Fake/Another apocrypha after   作:ハトスラ

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「頑張れよ!」

 大切な人に向けて、有らん限りの声を絞った。
 聞き届けた彼が、これから先の苦難など感じさせない笑顔で叫び返す。

「ああ! 君も、頑張れ!」

 それを、覚えている。

 自分はどうしようもないバカだけど、その声と言葉をずっとずっと覚えている。




Interlude とある勝者の話

 執務室兼研究室の扉が勢いよく開け放たれた。

 

「やっほー! 遊びにきたよ!」

 

 扉が開くと同時に聞こえたのは、底抜けに明るい声。

 その声に頭を抱えながら一言。

 

「……帰れ」

 

 おおよそ予想通りの訪問者に、部屋の主は盛大なため息を吐いた。

 仮にも自分を訪ねてきた客に対する態度ではないが、そこはそれ。来客者との付き合いはもう随分長いし、普段から割と迷惑もかけられているし、なによりここ数日は厄介な案件に掛かり切りで忙しかったし。

 要するに客として対応するのも面倒くさいので、サクッと帰ってくれませんか。もしくは、こちらの精神をすり減らさない程度に用件だけ済ませてくれ、というこちらからのささやかな意思表示であった。

 

 一方の来客者は、そんなこちらの意図そのものに気が付く様子もなく、不満気に口を尖らせた。

 

「む。なんだよ、せっかく遊びにきたのに。っていうか、イギリスに寄ったら必ず顔を出せって言ったのはそっちじゃんか」

 

 返答は、まさかのド正論である。

 確かに過去、こちらは彼に対してそう注文をつけていたので、注文を守った彼に対して『帰れ』というのは、さすがに横暴にすぎるだろう。

 

 とはいえ『帰れ』と言ったのは、何も彼の相手が面倒くさいというだけではない。一応、それなりの理由があるにはあるのだった。

 

「言ったけどな。いまちょっとゴタゴタしてて。時計塔(ここ)()()()いるのはまずいんだ」

 

 目の前の来客者を見つめて言う。

 かれこれ()()()()()()()()()になる彼は、出会った頃と全く変わらぬ風貌のまま、これまた以前と同じような仕草で小首を傾げて見せた。

 

「それって、どっかでやってる聖杯戦争絡みのことかい? それならなんとなく知ってるし、ちょっと小耳に挟んだからここに来たんだけど」

「はあ?」

 

 思わず耳を疑った。

 彼の言うことは間違っていない。こちらのゴタゴタは、彼の言う聖杯戦争絡みのことである。

 問題なのは、それを『小耳に挟んだ』ことの方だ。どうやったら、秘密裏に執り行われる決闘儀式の情報を、『ちょっとそこで噂してたよ』とかいうノリで入手できるというのか。

 

「まあ、細かいところはぜーんぜん知らないんだけどねっ。なんか時計塔がざわついてるって聞いたから」

「……そんだけでこっち来たのかよ」

「そりゃあ、なにか力になれるかもしれないし。キミ、いろいろ結構大変だろう?」

 

 じっ、と澄んだ瞳がこちらを見つめ返す。

 思わず気圧されそうになって、首を横に振った。

 彼の言うことはある意味正しくて、ある意味では正しくない。

 

「大変は大変だけど。お前がいると、余計に話が拗れてくるんだよ」

「えーっ、なんでさ! こんなにも頼りなる()()()()()()なのに!」

「それがダメだって気付いてない時点で、話が拗れるのが目に見えてんだよなあ……」

 

 彼の言い分に、はあ、とこれ見よがしなため息を吐いた。

 

「聖杯戦争の件でゴタついてる時に、一応でも聖杯大戦の生き残りマスターと、一応でも聖杯大戦の勝ち残りサーヴァントが一緒にいちゃ、ややこしいことになるんだよ」

「一応ってなにさ! ボクはちゃんと最後まで残ったし、キミだってちゃんとバーサーカーのマスターだったろう?」

「いや、まあ。言い方が悪かったよ。とりあえず一応ってのは置いとけ。

 とにかく俺とお前が一緒になにかやってるってのが、もうまずい。諸々の権利を剥奪されて弱体化したっていっても、ユグドミレニアは聖杯大戦で協会にたてついた側だからな。ユグドミレニアの生き残りが、聖杯戦争の時期にサーヴァントとなんか一緒にいたら、『こいつまた何かやるんじゃ』って思われても仕方ないだろ?」

「でもキミ、そういう野心とは無縁じゃないか」

「無縁じゃあないが、反逆する気は全くないな」

 

 魔術師としての向上心とか、野心というにはちっぽけなものくらいは、さすがに持っている。

 持ってはいるが、魔術協会にたてつこうなんて無謀なことは全く考えていないし、なんなら聖杯大戦(一回目)で反逆には懲りている。自分の人生で、二度も魔術協会に反逆することはないだろう。

 

「ともかく、俺がどう思っていようが勘ぐる奴はいるもんだ。そんで、面倒くさいことに、俺とお前が一緒にいると勘ぐってくる連中がもっと増えることになるんだよ。わかったか?」

「んー、まあ」

 

 そう言った彼は、しかし頭が弱いので、こちらの話をちゃんと理解しているのか大いに不安が残るところである。とにかく、自分と一緒にいるとこちらが迷惑を被る、ということだけわかってもらえればそれでいい。

 

「カウレス」

「なんだ」

「キミ。ボクと会うとき、いつも厄介なことになっていないかい?」

 

