Fake/Another apocrypha after   作:ハトスラ

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プロローグ
プロローグ そして狂戦士と騎乗兵


 幼い頃、虹を見た。

 雨上がりの空。分厚い雲を引き裂いた日差しに、浮かび上がる極彩色の橋。

 妹と見上げたその景色があまりに綺麗で、喧嘩の最中だったことすら忘れて二人で見入った。

 

『きれいだね』

 

 そう言った彼女の顔は未だ涙に濡れていたけれど、その表情はついさっきまでとは対極のそれで。

 幼い自分は『そうだね』と、短く返して手を繋いだ。

 

 空の綺麗さと妹の表情。喧嘩していたことなんて、その二つを前にはどうだっていいこと。

 頭上にかかる虹を見上げながら、妹の手を引いて家路に就く。

 

 何気ない日常の、なんてこともない一日。

 けれどそんな、なんてこともない一日は自分にとっての特別になっていたらしい。

 妹と見上げた虹を、自分は未だ覚えているから。

 

 

 

 

 

 

 

~~13日前~~

 

 

 

 どうせ召喚するのなら、最強のサーヴァントがいい、と彼女は思った。

 

 七人の魔術師と、七人のサーヴァントで行う聖杯戦争では、自らの持ち駒であるサーヴァントの優劣によって勝敗がきまるといって過言ではない。そう思ったから、彼女はまず強いサーヴァントとは何かを考えはじめた。

 考えはじめて、真っ先にキャスターのクラスを除外した。『対魔力』というスキルがある聖杯戦争では、魔術師のクラスであるキャスターは不利がつきすぎる。

 次にアサシンを除外。このクラスは直接戦闘が苦手だし、なによりアサシン対策が横行している今のご時世では、マスターの暗殺を成功させることは難しい。

 残るは五つある基本クラスだが、この中ならばやはりセイバーだろうか、と彼女は考える。

 最速のランサー。強力な飛び道具を持つアーチャー。同じく、強力な切り札を持つとされるライダー。

 どのクラスも一長一短だが、セイバークラスは癖がなく、どのような局面でもそれなりに活躍できるという前評判だった。

 

 呼び出したいクラスが決まったので、彼女はセイバーを呼び出すための触媒を探しはじめた。

 聖剣や魔剣がそのまま見つかれば手っ取り早いのだが、当然そんな博物館クラスの聖遺物は見つからない。

 それでも彼女は首尾良く、触媒として強力な聖遺物を手に入れた。見た感じはただの石ころだが、どうやらこれは大昔に砕かれた『大理石の破片』らしい。

 それが本当ならば、この触媒で呼び出される英霊はまず間違いなくセイバーだ。それもかなり強力な。

 

 サーヴァント召喚に必要な触媒を用意した彼女は、聖杯戦争開催の地である日本へと飛んだ。入国したその日の内に召喚に適した霊地を押さえ、その晩にサーヴァントの召喚に踏み切った。

 いっそ清々しいまでの迷いのなさである。

 けれど、魔法陣の前で召喚の為の呪文を唱えている時に気づいた。

 

『確かに自分が召喚しようとしているセイバーは強力だ。だけどそのセイバーを狂化(・・)すれば、真実最強なのではないか』

 

 そう思い至った彼女は、今度もやはり躊躇しなかった。

 迷い無くサーヴァントに『狂化』を付与する詠唱を挟み込んで、惜しみなく召喚に魔力をそそぎ込んだ。

 

 サーヴァントを『狂化』すれば、戦闘力の底上げが見込める。代償として、そのサーヴァントからは理性が剥奪されてしまうが、そんなことは彼女にとってはどうでもいいことだった。

 そも、彼女が欲しているのは強力な駒であって、共闘者ではない。戦力を底上げしつつ、駒として運用するのに邪魔な理性が消えてくれるのなら、むしろ願ったり叶ったりである。

 欲しいのは高潔な騎士様ではなく、純粋な戦力なのだ。

 

「────天秤の守り手よッ!!」

 

 そうして詠唱の終わりとともに、理性を奪われた騎士は現世へと召喚される。

 

「オ……ォォオ……ォ……」

 

 呻き声のようなものを上げるだけで、言葉らしい言葉を発しないその様を見て、彼女は歓喜した。正確には、サーヴァントと契約を交わしたマスターとしての透視能力で見た、彼のステータスの高さにだ。

 思った通り、いやそれ以上のステータスに、彼女は勝利を確信する。

 

