとしている社会人がいるのを見て。
世の中病んでいるなと、呆れたものだった。
「私、論理的な思考、苦手だもん」
「それは知っている。 だがそれは後天的に鍛えることが可能だ」
「そんなものなの」
「そんなものだ」
親友曰く、論理思考は自分で鍛えたそうである。
とはいっても、元々天才肌の親友だ。
昔級友だったころからそうで。
聞いたことは忘れないし。
どんな意地の悪い応用問題が出ても、絶対に正解していた。
ただ。同級生だった頃。親友が百点を取る事はあまりなかった。
というのも、とにかく担任の教師が意地が悪く。
親友が丁寧に答えた論理的な問題を、難癖をつけて点数を引いていたし。
目の敵にして質問を振って。
正解を親友が答えても、難癖をつけて馬鹿にしていたからだ。
こういう教師は何処にでもいると。
親友と離れて、高校に入ってから思い知らされ。
教師とはどうしようもないのが相当数混じっているなと軽蔑したものだが。
多分今なら分かる。
それは教師に限ったことでは無いだろう。
「そろそろだな。 行くぞ」
「うん。 何だかデートみたいでわくわくするね」
「デートか。 興味が無いな。 単純に楽しめればそれでいい」
「うーん、そうなのかな」
頷く親友。
そのまま、オープンキャンパスに向かう。
それなりに未来の人材を募集しているらしく、芸大らしい凝った演出を彼方此方にしていた。
大学自体は、芸大としてそこまで有名なものではないのだが。
それでもそれなりに凝っている。
また映画や小説関係も存在していて。
中々に面白い場所だと、小野寺は思った。
ただ、映画にしか興味は無い。
過去の学生の作成作品を見に行く。
高宮は確か本名で活躍している筈。殆どの見学者が別のを見ている中、いち早く親友が高宮の学校時代に作成した作品を見つけ。
二人で見ることにした。
かなりの長編である。
二時間だから、全部フルで見たら多分芸大で時間はほぼ終わってしまうだろうが。
そもそもこれを見に来たのだ。
自主製作映画を見ることが出来るスペースが存在しているので。
其処に出向いて。映画を見せてもらうことにする。
昔はビデオテープすらも高級品だったらしいし。
映画のフィルムもかなり高級品だったので。
駄目な自主製作映画だと、NGシーンも普通に使い回したりするらしいのだが。
流石に近年はその辺りもかなり改善されてきているらしく。
NGシーンが入っているような事は無かった。
だけれども、NGシーンはそれはそれで。
そもそも高宮がNGを出さないのかも知れないし。
ひょっとしたら、適当なまま撮影されているものもあるのかも知れなかった。
さて、あのエドウッドは。
学生時代の自主製作映画から、殆ど進歩がなく。
後にファンがそれを見て、驚愕したという記録があるという。
流石に小野寺もエドウッド作品はコンプしているが、それはあくまで本人がプロになってから作った映画であり。
更にはエドウッドを題材に作った映画である。
なお後者はクソ映画どころか名作なので、見ていて普通にエドウッドという人物を好きになれる。
何事も愛情が大事で。
撮った監督が、エドウッドという映画の才能だけがなく他を全て持っていた可哀想だけれどもそれなりに波乱に満ちた人生を送った人を。心の底からすいているのが分かる内容だ。
良くいる、原作を馬鹿にしてカスみたいな実写映画を撮る連中とは根本的に違うし。
そういう連中を助走をつけて殴るべきだと理解させられる作品だった。
まあともかく、高宮の学生時代の映画だ。
どんな酷い映画なのか。
わくわくしながら、小野寺はフィルムを回して。
ちょっとした映画館気分で楽しみ始めていた。