 もしかしてトラブルメイカー? などと悪意無く首を傾げた彼に、カウレスはこの日何度目かになるため息を吐いた。

 

「それ、半分以上お前が原因のトラブルだけどな。ライダー」

 

 

 

 ともあれ、これが元・黒のマスター・カウレス・フォルヴェッジと黒のライダー・アストルフォの再会であった。

 

 

 

 コーヒーを二杯。自分の分は気持ち濃いめに。アストルフォの分にはミルクとガムシロップを注ぐ。

 

「ほれ」

「ありがとー」

 

 机に散乱していた実験道具やら書類の類を片付けてスペースを作ると、カウレスは着席して眉間の皺を伸ばした。

 

「お疲れだねえ」

「たったいま疲れることが増えたんだよ」

 

 手元に残したタブレットを2、3回操作すると、画面に今現在のカウレスの工房────すなわちこの場所だ────の状態が映し出された。次いで、一族の魔術師から何件かの連絡がある旨が記される。

 ちなみに魔術師は現代機器を嫌う傾向にあるが、カウレスは使えるものは使う主義だ。自分の能力で及ばない、あるいは処理が厄介なものを現代の科学技術で補えるのなら、迷い無くそうする。自身の非才さは身に染みてわかっているので、魔術以外で才能を埋め合わせられるのなら、科学技術だって使うのだった。

 

「前にも言ったと思うんだけどな」

「ん、なにー?」

「ウチにくるなら、事前に一報をいれてくれよ。本当に、いろいろ大変なことになるからさ」

「連絡入れるより直接会った方が早くない? キミ結構忙しいだろうし、いなきゃいないでボクは余所に行くし」

 

 こう、予想通りの返答が来て、思わず眉間を押さえる。

 

「あのな」

「うん」

「お前が俺の断りもなく工房に入ると、工房の魔術防壁がメチャクチャになるんだよ」

「あー、そっちの話かー」

 

 ライダーは気の抜けた声で言うが、カウレスにとってはそう気楽なことではない。

 魔術師にとって自分の魔術工房というのは、研究室であり、研究成果を保管する保管庫であり、外敵から身を守る要塞でもある。カウレスはそれほど才能のない魔術師だが、それ故に魔術工房の防衛機構には人一倍気を払っているのだった。

 

 しかし、魔術師相手にある程度効果が見込める防衛機構でも、目の前にいるサーヴァントにはほとんど意味をなさない。

 

 なにせこいつの対魔力ランクは最高のA評価。現代の魔術師では傷一つつけられない上、サーヴァント同士の対決でも魔術の類はほとんど効果がないだろう。

 実際、聖杯大戦終盤ではライダーの絶大な対魔力に大いに助けられた。攻性魔術も防性魔術もお構いなし。直接攻撃も罠の類も全部吹っ飛ばす。この破格の対魔術性能は、敵対するアサシン(キャスターでないあたりが聖杯戦争の妙である)への切り札でもあったのだ。

 

 で、そんな対魔力を持ったサーヴァントが、防衛機構の働いている魔術工房に迂闊に踏み入ればどうなるか。

 

 まず工房は、主の許可無く工房内に立ち入ろうとした者に対し、速やかなる攻撃を開始するだろう。

 警報。幻惑。魔術攻撃。呪いに魔獣に悪霊とエトセトラ。侵入者が工房の奥に進もうとした時点で、こういったものの驚異にさらされるハズだ。

 

 そして対魔力を持つライダーは、それら全てをぶっ飛ばす。

 神代の魔術すら通用しないサーヴァントが、どうして現代魔術師の工房如きで止まるというのか。工房からの攻撃全てを跳ね返した上で、罠を無傷で踏み抜き、魔獣や悪霊は使役さえさせず、警報を無力化して、幻惑なんてなかったことにする。

 そして後に残るのは、彼の侵入ルートに合わせてごっそり無力化された無惨な工房の姿である。つまり今のカウレスの工房だ。

 

 タブレットに表示された魔術工房の被害状況を見るに、防壁を完全修復するには最低でも二日かかるだろう。せめて事前にこちらに来ることがわかっていれば、工房の侵入者対策をもう少し調整するか、ライダーが来る時だけ防壁をオフにしたというのに。

 ライダーがお気楽にカウレスを訪ねてくるたび、毎度こういう自体になるので、いい加減一報が欲しいのだ。

 

「やー、ごめんごめん。ボクにとっちゃあ、魔術工房なんてあってないようなもんだからさ。忘れてたよ」

「だよな、お前そういう奴だよな……」

 

 あっけらかんと言うライダーに、ガックリと肩を落とす。

 嫌味とかそういうことではなく、ライダーにとっては現代魔術師の魔術工房攻略など、本当に他人の家の戸をノックするのと変わらないのだ。そして、そんなどうでもいいことに気を払えるほど、このサーヴァントは頭良く(理性残って)ない。

 

「ところで、結局ここでコーヒーなんかもらっちゃったワケなんだけど。キミ、ボクを追い出さなくて良かったのかい? 大変だー、って自分で言ってたと思うんだけど」

「言った。言ったけど、接触しちまった以上、もう仕方ないだろ。俺が魔術協会から目をつけられてようが、つけられてまいが、お前と接触した時点で面倒事は始まってるようなもんだ。今更ジタバタするのもバカらしい」

「ふーん。キミ、変なところで剛胆だよね」

「誰かさんに振り回されてるうちに、繊細な神経じゃやっていけなくなっただけだ」

「いやあ、それほどでも」

「……さすがに、皮肉だってわかって反応してるんだよな?」

 