 やはり自分は間違っていなかった。

 最強の英霊に狂化を施せば、他の誰もが太刀打ちできない最強に出来るのだ。

 

「ふふ。あは! あはははははははははははははッ!!」

 

 喜びから思わず高笑いした彼女が、バーサーカーの桁違いの魔力消費に悲鳴を上げるのは、これより数分後の未来の話である。

 

 

 

 

 

 

 

~~7日前~~

 

 

「今、なんと言いましたか?」

 

 とある高級ホテルの一室に、呆然とも困惑とつかない声が響いた。

 

 声の主は金髪の青年だった。まるで映画の中の登場人物のような、端正な顔立ちの青年である。

 その彼は、深い青色の瞳を目一杯見開いて驚愕の表情を浮かべている。

 そんな表情ですら絵になる、というのは本人的にはどうでも良いことだろう。彼自身、外見より内面が大事だと信じて疑っていないし、その考え方のせいか、枝毛一つ無い金髪は、適当なところで乱雑に切り揃えられている。

 もっとも、それを差し引いても、彼が映画の中から飛び出してきたかのような美青年であるのは変えようのない事実なのだが。

 

「騎乗物は持っていないと言った」

 

 そう返すのは、燃えるような赤い髪が特徴的な青年だ。

 明らかに動揺している金髪の青年とは対照的に、堂々と、むしろ目の前の青年の反応を楽しんでいるようにすら見える。

 すらりとした長身に整った目鼻立ち。こちらも間違いなく美丈夫で通るが、その身に纏った衣装は、控えめな装飾が施された鎧という、どこかのコスプレ会場から抜け出してきたかのような、奇っ怪なものだった。

 

「そ、そんな馬鹿な話がありますか!? 貴方は『ライダー』のクラスで呼ばれたハズでしょう!?」

「初めにそう言ったろ。何だ、その両耳は飾りだったのか?」

「ではどうして!? 騎乗物のない騎兵など、剣のない剣士と同じではないですか!」

「あっはははははは!! なんだそりゃ! そんな剣士いる訳ねえだろ!!」

 

 半ば恐慌している青年を後目に、ライダーと呼ばれた青年は余程面白いものを見たかのように大笑いする。

 

「ライダー!!」

「ああ、いや。悪りぃ悪りぃ、アンタが面白いこと言うからつい。で、質問の答えなんだけどな。どうにも聖杯のシステム的なもんだろうと思う」

 

 諫めるような青年の声に、さすがに笑いすぎた、とライダーは片手を挙げて謝罪した。とはいえ、その目尻に涙が浮かんでいる辺り、まだ余韻は抜けていないようだったが。

 

「なんですって?」

「このサーヴァントシステムって奴は、英霊とセットでその『武具』も召喚してるようだが……、生憎と俺の騎乗物は生き物だ。これが戦車とかなら『武器』扱いで連れてこれたんだろうが、『武器』じゃない時点でシステムから弾かれたんだろうな」

「……他の『亜種聖杯戦争』では、生物系の騎乗物も確認されていますが」

「そういう奴らは『生き物を呼び出す能力』を持ってる英霊か、『生物と荷台がセットで戦車扱い』されてるかどっちかじゃねえか? ま、俺はどっちでもないんでね」

「つまり、本当に騎乗物はない、と」

「最初からそう言ってるべ? つうか、『アレ』は元々借り物だしな」

 

 ま、現地開催ならわからなかったが。と付け足してライダーは皮肉気に微笑んだ。

 

「ともあれ、こんな欠陥性能のライダーだ。単独で他に劣る以上、マスターのサポートが必要不可欠。尚且つ、それがそのまま勝敗に繋がるだろうよ。

 そういう訳で、頼りにさせてもらうぜ? 『マスター』」

 

 騎乗物のない騎兵とは、想定外にも程がある。

 赤い髪のライダーのマスターとなった青年は、開幕から苦労しそうな予感を受けて頭を抱えた。

 




【CLASS】バーサーカー
【真名】???
【マスター】???
【性別】男性
【属性】秩序・狂
【ステータス】筋力A+ 耐久A 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具?
【クラス別スキル】
狂化:C
 幸運と魔力を除いたパラメーターをランクアップさせるが、言語能力を失い、複雑な思考ができなくなる。

【固有スキル】
???


【宝具】
???


【召喚に使われた触媒】
 砕かれた大理石の破片


※あらゆる局面に対応できるセイバーつおい→そのセイバーを狂化すればもっとつおい。とかいう小学生並みなマスター現る。
あの、それじゃあらゆる局面には対応できないッス。
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