異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-死者の都-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第12話『やはり、蘇生魔術ですか』

私の言葉に、オーロさんは僅かに動揺しながら、私の肩を掴んだ。

 

「ミラ。今のはどういう意味だ」

 

私はどう説明したら良いかと考えながら、自分の心も落ち着かせながら語る。

 

「魔法がどの様な願いも叶えることが出来る凄い力だとしても、万能というワケではありません。物事には必ず対価や代償があります。そして、大きな力を発動し続ける為の力だって必要になります」

 

「……あぁ」

 

「そして、巨大な力を維持する為には多くの魔力が必要になります。しかし、魔力は常に世界に一定数拡散される物ですから、一か所に維持し続ける事が難しいんです」

 

私は両手で水を掬う様なポーズをしながら話を続けた。

 

「例えば、です。こうして手で水を掬った時に、何もせず手を離してしまえば水は地面に落ちて消えてしまいますよね? それと同じ様に集めた魔力は支え続けなくてはいけない」

 

「それを……アマンダがやっているというのか」

 

「……っ、はい。その可能性が高い。というよりはミクさんの話ではその様になっている様です」

 

私の言葉にオーロさんは怒りをその瞳に宿して、ミクさんの元へ向かおうとした。

 

しかし私は凶行が行われる前に、オーロさんの腕を抱きしめて、その足を止める。

 

「待って下さい! 恐らくですが、この件にミクさんは関係ありません!」

 

「っ!? 何故そんな事が分かる!」

 

「私たちがここに居る事がその理由にはなりませんか? 私やオーロさん、シュンさんはどう考えても計画には邪魔です。ここへ呼び込む理由がない。でも私たちはここに居る。それはミクさんが私たちを呼んだからです。そして、おそらくミクさんの願いは……アマンダさんとこの街の人たちの救済……ですよね?」

 

私はオーロさんに抱き着いたまま、ミクさんに確認を取り、ミクさんは私の言葉にやや戸惑った様に小さく控えめに笑いながら頷いた。

 

その反応を見て、オーロさんはその場に立ち尽くしながら拳を握りしめる。

 

私もそんなオーロさんの手を握りながら話を続けた。

 

「偶然か、必然か分かりませんが……私はこの街で癒しの魔術の本質を理解しました。この状態なら、アマンダさんを救えるんです」

 

「……」

 

「オーロさん。私たちが何もしなければアマンダさんはあの人形の中に囚われて、闇の魔力を維持する為に、苦しみ続けなくてはいけないんです! でも、私たちなら、救える!」

 

「……ミラ」

 

「私たちで、助けましょう。アマンダさんを」

 

私はオーロさんに手を差し出して笑った。

 

そして、オーロさんが私の手を握り、その上にシュンさんが手を乗せて、神刀を掲げる。

 

「ミクさん。ミクさんにも協力をお願いしても良いでしょうか?」

 

「……皆さんが良ければ」

 

私はオーロさんとシュンさんを順番に見て、頷いた。

 

そしてそれを見て、ミクさんも安心した様に微笑みながら私たちの手の上に自分の手を乗せるのだった。

 

 

 

心の準備は出来たという事で、私たちはいよいよ最後の関門へ挑むことになったのだが。

 

黒人形は動きを止めているが、どうやってアマンダさんに干渉すれば良いのか……。

 

「今のままではアマンダさんに干渉する事は出来ません」

 

「……」

 

「ですので、まずはアマンダさんにも干渉出来るように、黒人形の魔力を奪う必要があります」

 

「魔力を奪う? どうするんだ」

 

「儀式魔術を使いましょう」

 

「儀式魔術? なんだ、それは。普通の魔術じゃないのか?」

 

「はい。自分の持っている魔力を使う通常の魔術とは違い、この儀式魔術は周囲の魔力を使い魔術を発動する事ができます」

 

私が人差し指を立てながらそう説明すると、みんな興味深そうに聞いてくれる。

 

そんな事態では無いというのに、嬉しくなってしまい思わずペラペラと話を始めてしまった。

 

「そもそもの儀式魔術を開発したのは、歴史上に存在した素晴らしい魔術の殆どが、英雄しか扱えないという問題があったからです。そこで、大賢者ドラスケラウが誰でも使える様にと、儀式魔術を開発したとされています。代表的な物としては聖女イザベラ様が構築した転移魔術がポータルとして使用されていたりします」