 はあ、とため息を吐いてコーヒーを啜る。

 一族からの連絡には後で返事をすることにして、カウレスはタブレットを脇にどけた。

 

「そんで? 今度はどこを回ってきたんだ?」

「いろいろ!」

 

 にこやかにそう答えたサーヴァントは、カウレスの知る限り、一つの土地でじっとしていることをしない。

 聖杯大戦終了時に『世界を巡ってみる』と宣言し各地を旅した彼は、そこでどうにも放浪癖のようなものがついてしまったらしい。かれこれ60年近く、あっちへふらふら、こっちへふらふらを繰り返している。

 

 サーヴァントを好き勝手放浪させるなど、普通の魔術師が聞けば正気の沙汰ではないと思われるだろうが、カウレスとしては、彼が誰にも行方を告げずに放浪している方が都合が良いと思っていた。

 このサーヴァントの性質を考えるに、手元に残しておいても御しきれないだろうし、協会側に彼が聖杯大戦の勝ち残りサーヴァントだとバレると、結構な大事になりそうなのである。それならいっそ、誰にも縛られずにその辺をふらふらしていてくれた方が、遙かに心労は少ないのだ。

 

 もちろん、協会の中にもライダーがサーヴァントだと気づいている人間はいるだろうし、それが聖杯大戦の勝ち残りだと勘づいている者もいるだろう。全員に隠し切れていると思うほど、カウレスも脳天気ではない。

 それでもそれは、ライダーが協会に捕まりさえしなければ確証は得られない話だし、彼が一人きりなら、魔術師程度にはまず捕まりはしない。カウレスの工房の中に仕舞い込んでおくより、一人きりで外に放り出しておく方が遙かに安全なのである。

 

 そんな事情を知ってか知らずか、今回も無事にふらふらしてきたサーヴァントは無邪気な笑顔のままこう続けた。

 

「今回は南米の方に行こうかと思ってたんだけどね、途中で道に迷って、気付いたらインドだった」

「また盛大に迷ったな……」

「うん。でね、そこで聖杯戦争やってたからチラッと様子をうかがって」

「うかがうな。また、ややこしくなるだろ」

「聖杯の暴走が起きたから、聖杯を壊すのを手伝って」

「インドでの亜種聖杯の暴走って……。そういや二年くらい前にあったな、そんな話」

 

 なんでそんなもんに都合良く遭遇できるのか、と呆れるべきなのか、関わろうとするな、と諫めるべきなのかわからずに、カウレスは頭を抱えた。

 

「いちおうキミに伝えとこうか、と思ってイギリスを目指してたんだけど、その途中の国でもおもしろいことが色々あってさ。さっきまで忘れてたんだよね」

「そんな大事な話を忘れんなよ……」

 

 とはいえ、このポンコツさがライダーがライダーたる所以である。目の前のサーヴァントに対して、理知的な行動を求める方が大間違いなのだ。

 

「そうそう! おもしろいことって言ったら、ここに来るまでにケイローンに会ったよ!」

「ケイローンに?」

 

 ライダーから飛び出した名前に眉根を寄せる。

 

 古代ギリシャの英雄ケイローン。

 ヘラクレスやアキレウスといったギリシャ神話における英雄たちの師匠であり、彼自身も優秀な弓使いでもある。

 

 当然、現代を生きる者たちと彼の英雄とに面識などあるハズがない。ついでに言えば、『ちょっとそこで会った』なんてことも起きるハズがない。相手は千年以上前に没した英雄である。

 

 ただ、例外があるとするならば、

 

「お前それ、どんだけ聖杯戦争に遭遇してきてんだよ」

 

 そう。聖杯戦争のサーヴァントとして、再びこの世に召喚された場合であろう。

 実際、カウレスがケイローンと出会ったのも先の聖杯大戦での話だ。そして『ケイローンと会ってきた』と語る目の前のコレも、遙か昔に死んで、60年ほど前に現世に召喚された英雄である。

 

 亜種聖杯戦争が盛んな昨今では、さまざまな場所でさまざまな英霊が召喚される。

 ケイローンほどの英霊であれば、サーヴァントとして引く手数多であろう。それはつまり、他の英雄よりも聖杯戦争に喚ばれやすいということ。現代でも遭遇しやすい英雄だとも言える。

 

 とはいえ、それは他の英雄と比較した場合の話だ。星の数ほどいる英雄の中から、ケイローンに偶然出会える確率はかなり低い。

 そもそも聖杯戦争自体が秘匿されるものだ。秘密裏に行われる決闘に遭遇するばかりか、そこで特定のサーヴァントに出会うこと自体がちょっとあり得ない話なのである。

 

「いやあ、実際びっくりしたよね。あれは……、たしかブルガリアあたりだったかな」

「ブルガリアって……。ギリシャにだいぶ近いぞ。そんな場所でケイローンって」

 

 サーヴァントの強さは、主に『生前の能力』『マスターの能力』『その英雄の知名度』によって決定される。要するに同じ英霊を呼び出したとしても、呼ばれた場所とマスターによって能力にバラツキが出るということ。

 英雄の知名度なんてものは、その英雄の出身地に近ければ近いほど上がっていくと相場が決まっているので、ギリシャの隣国で召喚されたギリシャ英雄というのは、能力にそれなりのボーナスをもらって召喚されているハズだ。

 挙げ句、その知名度補正を受けるサーヴァントが()()ケイローンでは、他のサーヴァントではまず歯が立たないだろうに。ケイローンを召喚したマスターは、触媒探しを相当うまくやったのだろう。

 

「ケイローンと会うのは、この60年で四回目だけどさ。相変わらず先生してるみたいだったよ」

「……ってことはお前、聖杯戦争やってるサーヴァントに話しかけに行ったんだな?」

「見知った顔が見えたからつい。戦闘中に出会ったなら逃げるところだけど、休息中みたいだったから」

「よく攻撃されなかったな。お前がその聖杯戦争の参加者じゃないにしても、相手はそんなことわかんないだろうに」

「ケイローンは話のわかるやつだからね! キミだってそれはよく知ってるだろう?」

「それは、まあ」

 

 それにしたって、とは思うが。

 聖杯戦争中のサーヴァントにサーヴァントが近づいていけば、まず警戒される。問答無用で攻撃されてもおかしくはない。

 それに、仮にケイローンに攻撃の意志がなかったとしても、そのマスターまでそうであるとは限らない。

 

 というかそもそも、『ケイローンに会うのは四度目』というのにツッコミを入れるべきなのだろうか。一度目は聖杯大戦、四度目は今回としても、さらに別口で二回ケイローンと出会っている計算である。

 

 亜種聖杯戦争なんて、狙って遭遇できるものでもないだろうに、このトラブルメイカーはどれだけトラブルを引き寄せる体質なのか。と、そこまで考えて、カウレスはバカバカしくなった。ツッコミを入れ出すとキリがない。思考を放棄したとも言える。

 

「ケイローンとは何を?」

「んー、昔は同じ陣営でよろしくやってたよねって話とか? 実感はないけど、そんなこともあった気がしますって言われた」

「ま、そうだろうな」

「うん。あとは今のマスターの話とか。この聖杯戦争では、このままじゃたぶん負けるなって話とか」

「負ける? ギリシャ近くでケイローンがか?」

 

 思わず口を挟んだが、ケイローンの戦力分析は正確だ。むしろ、それだけに信じられない気持ちがある。

 

「なんかバカ強いセイバーがいたらしくってねー。向こうがバーサーカーで呼ばれてたら、それこそ一ミリも勝機がなかったから、まだマシとは言ってたけど」

「そこまでのサーヴァントなのかよ……。いるとこにはいるもんだな。聖杯大戦で出会わなくて良かったぜ」

 

 心の底からそう思う。

 聖杯大戦も化け者どもの集まりではあったが、ケイローンを以てして太刀打ちできないサーヴァントなどそうはいなかった。なにせケイローンは、ギリシャ最大の英雄・アキレウスともまともに勝負ができるサーヴァントだったのだ。

 そのケイローンをして、勝てないと確信させるサーヴァントとは。それはもはや、英雄全体を通してトップクラスの猛者なのではないだろうか。

 

「興味本位で聞くけど。それ、単にケイローンと相性がメチャクチャ悪いってだけじゃないんだよな?」

「今回、向こうはセイバーだから()()()()()()()()だろうし、だったら別に相性が悪いってワケでもないって言ってたかな」

「おいまて」

 

 それはつまり、場合によっては弓を持ってこれるようなサーヴァントということか。

 

 セイバーとアーチャーとバーサーカーに該当できる能力を持つ英雄で、ケイローンが勝てないと断言するような強さで、もし弓を持ってきてたら相性が悪いような相手とか……。

 

「……ヘラクレスじゃないだろうな、そいつ」

「そこまでは聞いてないけど。でもさすがのボクも、きっとヘラクレスなんだろうな、とは思ったよ」

「もし本当にヘラクレスだったんなら、数奇な巡り合わせだってつくづく思うよ。俺らが知ってるだけでも二度目だろ。弟子との対決」

「教師って大変なんだね」

「すげえ雑にまとめたな、おい」

 

 とはいえ、そういうことだ。

 ケイローンの心労を思って息を吐いたカウレスに追撃をかけるかのように、ライダーが言った。

 

「あ、そうだ。久々にケイローンに会ったから、キミのお姉さんにも会いに行ったよ」

「なにしてくれてんだ、お前」

 

 カウレスの姉・フィオレは、かつての聖杯大戦でケイローンのマスターだった。ライダーがケイローンを見て、フィオレを思い出すのもまあ無理からぬ話ではある。

 

 あるのだが、そういうのはちょっとやめて欲しい。

 聖杯大戦の最中、紆余曲折あってカウレスはフォルヴェッジ家の後継者となった。同時に、本来家督を継ぐハズだったフィオレは魔術師を辞め、一般人としての生活を始めた。

 以来カウレスたち姉弟は別々の道だ。

 神秘を扱うカウレスは一般人の領域に立ち入らないように注意して生きているし、一般人となったフィオレは二度と魔道とは関わらないだろう。

 血を分けた姉弟として寂しくないと言えば嘘になるが、二人とってはこれがきっと一番いい。

 

「キミがそう言うと思って、遠目にチラッと見ただけだよ。孫に囲まれて、幸せそうなおばあちゃんになってた」

「ああそう。そりゃよかった」

 

 カウレスの感想は無論、二重の意味である。

 せっかく一般人になれたのに、今更こんなの(サーヴァント)と再会したらどうなっていたか。

 

「にしても」

「なんだよ」

「フィオレは可愛いおばあちゃんになってたっていうのに、キミはあんまり変わんないね。それ、若返りの魔術かなにか?」

 