 

「なるほどな」

 

「……ですがミラさん。あの黒人形から魔力を奪うとなると、かなりの大魔術になると思われますが……準備はどうしますか?」

 

「それならば必要ないと思っています」

 

私はミクさんの質問に応えるべく、あの人を呼ぶことにした。

 

まだ、消えていないこの町に残された命を。

 

「ローリーさん!! お話をしましょう!!」

 

この声が届くか、それは分からない。

 

けれど、届いて欲しい……そう願い、私は空に向かって声を飛ばす。

 

そして、その願いが届いたのか私たちの目の前に煙の様な姿のローリーさんが現れるのだった。

 

 

 

ローリーさんは難しい顔をしながら、私たちを見下ろしていたが、すぐ後ろにある巨大な黒人形へと視線を移して目を伏せた。

 

【もはや私の願いは潰えました……今更何の御用ですか? 聖女様】

 

「ローリーさん。あの黒人形を消します。協力して下さい」

 

【その様に言われて、私が素直に協力するとでも?】

 

ローリーさんが挑発する様に言った言葉に、シュンさんとオーロさんが武器を手に取るが、それを私は制した。

 

「はい! 思います!」

 

【……本当に、貴女はよく似ていますね。姉上と】

 

「ローリーさん……」

 

【あのアマンダという少女も良く似ていました。おそらく聖女と呼ばれる様な方は皆、その様な心を持っているのでしょう】

 

アマンダさんの名前が出てきた事でオーロさんが僅かに力を強めていたが、それでも動かないでくれた。

 

「あの、ローリーさん!」

 

【分かっています。姉上の事もそうですが……姉上によく似たあの少女を、このままという訳にはいかないでしょう。私達も、貴女やあの少女の様な方を恨みたかった訳ではありませんから】

 

ローリーさんはそう言うと、この街の外れに隠された大規模魔術の儀式場へと案内してくれた。

 

「これは……!」

 

「やはり、蘇生魔術ですか」

 

「蘇生魔術!?」

 

私の言葉にオーロさんが激しく反応するが、私は申し訳なさを感じながらもこの魔術の欠点を伝える。

 

「いえ、期待をさせてしまったみたいで申し訳ないのですが、この魔術は人を完全に蘇らせることは出来ないんです」

 

「……」

 

「この場所へ呼び寄せる事が出来たとしても、この魔術が描かれたこの場所から大きく離れる事は出来ず、また姿も霞の様であり、触れる事も出来ない……そんな、残酷な魔術なのです」

 

「そうか」

 

「……はい。それに、おそらくですが……アマンダさんは魂が仮の肉体に囚われており、呼び出す事は難しいと思います」

 

「分かった」

 

オーロさんは静かに頷くと、顔を上げて黒人形を見つめた。

 

そして、そんなオーロさんをそのままに、ミクさんが魔術を見ながら私に問う。

 

「では、どなたを呼び出すのでしょうか?」

 

「私にいい考えがあります」

 

私は地面にある儀式魔術に触れ、それを起動させながら笑った。

 

「どうせ呼び出すのなら、伝説に残る英雄を呼び出しましょう! 彼を呼び出すのなら、使う魔力も多いでしょうから!」

 

地面に描かれた儀式魔術の構築式は、私が魔力を与えて起動する事で光を放ちながら動き始める。

 

これで、後は魔力が充填されるのを待てばいい。

 

そうすれば、私の大好きな英雄が……。

 

「では、ここからが本番ですね」

 

「え?」

 

「魔力を奪われ始めた黒人形は、その身を保つ為にこの魔術構築式を破壊しようとするでしょう」

 

私はハッと顔を上げると、先ほどまで完全に止まっていた黒人形が動き出そうとしていた。

 

「そんな、まさか! 勝手に動くなんて!」

 

「多分、あの子も消えたくないのだと思います」

 

「ミクさん」

 

「ですが、もう終わりにしなくてはいけない。そうでしょう? ミラさん」

 

ミクさんが試す様な目で私を見て、笑う。

 

でも、そんな目に怯える私じゃない。

 

だって、私のそばには何よりも頼りになる人たちが居るのだから。

 

「では、行きましょう! オーロさん、シュンさん。全てを終わらせる為に!!」

 

私は風の魔術を起動させながら、顔らしきものをこちらに向けた黒人形を見据える。

 

最終決戦の始まりだ!!

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