 ライダーの言葉に、思わず鏡を見た。

 そこにはメガネをかけた、やや神経質そうな30代前半くらいの男の姿が映っている。

 

「魔術師のアンチエイジングなめんな。っていうか、お前がそれ言うのか」

「ボクはほら、サーヴァントだから」

 

 この60年でまるで容姿の変わらないライダーが、あっけらかんと言う。

 

 サーヴァントは基本的に、その英雄の全盛期の姿で召喚される。

 その例に漏れず、60年前の聖杯大戦で、ライダーは十代後半の少女然とした姿で召喚された。そして60年経った今でも、変わらず以前のまま、少女のような外見を晒している。

 60年も現界し続けた希有な例であっても、ライダーは基本的にはただのサーヴァントである。なんらかの形で受肉したならともかく、霊体であるサーヴァントが年を取ることなどないだろう。

 

 一方のカウレスは実年齢80歳間近のジジイだが、外見年齢は30代前後で止まっている。要するに若作りだ。

 普段なら自分の外見など取り繕わずジジイの姿のまま応対するのだが、目の前のライダーは別だ。昔からの知人に、弱った老人の姿を見せるのはなんとなく抵抗がある。それも、向こうが年を取っていないのだから尚更だ。言ってしまえば、これはちっぽけなプライド。意地である。

 もっともカウレスのこれは外見を若く見せるだけの魔術なので、実際にはジジイであることに間違いはないけれど。

 

「キミ、いま80歳だっけ?」

「78だよ」

「そっか。もうそんなになるんだね。そりゃ色々あるわけだよ」

「なんだ急に年寄りみたいなこと言い出して。いや、60年も現世を生きてたらそうなってもおかしくないのか?」

「どうだろ? でもほら、まだ若い時から知ってた人間が結婚したりとかおばあちゃんになってたりとか、あるいは死んでしまったりとか。そういうの見てくると、年寄り気分にはなっちゃうのかも」

 

 ライダーの言い分に、カウレスは、ああ、と頷いた。

 

「こないだゴルドのおっさんの葬式があったんだったか」

 

 ゴルド・ムジーク。かつての聖杯大戦で黒のセイバーのマスターだった男の名前だ。

 

「うん。知らせを聞いたときには地球の反対側にいたから、葬儀には顔を出さなかったけど。一昨日墓参りには行ってきたよ」

「まさかサーヴァントに墓参りされるとは思ってもなかっただろうな。それもお前に」

 

 サーヴァントは基本的に、呼び出された用件が済めば、現世から『英霊の座』に帰る。マスターがなんらかの要因で急死しないかぎりは、現世に生きる人間より、サーヴァントが消える方がどうやったって早いものだ。

 加えて、気ままに生きているライダーと、サーヴァントはマスターに従っていればいいと思っていたゴルドは大戦中から相性が悪かったような気がする。

 

「ま、そうだろうね。でも一応、彼はボクのマスターの生みの親みたいなところあるし」

「驚いた。お前意外と義理堅いとこあるんだな」

「意外とはなにさ! 義理と人情には人一倍厚いぞ、ボクは! キミの方こそ、親戚だったんだからちゃんとお葬式に出たんだろうね?」

「出られるわけないだろ」

 

 ライダーの言うとおり、カウレスとゴルドはかつて同じ一族だった。それぞれユグドミレニア一族として、長であるダーニックの下に集い、魔術協会に宣戦布告。聖杯大戦に参加したのである。

 けれど大戦はユグドミレニアの事実上の敗北という形で幕を閉じた。カウレスたちは大戦を生き残ったものの、魔術協会から様々な罰則、制約を受けることとなった。

 そのうちの一つが、『ユグドミレニアの解体・および集会の禁止』。要するに、お前たちは二度と結束しないように、別々に生きていけ、といったようなものである。

 

 そういうわけで、カウレスはゴルドの葬式には出席していない。もちろん死に目に立ち会うことすらもなかった。

 

「ま、さすがに墓参りくらいはしてやろうと思ってるよ。アレで結構、身内には甘いところあったからな」

 

 たとえばそれは、自分の言うことをさっぱり聞かなくなってしまったホムンクルスたちだとか。

 結果だけを見れば、そのホムンクルスたちをそそのかすこととなった、ライダーのマスターだとか。

 

 気にくわない、とイライラしながらも、結局のところそういう者たちの世話を焼いてしまう辺りが微妙に憎めない人物だった。

 

「そっか」

 

 カウレスの言葉に、ライダーが満足そうに笑う。

 そうしてコーヒーを飲み干すと、ふう、と一息ついてこう切り出した。

 

「ボクはこの60年、いろんなところを回ってきた。その度に一回二回は聖杯戦争を見かけるんだけどね」

「頻繁に遭遇しすぎだ。もっと避けろ」

 

 つっこむまいと思っていたのに、思わずツッコミを入れてしまった。

 早々に話の腰を折られたライダーが、不満気に口を尖らせる。

 

「知らないうちに巻き込まれてるんだからしょうがないじゃないか。……それで、さっきも言った気がするんだけどケイローンとは四回会ったんだ」

「ああ。そんで?」

「アキレウスには三回、アタランテには二回? あとはヴラドにも会ったっけ。あの戦争に関わってたサーヴァントには割と会ってると思うんだけど」

 

 んー、と指折り数えながら(このサーヴァントには珍しいことに)何かを考えるように言う。

 

「けど、なんだよ」

「フランケンシュタインには会ったことないなって。あとルーラー……、は仕方ないか。あ、ジャック・ザ・リッパーも見ないな」

「そりゃ、ルーラーとジャックは特殊な例だからな。あと聖杯戦争は基本的に強いサーヴァントを呼び出すもんだ。近代の英雄なんて呼んだって、どうしようもないだろ」

 

 聖杯戦争におけるルーラーのクラスは、文字通り戦争のルールを司る者。彼らは自らのための願望を持たず、特定の誰かに仕えず、聖杯戦争そのものを守るためにのみ、聖杯によって召喚される。

 要するに、聖杯大戦のような異常事態でもなければ、まずお目にかかれないクラス、ということだ。

 

 一方のジャック・ザ・リッパーは、『正体不明の怪人』という属性が強調されているのか、呼ばれるたびどうにも姿が安定しない。

 カウレスたちの見たジャックは幼い少女の姿だったが、別の場所では大柄の男性の姿だった、なんてこともあったらしい。

 

 フランケンシュタインに関してはカウレスの言ったとおり、近代の英雄だからだろう。

 神秘を打ち負かすにはより強い神秘が必要になる。そして神秘とは時代を遡れば遡るほどに強くなって行くものだ。

 神秘のぶつかり合いとも言える聖杯戦争において、時代の浅い英雄なんてそれほど重要視されないのだ。

 

「ボクとしちゃ、キミが聖遺物握ってるからだと思うんだけど」

「……さあな」

 

 ライダーの指摘に目を逸らす。

 聖杯大戦の折りに手に入れた『人造人間の設計図』は、確かに今もカウレスの手の中だ。

 

 亜種聖杯戦争が盛んな昨今、英霊召喚の為の触媒は、それがどんな物でも高値で取り引きされる。

 近代の英雄が重要視されないことは紛れもない事実ではあったが、だからといって彼女を呼び出す触媒が全くの無価値という訳ではない。それこそ、ノドから手が出るほど欲している魔術師だっているハズだ。

 

 にも関わらず、カウレスは触媒を手放さない。

 それが感傷からくるものなのか、単に資産として手元に置いておきたいからなのかは、もはやカウレス自身にもわからないことだった。

 なので、今更ライダーにその辺りのことをツッコまれるのは、なんというか正直困る。

 

 そんなカウレスの内心を読んだわけではないだろうが、ライダーはそれ以上この件について言及するようなことはなかった。

 

「うん、そう。まあキミの言うとおり、聖杯戦争には強いサーヴァントが呼ばれる。だからケイローンやアキレウスによく会うのはわかるんだ。でも、不思議なことにジークフリートにはまだ会ってない」

「ま、確かにセイバーとしちゃ最高クラスかもしれんが。そもそも聖杯戦争に遭遇できるだけおかしいんだ。そこで知ってる顔に出会えなかったからって、不思議じゃあないだろうよ」

「そうかなあ……。あいつくらいになれば、ひっぱりだこだと思うんだけど」

 

 黒のセイバー・ジークフリート。

 ニーベルンゲンの歌に語られる万夫不当の竜殺し。

 伝説に恥じない強さを誇った彼は、確かにサーヴァントとして引く手数多だろうが。

 それでも遭遇できるかは運である。というか、会える可能性なんてゼロに近いくらいだろうに。

 

 だいたいカウレスと同じく、ゴルドだってあの触媒を手放してはいなかったハズだ。遺品整理で売り払われでもしていなければ、触媒は未だにムジーク家にあることになる。

 アレ以外の触媒では絶対に召喚できないわけではないが、それでもジークフリートを呼ぶのにアレ以上の触媒はあるまい。

 

「はあ」

「なんだ」

「一度くらいはまともに話してみたかったからさ。ちょくちょく聖杯戦争に関わると、どうしてもね」

 

 珍しく沈んだ様子でライダーが言う。

 

『もっとちゃんと話せばよかった』

 

 消滅した黒のセイバーを指して、ライダーがそう言っていたのだと、いつだったかケイローンに伝え聞いたのを思い出した。

 

 ちゃらんぽらんで脳天気で何も考えてないように見えても、コレで意外と普通の人間のように後悔したりもするのだろうか。

 60年付き合ってきて初めて、カウレスはそんな風に思う。

 

「どうせお前はこの先も行く先々でトラブル起こして、ついでにトラブルに巻き込まれるんだ。そんときにお前が死んでなかったら、そのうちに会えるだろ」

「うん、そうだね! なんだ。キミ、意外といいこと言えるじゃないか!」

 

 なんとなく根拠のない慰めを口にすると、ライダーは花の咲いたような笑顔を浮かべた。

 驚くほどに立ち直りが早いのは、間違いなくこのサーヴァントの長所だろう。

 

 そんな風に、取り留めのない話をした。

 古めかしい時計が、ボーン、ボーンと、何度目かの仕掛けを鳴らす。

 

「と、ボクはそろそろ行くよ」

「ああ。まあ、長居されても困るから行くならさっさと行ってくれ」

 

 都合、三杯目になるコーヒーを飲み干しながら応えると、ライダーはむっと眉を吊り上げた。

 

「もうちょっと別れを惜しむって気持ち、キミにはないのか!」

「どうせまた三年もすれば、今日みたいにふらっと現れるだろうが」

「じゃあもうちょっと心配とか!」

「どんだけ心配しても、厄介事に頭から突っ込んで行く奴心配するだけ損なんだよ」

 

 それがこの60年間で、カウレスがこのサーヴァントから学んだ数少ない教訓である。

 さらに付け加えておくなら、どんな厄介事からでも無事に帰ってくるだろうな、という信頼もある。本人には絶対に言わないが。

 

「ヒドい奴だな」

「そう思うなら、もうちょっと大人しく旅をしてくれ」

 

 でもそれは、多分ライダーがライダーである限り不可能なのだろう。

 

「それじゃ、改めて行ってくるよ」

「おう。まあ久々に話せて楽しくはあった」

「素直じゃないね、キミも」

「ほっとけ」

「じゃ、また」

「おう」

 

 気安い見送りをして別れる。

 二人が離れるのに、そう大仰なものは必要ない。カウレスとライダーとの間にはそれほどの絆があるわけでもないし、そもそもこれが今生の別れというわけでもないのだから。

 

 と、一つ大切なことを言い忘れていた。

 こちとらこの案件のせいで、最近忙しかったのである。

 

「あ、そうだ。お前、いま冬木には行くなよ! 絶対ややこしいことになるから、日本の冬木には行くなよ!」

「わかったー!」

 

 既にカウレスの工房から出掛かっていたライダーにありったけの声で叫ぶと、ライダーは片手をあげてお気楽に返した。

 

「当面の目的地は天草だから、大丈夫!!」

 

 その声を最後に、ライダーはさっさと外へ飛び出していってしまった。

 後には呆然としたまま取り残されたカウレスが一人。

 

 カウレスはこの後の展開を思って、声を上げた。

 

「アマクサって……。日本じゃねーか、アイツなにもわかってねえ!?」




※原作キャラ/ゼロとは……?

今回登場の彼は外見年齢に、精神年齢が引きずられてる事例です。普段はもうちょっと老成しているハズ。

???「ボクが関わったことで、何かが変わるかもしれないし。なにも変わらないかもしれない」

だからきっと、この世界線の彼はずっと世界をふらふらしてるんじゃないかな?

ちなみに本編とはまったく関係ないけど、一応各亜種聖杯戦争内訳

インド聖杯戦争

セイバー:ラーマ
ランサー:カルナ
ライダー:ダレイオス三世
アサシン:百貌のハサン

顛末
 アサシンによる暗殺でライダーのマスターが死亡。セイバーと戦っていたライダーは魔力供給を失いセイバーに敗北。
 アサシンは次にランサーのマスターを狙うも、ランサーによって撃退。
 撤退経路からアジトを割り出され、ランサーが宝具でアジトごと吹き飛ばす。アサシン自体は事前にいくつか分身体を避難させていたが、アジトごとマスターが死んでしまい魔力不足で消滅。
 セイバー対ランサーの超インド対決勃発。無敵の鎧、対神宝具で優勢かと思われたランサーだったが、魔力を使いすぎるとマスターが干からびるので宝具はおろか魔力放出すら出し惜しみ。結果同じく超インド鯖であるセイバーに終始圧される事態になる。
 ランサーのマスターは令呪ブーストでの魔力確保、宝具での一撃決着を提案。ランサーも了承するも、そこで聖杯が暴走。器から漏れ出した魔力が周囲を汚染し始める。
 周囲への被害と神秘の秘匿を考えた結果、セイバーのマスターとランサーのマスターは結託。セイバー、ランサー、通りすがりのアストルフォの三騎による攻撃で聖杯を破壊。勝者不在のまま終幕。



ブルガリア聖杯戦争

セイバー:ヘラクレス
ランサー:ヘクトール
アーチャー:ケイローン
バーサーカー:ペンテシレイア
キャスター:メディア

顛末
 聖杯降霊予定地はギリシャだったため、みんな必死にギリシャ英雄の触媒を探したが、なんのミスか聖杯はブルガリアに出現。地獄のギリシャ戦争inブルガリアの幕開けである。それはそれとしてメディアさんは泣いていい。
 全サーヴァントが一同に会する混沌とした初戦。セイバーがあまりにもアレすぎたため、残りの四陣営が結託。対セイバー同盟を結ぶ。
 フロントをバーサーカー。フロントの隙を守るランサー。それらを援護するアーチャーとキャスターの遠距離射撃という布陣でセイバーに挑む同盟。
 対するセイバー陣営は、キャスターが工房を完成させると厄介になると見て、四対一の状況にも関わらず同盟相手に短期決戦を臨む。
 が、四人相手ではさすがに攻めきれないセイバー。一方で同盟側もセイバーを殺しきれない膠着状態────つまり攻撃を受ける度に耐性を得るセイバーが徐々に優勢になる悪夢のような戦闘。
 長引かせても、仕切り直しても状況が悪くなると判断した同盟側は宝具の使用を解禁。結果、見事にセイバーを一殺するものの、セイバーは『殺されながら』一番厄介なランサーを撃破。『復活しながら』バーサーカーを撃破。
 一つの命で前衛を殺しきり、セイバーは後衛に肉薄。確実な撤退をするために、アーチャーはやむなく宝具を使用。見事二つ目を奪いつつ撤退。

 だが、キャスター。貴様は逃がさん。

 元々の『キャスターの工房作成を妨害する』という目的を果たすために、撤退するキャスターを追って、追って、追いまくって撃破。メディアさんは本当に泣いていい。

 セイバーとアーチャー。最終戦は運命の師弟対決と相成った。
 セイバーの宝具により、もはや自分の宝具が通用しないだろうことを察したアーチャーは、最後の決戦に弓を捨て、スキルランクA相当のパンクラチオンで挑み、そんな師匠の心意気に胸を打たれたセイバーもまた、彼から仕込まれたパンクラチオンで迎え撃つ。
 地獄のギリシャ戦争inブルガリア決勝戦は、まさかの素手での格闘戦になったとかならなかったとか。


以下ネタ


【いんたーるーど】剣弓陣営が正月してるだけ


九条レイジ(以下九)「もぉ~い~くつ寝~る~とぉ、おーしょーうーがーつー♪」
雅「いえ、寝るどころか当日ですよ。今日」
九「あ、遠坂さん。明けましておめでとうございます」
雅「あ、はい。明けましておめでとうございます」
九「はいこれ。少ないけどお年玉」
雅「へ? おとし……、え? え?」
剣「マスター。アーチャーのマスターが随分混乱しているようだが、お年玉とはいったい?」
九「うちの国では、新年になると、年長者が子供にお小遣いあげる風習があるんだよ」
剣「なるほど。ニホンの新年の祝い事なのだな?」
九「まー、そんな感じ。あ、セイバー雑煮あるけど食う?」
剣「ゾーニ?」
九「餅の入った……ってわかんないか。まあ美味いから食ってみろよ」
剣「ではお言葉に甘えて。……む、これは中々」
九「だろ? 餅はノドにつまりやすいから、しっかり噛んでな」
雅「子供じゃあないですし!」
九「うお!? ビックリした、どうした!?」
弓「マスター、マスター。ツッコミが遅い上に、それは子供の言い分です」
剣「マスター。おかわりをいただけるか?」
九「あ、うん。ゴボウも入れるか? かつお節もあるぞ?」
剣「ほうほう。いただこう。アーチャー、貴公も一杯どうだ?」
弓「いえ、私は」
剣「なに。遠慮をするな。食事は大勢の方が美味く感じられるものだ」
九「そうそう。正月くらい気張らずに、まあのんびり餅でも食ってくれよ」
弓「では、そのご厚意に甘えましょうか」
雅「そこ! 無視しないでください!」
九「ああ、ごめん! 無視したつもりはないんだけど。あ、遠坂さんも食べる?」
雅「お年玉なんて、普通親類に渡すくらいものでしょう!? 受け取れません! あとお雑煮はいただきます!」
九「うんうん。あ、簡単だけどお節もあるから。エビとか食べる?」
雅「昆布巻きをいただきます! っていうか、なんですあの額!? 私はアナタの孫かなにかですか!?」
弓「むぐむぐ……、なんと。マスターはセイバーのマスターの孫だったのですか」
剣「もぐもぐ……、いや、親類内という話ではないか? 身内で聖杯戦争とはまた業が深いな。……で、一杯どうだ?」
弓「いただきましょう。……ふむ。これは中々」
剣「ああ。現代の酒も中々」
雅「アンタたちがお餅に夢中でなにも聞いてないことだけは、よーっくわかりました!」
剣「もぐもぐ……、貴公のマスターはなにをそんなに怒っているのだ?」
弓「むぐむぐ……、おそらく子供扱いが気に入らないのでしょう。マスターは多感な年頃ですので」
剣「背伸びをしたい年頃、という奴だな! 愛嬌があってよい!」
雅「聞こえてるわよ!」
九「まあまあ。新年早々、そう怒らなくても。お年玉の中身が少ないのは謝るからさ」
雅「話聞いてました!? 多すぎるって話ですよ!?」
剣「マスター! マスター! このだ、だ、だ?」
九「だ? ……ああ、獺祭?」
剣「そうだ。このダッサイ? 開けてしまっても?」
九「いいよ。どうせ伊勢三からのもらいもんだし。俺、日本酒得意じゃないし」
剣「だ、そうだぞ。アーチャー」
弓「ご相伴に預かりましょう」
雅「なんで飲み会はじめようとしてんの、このサーヴァントたち!?」
九「お正月だからじゃないかなあ? 今日くらいはいいと思うよ」
雅「って、そうじゃなくて! お年玉、お返しします。私と九条さんは他人な上に、こんなにもいただけません」
九「うーん。そうは言ってもなあ。これは遠坂さんに用意したものだし、他に渡すアテもないから貰ってほしいんだけど」
剣「では何か食い物を買ってくるというのはどうか!」
弓「そうですね。追加の餅などよろしいかと!」
剣「うむ。餅や酒など最高だな!」
雅「思ってたより、外野がお餅にハマってた!」
九「いやそれお前等が食いたいだけじゃ? 別にお年玉崩さなくても、追加の餅くらい買ってくるよ」
弓「なんと!」
剣「さすが私のマスターだな!」
九「ああ、でも。現金じゃなくて物に還元して渡すってのはありなのか。遠坂さん、なにか欲しいものある?」
雅「え、いや。そもそもそういうことしてもらう理由がないですし」
九「つっても、子供にはお年玉あげるものだしなあ。っていうか、俺が遠坂さんにプレゼントしたいだけっていうか」
弓(聞きようによっては、口説いているように聞こえますね……)
剣(聞きようによっては、口説いているように聞こえるな……)
雅「この人なんで素面でこういうこと言うんだろう……?」
九「あれ? おかしいこと言った?」
雅「いえ、別に。他意がないのはわかってますし」
九「? まあアレだな。すぐに思いつかないなら、一緒に買い物でも行って、そこで欲しいもの言ってもらえれば」
雅「……」
九「え、なに?」
剣(デートの誘いか)
弓(これはデートの誘いですね)
雅「……デートにでも誘ってるつもりですか?」
九「あれ!? どこからそんな話に!?」
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